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唐丹の天文学者・葛西昌丕の人柄を描いた第35回釜石市民劇場の公演

2年ぶりの公演「釜石市民劇場」 人間愛伝える舞台で観客の心潤す

唐丹の天文学者・葛西昌丕の人柄を描いた第35回釜石市民劇場の公演

唐丹の天文学者・葛西昌丕の人柄を描いた第35回釜石市民劇場の公演

 

 第35回釜石市民劇場~満天の星は知っている「天文学者葛西昌丕」若き日の私記~(同実行委主催)は6日、大町の市民ホールTETTOで上演された。江戸時代に天文学者として功績を残した釜石の偉人葛西昌丕の人物像をフィクションで描いた物語。2回の公演に計267人が足を運び、笑いあり涙ありの舞台を楽しんだ。

 

 葛西昌丕(1765―1836)は唐丹村(現唐丹町)本郷生まれ。水産加工業を営む地元の名家に育った昌丕は、若くして仙台に出て、国学や天文地理を学ぶ。江戸幕府の命で全国を測量して歩いた伊能忠敬が唐丹村を訪れた後、その業績を石碑に刻み、忠敬が天測した北緯の数値と星座名などを刻んだ「星座石」を残した。

 

 劇中では、地域愛にあふれた人情家としての側面にスポットをあて、地域住民との関わりを通して昌丕の人柄などを描いた。物語は、漁で両親を亡くしたおユキが一緒に暮らす祖母と妹の元を離れ、遠い親戚のウメが働く葛西家の加工場に連れてこられるところから始まる。2人は優しく接する昌丕に心を開き、それぞれが抱える苦悩を吐露。昌丕のおかげで互いの気持ちを知り、親子のような関係を築いていく。

 

昌丕(左から2人目)は父親が経営する水産加工場の従業員からも慕われる

昌丕(左から2人目)は父親が経営する水産加工場の従業員からも慕われる

 

夜になっても戻らないおユキを心配し探し回る

夜になっても戻らないおユキを心配し探し回る

 

おユキ(左)を見つけ、優しい言葉をかける昌丕

おユキ(左)を見つけ、優しい言葉をかける昌丕

 

 観劇した中妻町の佐藤弘樹さん(44)は「悲しい出来事を乗り越えていくのに、周りの人たちの助けは大きな力。出会いの縁で互いに救われることもある」と実感。自身も同劇場の出演経験者。コロナ禍で制約がある中での稽古の大変さを思いやりながら、「子役の声がすごく出ていて良かった」と頑張りをたたえた。

 

 市内の60代女性は「皆さん上手で物語の中に引き込まれた。コロナにウクライナの戦禍。暗いニュースばかりだが、ひととき忘れることができた」。県内の感染拡大で外出もままならないが、「TETTOは空調もしっかりしているし、安心感がある」と、地元での娯楽を満喫した。

 

 キャストは総勢14人。昨年11月末から稽古を始め、制作スタッフらと思いを一つに舞台を作り上げた。新型コロナウイルス禍で昨年度は休演、2年ぶりとなる本公演は、感染状況を注視しながらの準備となった。無観客開催も選択肢の1つに考えたが、総合的に判断し、本番5日前に観客を入れての開催を決断した。

 

 主人公・葛西昌丕を演じた久保修二さん(54)は終演後、「楽しかった」と開口一番。自営業を営む花巻市から、毎回稽古に通った。「やり遂げた達成感が大きい。みんなのおかげ。仲間とのつながりも深まった」と感謝した。

 

葛西昌丕役を演じた久保修二さん(右)

葛西昌丕役を演じた久保修二さん(右)

 

 初参加の森美惠さん(14)は、自分とは正反対の静かな女の子を演じた。「言葉のない演技をどう見せるか、考えて工夫した。できは96点ぐらい?!」。最初は不安だったが、仲間と1つの作品を作り上げる楽しさを知った。「来年も参加したい」と望む。

 

 コミカルな演技で笑わせたのは、追いはぎの弟分を演じた木川田光成さん(39)。震災で被災し、今は遠野市に暮らす。遠野の市民劇にも参加し、出演歴は釜石7回、遠野4回。コロナ禍の影響を「職業によっては人が集まる活動を制限されたり、まちをまたぐ活動に厳しい目を向けられたり。精神的葛藤はみんなあるだろう」と語る。無事に公演を終え、ほっとした様子で、「お客さんに見てもらえたのが何より」と喜びをかみしめた。

 

抜群の演技力で観客の笑いを誘った追いはぎ・弥助役の木川田光成さん(中)

抜群の演技力で観客の笑いを誘った追いはぎ・弥助役の木川田光成さん(中)

 

終演のあいさつをするキャスト、スタッフらに大きな拍手が送られた

終演のあいさつをするキャスト、スタッフらに大きな拍手が送られた

釜石初公演の「朗読劇 あの日から~加奈子~」

朗読劇で描く震災 短編小説「加奈子」県内のアナウンサー・演劇人が語る

釜石初公演の「朗読劇 あの日から~加奈子~」

釜石初公演の「朗読劇 あの日から~加奈子~」

 

 東日本大震災から間もなく11年―。同震災を題材にした短編小説「加奈子」の朗読劇が2月26日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演された。盛岡市のNPO法人いわてアートサポートセンターが主催。県内のアナウンサーや演劇人5人が出演し、物語に込められた思いを朗読という手法で伝えた。

 

 「加奈子」は金ケ崎町在住の作家・平谷美樹さんが書き下ろした作品。本県出身作家12人による震災をテーマにした短編小説集「あの日から」(岩手日報社刊)に収録されている。朗読劇としての上演は2016年の宮古市、21年の盛岡市、二戸市に続き釜石が4カ所目。釜石公演は震災10年に合わせ計画されたが、新型コロナウイルスの影響で1年延期され、この日の実現となった。

 

 物語は、震災から3、4年後を想定して描かれた。三陸沿岸のまちで生まれ育った主人公・加奈子は、東京で震災を経験。父親の反対を押し切り駆け落ち上京。9年間、故郷に戻らなかった加奈子は、すぐには被災したまちに帰れずにいた。震災から数年を経て、突き動かされるように戻った故郷は高校まで慣れ親しんだ景色はなく、復興のまっただ中。姉ら家族が前を向いて暮らす姿。復興に携わる人との出会い。加奈子は自分が求める生き方を模索していく。

 

 主人公・加奈子を演じたのは、盛岡市の「劇団赤い風」の若手役者で、今年から釜石市のケーブルテレビ局で働く久保綾愛さん。釜石からは2015年に「劇団もしょこむ」を旗揚げし、市内外で公演活動を行う小笠原景子さんも出演し、加奈子の姉役などでその実力を発揮した。

 

主人公・加奈子を演じる久保綾愛さん(前列左)。豊かな声色と表情で加奈子の心情を表現した

主人公・加奈子を演じる久保綾愛さん(前列左)。豊かな声色と表情で加奈子の心情を表現した

 

釜石の「劇団もしょこむ」代表・小笠原景子さん(前列)。釜石市民劇場などでも活躍する

釜石の「劇団もしょこむ」代表・小笠原景子さん(前列)。釜石市民劇場などでも活躍する

 

 公演後は原作者の平谷さん、出演した小笠原さんらによるアフタートークも行われた。同作は、本県のアマチュア映画創作集団「オトナ映画部」に所属する平谷さんが、映像作品の脚本として書いたものを小説化した。教師時代、6年間いた宮古市に、震災の年の秋に訪れ、「現実を直視して書かなければ」と思いを強めた平谷さん。発災時は内陸にいて、「何もできない自分に負い目を感じていた。加奈子という主人公は私自身」と物語の根幹を語った。

 

終演後、作品について語る原作者の平谷美樹さん

終演後、作品について語る原作者の平谷美樹さん

 

 小笠原さんは自身の劇団の旗揚げ公演で、仮設住宅に暮らす姉妹の心の葛藤を描いた作品を上演。以来、震災関連の出演オファーが増えたが、「その都度、ためらうことが多かった」。被災地にいるが、無事だった自分。「みんなの気持ちに寄り添えないのではないか…」。迷いながらの活動の中、朗読劇という新たな手法と出会った。「聞く人それぞれに違った情景や人物像を想像し、作品を受け止める。朗読だからこそ可能な表現であり、伝え方」と小笠原さん。

 

 生き残った者のうしろめたさ。惨状を目の当たりにしたつらさ。震災を経験した一人一人の心の傷は計り知れないが、平谷さんは「いつか自分の口で(経験を)語れるようになれば」と願う。小笠原さんも「人の言葉で聞くと感じ方が違う。震災時、幼かった自分の子どもにも当時の話をするようにしている」と、語り継ぐ大切さを訴える。

 

終演後あいさつする(左から)小笠原さん、長谷川拳杜さん(IBC岩手放送)、久保さん、江幡平三郎さん(同)、山井真帆さん(二戸演劇協会the雲人)

終演後あいさつする(左から)小笠原さん、長谷川拳杜さん(IBC岩手放送)、久保さん、江幡平三郎さん(同)、山井真帆さん(二戸演劇協会the雲人)

 

 公演に足を運んだ浜町の女性(56)は「泣かせる話かと恐る恐る見に来たが、前向きな話。平谷さんが言っていた家族や親子といった普遍的要素があり、聞きやすかった。今でも当時を思い出すと涙が出そうになるが、この10年、いろいろなことに気付かされながら生きてきた」と静かにうなずいた。

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ペッパーで買い物を疑似体験 平田小でプログラミング学習成果発表

ペッパーを使ったプログラミング学習の成果を見守る児童

ペッパーを使ったプログラミング学習の成果を見守る児童

 

 釜石市平田の平田小(鈴木崇校長、児童150人)の6年生23人は、ソフトバンクロボティクス社が開発した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を活用したプログラミング学習に取り組み、18日に同校で成果を発表した。児童は5~6人ずつの4班に分かれ、指示通りにペッパーを動かそうと試行錯誤してきた結果に喜んだり、頭を抱えたり。チームで協力して一つのプログラムを作り上げる大変さや楽しさを学んだ。

 

 市とソフトバンクが2020年7月に締結した「地方創生に関する連携協定」に基づく事業の一環で、平田公民館事業「平田キッズクラブ」として実施。今回の学習は3回構成で、1月31日と2月1日に同社員から「ロボブロックス」を用いたプログラムの作り方を学び、「買い物」をお題にペッパーの動作、しゃべらせる文言などをタブレット端末で入力していた。

 

班ごとにプログラミング学習で作った作品を発表した

班ごとにプログラミング学習で作った作品を発表した

 

 集大成となった18日は班ごとに発表。児童らが作ったプログラムを転送されたペッパーは、商店街に見立てた教室内を移動しながら、カレーライスや豚汁、刺し身などの献立に必要な食材を肉屋、スーパーマーケットなどで手に入れた。L字型に進んでゴールに設定された家にたどり着けば成功となるが、コースを外れたり、ゴールできないチームも。思うように動かず悔しがる児童も、うまくいって喜ぶ子も互いの頑張りに拍手を送り合った。

 

ラジオ体操でペッパーとの交流を楽しむ子どもたち

ラジオ体操でペッパーとの交流を楽しむ子どもたち

 

 佐々木璃夢(りむ)さんは「ミスがあったけど、しっかり動いてくれたからうれしい」と、ほっとした様子。ゴール手前で動きが止まるという失敗はあったものの、同社員から「チームとしてまとまりがあり、ペッパーのせりふもユーモアがあってセンスを感じる」と評価された。「言葉の入力が難しかったけど、みんなで何かを形にするのが面白かった。くじけそうになっても諦めないことや時間を守ることの大切さが分かった」と胸を張った。

 

学習を手伝ってくれたペッパーを囲んで笑顔を見せる平田小の6年生

学習を手伝ってくれたペッパーを囲んで笑顔を見せる平田小の6年生

 

 20年度に小学校で必修化されたプログラミング教育。同校では児童に1人1台タブレット端末を配布し算数や理科、総合的学習で取り組んでいるが、指導する教員で経験者は少なく、手探りで授業を進めている。同社による学習はプログラミングの基本を理解し、▽最後までやり抜く力▽言葉で伝える力▽理解し考える力▽チームで助け合う力-を身に付けるのが目的。端末で描いたイメージを、実際にロボット操作で確かめることもでき、担任の教員らは「学習の中で子どもたちの成長が期待できる教材」と手応えを得ていた。

小泉賞を受けた菊池梢衣さん(左)、白川愛子さん(右)と釜石市ボクシング協会の小泉嘉明会長

3年間の精進たたえるボクシング「小泉賞」 釜石高の部員2人に授与

小泉賞を受けた菊池梢衣さん(左)、白川愛子さん(右)と釜石市ボクシング協会の小泉嘉明会長

小泉賞を受けた菊池梢衣さん(左)、白川愛子さん(右)と釜石市ボクシング協会の小泉嘉明会長

 

 釜石市ボクシング協会(小泉嘉明会長)は17日、高校3年間の部活動で競技に真摯(しんし)に向き合った釜石高の3年生部員2人に「小泉賞」を贈った。中妻町の昭和園クラブハウスで行われた贈呈式には、協会と同校ボクシング部から20人が出席。女子フライ級選手として活躍した菊池梢衣さん(3年)、マネジャーとして選手を支えた白川愛子さん(同)の努力をたたえた。

 

 「小泉賞」は、肉体、精神ともに過酷なスポーツであるボクシング競技に挑み、たゆまぬ精進と学業との両立を成し遂げた高校3年生に贈るもので、1999年に創設。卒業間近の毎年この時期に贈呈式を行っている。

 

 小泉会長は「3年間ごくろうさま。これからも未来を切り開きながら進んでいって」などと声をかけ、菊池さん、白川さんに記念のトロフィーを手渡した。また、「ボクシングは自身を鍛える意味ですごく神聖なスポーツ。個人競技だが、人との結びつきが強い」とし、後輩を含め部員らに人とのつながりの大切さを伝えた。

 

釜石高ボクシング部の後輩らが見守る中、行われた「小泉賞」贈呈式

釜石高ボクシング部の後輩らが見守る中、行われた「小泉賞」贈呈式

 

トロフィーを贈り高校3年間の頑張りをたたえた

トロフィーを贈り高校3年間の頑張りをたたえた

 

 同校ボクシング部は市内唯一の高校ボクシング部で、本年度は1~3年生13人(選手9、マネジャー4)で活動。5月には同校体育館を会場に県高総体が開かれ、菊池さんは女子フライ級で3位入賞を果たした。菊池さん、白川さんは3年生として部をまとめ、後輩らの良き手本となった。

 

 菊池さんは「練習はつらかったが、コーチやOB、顧問の先生の熱心な指導のおかげで続けてこられた。18年間生きてきて一番成長できた3年間だったと思う」と感謝。個人競技から「自分に勝つということを学べた」と実感する。卒業後は東京の国際系専門学校へ進学。将来は人道支援に携わりたいと夢を描く。「これからは自立していかなければならない。いろいろな壁にぶつかると思うが、『自分ならできる』と信じて頑張っていきたい」と前を見据える。

 

厳しい練習を重ね、大きく成長した菊池梢衣さん

厳しい練習を重ね、大きく成長した菊池梢衣さん

 

練習環境を整え、選手を支えてきた白川愛子さん

練習環境を整え、選手を支えてきた白川愛子さん

 

 白川さんは「選手の役に立っているか不安に思うこともあったが、『いつもありがとう』という言葉に自分も助けられた。裏方の大変さも知ることができた」と貴重な経験を心に刻む。部活以外では表に立って活動することも多かった。「サポートしてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れず、これからも歩んでいきたい」。支える、支えられる双方の立場を経験し、大事な人生訓を得た。春からは横浜の大学に進学する。「ジェンダー問題や教育格差について学び、目指す教員の仕事に生かせれば」と白川さん。

 

 2人は先輩や後輩、指導者らに恵まれた3年間を「幸せだった」と振り返り、後輩部員らの今後の活躍に期待。伝統ある同部のさらなる発展を願った。

元気いっぱい虎舞を披露する園児たち

つなぐ伝統・虎舞 かまいしこども園 虎頭の引き継ぎ式

元気いっぱい虎舞を披露する園児たち

元気いっぱい虎舞を披露する園児たち

 

 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)は9日、大町の市民ホールで虎舞の引き継ぎ式を行った。卒園を控えた5歳児23人が最後の舞を元気いっぱいに披露。「がんばって」と4歳児に虎頭を手渡し、伝統をつないだ。

 

 同園では東日本大震災のあった2011年に虎舞を地域住民から習い、伝統芸能として継承する活動を開始。5歳児が虎頭を手に演舞、4歳児がおはやしを担当し、園行事や地域で披露してきた。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、発表する機会は大幅に減り、21年度に観客を前に披露できたのは運動会の1回だけ。予定されていた市内の高齢者施設や県内外のこども園との交流はオンラインで行い、画面越しの発表となった。

 

 最後の舞台としていた地元ラグビーチームのホスト(本拠地)戦(3月)での応援は参加を控えることに。出演を楽しみにしていた全国虎舞フェスティバル(2月)も延期になったことから、ステージで踊る楽しい思い出を残してもらうため、代替えにと職員が企画した。

 

4、5歳児が力を合わせて元気な虎舞を披露した

4、5歳児が力を合わせて元気な虎舞を披露した

 

元気に跳ね回り、後輩や保護者にカッコいい姿を見せた

元気に跳ね回り、後輩や保護者にカッコいい姿を見せた

 

 保護者が見守る中、虎頭を手にした5歳児は1年間頑張った練習の成果を発表。跳ねたり、寝転がったり、広いステージを目いっぱい使って元気な舞を見せた。4歳児11人が威勢のいい、おはやしで演舞を後押しした。

 

釜石の伝統芸能・虎舞の虎頭を引き継いだ

釜石の伝統芸能・虎舞の虎頭を引き継いだ

 

 発表後、5歳児は虎頭を4歳児に手渡して引き継ぎ。「がんばります」と受け取る後輩たちに、「腰を下げた方がいいよ」「背筋をピーンとのばすとかっこいいよ」などと、虎を演じる時に気を付けるポイントを伝えた。

 

 小野寺諒君(6)は「うまくできた。楽しかった」と満足げ。父一男さん(51)、母優美子さん(43)は「最後に大きい舞台で踊る姿を見ることができて良かった。大きな動きに成長を感じた。これからいろんなことがあると思うが、失敗を恐れず、どんどんチャレンジしてほしい」と目を細めた。

 

 藤原園長は「大舞台に立つ経験は子どもの成長につながる。これをきっかけに、郷土芸能を続けてもらえたら」と期待した。

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

一針一針丁寧に ちりめん布でひな人形づくり、平田で教室

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

 

 釜石市平田町の平田集会所で7日、「ちりめん手芸教室」が開かれ、地域住民ら15人が桃の節句を前に、「おひなさま」作りに取り組んだ。平田地区生活応援センター(平田公民館)コミュニティ支援員サロン事業の一環。参加者は会話も楽しみつつ熱心に手を動かしていた。

 

 2回シリーズの最終回。講師は、ミシン・手芸用品の販売などを行う大町のニコー商会の里舘恭子さん(61)が務めた。参加者は色鮮やかな模様の付いたちりめん布を使い、高さ5センチほどの男びなを縫い上げた。オレンジやピンク、グリーンなどの色が付いた布で花飾りのタチバナと桜も作製。ひな人形の目が太かったり細かったり、タチバナの実も大きさがバラバラで、「みんな違っていい。どれもかわいい」と笑顔の連鎖も作った。

 

参加者は細かい作業も楽しんで取り組んだ=7日、平田集会所

参加者は細かい作業も楽しんで取り組んだ=7日、平田集会所

 

 細かな作業が続き、90歳女性は「目が悪いから大変。だけど、手芸が好きだから。いい出来栄え。どこに飾ろうかな」と思いを巡らす。ひざを悪くし、集会所の階段を上るのは苦になるが、「おしゃべりが好き。一人で家にいるよりいい」と目を細めた。

 

 同教室は昨年秋にも3回シリーズで実施。好評だったことから、今回のひな人形づくりが企画された。参加者から継続実施の要望が多く、4月以降、月1回程度開催することが、同日に決まった。「お月見」にちなんだ飾りづくりを楽しむという。

 

釜石市民ホールでひなまつり展 25日から

 
ひなまつり展のチラシを手に来場を呼び掛ける里館さん=10日、大町・ニコー商会

ひなまつり展のチラシを手に来場を呼び掛ける里館さん=10日、大町・ニコー商会

 

 里館さんは、釜石の店舗や大槌町で手芸教室を開いている。参加する女性たちの作品を紹介する「ひなまつり展」を25日から、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで予定する。

 

 釜石では木曜日に教室を開催。50~80代の女性10人ほどが通う。10日午前の教室には5人が参加し、展示会で並べるつるし飾りづくりを進めた。平田の女性(78)は「縫うのが楽しい。みんなとおしゃべりできるのもいい。ストレス発散、情報交換の場で、生活に欠かせない」と頬を緩めた。

 

 おひなさま展には壁掛けや人形、和の細工物など約200点を出品予定。里館さんは「一つひとつ表情が違う。見て楽しんでほしい。コロナ禍、少しでもほっこりしてもらえたら」と来場を呼び掛ける。ものづくりと会話を楽しむ手芸教室への参加は随時募集中。問い合わせは同社(電話0193・24・2366)へ。

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

釜石市の全14小中学校 22年度から「コミュニティー・スクール」に

コミュニティスクール

 

 釜石市教委は2022年度、市内全小中学校(14校)に地域住民や保護者が参画する学校運営協議会を設置する。地域と学校が一体となり、子どもたちの豊かな成長を支える「コミュニティー・スクール」実現への取り組み。協議会は学校運営について意見を述べ、子どもたちが抱える課題解決のための議論などを行う。委員には消防団などの防災関係者も入り、同市が力を入れる防災を核とした命の教育を後押しする。

 

 小・中が同学区の甲子、唐丹は合同設置とし、12協議会が発足する予定。委員は地域、保護者、学校から選定した15人以内で構成。必要に応じ、目標達成のための部会を設け、関係する団体、組織と連携を図りながら地域と学校の協働活動を推進する。各校で委員の選出を進めており、研修などを経て、市教委が4月に任命する。

 

 取り組みの背景にあるのは、子どもたちを取り巻く環境、学校が抱える課題の複雑・多様化。今後、学校と地域の連携はさらに重要になってくると考えられ、社会総がかりでの教育によって、釜石の未来を担う子どもたちの育成をサポートする。教育の課題や目標を共有し、それぞれが当事者として主体的に取り組むことで、市が第6次総合計画に掲げる「地域と人のつながりの中でみんなが育つまち」の実現も目指す。

 

 コミュニティー・スクール(学校運営協議会制度)は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正により、17年度から導入が努力義務化された。本県では既に16市町村が導入し、22年度は全市町村で導入される見込み。

 

釜石市 22年度から10年間の「第3次生涯学習推進計画」策定へ

 

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

 

 釜石市社会教育委員会議(委員12人)の2021年度2回目の会議は1日、鈴子町の市教育センターで開かれた。委員と事務局(まちづくり課)職員ら22人が出席。市民を対象に実施した生涯学習基礎調査の結果、22年度を初年度とする「第3次市生涯学習推進計画」策定に向けた骨子案が示され、委員の意見を聞いた。

 

 協議に先立ち、22年1月から新任期に入った委員(再任9、新任3)に委嘱状を交付。23年12月まで2年間の任期を確認した。市教委は22年度に導入するコミュニティー・スクールについて説明。社会教育分野にも関係することから、理解と協力を求めた。

 

第3次釜石市生涯学習推進計画骨子案などを協議

第3次釜石市生涯学習推進計画骨子案などを協議

 

 市生涯学習基礎調査は、第3次計画策定の基礎資料とする目的で、昨年8~9月に実施。無作為抽出による16歳以上80歳未満の男女1500人を対象に郵送で行った。回収率は40・5%(回答数608)。

 

 調査によると、「生涯学習」という言葉自体は認知されているものの、「仕事や家事が忙しく時間がない」「きっかけがつかめない」という理由などで、学習活動に踏み出せていない実態があるほか、新型コロナウイルス感染症の影響も各質問項目で挙がった。希望する情報の入手方法で顕著だったのが年代による違い。若年層はインターネット、高齢者層は市広報や公民館だよりなど紙媒体を望む傾向が見られる。市は調査結果を公民館など関係職員で共有し、今後に生かす。

 

 第3次市生涯学習推進計画は、22年度から10年間を計画期間とする。「学びと実践が循環し、つながりを創出する生涯学習社会を目指して」という基本方針のもと、6つの基本目標と施策を示す。▽ライフステージや社会の要請に応じた学習機会の提供▽大学や関係機関との連携強化など生涯学習推進体制の整備▽学習支援・指導を行うボランティアやコーディネーターの育成―などを目指す。「地域全体で子どもを育む環境づくり」では、コミュニティー・スクールとの兼ね合いも盛り込まれる予定。

 

委員からは計画策定へさまざまな意見が出された

委員からは計画策定へさまざまな意見が出された

 

 委員からは「コロナで不自由さを感じながら生活している。手足を伸ばせる(心が開放される)ような活動を」「心のコミュニケーションが大切。実現可能な部分をどうするか」「地域に参加しやすい取り組みがあることが大事。健康な高齢者が社会貢献、自己実現を図れる場が必要」などの意見が出された。市は委員の意見を参考に計画案を策定。3月に開く本年度最後の会議で示すことにしている。

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

子どもも大人も粘土遊びに夢中 釜石公民館で陶芸教室「出来上がりが楽しみ」

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

 

 釜石公民館主催の「やさしい陶芸教室」は5日、同館が入る釜石市大町の青葉ビルで開かれ、市民約20人がオリジナルの陶作品づくりに挑戦した。講師は、釜石を拠点に活動する陶芸作家澤田麟太郎さん(40)=甲子町。参加者の自由な発想を生かした「粘土遊び」を後押しし、ものづくりの楽しさを伝えた。

 

 基本的な作り方やポイントの説明を受けた参加者は、粘土を平らにしたり細長く伸ばしながら小皿や小鉢などの食器、埴輪(はにわ)やアニメのキャラクターなどをかたどった置物づくりに取り組んだ。粘土を手に、真剣な表情で黙々と手を動かす人もいれば、途中経過を見せ合っては褒め合う親子連れも。高齢の女性たちは作るものを決めずに参加した様子だったが、軟らかな土の感触に「童心に帰る」と夢中になっていた。

 

大人も作品づくりに熱中、力作を生み出した

大人も作品づくりに熱中、力作を生み出した

 

 澤田さんは、身近な自然から見つけた松ぼっくり、ヤシ科の樹木シュロの葉、マメ科のつる性植物フジの豆鞘(まめさや)などの素材を持ち込んでいて、それを粘土に押し当てて模様付けした作品を紹介。「陶芸は粘土遊びの延長。身近にあるもので、いろんな表現ができることを知り、楽しさを感じてほしい。何か分からないものをどんどん作ってもらえたら」と、ものづくりのヒントを残した。

 

参加者が作った置物などの仕上がりを確かめる澤田さん(右から2人目)

参加者が作った置物などの仕上がりを確かめる澤田さん(右から2人目)

 

澤田さん(右)の作品に参加者は興味津々

澤田さん(右)の作品に参加者は興味津々

 

 白鳥をモチーフにした皿を作った土井陽菜香(ひなこ)さん(双葉小3年)は「形を作るのが楽しかった。うまくできた。またやってみたい」と満足げ。恐竜の置物を完成させた弟颯馬君(同1年)と「出来上がるのが楽しみ」と声をそろえた。母裕子さん(51)は「コロナで催しが中止になり、寂しかった。こうした体験活動は子どもたちの刺激にもなる。できるだけ続けてほしい」と望んだ。

 

 制作した作品は、澤田さんが乾燥、釉(ゆう)薬を掛けて焼き入れを実施。約1カ月後に参加者に渡される。

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

方言の温もりをオンラインで 「南部弁サミット」コロナ禍で初の試み

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

 

 第8回南部弁サミットin釜石「おらほ弁で昔話を語っぺし」は5日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。文化庁の「被災地における方言の活性化支援事業」に取り組む岩手大が主催。新型コロナウイルス感染拡大を受け無観客開催とし、ユーチューブによる動画生配信と地元ケーブルテレビ・三陸ブロードネットの生放送で、昔話語りを視聴者に届けた。

 

 オープニングを飾ったのは甲子小2年の大信田さくらさん(7)。大槌町吉里吉里の海を見下ろす民家の庭に設置される電話ボックス「風の電話」をモチーフにした絵本を読み聞かせた。震災などで家族を亡くした人が故人に思いを伝えられる癒やしの場所。2014年刊行(金の星社)の絵本を大信田さん自らが選び、練習を重ねて本番に臨んだ。初の大舞台を終え、「緊張した」と胸をなでおろす大信田さん。出来栄えを問うと「99点!」と元気な答えが返ってきた。

 

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

 

 方言による民話の伝承活動を行う同市の「漁火の会」(須知ナヨ会長、9人)からは6人が出演。「釜石の笛吹峠」「三枚のお札」「矢の浦の渡し」など市内に伝わる民話のほか、会員が遠野出身の須知会長や身内から伝え聞いた話を地元の方言で語った。語り部の後では、会員などが描いた物語のイラストも上映され、各場面の情景を目でも楽しませた。

 

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

 

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

 

 ゲストコーナーには、民話の宝庫・遠野市から「遠野昔話語り部の会」の2人が出演。「天福 地福」「迷い家」を熟練の話術で聞かせた。同サミットに初回から協力する青森県八戸市の「八戸童話会」の2人は、コロナ禍のため、昨年に続きビデオ出演となった。

 

 最後は同サミット名物の「漁火の会」会員による民話劇。今回は全国に知られる昔話「貧乏神と福の神」の一部をアレンジし、方言を交えて熱演。今に通じる教訓も込められた話を楽しい寸劇で伝えた。

 

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

 

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

 

 漁火の会の北村弘子事務局長(69)は初めての無観客開催に、「お客様の反応や息づかいを感じながらやってこられた今までが、いかに幸せで、ありがたいことだったかとあらためて思う」。この2年間はイベントなどが次々に中止となり、語りを披露する機会も減ってしまった。状況の改善は見通せないが、「雨にも負けず、風にも負けず、コロナにも負けず…。宮沢賢治の精神で何とか乗り切っていきたい。早くお客様の目の前で語れる日が来ることを願う」と思いを込めた。

 

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

地域振興へ連携深化 釜石市と岩手大フォーラム 成果示すパネル展も

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

 

 岩手大学地域連携フォーラム(岩手大、釜石市主催)は3日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルスの流行が続く中、オンライン配信を取り入れて行い、会場参加と合わせて約100人が聴講。「ポストコロナにおける新しい地域連携・課題解決-デザイン思考の活用」をテーマに、連携事例の紹介や研究成果の報告、パネル討論が行われた。

 

 同大は2001年に締結した相互協定に基づき、釜石市と共同研究に取り組むとともに、市の職員を大学の共同研究員として受け入れ、多くの分野で連携を重ねてきた。震災後に釜石サテライトを設け、13年には三陸水産研究センターを設置。18年からは農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生が釜石キャンパスを拠点として研究活動に取り組んでいる。20年度には両者と民間企業などが連携し、釜石湾でサクラマスの養殖試験を始めた。

 

学生や教授らの成果報告に耳を傾けた参加者

学生や教授らの成果報告に耳を傾けた参加者

 

 現在、釜石に在住し水産分野の研究や地域連携活動に取り組んでいる学生は24人。同コース4年の古澤直哉さんが、市学生活動支援事業補助金を活用し企画展開した出前授業、定置網見学とすし作り体験ツアーなど市民との交流活動について報告した。魚食の魅力や海の豊かさを発信できたと成果を強調。「企画した交流活動が成功した時の喜びや事前準備の大切さを実感。社会人としての助走の機会になった。人とのつながりを得て、釜石への愛着も湧いた」と充実感を見せた。

 

共同研究員の役割や取り組み事例を報告する佐々木千里さん

共同研究員の役割や取り組み事例を報告する佐々木千里さん

 

 5代目共同研究員として20年4月から同大に派遣されている市職員の佐々木千里さんは、歴代研究員が手掛けた連携事例を紹介。研究員が大学の知見を得たい市内企業と同大を結ぶ窓口となることで、スムーズな連携相談、関係構築が可能になるとし、「効率的、効果的な取り組みができるよう調整役を担っていく」と意欲を示した。

 

 同大理工学部教授らが、商品販売やまちづくりなどのさまざまな課題を解決するための思考方法「デザイン思考」をテーマにした地方創生の取り組み、SDGs(持続可能な活動目標)活動の事例を紹介。釜石の老舗和菓子会社社長らを加えたパネル討論では、この思考法を取り入れた地域振興と人材育成の在り方を共有した。

 

釜石高の探究活動などがパネル展示で紹介された

釜石高の探究活動などがパネル展示で紹介された

 

 文科省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている釜石高はオンラインで参加し、郷土芸能「虎舞」の起源など地域に関わる探究活動の成果を発表した。クジラ資源の利用をテーマに研究に取り組んだグループは「捕鯨問題は世界各国の文化の違いがあり解決は難しいが、全身を余すところなく利用できるクジラは重要な海洋資源となりうる」と考察した。 

 

 同大の小川智学長は「今後も三陸地域の活性化のため、教育をテーマにさまざまな活動を継続する」と強調。野田武則市長は「大学が持つ知に期待。地域振興に向け連携を深めたい」と望んだ。

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

コロナ下の読書活動推進「できることを」 読み聞かせボランティア講座

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

 

 子どもの読書活動推進ボランティア講座は1月28日、釜石市小佐野町の市立図書館で開かれた。学校や地域で子どもたちの読書活動を支えるボランティア、読み聞かせ活動に関心のある人が対象で、9人が参加。市内外の活動団体による事例紹介や実演などから、活動のヒントを得、スキルアップを図った。

 

 大船渡市を中心に読み聞かせや本を通じた交流活動を展開するNPO法人「おはなしころりん」理事長の江刺由紀子さんが「新型コロナウイルス禍での活動と学校ボランティアとの連携」をテーマに講義。「読み聞かせは本を通じた気持ちの手渡しができる大事な活動。できることをできる範囲で続けていく」と強調し、▽文通活動▽軒下古本屋▽新聞での本紹介―など新事業について説明した。

 

 子どもの読書活動を支えるには「地域全体で子どもの成長を後押しするイメージが大切」と指摘。読書ボランティアらの地域を越えたつながりも促し、「情報交換しながら互いに元気を注入していきましょう」と呼び掛けた。江刺さんは実際に読み聞かせをし、「魔法のオレンジの木-ハイチの民話」に集録された「フクロウ」を紹介。声色の変化や強弱で登場人物を演じ分け、子どもの心を持った大人たちを物語の世界に誘い込んだ。

 

千田さんはおすすめ本を示して本選びのヒントを伝えた

千田さんはおすすめ本を示して本選びのヒントを伝えた

 

 釜石市内外の図書館で読み聞かせのボランティア活動に取り組む読書サポーター「颯(かぜ)・2000」事務局長の千田雅恵さんは、本の選び方をアドバイス。「自分が読んで共感できる本を選ぶこと。興味や関心のアンテナを張り巡らして自分の感性を磨くことが大切」と伝えた。「ぜつぼうの濁点」「ことろのばんば」など、子どもの年齢に合わせたおすすめ本を紹介。手遊びやわらべ歌を取り入れ、読み聞かせの場をさらに楽しい空間にするための工夫も見せた。

 

 甲子町の女性(60代)は「江刺さんの読み聞かせに引きつけられた。本を読むことで心がしなやかになる、子どもならなおさら。発想も豊かになる」と実感。昨年から小学校図書室の運営補助などを行う学校図書ボランティアとして活動していて、楽しい空間づくり、児童への読み聞かせに意欲を見せた。

 

 同館の川畑広恵館長は「コロナ禍、天災といった避けられないことがあっても、子どもたちが伸び伸びと強く育つためにできることがある」と確信する。コロナの流行を踏まえ参加型行事は減るが、多様なテーマで企画展を展開。2月1~22日に「猫の図書展」、同23日からは「ひなまつり展」を予定する。自宅で過ごす時間が増えている今だからこそ、本に触れ関心分野を広げてみては――。

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

日本人初作成の海図「釜石港之図」 市郷土資料館、刊行時の銅板を特別展示

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

 

 日本人だけで初めて作られた海図「陸中國釜石港之圖(りくちゅうのくにかまいしこうのず)」の刊行150周年を記念し、釜石市鈴子町の市郷土資料館(藤井充彦館長)でその歴史を紹介する企画展が開かれている。刊行時に使われた銅板など貴重な資料を展示。海図の更新は現在も行われており、海岸線の変化などを見ることができる。13日まで。

 

 海図は、船が安全に航行できるよう海岸の地形や水深、灯台などの目標物を分かりやすく示した海の地図。国内では1871(明治4)年、兵部省海軍部内に水路局が設置され、海洋調査から海図作成を一貫して行う近代的水路業務が始まった。

 

 そうして作成された海図の第1号が、72(同5)年に刊行された「陸中國釜石港之圖」。当時の釜石は、国内主要港の横浜―函館間航路の中間に位置し重要な補給地点だったことに加え、官営釜石製鉄所が完成する直前だったこともあり、海軍が注目すべき重要な港湾の一つだった。

 

「釜石港之図」のレプリカ(手前)などの資料で海図の歴史を解説する

「釜石港之図」のレプリカ(手前)などの資料で海図の歴史を解説する

 

 企画展では、第2管区海上保安本部の提供資料を中心に約30点を展示する。釜石港が第1号に選ばれた背景や新旧海図の比較、海軍伝習所でオランダ式の航海術・測量術を学んだ津の藩士で海図づくりの先駆者となった柳楢悦(やなぎ・ならよし、1832-91年)の業績などをパネルで解説。江戸時代の測量家、伊能忠敬(いのう・ただたか、1745~1818年)と測量隊が作成した「大日本沿海輿地(よち)全図」(伊能図)が、近代海図に果たした役割も紹介する。

 

 当時、第1号海図を印刷するために手彫りで作られた銅板(同本部所蔵)を特別展示。同館の佐々木寿(ひさし)館長補佐は「めったに見ることができないもの。じっくりと見ることができる貴重な機会」と強調する。同館所蔵の羅針盤や記念切手なども並べ、海図づくりの歴史を伝える。

 

資料館所蔵品も並べて海図の歴史を伝える

資料館所蔵品も並べて海図の歴史を伝える

 

 「釜石は明治時代からポテンシャルを持ったまち」と佐々木館長補佐。「海図からまちの移り変わりに理解を深め、見直し、誇りを持つきっかけになれば。いい面、優れたところを未来にどう生かすかを考える機会にもしてほしい」と話す。

 

 午前9時半~午後4時半(最終入館同4時)。火曜休館。入館料は大人200円、小中高校生と障害者手帳を持つ人は無料。

 

海図第1号クリアファイル、販売中

 

釜石港之図(手前)、ナウマン博士の地質図(奥右)、鉄の歴史館をテーマにしたクリアファイル

釜石港之図(手前)、ナウマン博士の地質図(奥右)、鉄の歴史館をテーマにしたクリアファイル

 

 同館では、陸中國釜石港之圖をデザインしたクリアファイルを販売している。A4サイズで、1枚200円。海図の歴史などをまとめた解説が挟み込まれていて、展示を見た後に振り返りができる。

 

 ドイツ人地質学者ハインリッヒ・エドムント・ナウマン博士(1854-1927年)の調査に基づき、日本で初めて作成された地質図「大日本予察地質図東北部」をモチーフにしたクリアファイル、近代製鉄発祥の地・釜石を紹介する写真などを散りばめた「市鉄の歴史館」オリジナルファイルもある。それぞれ1枚200円だが、今なら3枚まとめて500円で購入できる。この3種は、鉄の歴史館でも販売している。

 

 海図、地質、製鉄…と興味を持つ人が限定されがちなテーマだが、佐々木館長補佐がいう‶釜石のポテンシャル″を感じるグッズとして手に取って、地域理解を深めてもらえたら―。