タグ別アーカイブ: 文化・教育

渡辺さんの教えを胸にクリスマスソングを歌うノイホフクワィアーのメンバー

没後20年 渡辺顕麿さんをしのび、クリスマスに響く歌声~ノイホフクワィアー「継続は力」の教えかみしめ

渡辺さんの教えを胸にクリスマスソングを歌うノイホフクワィアーのメンバー

渡辺さんの教えを胸にクリスマスソングを歌うノイホフクワィアーのメンバー

 

 釜石市の「親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー」(小澤一郎代表)は23日、小佐野コミュニティ会館で第134回ファミリー・コンサート「ノイホフ・イン・パープルクリスマス2016」を開き、小学1年生から70代まで幅広い年代のメンバー11人がやさしい歌声を届けた。

 

 同団は39年の歴史を誇り、クリスマスコンサートは5月の「母の日コンサート」と並ぶ団の代名詞だった。団員の減少などでしばらく途絶えていたが、昨年十数年ぶりに復活。今年は同団創設者で1996年に他界した渡辺顕麿さん(宝樹寺元住職)の没後20年に当たり、「東洋のひびき・西洋のひびき」と題した1部で渡辺さんをしのんで仏教聖歌や典礼聖歌など9曲を厳かに響かせた。

 

 2部が始まる前、高尾緑香子さん(46)が渡辺さんとの思い出を紹介。メンバーは渡辺さんを親しみを込めて”おっきい先生”と呼び、「入団したてだろうが容赦なかったが、温かく大きかった。歌う喜び、楽しさ、希望といった先生の教えを引き継いでいきたい。その思いを共有する仲間、見守り応援してくれる方々と力を合わせ一歩ずつ進みたい。おっきい先生が指揮してくれると思って歌います」と思いを伝えた。

 

 2部では同団が古くから親しんできた合唱組曲「日記のうた」を披露した。関西弁の軽快な曲調が特徴で、喜びや悲しみの感情を声のトーンや振り付けで豊かに表現。歌詞の一部を「おっきいせんせ、どないしてるやろ?どんな顔してるやろ?」と歌い、渡辺さんに見守られ、教えが続いているとの思いを込めた。

 

 3部は「赤鼻のトナカイ」などおなじみのクリスマスソング、ウインターソング18曲を披露。客席が歌声を重ね、一緒にクリスマスを楽しむ場面もあった。

 

 渡辺さんの指導を受けたことがある甲子町の50代の女性は「知っている曲ばかりで懐かしい。(渡辺さんの)指導は人それぞれの可能性を引き出し、厳しいが愛情が伝わるものだった」と懐かしんだ。現在は指揮者として団を引っ張る小澤代表が団員だったころから交流もあり、「受け継いで何十年と続いているのがすごい。まさに継続は力なり。これからも親と子で声を合わせる貴重な時間を楽しんでほしい。歌声を聴いて癒やされ、ほっとする時間だった」と感激していた。

 

 入団して3年ほどになる石山友里花さん(甲子中1年)は「歌が大好き。年の幅が広い人と歌を楽しめるのが魅力。心に響くような歌を届け続けたい」と目を輝かせた。

 

 この日は渡辺さんが指導していた東京隅田川少年少女合唱隊のOGも加わり、演奏を盛り上げた。

 

(復興釜石新聞 2016年12月28日発行 第550号より)

 

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「食の匠」に認定された植田栄子さん

植田さん(箱崎町)食の匠に〜母親の味を伝承、ワカメの中芯を佃煮に

「食の匠」に認定された植田栄子さん

「食の匠」に認定された植田栄子さん

 

 郷土食などの優れた技術を持ち、伝承に取り組んでいる人を県が認定する「食の匠(たくみ)」に釜石市箱崎町の植田栄子さん(74)が認定され、16日、野田武則釜石市長に報告した。

 

 植田さんが伝承する料理は「わかめの中芯の佃(つくだ)煮」。塩蔵ワカメの茎の部分となる中芯をざらめや黒砂糖、玉砂糖、水あめ、しょうゆ、南蛮などで甘辛く煮たもので、甘さや色、保存期間などを考えながら工夫を重ねた。湯を使った塩抜きの方法、こだわった砂糖の使い方、火にかける時間の調整などが技の伝承ポイントとして評価されたという。

 

 「浜周辺では中芯を煮物、漬物にして味わっているが、あまり加工されず注目されて来なかった残り物だった」と植田さん。母親の味を長持ちさせようと考えながら作り上げた料理で、「地域に根付いた食材を一番おいしく食べられるようにと取り組んできた。年はとっても頑張らなきゃ。これからもいろんなことに挑戦したい」と意欲満々。今回の認定には、中芯の活用促進への期待感も込められている。

 

 佃煮を試食した野田市長は「おいしい。これはごはんが進む。釜石を代表する味になる。釜石の味に磨きをかけ、喜ばれる取り組みを続けてほしい」と期待した。

 

 植田さんは釜石東部漁協女性部副部長、箱崎町内会副会長として地域活動、郷土料理の普及活動に取り組んでいる。同女性部では植田さんの佃煮の商品化を検討。ボイルしたホタテなど5品を詰め合わせたものをお歳暮用に販売する準備を進めている。

 

 食の匠は、「岩手ならではの食文化」の発信と地域活性化を目的にしており、本年度は8人が認定された。釜石では7人目(うち1人は故人)。県内全体では259人が認定されている。

 

(復興釜石新聞 2016年12月21日発行 第548号より)

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6年ぶりに定期演奏会を開いた釜石混声合唱団

釜石混声合唱団、震災後初6年ぶりに定演〜渡辺さん(没後20年)の教えかみしめ

6年ぶりに定期演奏会を開いた釜石混声合唱団

6年ぶりに定期演奏会を開いた釜石混声合唱団

 

 「めぐりあいこんさあと」と題した釜石混声合唱団(菊池征毅団長)の定期演奏会は11月23日、釜石市大町の日本キリスト教団新生釜石教会で開かれた。東日本大震災後初の定演で、2010年に開いて以来6年ぶり。同団の元指揮者で団員が人生の師と仰ぐ渡辺顕麿さん(宝樹寺前住職、1931~96)の没後20周年にも当たり、合唱活動を通して多くの教えを受けたメンバーらは師の思いをあらためてかみしめていた。

 

 指揮者の小浜和子さんを含め15人が出演。4部構成で、鈴木憲夫作曲の「三つの聖母マリア賛歌」などに続き、東日本大震災復興祈念作品として作られた「永遠の花」などを演奏。最後のステージでは、渡辺さんと親交があった高田三郎作曲の合唱組曲「水のいのち」「心の四季」の中から5曲を抜粋して締めくくった。

 

 1960年代から活動を始めた同団は77年、東京荒川少年少女合唱隊の指揮者として全国に知られた渡辺さんの帰郷を機に再発足。高田三郎、清水脩、間宮芳生、石井歓、武満徹など名だたる作曲家の作品に次々と挑み、釜石の合唱活動をけん引してきた。

 

 しかし、転勤などで釜石を離れるメンバーが相次ぎ、20年以上前から毎月盛岡でも練習を行うなど、県内各地に散らばったメンバーが心をつなぎながら活動を維持してきた。

 

 定演を通して重ねた「めぐりあい」は33回目。今回は新たに外国人のメンバーが加わり、同団が長い時間をかけて醸成してきた濃密なハーモニーに新鮮な響きを加えた。

 

 アメリカ・オレゴン州出身で、今年4月から気仙地域の小中学校でALT(外国語指導助手)を務めるダニエル・クルーズさん(27)。日本語の歌詞もしっかりと理解し、全ステージの曲を歌いあげた。

 

 「すばらしいコーラスに加わることができ、とてもうれしい」とクルーズさん。環境の変化やメンバーの高齢化などで「今回の定演が最後になるかも」と覚悟していた菊池団長は、青い目の新しい力に後押しされ、「また、やれるかも」と思い直した。

 

(復興釜石新聞 2016年12月14日発行 第546号より)

 

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東日本大震災から6年連続で釜石高体育館を会場に開かれた「かまいしの第九」

かまいしの第九、140人の歌声が市民の活力へ〜釜石東中生は先輩の思いつなぐ

東日本大震災から6年連続で釜石高体育館を会場に開かれた「かまいしの第九」

東日本大震災から6年連続で釜石高体育館を会場に開かれた「かまいしの第九」

 

 東日本大震災から5年9カ月の11日、「かまいしの第九」が今年も師走のまちに希望の歌声を響かせた。実行委が主催する39回目の演奏会は、今回も甲子町松倉の釜石高体育館が会場。オーケストラと市民らの合唱が一体となって奏でるベートーベンの交響曲第9番が、復興への歩みを続ける市民らに明日への活力をもたらした。ちょうど40回目に当たる次回は、来年秋に完成予定の市民ホール(仮称)の「こけら落とし」として公演が予定されており、新たなステージへ期待が高まる。

 

 1部は03年から始まった市内の中学生による「オーケストラと歌おう」のコーナーで、今年は釜石東中(佐々木賢治校長)の全校生徒132人が出演した。震災のあった11年の演奏会で、当時の同校生が歌った「地球星歌」(作詩・作曲ミマス)、震災を経験した当時の東中生の思いをミマスさんが歌に仕上げた「いつかこの海をこえて」など3曲を美しいハーモニーで聞かせた。

 

精いっぱいの歌声を響かせた釜石東中の生徒ら

精いっぱいの歌声を響かせた釜石東中の生徒ら

 

 2部の「第九」は、東京周辺の演奏家で構成するウッドランドノ―ツと釜石市民吹奏楽団のメンバーなど45人がオーケストラを編成。3楽章から4人のソリストが登場し、最終の4楽章で、県内外から集まった幅広い年代の合唱団140人とともに「歓喜の歌」を壮大に響かせ、感動のクライマックスを迎えた。鳴りやまない拍手に応え、約550人の観客と出演者が「歓喜の歌」を大合唱。震災前の市民文化会館での演奏会に勝るとも劣らないステージを繰り広げた。

 

 東京都東村山市の小学校教諭眞鍋愛子さん(38)は、勤務校でミマツさんの曲に取り組んだのを機に釜石東中や「かまいしの第九」のことを知り、足を運んだ。震災に負けない姿を目の当たりにし、「歌う喜びや当たり前のことをできる大切さを感じさせてもらった。東中の合唱も素晴らしい。帰ったらクラスの子たちにも伝えたい」と話した。

 

 釜石東中3年の菅原常慈君は、先輩が残した曲について「今でも(震災の)つらい記憶がよみがえるが、『いつかこの海をこえる』という歌詞がとても心に響き、やはり次につないでいかなきゃと思う」と自分たちの使命を実感。今回、大舞台へ全校で取り組んだことに「いつも以上の力を発揮できて良かった」と充実感をにじませた。佐藤健副校長は「今までで一番の演奏。気持ちを作るのに苦労したが、生徒たちは精いっぱいの歌声を響かせてくれた」とたたえた。

 

 1977年の初演からフルート奏者で参加し、現在は指揮者を務める山﨑眞行さん。今年は、2度の大病を克服して臨んだ演奏会だった。「途中でへたばってしまいそうになったが、演奏家からエネルギーをもらい奮い立った」と、渾身(こんしん)のタクトで約2時間の演奏を見事に率いた。来年の市民ホール公演に向けて「40回を機に新しいホールで再出発することになるが、この5年間が本当の意味での”釜石の第九”を築いてくれた。苦難を乗り越える釜石人のパワーはすごい」と、本格的な音楽文化再興へ意欲をみなぎらせた。

 

(復興釜石新聞 2016年12月14日発行 第546号より)

 

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釜石情報交流センターオンライン学習サービス_サムネイル

iPadで学ぶオンライン学習サービス「Schoo×釜石情報交流センター」のご案内

釜石情報交流センターオンライン学習サービス

 

釜石情報交流センターオンライン学習サービス~仕事に生きる教養講座が学べるサービスSchooが無料で利用できます

 

釜石情報交流センターにて、教養やビジネススキルを磨くオンライン学習サービスが始まりました!視聴用の端末(iPad Pro 12インチ)も無料貸出していますので、気軽にご利用下さい。

 

学べる動画授業の例

 

本サービスで提供される動画授業の一例をご紹介します。業界大手企業や専門領域の第一線で活躍するプロフェッショナルによる授業と、「また見たくなる」学習体験により、継続的なスキルアップが図れます。

釜石情報交流センターオンライン学習サービス_プログラム

 

ご利用の流れ

 

本サービスは釜石情報交流センターのワークスペースを利用に付帯するサービスです。ワークスペース利用者に限り、学習サービス受講用のiPadを貸出します。
※ワークスペース利用には以下の使用料が別途発生します。
ワークスペース使用料:一般100円/1時間 高校生50円/1時間 (iPadの貸出は無料)

 

STEP1

  • 釡石情報交流センターの受付に申請書をご提出ください。
  • 申込受付後、登録したアドレス宛に招待メールをお送りします。
  • アカウント登録後、登録カードを発行してお渡しします。
  • STEP2

  • メール本文内のリンク先より、Schooアカウントの登録を完了して下さい。
  • ※既にSchooアカウントをお持ちの方は、紐付けが必要になります。
  • STEP3

  • 貸し出されたiPadを利用してオンライン学習サービスを利用します。
  • ホーム画面のアイコン、またはSafariのお気に入りよりログイン画面へお進みください。
  • 2 回目以降は,登録カードを受付までご提示頂くとサービスがご利用頂けます。
  •  

    講座視聴時の注意
    講座を視聴する際にはヘッドホンまたはイヤホンが必須になります。
    受付では販売商品(イヤホン100 円 税込)のみ扱っており、貸出は行っていませんのでご注意ください。

     
    利用終了後の流れ
    終了後は受付までお越しいただき、座席カードと貸出用iPad を返却してください。

     

    次回以降のお手続き
    初回受講時に登録カードを発行します。次回以降は、ワークスペースの利用申込時に登録カードをご提示下さい。

     

    「Schoo」とは

     

     株式会社Schoo が2012 年から運営している、Web 業界で働くためのオンライン動画学習サービス。プログラミングやWeb デザインといったIT 領域や、マーケティングやビジネス英語等、仕事に活きるさまざまな知識やスキルが身につくコンテンツを提供。ほぼ毎日生放送で授業を配信しており、受講生同士や先生とのコミュニケーションを通じて、双方向での学習体験ができます。

     

     これまでに公開した2,800 本以上の授業は録画授業として公開。録画授業見放題の「プレミアムプラン(980 円/月、iOS 及びAndroid アプリ1,080 円/月)といった有料プランや、プロの個別サポートで確かなスキル習得を目指す「マスタープラン(78,000 円~)を提供。

     

     また法人向けプレミアムサービスとして「ビジネスプラン」、「マスタープランfor Business」を提供しています。現在の会員数は約25 万人(2016 年11 月末時点)。
    Web業界で働くためのオンライン動画学習サービス – Schoo(スクー)

     

    お問い合わせ先

    釜石まちづくり株式会社
    電話: 0193-22-3607

    練習から本番まで出演者が心を一つに取り組んだ演奏会

    波を乗り越え50回目の演奏会〜釜石市民吹奏楽団、観客と感動のステージ共有

     練習から本番まで出演者が心を一つに取り組んだ演奏会

    練習から本番まで出演者が心を一つに取り組んだ演奏会

     

     釜石市民吹奏楽団(村井大司団長)の第50回定期演奏会(市民芸術文化祭参加)は11月27日、釜石中体育館で開かれた。毎回、さまざまな趣向で吹奏楽の醍醐味(だいごみ)、心を震わせる音を届けてきた同演奏会。団員らはこれまで築いてきた釜石ブラスの誇りを胸に、感動の大演奏を繰り広げた。

     

     賛助出演を含む64人のメンバーが3部構成のステージを披露。1部は、今年の全日本吹奏楽コンクールの自由曲「リンコドンティプス~蒼き海の守り神」、同団が創立3年目に初めてコンクールに出場した時の自由曲で、現在放映中のテレビドラマ「カインとアベル」のオープニングにも使われている「交響曲第5番第4楽章」(ショスタコービッチ)などを演奏した。

     

     2部は4年目となった中学生との合同ステージ。今年も釜石中吹奏楽部が共演し、部員22人が団メンバーとの80人規模の大編成で演奏会を盛り上げた。3部は映画音楽やビートルズの名曲をさまざまな楽器のソロ、アンサンブルを織り交ぜ披露。吹奏楽ならではのアレンジが、聞き覚えのある曲に新たな世界観を広げた。

     
     
     アンコールを含め全12曲を演奏。観客から、素晴らしい演奏をたたえ感謝する大きな拍手が沸き起こった。宮古吹奏楽団で活動する盛合沙弥華さん(30)は「すごく上手ですよね。釜石は人数が多く大曲にも挑戦されている。私たちも来週、演奏会なので頑張りたい」と力をもらっていた。

     

     今回は2、3部の指揮を客員指揮者の細川正一さん(釜石高教諭、吹奏楽部顧問)が務めた。細川さんは山田高に赴任した20代のころ、吹奏楽部員を連れて度々釜石を訪れ、当時、東北大会出場を重ねていた市吹に指導を仰いだ。「一中、釜南高、市吹、新日鉄釜石と当時の釜石吹奏楽は東北、全国大会出場で盛り上がっていた。音楽への情熱に自分も圧倒された」と振り返り、「そんな中で活躍してきた団員が今もいて、その精神が脈々と受け継がれている。指揮をさせていただけて光栄」と胸を熱くした。

     

     釜石市民吹奏楽団は1978年に創立。初めての演奏会は80年3月に行った産声コンサートで、82年からは年2回の演奏会を開催し、96年まで14年間継続した。その後も年1回の演奏会を続け、今回が通算50回目となった。第1回の時は大学生だったという村井団長は「全ての演奏会がうまくいったわけではない。いろいろな波を乗り越えて来られたのは、団員の気力があったからこそ」と、積み重ねた三十数年に思いをはせた。

     

     同団は震災の津波で活動拠点だった市民文化会館が使えなくなり、被災後は旧大松小の音楽室を借りて練習を続けている。若者や30年ぶりの復帰者など新団員も徐々に増え、今年のコンクールでは11年ぶりに県大会で金賞を受賞。東北大会出場には届かなかったが、技術力アップにつながる確かな前進を見せた。村井団長は「少子化で学校吹奏楽部も少なくなっているが、音楽をやりたい子どもたちの希望になれたら」と今後の団活動へ気持ちを高めた。

     

    (復興釜石新聞 2016年12月3日発行 第543号より)

     

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    三浦命助について学んだ「橋野寿友の会」の地域歴史学習会

    三浦命助の偉業学ぶ、橋野町老人クラブ〜血縁の克俊さん「命を大切に」と読み解く

    三浦命助について学んだ「橋野寿友の会」の地域歴史学習会

    三浦命助について学んだ「橋野寿友の会」の地域歴史学習会

     

     釜石市橋野町の老人クラブ、橋野寿友の会(中館義元会長、54人)は20日、栗橋公民館と共催し、交通安全講話と地域歴史学習会を橋野ふれあいセンターで開いた。会員ら約30人が参加し、交通事故や高齢者を狙った詐欺被害の防止、郷土の偉人について理解を深めた。

     

     釜石警察署橋野駐在所の三浦哲所長が、今年同署管内で発生している交通事故や全国的に多発している高齢者の事故について説明。「頭の感覚は若いころと同じでも、体力の衰えで機敏な動作ができないこともある」とし、歩行者は道路の横断時に左右をしっかり確認すること、夕方・夜間の外出時は明るい色の服や夜光反射材を身に着けることなど、自己防衛策を促した。

     

     また、高齢ドライバーがブレーキとアクセルを踏み間違えて店舗などに突っ込む事故が連日報道されていることに触れ、「体力や感覚の変化を感じたら、免許の自主返納を決断することも大事。車は自分の足として生活に密着しているだろうが、命と引き換えならばバスやタクシーの利用を考えては」と話した。

     

     被害が後を絶たない振り込め詐欺のさまざまな手口にも言及。「最近はインターネットがらみで若い人でも被害に遭うケースが目立つ。不審な電話には、名前や住所などの個人情報を絶対に教えてはいけない。必ず家族や警察に相談を」と呼び掛けた。

     

     歴史学習の講師を務めたのは、同公民館主査で、江戸時代末期に起こった「三閉伊一揆」の指導者の一人、三浦命助(1820―64)の血縁にあたる三浦克俊さん(栗林町在住)で、命助の生涯について紹介した。

     

     三浦命助は栗林村(現栗林町)に生まれた。17歳の時、大飢饉(ききん)のため秋田藩の院内銀山に出稼ぎに行き、帰村後の20歳から、農業のほか、内陸と沿岸を行き来し農・海産物を売る荷駄商いをして生計を立てていた。

     

     日本最大級とされる三閉伊一揆は、南部藩の過酷な課税に苦しむ三陸沿岸の農漁民が47年、53年の2度にわたり起こした。34歳の命助は1万6千人以上が参加した2度目の一揆に加わり、仙台藩に越訴した際、45人の代表者の一人として藩と交渉。願書・談判の一切を担い、免税など要求のほとんどを認められた。

     

     一揆の終息後、栗林に戻ったが、村内の騒動で身の危険を感じ、仙台領へ出奔。出家し寺の住職も務めた後、京都に上り二条家の家来になった。57年、南部藩領に足を踏み入れたところを脱藩の罪で捕らえられ、盛岡の牢(ろう)に送られた。そのまま6年8カ月も勾留され、牢死。45歳でその生涯を閉じた。

     

     上栗林の命助の生家跡前には、没後100年にあたり1963年に地域住民が建立した顕彰碑があり、裏山には命助の墓がある。講演した三浦克俊さん宅(屋号「東」)は、命助に関する資料を保管しており、この日は、命助が獄中で書き家族に送った「獄中記」や一揆を禁じる藩の立て札など貴重な資料を見せながら、命助の生きざまを伝えた。

     

     克俊さんは、獄中記に記されている「人間と田畑をくらぶれば、人間は三千年に一度咲くうどん華なり―」という有名な一節に触れ、命を大切にする社会への願い、自分亡き後の家族を案じる気持ちを読み解いた。会員らは、橋野村からも133人が参加したとされる一揆で命助が果たした役割や意義を学び、地域住民を救った偉業に思いをはせた。

     

    (復興釜石新聞 2016年11月26日発行 第541号より)

     

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    悲しみ、哀惜の気持ちを抱えながら、互いの思いが支え合う日常が明るく、淡々と、描かれた

    釜石市民劇場「心の復興」へ30回公演〜「小さな幸せの花」被災者と周囲の人々を温かく

    悲しみ、哀惜の気持ちを抱えながら、互いの思いが支え合う日常が明るく、淡々と、描かれた

    悲しみ、哀惜の気持ちを抱えながら、互いの思いが支え合う日常が明るく、淡々と、描かれた

     

     釜石市民劇場の第30回記念公演、「小さな幸せの花PARTⅡ~Believe~」(同実行委員会主催)は13日、鈴子町のシープラザ遊で上演された。子どもからお年寄りまで幅広い世代の市民が出演。東日本大震災の津波で大切な人を失った悲しみや哀惜の思いが潜む家族の「心の復興」が描かれた。客席には約200人が詰めかけ、悲しみをこらえ淡々と暮らす家族や、その家族を見守る周辺の人々の物語に温かい拍手を送った。

     

     震災で2年間中断したあと、再開してから4回目の公演。照明、音響、舞台装置などに大きな制約を受けながら、関係者と観客、市民の熱意で続いてきた。今回も、JR釜石駅に出入りする列車の汽笛も効果音として生かしながら、2幕9場、約2時間の舞台が繰り広げられた。

     

     ストーリーは前回と同じ家族を中心に展開。アキは震災で夫が行方不明となり、小学生の娘3人を育てながら生活に奮闘している。義父母、弟、夫の同僚や近所の人たちが、母子の日常生活を彩る。夫(父親)への思慕が家族の日々の底流にあり、周囲は静かに見守る。

     

     どこか憎めない空き巣が夫の形見のカメラを盗んだり、アキが体調を崩して入院する”事件”はあるものの、周囲の人々との交流で家族の心に大きな衝撃は残らない。子どもの正直な恋心や、それを好意的に見守る大人たちの気配りも織り交ぜ、「よくある日常」が描かれた。

     

     震災の被災を免れ大町の市営アパートに住む多田和子さん(75)は、初めて市民劇場に足を運んだ。「みんな(演技が)上手。とくに子どもは良かった。震災の物語ではあるが、明るく表現していて楽しめた」と感想を語った。

     

     「学校劇で『グスコーブドリの伝記』(宮沢賢治原作)のネリ役をした」という白山小6年の山陰愛珠さんは、友達などが舞台で演じる姿を初めて目にし、「みんな上手だった。私もやってみたい気持ちになった」と刺激を受けていた。

     

     空き巣役を演じた鬼頭美憲さん(42)=千鳥町=は、佑太君(釜石中2年)と親子仲良く舞台に立った。釜石の初代市長、小野寺有一の物語を描いた第13回公演「やぁやぁ市長」から足掛け18年目の参加。「初めてセリフのない役で、イメージづくりに戸惑った。共演者との出入りのタイミングに気を付けた。仲間の反応が良かったのでホッとした」と満足そうな表情を浮かべた。

     

     主人公のサキ役を演じた小笠原景子さん(32)は「今回は、自分で演出し、場をつくれるキャストが多かった。子どもの集中力には感心した。市民劇場はプロの舞台とは違う。見てくれる多くの人が、自分も参加できるかもしれないと感じてもらえば」と願った。

     

     舞台の幕が開く前に平田裕彌実行委員長と野田武則市長があいさつ。野田市長は「市民劇場はスタッフと観客の市民が一体になって盛り上がる。来年冬に完成を見込む市民ホール(仮称)で上演されるよう願う」と激励した。

     

    (復興釜石新聞 2016年11月16日発行 第538号より)

     

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    釜石市 海の写真・絵画コンクールの受賞作品

    釜石市 海の写真・絵画コンクールの受賞作品について

    10月28日まで募集を行っておりました、釜石市 海の写真・絵画コンクールについて

     

    11月11日、海の日実行委員会による審査会を行い、次のとおり受賞作品を決定いたしましたのでお知らせいたします。

     

    写真の部(出展作品9点)

     

    【金賞】 木村 明子さん出展 「浜の笑顔」

     

    【金賞】 木村 明子さん出展 「浜の笑顔」

     
     

    【銀賞】 伊東 光さん出展 「虎が舞う、海の守護神、例大祭」

     

    【銀賞】 伊東 光さん出展 「虎が舞う、海の守護神、例大祭」

     
     

    【銅賞】 中村 幸一さん出展 「永久(とわ)に穏やかに」

     

    【銅賞】 中村 幸一さん出展 「永久(とわ)に穏やかに」

     
     

    【銅賞】 佐藤 憲弘さん出展 「浜の朝」

     

    【銅賞】 佐藤 憲弘さん出展 「浜の朝」

     
     

    絵画の部(出展作品22点)

     

    【金賞】 石黒 亜希さん出展 「海のいきもの」

     

    【金賞】 石黒 亜希さん出展 「海のいきもの」

     
     

    【銀賞】 堀内 優護さん出展 「平田の海」

     

    【銀賞】 堀内 優護さん出展 「平田の海」

     
     

    【銅賞】 石川 夕茜さん出展 「海のいきもの」

     

    【銅賞】 石川 夕茜さん出展 「海のいきもの」

     
     

    【銅賞】 岡田 ゆのさん出展 「海のいきもの」

     

    【銅賞】 岡田 ゆのさん出展 「海のいきもの」

     

    審査委員(順不同)

    • 釜石市海の日実行委員会会長
    • 釜石海上保安部
    • 東北運輸局岩手運輸支局
    • 国土交通省東北地方整備局釜石港湾事務所
    • 沿岸広域振興局水産部
    • 釜石観光物産協会
    • 釜石港湾振興協議会

     

    残念ながら受賞を逃した作品も釜石の海の特徴を的確にとらえたものや、書き方、撮り方にこだわりのある作品が多く出展されました。出展頂きました皆様、ありがとうございました。

     

    受賞された方には、改めて表彰式のご案内をさせていただきます。また、出展頂いた作品はシープラザ釜石にて展示会を予定しております。表彰式及び展示会の日程については、市役所ホームページにてお知らせの予定ですので、今しばらくお待ちください。

    この記事に関するお問い合わせ
    釜石市 産業振興部 水産課
    〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
    電話:0193-22-2111 / メール
    元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/kurasu/suisangyo/detail/1205493_2289.html
    釜石市

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    それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

    出来栄え最高「虎舞」生きる勇気に〜絆強める素晴らしい思い出、桜木町仮設団地の住民ら制作

    苦労を重ね、ついに完成させた虎頭を鑑賞しながら会話を弾ませる桜木町仮設団地の住民ら

    苦労を重ね、ついに完成させた虎頭を鑑賞しながら会話を弾ませる桜木町仮設団地の住民ら

     

     津波で失った「虎頭」を自分の手で作り上げ、後世につなぐ宝にしよう――。釜石市の桜木町仮設団地(約40世帯)の住民約10人は、今年夏前から小ぶりの虎頭の制作に挑戦。市内の「虎舞」団体に虎頭を提供していた同団地の住民から教えてもらい、このほどやっと完成した。作られた15の虎頭は、初めてとは思えない出来栄え。生命力みなぎる表情が見る者の心を鼓舞し、困難を乗り越える勇気を与えてくれる。

     

     航海の安全や火伏せを祈願し、江戸時代から舞われてきた釜石の虎舞。漁業をなりわいとする沿岸部の家々では、子や孫のために虎頭を所有する家も多かったが、5年前の東日本大震災で襲った津波は、そうした家族の思い入れが詰まった品も一瞬にして奪い去った。

     

     桜木町仮設団地での虎頭制作は、以前からものづくりの活動をしてきた同団地自治会の男性グループ「益荒雄(ますらお)の会」が中心となって企画。「津波で流された虎頭を再び手元に置きたい」と願う住民の声を受け、長年、虎頭制作を手がけてきた同じ団地住民の三浦義公さん(故人)に相談を持ちかけたのがきっかけだった。

     

     震災前、嬉石町に暮らしていた三浦さんは鉄鋼業を営むかたわら、約30年にわたり虎舞で使う虎頭を制作。尾崎町(台村)虎舞などに提供してきた。同会から話を聞いた三浦さんは、忙しい仕事の合間をぬって作り方を実演。手順を学んだ住民らは、三浦さんが作った見本を参考に試行錯誤を重ねながら制作に励んだ。

     

     木材や厚紙で土台を作り、紙粘土で肉付け。工作用のペイント材で色を塗り仕上げた。目はクリスマスツリー用の球飾り、ひげはテグス糸を活用。鋭い歯は木を削って形作った。身近で安価な材料を使い、アイデアを駆使して虎の顔に変身させた技術は見事。仕事の都合で、三浦さんから直接教わる機会は少なかったが、住民同士が協力し合い、立派な作品を完成させた。

     

     三浦さんは病気のため今年6月、58歳の若さで急逝。残念ながら完成品を目にすることはできなかったが、「きっと『よく頑張った』と言ってくれるだろう」と住民らは話す。

     

    それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

    それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

     

     5日夜、完成した虎頭を団地の談話室に持ち寄った制作メンバーは、互いの努力をたたえながら作品を鑑賞した。土手日出子さん(64)は「こうして並べてみると圧巻。一つ一つ表情も違って素晴らしい。この仮設での思い出、記念になる」と大喜び。森古春雄さん(65)はインターネットの画像で虎の顔立ちも研究し、黄と白色の2頭を制作。「生気にあふれた虎を作るうちに自分自身も生き生きしてくるのを感じた。みんな良い出来栄え。最高だね」と顔をほころばせた。

     

     津波で多くを失いながらも、新たに出会った仲間と心に残る日々を刻み、生かされた実感をかみしめる住民ら。同団地自治会副会長で、「益荒雄の会」発起人でもある菊池政廣さん(75)は「ここまでできるとは思わなかった。釜石人にとって虎は愛着心を感じるモチーフ。今回、虎頭を作ることによって、住民の団結心や絆も一層強くなったと思う」と実感を込めた。

     

    (復興釜石新聞 2016年11月12日発行 第537号より)

     

    復興釜石新聞

    復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

    復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

    問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

    郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』

    郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』開催について

     郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』

     

    釜石市郷土資料館では、企画展第4弾として 『鐡と釜石 偉人伝~鉄づくりに貢献した人々~』を開催します。

     

    12月1日は鉄の記念日、そして1日から8日は鉄の週間です。この鉄の週間に合わせて、釜石と鉄づくりの歴史を支えた偉人たちをパネルや資料などで紹介します。

     

    開催期間

    平成28年11月23日(水・祝日)~12月25日(日)

    開館時間

    9時30分~16時30分(火曜日休館)

    入場料

    無料

    問い合せ

    釜石市郷土資料館
    Tel 0193-22-2046(FAX同)

     

    この記事に関するお問い合わせ
    釜石市 教育委員会 生涯学習文化課 文化係
    〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町15番2号
    電話:0193-22-8835 / 0193-22-3633 / メール
    元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/rekishi/bunnkazai/detail/1204846_2460.html
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    「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

    心の復興、住みよい釜石へ 文化のまちを創ろう〜「次世代を育てよう」をスローガンに、第46回市民芸術文化祭

    釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

    釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

     

     「ひらめく芸術、きらめく文化のまち釜石を創ろう」をテーマに、釜石市の芸術の秋を彩る第46回釜石市民芸術文化祭は4日から6日まで鈴子町のシープラザ遊、シープラザ釜石で開かれた。市内最大の文化の祭典は震災以降、作品展示とステージ発表を同じフロアで開催し多彩な芸術の魅力に触れる機会を提供するほか、呈茶のサービスや体験コーナーを設置するなど市民に癒やしや温かさ、豊かさも提供。今年は「こども芸術文化の鑑賞~次世代を担う若い息吹に触れよう・育てよう」をスローガンにした子どもたちの活動に目を向けた展示・発表があり、刺激を受けた参加団体は創作活動へたゆまぬ努力を重ねるとともに、芸術文化の持つ力を次世代につなぐ意欲を新たにしていた。

     

     4日の開会式で野田武則市長は「釜石市民歌の歌詞にある『文化の薫り 燦(さん)然と 鉄の都~』を理解し、まちづくりに取り組むには一人一人の努力が必要」と協力を期待。市芸術文化協会の岩切潤会長は「まちの復興は着実に進んでいるが、心の復興には根強い芸術文化活動が大事。次世代につなぎ、心豊かな住み良いまちになれば」と願った。開幕を祝ってテープカット。釜石、八雲吟詠会の会員が詩吟、参加者全員で「釜石芸術文化協会の歌」を歌った後、ステージではMIA&リアスバンドがジャズなど演奏を披露した。

     

    市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

    市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

     

     会場では3日間にわたり19団体が作品を公開。華道、絵画、写真、書道などさまざまな分野の力作が並んだ。リボンフラワー石垣教室(石垣邦子代表)の展示には、平田地区の仮設住宅や復興住宅で暮らす人たちも出展。仮設団地で手芸のサロン活動を行っている山口和子さん(69)は「(津波で)何もかも流されたが、作ることと仲間に力、元気をもらっている。出展は1年の集大成で思い出になる。また来年頑張る」と意欲を話した。釜石茶道協会は呈茶で、文化の秋を楽しむ来場者に心休まるひとときを提供した。

     

    「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

    「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

     

     特別企画展示は「こども芸術文化」がテーマ。釜石草月会(村上マサ子会長)主催の華道こども教室は受講する小学生12人の生け花作品を並べた。釜石小と双葉小3年生は空き缶を使った一輪挿しにメッセージを添えた作品を展示。華やかな黄色い花形が特徴のラン科植物オンシジュームを「ドレスを着た少女のよう」などと表現したのは菊池彩芭(いろは)さん(釜石)。母親の美佳さん(35)は「そんなふうに感じることができるようになったのかと驚き、うれしかった。芸術に触れるっていいね。このまま成長していってほしい」と彩芭さんに温かなまなざしを向けた。

     

    メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

    メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

     

     芸文祭発表部門は9月から市内外の会場で始まり、12月まで続く。展示部門と日程を同じくしたのは11団体。絵画や写真、リメークした布作品などの展示のほか、琴と書のパフォーマンス、子どもを対象にした書とのふれあい体験も行った「ふるさと復興支援グループ釜南44」は今年、芸文協に新たに加盟した。

     

    釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

    釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

     

     釜石南高の1969(昭和44)年卒業生でつくる同グループは昨年のこの時期に釜石で初めてのイベントを開催。今回は仙台、秋田、東京など各地と岩手県内から30人以上が集まり、郷土愛を色濃くにじませた作品展示、取り組みを展開した。

     

    「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

    「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

     

     同グループの白田正行代表(66)=仙台市=は「遠く離れても古里を忘れない。外に出た人は年を重ねるごとに古里を思う気持ちが強く、深くなる。『釜石』というキーワードには人を集める力があり、古里を振り返りながら独自の活動もしていきたい」と話した。

     

    (復興釜石新聞 2016年11月9日発行 第536号より)

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