観客を入れて行われた「第12回全国虎舞フェスティバル」
釜石市内外の虎舞伝承団体が集う第12回全国虎舞フェスティバル(釜石観光物産協会、市主催)が5日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一昨年は中止、昨年は映像配信となり、有観客開催は3年ぶり。参加9団体は久しぶりの大舞台に喜びを感じながら熱演。約400人の観客も胸を躍らせながら伝統の舞を堪能した。
本フェスティバルは当初、2月に予定されていたが、新型コロナの感染状況から延期を決め、4カ月遅れの開催となった。開会にあたり野田武則釜石市長は「“全国”と銘打った虎舞フェスは釜石だけ。今年は寅年。あらためて目を向け、虎舞から元気をもらってほしい」とあいさつした。
釜石市からは同市の無形文化財に指定されている錦町虎舞(1998年指定)、尾崎町虎舞(尾崎青友会、98年同)、鵜住居虎舞(鵜住居青年会、2012年同)など6団体と、市内7団体で組織する釜石虎舞保存連合会が出演。代表的な3演目(矢車、跳ね虎、笹喰み)や手踊りを披露し、観客を楽しませた。
平田虎舞(平田青虎会)のステージ。踊りは地元の舘山神社祭典で奉納される
市無形文化財5虎舞の一つ、尾崎町虎舞(尾崎青友会)。浜町2丁目(旧称・台村)に伝わる
各団体の演舞を楽しみ、大きな拍手を送る観客
市外からは大槌町の陸中弁天虎舞、宮城県加美町の同消防団「中新田火伏せの虎舞保存会」が出演した。加美町の虎舞は室町時代から継承され、650年以上の歴史を誇る。毎年4月29日の初午(はつうま)祭りで踊りを奉納し、地域を練り歩いて家々の防火や家内安全を祈願する。同県の重要無形文化財。釜石での演舞は1992年、2014年、18年に続き4回目。今回は30~60代のメンバー20人が訪れた。
加美町消防団 中新田火伏せの虎舞保存会は防火祈願の舞を披露
客席を回るのに替えて写真撮影タイム。独特の虎頭をパチリ!
同保存会の大杉義和会長(61)は「コロナ禍で地元の祭りもここ3年中止。今回、大きな舞台での発表機会をいただけたことは非常にうれしく、メンバーも達成感でいっぱい。伝統芸能継承のためにも、来年は何とか祭りができれば」と願った。
釜石市内では各地で14の虎舞が保存、継承される。同フェスティバルは1992年に開かれた「三陸・海の博覧会」の釜石会場で初開催された後、2010年から年度事業として定着。11年の東日本大震災後も会場を転々としながら継続し、震災復興に向かう市民らに大きな力を与えてきた。
中妻町の澤村幸治さん(74)は「被災前の市民文化会館での開催から見ている。近年はコロナ禍で地域の祭り行列がなくなっているので、虎舞を見られる貴重な機会。懐かしさと共に心が躍る」と話し、秋の釜石まつりの復活に期待を込めた。
本フェスティバルの模様は後日、ユーチューブチャンネル「かまいしの観光」で配信するほか、DVDの販売も予定する。