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平原さんが釜石東中生と声を合わせた

平原綾香さんと歌声重ねる、復興スタジアム 8月19日に共演へ〜釜石東中をサプライズ訪問

平原さんが釜石東中生と声を合わせた

平原さんが釜石東中生と声を合わせた

 

 代表曲「ジュピター」などで知られる歌手の平原綾香さん(34)が27日、釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)を訪れ、生徒らと交流。同校で歌い継いでいる合唱曲「いつかこの海をこえて」などで歌声を重ねた。平原さんは、来年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催の会場となる「釜石鵜住居復興スタジアム」で8月19日に行われるオープニングイベントに応援ゲストとして出演。「ジュピター」を披露するのに加え、同校生徒たちと一緒に「いつか~」を合唱することが決まった。

 

 震災後、コンサートなどで復興支援を続けてきた平原さん。日本代表戦で国歌斉唱を務めるなどラグビーとの縁もあり、8月の同スタジアムオープニングイベントへの出演が決まっている。そんな中、W杯釜石開催のPR映像の中で流れる「いつか~」を耳にし、歌に込められた思いやの曲づくりの背景を知り、「一緒に歌いたい」と希望。「復興に向けて歩む姿や音楽のすばらしさを届けるステージを一緒に作ろう」と思いを伝えるため、来釜した。

 

 期末テスト期間中だったが、体育館に全校生徒が集合。3年生(47人)が練習を重ねてきた「ジュピター」を歌い始めると、平原さんがサプライズで登場した。平原さんが生「ジュピター」を披露すると、生徒らは表現力や声量、歌唱力に感激。少し緊張気味に「いつか~」で声を合わせた。

 

 生徒たちの歌声を聴いた平原さんは「まっすぐ素直なきれいな歌声。天使に見えた」と評価。互いに練習を重ねることを約束し、「みんなの十八番(おはこ)、自信を持って。本番、お願いします」と呼び掛けた。

 

 小笠原羽美佳(うみか)さん(3年)は「(平原さんは)空気が振動するような、響き渡る歌声だった。本番は合唱の完成度を高めて歌いたい」と気合十分。高清水享妥(きょうた)君(同)は「いつか~」を校歌と同じくらい大切にしているといい、「震災があった時に先輩が思いを伝えようと作った曲。思いを受け継いで歌わなければ。平原さんとしっかり合わせられるよう練習したい。8・19が楽しみ」と声を弾ませた。

 

 「いつか~」は、震災を経験した同校生徒が考えた復興への思いをもとに作られた曲。歌詞の歌い出しをつなげると「鵜住居で生きる、夢抱いて生きる」とのメッセージが浮かび上がる。

 

 平原さんは2番の歌詞にある「いつの日もそばにいる/たとえ離れていても」が心に強く響いているという。「生きている人が天に向かい亡くなった人を思う、天国からは亡くなった人が見守っているよと呼び掛けているように感じ、胸が熱くなる」。震災被災地で活動を続ける中で出会った人たちの思いに寄り添えるようなこの歌詞に、「思いをのせたい」と本番へ気持ちを高める。

 

 津波で破壊された同校旧校舎の跡地に建設されるスタジアムについて「地域の希望の光で夢の集まる場所だが、夢をかなえる場所であってほしい。震災を忘れない場所にもなると思う。いろんな思いが世界中に届くようお手伝いしたい」と話した。

 

 同スタジアムのイベントには平原さんのほか、ダンス・ボーカルグループEXILE(エグザイル)のUSAさん、TETSUYAさんも応援ゲストとして出演することになっており、同校生徒と一緒にダンスを披露する。

 

(復興釜石新聞 2018年6月30日発行 第702号より)

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浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

釜石の魅力 アートで発信〜デザイン界をけん引する浅葉克己さん・佐藤可士和さん、「夢」を描く高校生にアドバイス

浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

 

 日本のデザイン界をけん引するアートディレクターの浅葉克己さん(78)、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さん(53)による「ふるさとポスター教室」が23日、釜石市大町の情報交流センター・釜石PITで開かれた。2人は地元高校生らが描いた釜石の魅力を発信するポスターを講評したほか、それぞれが手がける仕事などについて語り、多くの人々に影響力を与える創作の魅力を伝えた。

 

 同教室は、一般社団法人チームスマイル(東京都渋谷区)が行う東日本大震災復興支援活動「“わたしの夢”応援プロジェクト」の一環で企画。釜石市内の高校や一般から事前に公募した作品を浅葉さんと佐藤さんが講評する貴重な機会が設けられた。

 

 ポスター作品はB3版、「釜石の魅力を市外に訴求する」「“釜石”の文字を使い、自由なキャッチコピーを考案して盛り込む」などの条件で募集。釜石高から15点、釜石商工高から10点、一般から3点の作品が寄せられ、2人が全28点について出品者を前に講評やアドバイスを行った。

 

 銀賞、金賞として各14点を選出。金賞作品は、一般客も入れた会場内で公開講評が行われた。出品者が作成意図を説明。各作品には虎舞、釜石大観音、SL銀河、サケやアユ、ハマユリなど、釜石を代表するさまざまなモチーフが描かれ、独創的なロゴデザインとともに個々の感性が光った。2人は作者の視点や構図、デザイン性、色使いなどについてコメント。金賞作品の中からグランプリなど3点を選んだ。

 

 「グランプリ」に輝いたのは、釜石高2年の髙木悠さんの作品。海や山の自然、大漁旗がはためく船、ラグビー、食など数多くの釜石の自慢を、波をイメージした「かまいし」のロゴと合わせ、バランス良い構図で仕上げた。浅葉さんは「すごく丁寧で絵がうまい」と絶賛。佐藤さんは見応えのある完成度の高さを示し、「アイデアがあっても表現し切れなければ思いは伝わらない。やり切ると自分の考えもまとまり、人前できちんとコンセプトを説明できるようになる。これはどんな仕事でも大事なこと」と話した。

 

 髙木さんは「夢のお2人から評価され、自信がついた。とてもうれしい。自分自身も釜石の魅力を再発見できた。将来はグラフィックデザイナーになりたい」と希望を膨らませた。

 

「グランプリ」を受賞した髙木悠さん(釜石高2年)の作品

「グランプリ」を受賞した髙木悠さん(釜石高2年)の作品

 

 「浅葉克己賞」を受賞した釜石商工高2年の藤井隆稀君は、全応募者の中で唯一、モノクロ作品を出品。大観音をバックにそびえ立つガントリークレーン、世界遺産の橋野鉄鉱山・高炉跡などを黒の濃淡で描いた。「まだ実感がない」と受賞の驚きにとまどう藤井君。「得意分野で勝負しようと思い、鉛筆画にした。講評で指導されたように、今後は苦手な“色”にも挑戦し、作品の幅を広げたい」と意欲を見せた。

 

「浅葉克己賞」を受賞した藤井隆稀君

「浅葉克己賞」を受賞した藤井隆稀君(釜石商工高2年)の作品

 

 「佐藤可士和賞」は曳(ひ)き船まつりの虎舞を題材にした釜石商工高3年の會田紫月さんが受賞。虎頭が海上から見上げる構図の迫力や独自の視点で捉えた顔のフォルム、全体の色構成などデザイン的に上手にまとめられている点が評価された。

 

「佐藤可士和賞」を受賞した會田紫月さん(釜石商工高3年)の作品

「佐藤可士和賞」を受賞した會田紫月さん(釜石商工高3年)の作品

 

 浅葉さんは有名企業の広告作品を数多く手がけ、紫綬褒章なども受章。津波で大きな被害を受けた鵜住居町根浜海岸に建立された「津波記憶石」のデザインも行った。佐藤さんは衣料ブランドやコンビニ、美術館などのロゴデザインに加え、幼稚園や地方の特産品のトータルデザインも行い、国内外に活躍の場を広げる。この日は2人のトークショーもあり、約80人が楽しんだ。

 

 各界の著名人が東北被災地の子どもたちや若者の夢を応援する同プロジェクトは今回で15回目。釜石では2016年の布袋寅泰さん、川淵三郎さん、17年の倍賞千恵子さん、熊本マリさんに続き5回目のイベント開催となった。

 

(復興釜石新聞 2018年6月27日発行 第701号より)

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「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

 

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業 in 鉄歴

 

特別企画展 近代製鉄発祥の地 橋野鉄鉱山を知ろう!

 

平成30年7月8日は、国内では19番目、県内では平泉の文化遺産に続いて2番目の世界遺産である橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産一覧表に登録された日です。今回、世界遺産登録3周年を記念して、特別企画展を開催します。

 

展示内容

橋野鉄鉱山の世界遺産登録までの経緯や発掘調査資料などを展示

期間

平成30年7月4日(水)~16日(月・祝)

場所

釜石市立 鉄の歴史館 2階 会議室

問い合わせ

鉄の歴史館 ☎0193-24-2211

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 世界遺産課
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-8846 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/kanko/detail/1219695_2430.html
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「水のいのち」を演奏する混声部門の合唱講習会参加者

音楽一家 辻ファミリーが釜石へ、TETTOで祝意の熱演〜復興支援コンサート、全国の歌う仲間のエール届ける

「水のいのち」を演奏する混声部門の合唱講習会参加者

「水のいのち」を演奏する混声部門の合唱講習会参加者

 

 音楽一家として全国的に知られる「辻ファミリー」を釜石に迎えた復興支援コンサート「歌おう!共に!㏌かまいし」は2日、釜石市民ホールTETTOで開かれた。県内外から合唱愛好者ら約160人が参加。丁寧なコーラス指導やコンサートでの熱演を通じ、釜石の復興に心から応援する辻ファミリーの思いを受け取った。

 

 釜石市合唱協会(菊池征毅会長)が組織する実行委員会が主催。テノール歌手で全日本合唱指揮者協会副理事長の辻秀幸さん、佐竹由美さん(ソプラノ歌手)夫妻、秀幸さんの弟でテノール歌手・指揮者の辻裕久さん、なかにしあかねさん(作曲家・ピアニスト)夫妻が来演した。

 

 午前中は混声、女声のパート別で合唱講習に取り組んだ。混声部門は釜石とゆかりのある作曲家、髙田三郎の「水のいのち」を題材に秀幸さんが指導。女声部門は、なかにしさんが作曲した「悲しみの意味」を祐久さんが指揮。なかにしさん自らピアノ伴奏を担当し、曲に込めた思いを伝えた。

 

 コンサートの前半で、講習参加者が成果を披露。このあと辻ファミリーが独唱やデュエット、コミカルな動きを加えたオペラなど多彩なプログラムで観客を楽しませた。市民ホール完成への祝意を込め、即興で「tetto tetto」のフレーズを加えた曲も。遊び心たっぷりの粋なサービスが、客席を埋めた市民を喜ばせた。

 

市民ホール完成に祝意の歌声を届ける辻ファミリー

市民ホール完成に祝意の歌声を届ける辻ファミリー

 

 辻ファミリーは東日本大震災後、盛岡市、大船渡市、宮古市でそれぞれ復興支援の合唱講習会・コンサートを開催。市民ホールの完成を待って、釜石で実現した。

 

 コンサートは、震災で被災した地域の合唱活動に特化して支援する一般社団法人Harmony for JAPANが支援。“舞台回し”を担ったなかにしさんは「壁がウエーブした感じの新ホールは、響きがとてもすばらしい」と好感を示した上で、「コンサートを通じて全国の歌う仲間の支えを感じてもらえれば」と願った。

 

(復興釜石新聞 2018年6月9日発行 第696号より)

 

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親子は珍しさを満喫、高齢者は懐かしさと共に田植え

世代間交流促す田植え体験、唐丹・平田・釜石公民館が合同で〜豊作に期待ふくらませ、子どもら60人参加

親子は珍しさを満喫、高齢者は懐かしさと共に田植え

親子は珍しさを満喫、高齢者は懐かしさと共に田植え

 

 唐丹、平田、釜石の釜石市内3公民館合同の田植え体験会は27日、唐丹町川目の水田で行われた。地元住民や市内の子どもら60人が参加。初夏を思わせる、さわやかな好天の下、素足の子どもらが家族とともに田植えを楽しんだ。

 

 地域の農家が広さ約450平方メートルの休耕田を体験のために提供。世代間交流を狙いとする唐丹公民館の「とうに寺子屋教室」に2公民館が応援、広域的な事業とした。JAいわて花巻釜石支店も農業をアピールするとともに、若手職員の農業体験、地域との交流を図る機会として参加させ、苗(いわてっこ)や昼食を提供。唐丹町の営農組合、農家組合は田の整備、土づくりなどの準備、当日の実技指導で協力した。

 

 片岸川沿いの田んぼに約30人が横一列に並び、目印の付いたロープを追う形で苗を植えた。素足の子どもは微妙な泥の感触に笑顔を弾けさせ、大人やお年寄りは長靴の“抜き差し”に四苦八苦した。

 

 去年の体験会にも参加したという川原悠翔君(唐丹小5年)は「うまく植えられたと思う。イネがしっかり育つといい。刈り取りもしたい。田んぼの中はムニョムニョして変な感じだったけど、楽しかった」と満足そう。

 

 地元で生まれた木村ヨミ子さん(78)は「田植えは60年ぶりですが、体が覚えていた。昔は田植えすると、田の神様の祝いだといって、アズキ入りの大きな大きなおにぎりを持たされた。秋には、植えた米の味見をしたい」と語った。

 

 この日の「田の神様の祝い」はノリおにぎり、お茶と、地元の農協女性部員らが作り慣れた豚汁。参加者は水田周辺の草地や川の土手に腰を下ろし、“遠足気分”で昼食を味わった。

 

 今後、公民館職員や地元農家が水田を管理し、子どもは水田と周辺の生物観察、稲刈りを行う。唐丹公民館は秋に、参加者による収穫祭も計画する。農協職員は「このブランド米は早生、耐冷、多収穫種。もし豊作なら、社会福祉活動に分けてもらえるかもしれない」と期待する。

 

(復興釜石新聞 2018年5月30日発行 第693号より)

 

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やさしい笑みの村田選手を囲んで「はい、チーズ」。子どもたちは笑顔を広げた

ミドル級王者 世界の村田選手、約束の再訪〜鵜住居小児童と交流、ベルト披露 挑戦する大切さを伝える

やさしい笑みの村田選手を囲んで「はい、チーズ」。子どもたちは笑顔を広げた

やさしい笑みの村田選手を囲んで「はい、チーズ」。子どもたちは笑顔を広げた

 

 初防衛を果たしたばかりの世界ボクシング協会(WBA)ミドル級王者で2012年ロンドン五輪金メダルの村田諒太選手(32)=帝拳=が23日、鵜住居小(中軽米利夫校長、児童138人)を訪れ、運動会の練習をしていた児童と交流。光り輝くチャンピオンベルトを披露し、子どもたちに諦めずに挑戦する大切さを伝えた。

 

 村田選手は奈良市出身。中学生でボクシングに出会い、高校、大学と国内トップの座を占めた。東洋大在学中の04年に全日本選手権で初優勝。08年に同大に就職し、選手活動を継続。全日本選手権で09年から3連覇を達成。円熟ぶりはロンドン五輪の金メダルで証明された。

 

 13年にプロに転向し、17年10月に世界王座を獲得。五輪金メダルとプロの世界王座獲得という、国内史上初の快挙を果たした。今年4月、初防衛に成功。日本選手が同級の世界王座防御を果たすのも初めてだという。

 

 村田選手が釜石を訪れるのは今回で3回目となる。1回目は後援会岩手会員の菊池紫登美さん(58)=橋野町=の手紙がきっかけで、12年12月に仮設校舎だった同校を訪問。金メダルを披露し、被災地を元気づけた。2回目は14年6月で、「また来るね」と約束したことを守るため来釜。栗林小で市内の小中学生らと交流した。

 

村田選手(右)のチャンピオンベルトを手に笑顔を見せる児童

村田選手(右)のチャンピオンベルトを手に笑顔を見せる児童

 

 「世界チャンピオンになってまたベルトを見せに来るから」。ミドル級王者となり、ベルトを守った村田選手。子どもたちとの約束を果たすため、再び釜石にやって来た。

 

 この日、全校児童が校庭で運動会の総練習をしているところに村田選手が登場。「子どものころを思い出し、元気になる」と、児童らに交じって玉入れなどを楽しんだ。

 

 昼食後は教室で児童と交流した。ベルトやメダルを手にした児童はその重みや輝きを体感。写真を撮ったり握手したり、爽やかな笑顔が光る世界チャンピオンとの触れ合いに、金野琥珀君(2年)は「かっこいい。僕も大人になったヒーローになる」と目を輝かせた。

 

 児童から「どうしたら強くなれるの?」と聞かれた村田選手は「教えてくれる人(先生)の言うことをよく聞くことが大切」と強調。毎日の練習も大事で、「強くなりたかったら練習しないといけない。みんなが勉強するのと一緒。やれることを一生懸命やれば強くなるし、道も開ける」と力を込めた。

 

 夢をかなえる方法について、スポーツ界で活躍している人たちに共通するのは「負けず嫌い」と指摘した。「苦しい時も諦めなかったから今の自分がいる。しんどい中にも何か楽しみがあり、楽しくなると好きになる。それがチャンス。チャレンジしたら最後まで諦めない気持ちを持って」と助言。人との競争は重要でなく、「大事なのは自分の成長。懸命に取り組めることを見つけ、自分として成長できるよう頑張ってほしい」とエールを送った。

 

 川﨑拓真君(5年)は「テレビで見ている人が来てくれてうれしい」と感激。走ることなどが苦手だというが、「悔しくても諦めず頑張りたい。いろんなことを勉強して知って、自分だけの夢を選んでいけたら」とパワーをもらった様子だった。

 

 菊池さんによると、今回の訪問を前に村田選手から復興の進み具合についての問い合わせがあった。被災地に寄せる思い、子どもたちとのつながりを大切にする気持ちを感じ、「(村田選手は)優しさにあふれている。熱い信念を持った人だからこそチャンピオンなんだと実感。来てもらって、まちも楽しくなる」と感謝した。

 

 村田選手は今秋に2回目の防衛戦を予定している。「勝って」。今度は児童らが鵜住居からパワーを送ることを約束した。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

 

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威厳を漂わせ、古来の所作で歩む侍役

さくら祭り、唐丹に春〜大名行列 華やかに、時代絵巻 勇壮に

威厳を漂わせ、古来の所作で歩む侍役

威厳を漂わせ、古来の所作で歩む侍役

 

 釜石市唐丹町で3年に一度行われる天照御祖神社(河東直江宮司)式年大祭「釜石さくら祭り」(川原清文大祭執行委員長、木村嘉人実行委員長)は4月29日、好天の下で華やかに繰り広げられた。すでに桜は散ってしまったものの、沿道には主催者発表で約1万6千人が詰めかけ、大名行列の時代絵巻と勇壮華麗な郷土芸能を楽しんだ。

 

 大名行列には7地域の住民ら約650人が参加。「金紋先箱」、ひげ奴(やっこ)の先導で悠然と進み、郷土芸能は太鼓や笛、衣装もあでやかに演じた。

 

 最高気温28・2度と真夏並みの暑さの中、観客は熱演する多くの子どもに拍手を送った。美声自慢のひげの先箱は「あれはどこへとなー」「唐丹いいとこなー」の決まり文句を唱えながら行進。本郷の並木では「葉桜もいいもんだなー」「あれは美人だなー」とアドリブを加え、沿道の観衆を沸かせた。

 

美声と言葉で行列の進行を周囲に知らせる「奴さん」も花形

美声と言葉で行列の進行を周囲に知らせる「奴さん」も花形

 

 折り返し点の「御旅所」は、新しい唐丹漁港(本郷)の広場に設けられた。岸壁には満艦飾の漁船が並び、華やぎを加えた。用意した弁当を広げ、久しぶりに会う知人とコップを傾ける家族もあった。

 

 津波で唐丹町荒川の家が流され、片岸に新築した小川原テルさん(91)は「きょうは子や孫の家族12人が集まった。秋田(県)から嫁に来て、宵宮で踊ったこともある。昔から比べると人は少ないが、子どもたちも一生懸命でかわいい」と目を細めた。

 

 荒川の熊野権現御神楽で小頭を振って喝采を浴びたのは盛岡市の黄川田宗幸ちゃん(4)。祖父雲南幹夫さん(66)、父泰幸さん(40)もあきれるほどの熱中ぶりだった。宗幸ちゃんは「神楽が大好き。楽しかった。また出たい」と、やる気満々だ。

 

3基のみこしは、時に猛然と駆け出した

3基のみこしは、時に猛然と駆け出した

 

 震災以降、初めてさくら祭りに登場した小白浜の伊勢太神楽と虎舞。太神楽のおかめ(女形)を“サブ”で演じた唐丹中1年の佐々木悠斗君(12)は「中腰での踊りは疲れた。着物は乱れるし、うまくいかない。でも、続けたい」と意欲を見せた。

 

 片岸の常龍山御神楽で子鶏を担った唐丹小6年の大坂凜さん(11)は「踊りは覚えていたけど、暑く、歩く距離も伸びたので疲れました。でもがんばりました」と汗をぬぐった。

 

子ども、若手のがんばりが祭りを支えた

子ども、若手のがんばりが祭りを支えた

 

 唐丹小、唐丹中の教職員も行列に加わった。中学校で理科を担当する鈴木健久教諭(46)は「朝4時半に起き、駆け付けた。生徒の表情も新鮮だ」と満足そうだった。

 

 行列とともに歩いた野田武則市長は「子どもたちのエネルギーを感じた。郷土芸能を伝承し、唐丹を元気にしてほしい」と激励した。

 

(復興釜石新聞 2018年5月2日発行 第686号より)

 

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金メダルに触って笑顔を見せる児童

金メダリスト 三ケ田さんとスポーツ交流〜ストリートラグビーを楽しく、栗林小の児童とパス交換

ラグビー教室に参加した三ケ田礼一さん(右)。パス回しなどで児童と交流した

ラグビー教室に参加した三ケ田礼一さん(右)。パス回しなどで児童と交流した

 

 栗林小(佐藤勉校長、児童43人)で23日、来年に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催にちなんだストリートラグビー教室と、アルベールビル冬季五輪のノルディック複合団体で金メダルを獲得した三ケ田礼一さん(51)=県スポーツ振興課=による講演会が開かれた。スポーツを通じた子どもたちの健全育成、ラグビーへの理解を深めW杯への機運を高めるのを目的に、地元の任意団体「エンジョイライフ」(中島俊介代表)と釜石青年会議所(佐々木雅広理事長)が主催した。

 

エンジョイライフ、釜石青年会議所主催

 

 ストリートラグビーは誰でも気軽に体験できるよう、ルールを簡単にした競技。タックルではなく体にタッチして止めるなど、子どもをはじめ幅広い世代が競技の特性を感じつつ、安全に楽しめる。教室は校庭で開かれ、3~6年生約30人が参加。新日鉄釜石ラグビー部OBで釜石シーウェイブス(SW)RFCでもプレーした篠原洋介さん(40)と吉田一行さん(41)が指導した。

 

 児童らはパス回しなどで楕円(だえん)のボールに親しんだ。小笠原暖人(はると)君(6年)は「みんなで一緒にやるのが楽しい」とにっこり。体を動かすのが大好きな小笠原早紀さん(3年)は「試合を見に行きたい」と地元開催のW杯に期待を膨らませた。

 

 篠原さんは「W杯に関わるイベントが増えてくると思うので、顔を出しボールに触れて楽しさを体感してほしい」と期待。仲間の動きをしっかり見ること、声を出して伝え合うことなど、普段の生活にも生かせるラグビーのポイントをアドバイスした。

 

「夢に向かって」三ケ田さん講演 挑戦、努力重ねオリンピック出場

 

 「夢に向かって」と題した三ケ田さんの講演には全校児童が耳を傾けた。幼いころからスキーに親しんでいた三ケ田さんは小学5年生の時にあこがれの金メダリストと出会ったことで、夢は「オリンピック選手」になったという。中学時代はいい結果を残せなかったが、高校に進学し、「スクワットを毎日1千回」と自分の意思で設定した練習をやり続け、高校2年のインターハイで優勝。「あきらめず続けたことが精神的な強さ、いい結果につながった」と振り返った。

 

金メダルに触って笑顔を見せる児童

金メダルに触って笑顔を見せる児童

 

 アルベール五輪への4枚の切符を5人で争うことになった時、「4番目に入ればいい」との気持ちの切り替えが夢の実現につながった。「夢は挑戦と努力という事前準備によってかなえられる。かなえるためには何かしなければいけない」と三ケ田さん。特別なことをするのでなく、普段の生活習慣をしっかり行って誰よりも「なりたい」と強い気持ちを持ち続け、普段の練習を一生懸命やり続けることの大切さを強調した。

 

 三ケ田さんの夢の実現には15年かかった。「みんなにも金メダルを取るチャンスはある。自分なりの目標とする金メダルをもらえるよう頑張れ」とエール。世界で活躍するスポーツ選手に共通するのは「笑顔」と指摘し、「笑顔は自分に力を与えてくれるものであり、周りに元気を与えるもの。みんなも笑顔を忘れず生きてほしい」と願った。

 

 児童会長の佐々木健心君(6年)は「笑顔を忘れず夢に向かって進んでいきたい」と感謝。今年は水泳を頑張って市内1番を目指し、将来は医療・福祉関係の仕事をしたいと夢を膨らませていた。

 

(復興釜石新聞 2018年4月28日発行 第685号より)

 

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男子生徒と軽やかに跳ね上がるTETSUYAさん(右)

EXILE サプライズ ダンス指導、釜石東中生と「ライジング・サン」〜8月新スタジアムで披露、ラグビーW杯へ

EXILEの2人を囲んで「東中イエーイ」と笑顔を広げる生徒たち

EXILEの2人を囲んで「東中イエーイ」と笑顔を広げる生徒たち

 

 来年のラグビーワールドカップ(W杯)に向け釜石市鵜住居町で整備が進む「釜石鵜住居復興スタジアム」(仮称)で8月に行われるオープニングイベントを盛り上げるプロジェクトが24日、釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)で始動した。元気なダンスでW杯を盛り上げる――。そんな生徒たちをサポートしようと、人気ダンス・ボーカルグループEXILE(エグザイル)のUSA(ウサ)さんとTETSUYA(テツヤ)さんが同校をサプライズ訪問。大喜びの生徒らにダンスを指導した。生徒はこれから約3カ月間、インストラクターの訪問指導や体育の授業で練習に取り組み、8月のイベントで踊る。

 

 EXILEメンバーが東日本大震災被災地を回り、子どもたちに元気と夢を届ける「ダンスで日本を元気に!夢の課外授業」の一環。新スタジアムのこけら落としとなる8月19日のイベントで同校生徒たちと一緒にパフォーマンスを披露する。

 

 24日、体育祭に向けて「東中ソーラン」の練習を終えた全校生徒の前に、EXILEの2人がサプライズで登場した。驚きの声を上げる生徒たちに、佐々木校長が種明かし。「みんな、新しいスタジアムでライジング・サンを踊れー!踊るぞー!」と気勢を上げた。

 

 復興支援曲として制作されたEXILEの「Rising Sun」に合わせたダンスパフォーマンス。2人は生徒たちの間に入って振り付けを指導。EXILEのメンバーでも難しいというステップに苦戦する生徒たちに、踊って見せながらアドバイスをした。

 

 ダンスレッスンの後には、2人を囲んでトークセッションも行われた。

 

男子生徒と軽やかに跳ね上がるTETSUYAさん(右)

男子生徒と軽やかに跳ね上がるTETSUYAさん(右)

 

 三浦花音(かのん)さん(1年)は「テレビでしか見たことのない人が突然来てびっくり。本物は迫力があってかっこいい。ダンスはすごく難しいし不安だけど頑張りたい」、小笠原羽美佳(うみか)さん(3年)は「努力しないとできない踊り。練習に励む」と気合十分。中澤天馬君(2年)は「新しくできるスタジアムは地域の誇りになると思う。本番は集まった人が喜ぶような踊りにしたい」、高清水享妥(きょうた)君(3年)は「夢のような時間を過ごせた。本番で全国の人に釜石が元気だと伝えられるよう特訓したい」と声を弾ませた。

 

 「スタジアムで一緒に踊るのを楽しみにしている」と生徒たちに呼び掛けたUSAさん。「振り付けを覚えるのは難しいが、できた時の気持ち良さ、一つの曲で全員とつながれた時の感動はすごい。みんなで踊れるよう頑張ろう」と励ました。

 

 TETSUYAさんは「ダンスと向き合い練習してもらえれば絶対できる。大事なのは途中であきらめないこと」と強調。「震災でつらい思い、いろんな経験をしたまちには葛藤が混在していると思う。そこに復興のシンボル的存在になるスタジアムができる。世界中の人たちに日本はこんなに元気になったんだということを伝えなければ。まちを盛り上げるべく、気持ちを込めて一緒に頑張りたい」と力を込めた。

 

 同プロジェクトは、人材育成に関連した事業を展開する二十一世紀倶楽部(東京)と、EXILEが所属する芸能事務所LDH JAPANなどによる震災の復興支援事業。EXILEメンバーが学校を訪問してダンスを指導し、イベントなどで発表している。12年に始まり、釜石市の大平中など、これまでに3千人超が参加している。

 

野田市長(左)に意気込みを伝えたEXILEメンバーら

野田市長(左)に意気込みを伝えたEXILEメンバーら

 

 USAさん、TETSUYAさん、主催する二十一世紀倶楽部の一木広治事務局長らは同校訪問を前に、釜石市役所の野田武則市長を訪ね、「たくさんの笑顔が生まれるようにみんなと一緒に作り上げていきたい」などと同プロジェクトへの思いを伝えた。

 

 野田市長は「子どもたちがたくましく人生を頑張れるような励ましになる」と力添えに感謝。「W杯開催が決まり、ラグビーのまち釜石のレガシーを次の世代につなげる、大切で大きな機会をもらった。子どもたちと一緒になって元気な釜石を発信してほしい」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2018年4月28日発行 第685号より)

 

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悲惨な思い出をしぼり出すように語る佐野さん

佐野さん、悲惨な艦砲被災語り継ぐ〜「翳った太陽を歌う会」体験を聞く

悲惨な思い出をしぼり出すように語る佐野さん

悲惨な思い出をしぼり出すように語る佐野さん(左)

 

 釜石市の合唱グループ「翳(かげ)った太陽を歌う会」(種市誓子会長、会員12人)は20日、「戦争体験者のお話を聞く会」を小川町の働く婦人の家で開き、米英軍による2度の釜石艦砲射撃(1945年)を経験した大町の佐野健司さん(86)が語る戦争の悲惨さに耳を傾けた。

 

 旧制釜石中学2年だった14歳の時に艦砲射撃を体験した佐野さん。2011年の東日本大震災でも、大町で経営していた酒店が津波で流失。仮設商店街での営業を経て15年に店舗を再建している。

 

 佐野さんは戦時中、父が営んでいた酒店で運送用に飼っていた馬を軍に供出したり、防空壕(ごう)を子どもたちが造らされたり、食料や物品が乏しく苦しい生活の様子を紹介した。空襲警報が頻繁に鳴るようになると、体が弱かった父親は一足早く甲子町松倉に疎開。7月14日の1回目の艦砲射撃や機銃掃射では、母親と酒店で働いていた少女と血まみれになりながら山側の薬師公園に避難した。「助かった。生きていた」。再会した時の父親の姿が忘れられないと言葉をかみしめた。

 

 「苦しい。助けて」。8月9日の2回目の艦砲射撃で、避難した防空壕ごと射撃されて犠牲になった人たちのうめき声。「もうやめて」。火葬の際でも灯火管制で水をかけて中断せざるを得なかった状況で聞かれた犠牲者遺族らの悲痛。「2回目は地獄だった」と声を詰まらせながら語り、平和を引き継ぐことの大切さを訴えた。

 

 同グループは2005年に活動を始め、今年で14年目。市戦没者追悼式での献歌、小学校でのコンサートなどを行ってきた。その中で歌い継いできた合唱組曲「翳った太陽」は、市内の戦争体験者2人の短歌や絵手紙を元に創作されたもの。会員のほとんどが戦争を体験していない世代で、曲への理解を深めようと同様の会をこれまで5回行い、体験者の心に触れながら戦争について学んできた。

 

 震災で一時活動が中断。戦争の愚かさ、平和の尊さを訴えるこの組曲も、戦災の生々しい惨状が震災直後の情景と重なり、歌えなくなった時期もあったという。

 

 計6曲の組曲は全17分。今年の市戦没者追悼式で釜石中生徒有志と組曲を合同合唱する予定で、練習を重ねている。

 

 佐野さんの話は、遺体を火葬した場面などが組曲と重なったという。定内町の佐野順子さん(65)は「言葉にならないつらさ、詞に込められた思いへの理解を深められた」、種市会長(70)は「今は何が起こるか分からない時代。若い人に伝えていかなければ」。同グループ講師で作曲者の最知節子さん(75)は「人間の尊厳を無視するように、青春に土足で踏み込んでくる戦争の悲惨さを多くの釜石の子どもたちに語り継いでいきたい」と思いを強めていた。

 

(復興釜石新聞 2018年4月25日発行 第684号より)

 

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インフォメーションセンターが開館し、見学者が訪れている世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡

世界遺産「橋野鉄鉱山」公開再開〜見学環境の充実図る 台風被災の県道開通を追い風に、旧釜石鉱山事務所も再開

インフォメーションセンターが開館し、見学者が訪れている世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡

インフォメーションセンターが開館し、見学者が訪れている世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡

 

 釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」は冬期休館を終え、4月1日から見学者の受け入れを再開した。世界遺産登録から4年目を迎える「橋野鉄鉱山」。市世界遺産課は、一昨年8月の台風10号による豪雨被害からの復旧を継続するとともに、デジタルコンテンツの制作など見学環境充実を図り、さらなる誘客につなげたいとしている。

 

 橋野鉄鉱山の一般公開エリア「高炉場跡」は、台風被害を受けた見学路の仮復旧などを終え、歩行環境が改善。隣接する二又沢川の護岸復旧工事のため、三番高炉北側の種焼場周辺は立ち入り禁止区域が設定されているが、通常見学にはほぼ支障がない状態となっている。

 

 センターの開館に合わせ、1日からさっそく見学者が訪問。寒さもあり、来訪者はまだ少なめだが、台風被害で全面通行止めが続いていた県道釜石遠野線笛吹峠が昨年12月に開通したことで、同道路を利用して訪れる人も見られる。

 

 7日に訪れた遠野市青笹町の菊池信也さん(49)、久美子さん(50)夫妻は「笛吹峠も開通したので、一度は来てみたいと思って」と初めて見学。高炉の石組みを眺め、「すごいよね。人の手で造られたんだもんね」と感心。「世界遺産になったことで遠野も釜石も(観光客増加など)互いに良い効果が生まれれば」と願った。

 

 同センターの昨年(4月1日~12月8日)の入館者数は9865人。前年に比べ約7300人減少しており、内陸からのアクセス路となる笛吹峠の通行止めが大きく影響したものと見られる。今年は峠開通による見学者数の回復に期待が寄せられる。

 

 同課によると本年度は、護岸工事のほか見学路の本格復旧を進める。遺跡関連では二番高炉周辺の試掘調査、同高炉の絵巻を基にした上部構造を含むAR(拡張現実)映像の制作などを計画する。映像は来年公開予定で、スマートフォンやタブレットで見ることができる。釜石で開かれるラグビーワールドカップ(W杯)を見据え、外国人観光客に対応する英語版パンフレットも作成する。

 

 同センターの今年の開館は12月9日まで(午前9時半~午後4時半)。期間中は無休で、入館料は無料。

 

 また、同じく冬期休館していた甲子町大橋の「旧釜石鉱山事務所」も1日から開館した。鉱山関連の資料に、今年は東北最古の地質図とされる「ナウマンの地質図」が常設展示に加わった。開館期間は12月9日まで(午前9時半~午後4時半、最終入館は午後4時)。火・水曜日は休館。入館料は大人300円、小・中学生100円。

 

(復興釜石新聞 2018年4月11日発行 第680号より)

 

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新生活に期待を膨らませる上中島こども園の新入園児ら

上中島こども園で開園・入園式〜多様な子育てバックアップ、72人が新しい環境で第一歩

新生活に期待を膨らませる上中島こども園の新入園児ら

新生活に期待を膨らませる上中島こども園の新入園児ら

 

 本年度から釜石市がスタートさせる上中島町の市立上中島こども園(藤原安園長)で7日、開園・入園式が行われた。老朽化により保育環境の改善が課題となっていた市立上中島保育所を移転整備したもので、この春、幼稚園と保育所機能を併せ持つ認定こども園に移行。新入園の14人を含む園児72人が新たな環境での第一歩を踏み出した。併設する障害児通所支援事業所「すくすく親子教室」や、同じ敷地に整備された上中島児童館と合わせ、利便性に富んだ包括的な保育環境の創出、多様な子育てニーズに応える施設として役割を発揮する。

 

幼保連携型認定こども園としてスタートした上中島こども園

幼保連携型認定こども園としてスタートした上中島こども園

 

 式には園児と保護者、市関係者ら約100人が出席。あいさつに立った野田武則市長は「市が運営し、地域の拠点として活用しようと設置。就学前教育、子育て支援の場として保護者ニーズに沿った運営をし、地域の重要で大切な拠点として活躍してほしい」と期待を述べた。

 

 藤原園長は「子どもたちの健やかな成長を見守る施設運営を目指す」と意欲を示し、子どもたちには「早寝、早起き、朝ごはんという約束事を守って通ってほしい」と呼び掛けた。

 

 新入園児は名前を呼ばれると、0~3歳児は父母の膝の上で、4歳児は手を挙げて「はーい」と返事した。在園児を代表して式に参加した年長児11人は新入園児に手作りの首飾りをプレゼント。園歌などを披露し、新しいお友達を歓迎した。

 

 進級した寄松廉君(5)は「友達がいっぱいになってうれしい。いっぱい遊ぶ」と笑顔を見せた。妹の未来ちゃん(1)、結ちゃん(生後2カ月)は新入園。父親の隆広さん(38)は「共働きなので3人一緒に預けることができ、安心感がある。明るく元気に育ってほしい」と見守った。

 

 同園の前身、上中島保育所は1975年に開所。施設の老朽化など保育環境の改善が課題となっており、市は就学前教育の拡充、子育て環境の充実を目的に、こども園や児童館などを備えた保育・幼児教育エリアの整備を決めた。上中島地区の仮設住宅や復興住宅などが隣接する場所で施設整備が進められ、今年1月に完成し、保育所として運営を開始。本年度から幼保連携型認定こども園に移行した。

 

(復興釜石新聞 2018年4月11日発行 第680号より)

 

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