たたら製鉄を体験 釜石・甲子中1年生の学習は15年目 炭にまみれながら奮闘


2022/09/27
釜石新聞NewS #文化・教育

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炉内から不純物を取り出す「ノロ出し」と呼ばれる作業を見守る甲子中1年生=16日

 
 甲子中(柏舘秀一校長、生徒128人)の1年生45人による「鉄づくり体験」は15、16の両日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所前で行われた。2クラス4班がたたら技法による製鉄に挑戦。木炭にまみれながら粗鉄(ケラ)の取り出しに成功した。生徒たちはものづくりの大変さ、力を合わせる大切さ、達成感などを味わいながら、「鉄のまち」の歴史に理解を深めた。
 
 初日は炉の構築、木炭を割る作業に取り組んだ。炉はコンクリートブロックを基盤に耐火レンガ約100個を組み上げ、湯出し口や送風管などを固定した。生徒たちは設計図と写真を基にした炉づくりに悪戦苦闘。土台などを設置せずに作業を進めてしまい、最初からやり直しする班もあった。市文化振興課文化財係の加藤幹樹主任(37)らが指導。「平面の設計図を立体にイメージして」などと助言し、生徒たちの活動を見守った。
 
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設計図を手に話し合いながら炉をつくる生徒たち=15日

 
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子どもたちの活動をそっと見守る加藤主任(後列左)=15日

 
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炉の完成を喜びつつ、炭割り作業にも精を出した=15日

 
 2日目が本格的な製鉄体験。火入れし、木炭約30キロで炉を加熱していった。釜石鉱山産の磁鉄鉱10キロ、石灰1キロを、木炭20キロと共に10回に分けて投入。時間を計り、炉内の温度を確認しながら、炭にまみれる地道な作業を続けた。昼前から不純物(ノロ)の抽出を行い、1000度以上の熱を確認。午後1時過ぎ、前後して4基の炉が解体された。全ての炉でケラが得られ、生徒たちの奮闘は報われた。
 
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鉄鉱石と石灰をまぜたもの、砕いた炭を投入する作業を10回繰り返した=16日

 
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ノロ出しし、作業が順調に進んでいることを確認した=16日

 
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熱さを感じながら炉の解体作業を見つめる生徒たち=16日

 
 B組2班リーダーの佐々木凌空(りく)君は「初めての体験だったが、みんなと力を合わせてできた。レンガは重いし、火は熱いし、この方法でつくっていた人たちのつらさが分かった。大変な中でやり切ったという達成感がすごい。感動」と目を輝かせた。
 
 A組1班リーダーの本多莉奈さんは「今の時代は機械もいろいろとあるが、大島高任は何もないところから作って本当にすごい」と感心。炉づくりで手間取ったというが、「班員をまとめ工夫と試行錯誤を重ねる経験ができた」と充実した表情。10月には文化祭があり、「みんなで協力する必要がある。スムーズに進められるよう、学びを生かしたい」と前を向いた。
 
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全ての炉で鉄の混合物「ケラ」の取り出しに成功。左下写真で白っぽく見える部分が鉄=16日

 
 同校の鉄づくり体験は、総合的学習の一環。近代製鉄発祥の地・釜石の歴史や製鉄の今昔を体験的に学ぶ。幕末に大島高任が近代製鉄技法による鉄の連続出銑に成功して150周年に当たる2008年度から始まり、今年で15年目。1年生は大島に関する講話、鉄の歴史観の見学・鋳造体験、世界遺産「橋野鉄鉱山」の見学も重ねた。一連の学習成果は文化祭「愛校祭」で発表。市などが実施する「鉄の検定」にも挑む。
 
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大島高任が洋式高炉による鉄づくりに挑んだ地で続く子どもたちの製鉄体験

 
 本年度から市内の中学校全5校の1年生が鉄づくり体験に取り組む。加藤主任は「近代製鉄発祥の地で歴史を学び、ものづくりの大変さや大切さを知ってほしい。失敗から学ぶ体験や、同じ目標に向かうチームをまとめ指示を出す人、それを支えるという体験ができる場でもあり、次世代のリーダー育成につながれば」と期待した。

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