釜石にもあった!「金」の山 橋野町青ノ木で砂金探しイベント 市民ら夢中
川底の砂をすくって砂金を探した「ゴールデンハシノ」=橋野町青ノ木、金山沢
世界遺産「橋野鉄鉱山」を有する釜石市橋野町青ノ木地区。鉄鉱石を採掘し、洋式高炉で鉄生産が行われていたことは多くの人が知るところだが、金鉱石の採掘事業で栄えた時代があったことは市民にもあまり知られていない。同町の金山の歴史を知り、砂金採り体験を楽しむイベントが20日、現地で開かれ、子どもから大人まで15人が地元の山に眠る地下資源に思いを巡らせた。
「ゴールデンハシノ(砂金を探せ!!)」と銘打った同イベントは、市世界遺産課と商工観光課が企画。「三陸ジオパーク」に認定される同市の魅力を“鉄”以外でも味わってもらおうと初めて開催した。講師を務めたのは、市内の金山調査を長年続ける小田島圭司さん(75)=産金遺跡研究会釜石支部=と、青ノ木出身で橋野の歴史や自然に精通する三浦勉さん(70)=釜石観光ガイド会=。講話と体験の2本立てで、その価値を伝えた。
歴史資料などによると、橋野地域には5つの金山があったとされる。今回、砂金採りを行った青ノ木川支流・金山沢沿いの「六黒見(むくろみ)金山」は、1800年代初頭の試掘に始まり、江戸、明治期の採掘の記録が残る。昭和初期(1935~43年)には日立系列の日本鉱業が本格的採掘に乗り出し、約200人が働いた。9年間の採掘量は約8万5千トン。鉱石は鵜住居から貨物列車に積み込み、山田線回り盛岡経由で茨城県日立市の精錬所まで運んだ。
橋野町の六黒見金山について説明する三浦勉さん
現地では複数の坑道や選鉱場、事務所などの場所が確認されており、今でも坑道や社宅跡、関連すると見られる石碑を見ることができる。講話の中で三浦さんは、同金山で働いた測量士、事務員から聞き取った話、自身が見つけた金鉱石の写真なども紹介した。
橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでの講話後、金山沢下流域に移動。小田島さんらの指導の下、砂金探しに挑戦した。縁部分に溝がある丸皿に川岸や岩陰にたまった砂を取り、水と一緒に回しながら“光るもの”に目を凝らした。約1時間の探索で数ミリほどの砂金を幾つか発見。参加者は金山の存在をあらためて実感した。
六黒見金山を流れる「金山沢」下流域が採集場所
砂金の採り方を教えた小田島圭司さん(右)
「砂金はあるかな?」 丸皿の中を見回して探す
甲子町の洞口陽希君(11)は小田島さんからお墨付きを得た砂金を手に、「さっきから全然採れなかったので、すごくうれしい。コレクションにする」とにっこり。父雄紀さん(41)は「釜石でも金が採れるのを初めて知った。市内に住んでいても知らないことは多い」と貴重な学びの場を歓迎。陽希君が喜ぶ姿に「都会ではできないこと。釜石ならではの体験を今後もさせてあげたい」と話した。
見つけた砂金(右下拡大・白丸部分)に興味津々で見入る参加者
「初めてで(砂金が)採れるのはあまりないこと。ここまで出るとは思わなかった」と驚く小田島さん。市の担当者は参加者らの予想以上の反響に「坑道跡の見学会なども企画できれば」とさらなる構想を膨らませた。
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