誰もが自分らしく生きられる社会に 釜石で人権のつどい 講演などで理解促進図る


2022/11/14
釜石新聞NewS #文化・教育

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

人権マンガ展の入賞者と関係者ら=人権のつどい

 
 人権のつどいinかまいし(釜石市主催)は5日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。宮古人権擁護委員協議会の人権啓発活動ネットワーク事業で、新型コロナ感染症の影響により3年ぶりに実施。同市が独自に取り組む「人権マンガ展」の入賞者表彰、応募作品の展示、講演会などが行われ、幅広い世代が人権問題への理解を深めた。
 
 人権意識の高揚、差別のない明るい社会の構築を目指すイベント。開会にあたり野田武則市長は「人権課題解決の一助、自らの人権意識を見つめ直す機会となることを期待する」とあいさつ。同市が1991年から継続する中学生対象の「人権マンガ展」の表彰式が行われた。
 
 本年度は市内3校から16点の応募があり、4賞の受賞者を表彰した。釜石市長賞を受賞したのは髙橋愛里さん(唐丹中3年)。国籍や人種による差別や偏見で事件が発生している世界の現状に心を痛め、差別撤廃や人権尊重の思いを作品に表現した。肌の色が違う4本の手を組ませ、「私とあなたは何の違いもない」とのメッセージを添えた。「相手を知ろうとする姿勢が大事。他国のことを調べたり話し合ったり。インターネットも有効活用し、互いの理解を深められたら」と髙橋さん。
 
釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

釜石市長賞を受賞した髙橋愛里さん(唐丹中3年)

 
髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

髙橋さんの作品。差別のない社会への思いを表現

 
 館内では5、6の両日、本年度の全応募作品と2014年度からの入賞作品の展示も行われた。来場者はいじめ撲滅や個性尊重、世界平和などへの願いが込められた力作を目にしながら、人権の大切さを再認識した。
 
本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

本年度の全応募作品と過去の入賞作品を展示した人権マンガ展

 
 講演会のテーマは「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」。釜石市出身で都立高主幹教諭の瓦田尚さん(早稲田大大学院卒)が講師を務めた。瓦田さんは性的少数者(LGBTなど)やジェンダー(社会的、文化的につくられた性)に関する教育をいち早く授業に取り入れてきた。
 
 講演で、男女の役割などについて固定的な観念を持つことを指す「ジェンダーバイアス」の事例を紹介。「バイアス(先入観、偏見)によってつらい思いをする人もいる」と話した。性的少数者の割合は左きき、AB型の割合と同じくらいとも言われる。近年、当事者が支援者と共に理解促進を訴えるパレードを行ったり、同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増えてくるなど、取り巻く社会環境は大きく変わってきている。
 
瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

瓦田尚さんの講演「ジェンダーと人権~性の多様性を手がかりに」

 
 「少数者が生きやすい社会はその他の人も生きやすい社会。憲法では社会的弱者に対し、国や自治体がその権利、自由を保障する責任を定めている」と瓦田さん。誰でも使えるという「ユニバーサルデザイン」の考え方を紹介し、「物だけでなく考え方、環境をいかに“ユニバーサルデザイン化”していけるかが重要」と話した。
 
 学校では男女別の名簿や定員の廃止、部活の入部条件の改善などが進み、将来的には男女別の体育を一緒にという方向性も示されている。瓦田さんは憲法11、12条の条文を紹介し、「権利をもらって安心するだけでなく、『これでいいのか』と常に考え続けることが大事。困った時に声を上げることが人権を守ることにつながる」と教えた。
 
学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

学校の授業のような雰囲気で進んだ人権講演会

 
 この日はアトラクションとして、甲子中生徒によるハカ、唐丹町の桜舞太鼓も披露された。 

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