鉱山(やま)の宝探し=釜石鉱山、7月30日
近代製鉄発祥の地「釜石鉱山」を楽しく学ぶイベントが7月30日、釜石市甲子町大橋の同鉱山周辺で開かれた。同市が主催する夏休み恒例の特別企画で、その名も「鉱山(やま)の宝探し」。市内の親子ら16人が参加し、日本最大の鉄鉱山として栄えた同鉱山の歴史や産出される鉱物について理解を深めた。
関連資料を展示公開している旧釜石鉱山事務所で、市世界遺産課の森一欽課長補佐が鉱山の歴史を解説。釜石周辺は太古の大陸移動で別々の島が合体し隆起したことで険しい山ができ、マグマの上昇による熱変成で多様な岩石が生まれたという。同鉱山は1727(享保12)年に発見。後に南部藩士大島高任は同地に洋式高炉を築き、1858(安政4)年、日本初となる鉄鉱石を原料とした連続出銑に成功した。
1880(明治13)年、現鈴子町に官営製鉄所が操業すると鉄道が開通。機関車で鉄鉱石を運んだ。製鉄所が民間経営となった後も供給は続き、“鉄のまち釜石”の繁栄を支えた。同鉱山からは銅鉱石、石灰石の採掘も行われたが、2000(平成12)年を最後に採掘を休止している。
旧釜石鉱山事務所鉱物室で同鉱山から採れる石を学ぶ参加者
イベントでは座学に続き鉱物室を見学。同鉱山で見られる石を教えてもらった後、屋外のずり捨て場で鉱石探しに挑戦した。参加者は目を凝らし、色や形状、輝きなどを観察。手元の表と見比べ、名称を確認した。鉄鉱石は磁石を近づけて、引き寄せられるかどうかを見た。表面だけでは判断しにくい石は、職員にハンマーで割ってもらい内部を確認した。
積まれた石の山に目を凝らし“お宝”を探す
「鉱石はどれかな?」じっくり見極めて…
お目当ての石を見つけようと子どもも大人も夢中
佐野海翔君(甲子小4年)は「鉱石の名前を覚えたい」と初めて参加。「鉄鉱石の他にもいろいろな石が見つかった。こんなに種類があるのはすごい」と驚いた様子。集めた石をどうするか聞くと、「磨いてピカピカにしたい」と目を輝かせた。
菊池咲里さん(小佐野小1年)は、家族と訪れた鉄の歴史館で釜石の鉄づくりに興味を持ち、「(現地に)行ってみたい」と同イベントに参加。石で重くなった袋を両手に抱え、「いっぱい拾えて楽しかった。お家に持って帰って飾る」とにっこり。母孝子さんは「大人も楽しめるイベント。こういう体験はすごく貴重。市がいろいろ企画してくれるのはありがたい」と喜んだ。
見つけた「ざくろ石」を手に笑顔を輝かせる子ども。左下は「黄銅鉱」
30分ほどの探索で、鉄鉱石、銅鉱石、石灰石のほか、ガーネットの結晶が見られる柘榴(ざくろ)石、黄緑がかった緑簾(りょくれん)石なども見つかった。集めた石は仕切りを施した箱に収め、名称を添えてオリジナルの鉱物標本を完成させた。
参加者は同事務所裏の高台にあった小・中学校「釜石鉱山学園」跡地や山神社なども巡り、多くの労働者やその家族が暮らした往年の時代に思いをはせた。
ズリ堆積場(左上)と沢水を流す人工滝(右後)を背景に記念撮影
釜石鉱山学園跡地から臨む堆積場。跡地案内看板の校舎写真(左下)と比べると山の谷間を埋め立てたのが分かる