タグ別アーカイブ: 文化・教育

それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

出来栄え最高「虎舞」生きる勇気に〜絆強める素晴らしい思い出、桜木町仮設団地の住民ら制作

苦労を重ね、ついに完成させた虎頭を鑑賞しながら会話を弾ませる桜木町仮設団地の住民ら

苦労を重ね、ついに完成させた虎頭を鑑賞しながら会話を弾ませる桜木町仮設団地の住民ら

 

 津波で失った「虎頭」を自分の手で作り上げ、後世につなぐ宝にしよう――。釜石市の桜木町仮設団地(約40世帯)の住民約10人は、今年夏前から小ぶりの虎頭の制作に挑戦。市内の「虎舞」団体に虎頭を提供していた同団地の住民から教えてもらい、このほどやっと完成した。作られた15の虎頭は、初めてとは思えない出来栄え。生命力みなぎる表情が見る者の心を鼓舞し、困難を乗り越える勇気を与えてくれる。

 

 航海の安全や火伏せを祈願し、江戸時代から舞われてきた釜石の虎舞。漁業をなりわいとする沿岸部の家々では、子や孫のために虎頭を所有する家も多かったが、5年前の東日本大震災で襲った津波は、そうした家族の思い入れが詰まった品も一瞬にして奪い去った。

 

 桜木町仮設団地での虎頭制作は、以前からものづくりの活動をしてきた同団地自治会の男性グループ「益荒雄(ますらお)の会」が中心となって企画。「津波で流された虎頭を再び手元に置きたい」と願う住民の声を受け、長年、虎頭制作を手がけてきた同じ団地住民の三浦義公さん(故人)に相談を持ちかけたのがきっかけだった。

 

 震災前、嬉石町に暮らしていた三浦さんは鉄鋼業を営むかたわら、約30年にわたり虎舞で使う虎頭を制作。尾崎町(台村)虎舞などに提供してきた。同会から話を聞いた三浦さんは、忙しい仕事の合間をぬって作り方を実演。手順を学んだ住民らは、三浦さんが作った見本を参考に試行錯誤を重ねながら制作に励んだ。

 

 木材や厚紙で土台を作り、紙粘土で肉付け。工作用のペイント材で色を塗り仕上げた。目はクリスマスツリー用の球飾り、ひげはテグス糸を活用。鋭い歯は木を削って形作った。身近で安価な材料を使い、アイデアを駆使して虎の顔に変身させた技術は見事。仕事の都合で、三浦さんから直接教わる機会は少なかったが、住民同士が協力し合い、立派な作品を完成させた。

 

 三浦さんは病気のため今年6月、58歳の若さで急逝。残念ながら完成品を目にすることはできなかったが、「きっと『よく頑張った』と言ってくれるだろう」と住民らは話す。

 

それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

それぞれに個性が光る住民手作りの虎頭

 

 5日夜、完成した虎頭を団地の談話室に持ち寄った制作メンバーは、互いの努力をたたえながら作品を鑑賞した。土手日出子さん(64)は「こうして並べてみると圧巻。一つ一つ表情も違って素晴らしい。この仮設での思い出、記念になる」と大喜び。森古春雄さん(65)はインターネットの画像で虎の顔立ちも研究し、黄と白色の2頭を制作。「生気にあふれた虎を作るうちに自分自身も生き生きしてくるのを感じた。みんな良い出来栄え。最高だね」と顔をほころばせた。

 

 津波で多くを失いながらも、新たに出会った仲間と心に残る日々を刻み、生かされた実感をかみしめる住民ら。同団地自治会副会長で、「益荒雄の会」発起人でもある菊池政廣さん(75)は「ここまでできるとは思わなかった。釜石人にとって虎は愛着心を感じるモチーフ。今回、虎頭を作ることによって、住民の団結心や絆も一層強くなったと思う」と実感を込めた。

 

(復興釜石新聞 2016年11月12日発行 第537号より)

 

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郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』

郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』開催について

 郷土資料館企画展第4弾 『鐡と釜石・偉人伝』

 

釜石市郷土資料館では、企画展第4弾として 『鐡と釜石 偉人伝~鉄づくりに貢献した人々~』を開催します。

 

12月1日は鉄の記念日、そして1日から8日は鉄の週間です。この鉄の週間に合わせて、釜石と鉄づくりの歴史を支えた偉人たちをパネルや資料などで紹介します。

 

開催期間

平成28年11月23日(水・祝日)~12月25日(日)

開館時間

9時30分~16時30分(火曜日休館)

入場料

無料

問い合せ

釜石市郷土資料館
Tel 0193-22-2046(FAX同)

 

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 教育委員会 生涯学習文化課 文化係
〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町15番2号
電話:0193-22-8835 / 0193-22-3633 / メール
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「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

心の復興、住みよい釜石へ 文化のまちを創ろう〜「次世代を育てよう」をスローガンに、第46回市民芸術文化祭

釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

釜石草友会の展示では山や野原で育った四季折々の草花の素朴さに来場者もほっこり

 

 「ひらめく芸術、きらめく文化のまち釜石を創ろう」をテーマに、釜石市の芸術の秋を彩る第46回釜石市民芸術文化祭は4日から6日まで鈴子町のシープラザ遊、シープラザ釜石で開かれた。市内最大の文化の祭典は震災以降、作品展示とステージ発表を同じフロアで開催し多彩な芸術の魅力に触れる機会を提供するほか、呈茶のサービスや体験コーナーを設置するなど市民に癒やしや温かさ、豊かさも提供。今年は「こども芸術文化の鑑賞~次世代を担う若い息吹に触れよう・育てよう」をスローガンにした子どもたちの活動に目を向けた展示・発表があり、刺激を受けた参加団体は創作活動へたゆまぬ努力を重ねるとともに、芸術文化の持つ力を次世代につなぐ意欲を新たにしていた。

 

 4日の開会式で野田武則市長は「釜石市民歌の歌詞にある『文化の薫り 燦(さん)然と 鉄の都~』を理解し、まちづくりに取り組むには一人一人の努力が必要」と協力を期待。市芸術文化協会の岩切潤会長は「まちの復興は着実に進んでいるが、心の復興には根強い芸術文化活動が大事。次世代につなぎ、心豊かな住み良いまちになれば」と願った。開幕を祝ってテープカット。釜石、八雲吟詠会の会員が詩吟、参加者全員で「釜石芸術文化協会の歌」を歌った後、ステージではMIA&リアスバンドがジャズなど演奏を披露した。

 

市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

市民芸術文化祭の開幕を祝ってテープカットする関係者

 

 会場では3日間にわたり19団体が作品を公開。華道、絵画、写真、書道などさまざまな分野の力作が並んだ。リボンフラワー石垣教室(石垣邦子代表)の展示には、平田地区の仮設住宅や復興住宅で暮らす人たちも出展。仮設団地で手芸のサロン活動を行っている山口和子さん(69)は「(津波で)何もかも流されたが、作ることと仲間に力、元気をもらっている。出展は1年の集大成で思い出になる。また来年頑張る」と意欲を話した。釜石茶道協会は呈茶で、文化の秋を楽しむ来場者に心休まるひとときを提供した。

 

「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

「リボンフラワーで生活に張りを」。仮設住宅で暮らす人たちが作った作品も並んだ

 

 特別企画展示は「こども芸術文化」がテーマ。釜石草月会(村上マサ子会長)主催の華道こども教室は受講する小学生12人の生け花作品を並べた。釜石小と双葉小3年生は空き缶を使った一輪挿しにメッセージを添えた作品を展示。華やかな黄色い花形が特徴のラン科植物オンシジュームを「ドレスを着た少女のよう」などと表現したのは菊池彩芭(いろは)さん(釜石)。母親の美佳さん(35)は「そんなふうに感じることができるようになったのかと驚き、うれしかった。芸術に触れるっていいね。このまま成長していってほしい」と彩芭さんに温かなまなざしを向けた。

 

メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

メッセージが添えられた一輪挿しの作品は児童の感性が光った

 

 芸文祭発表部門は9月から市内外の会場で始まり、12月まで続く。展示部門と日程を同じくしたのは11団体。絵画や写真、リメークした布作品などの展示のほか、琴と書のパフォーマンス、子どもを対象にした書とのふれあい体験も行った「ふるさと復興支援グループ釜南44」は今年、芸文協に新たに加盟した。

 

釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

釜石書道協会の会員がさまざまな書体で書いた個性豊かな作品に見入る来場者

 

 釜石南高の1969(昭和44)年卒業生でつくる同グループは昨年のこの時期に釜石で初めてのイベントを開催。今回は仙台、秋田、東京など各地と岩手県内から30人以上が集まり、郷土愛を色濃くにじませた作品展示、取り組みを展開した。

 

「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

「釜南44」による書とのふれあい体験に子どもたちは興味津々

 

 同グループの白田正行代表(66)=仙台市=は「遠く離れても古里を忘れない。外に出た人は年を重ねるごとに古里を思う気持ちが強く、深くなる。『釜石』というキーワードには人を集める力があり、古里を振り返りながら独自の活動もしていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年11月9日発行 第536号より)

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鉄の検定

第9回鉄の検定を開催します

鉄の検定

 

「第9回鉄の検定」を開催します。
第9回鉄の検定の参加者を募集します。

 

世界に誇る鉄の歴史を学んでみれば、郷土の魅力が見えてくる。誰でも気軽に参加できる釜石オリジナル検定を受けてみませんか?初めての人も常連さんもアイアンマスターを目指してチャレンジしてみよう!

 

日時

平成28年12月1日(木) 18時30分~

場所

釜石市教育センター 5階 岩手大学釜石教室

内容

釜石と鉄の歴史に関する問題 60分 80問 100点満点

参加料

無料

募集期間

平成28年11月25日(金) 17時まで

申込方法

生涯学習文化課(0193-22-8835)に電話でお申し込みください

表彰

平成29年1月14日(予定)
 

2級以上が対象で、認定証が贈られます。
1位から3位には表彰状と副賞が贈呈されます。
100点:アイアンマスター賞、90点以上:1級認定、80点以上:2級認定

 

※過去の問題を釜石市郷土資料館にて販売しています(1部100円)

この記事に関するお問い合わせ
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川淵三郎さん(前列中央)とサミットに参加した釜石、釜石商工高生ら

”キャプテン川淵”応援トーク〜「ラグビーのまち」釜石にエール

 川淵三郎さん(前列中央)とサミットに参加した釜石、釜石商工高生ら

川淵三郎さん(前列中央)とサミットに参加した釜石、釜石商工高生ら

 

 日本サッカー協会最高顧問で、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会評議員などを務める川淵三郎さん(79)と釜石市の高校生による「キャプテン・サミット」が23日、大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。エンターテインメントを通じた東日本大震災復興支援活動を続ける一般社団法人チームスマイル(東京都渋谷区)の「〝わたしの夢〟応援プロジェクト」の第6弾として開催。”キャプテン”の愛称で有名な川淵さんが高校生らとリーダーシップについて語り合った。

 

 同プロジェクトは、各界の著名人らが被災地の子どもや若者の夢の実現を応援する企画で、釜石では今年8月の布袋寅泰さん(ギタリスト)のトークショーに続く2回目のイベントとなった。

 

 川淵さんは、サッカーやバスケットボールのプロリーグ創設を成し遂げるなど日本スポーツ界を牽引(けんいん)する第一人者。始めに自身のサッカー人生を振り返りながら、高校生に向け没頭できるものを見つける大切さを説き、「自分がこれだと思うものを見つけるまでは三日坊主でも構わない。いろいろと挑戦する中で、本当にやりたいことが見つかる可能性がある」と助言。進みたい道が定まったら、「ビジョンを持ち、そのためにどう一生懸命働くかが成功への秘訣(ひけつ)。自分なりのビジョンを常に念頭に置き行動を」と呼び掛けた。

 

 続いて部活動などでリーダーを務める市内の高校生5人が、活動の様子を撮影した映像を見せながら、団体や個人の目標、目標達成のために取り組んでいること、課題などを説明。さまざまな競技団体で抜群の指導力を発揮してきた川淵さんに、リーダーとしての心構え、メンバーとの接し方など自分が抱える悩みを率直に質問した。

 

 「リーダーはしっかりした考え方のベースを持ち、それを相手に示せることが大事。一番、信頼を無くすのは頼りなさ。自分なりの自信を持った姿勢を見せていけばいい。そのために自分の実力をレベルアップする努力もするべき」と川淵さん。一方で、ストレスを抱え込まないように「自分の能力を超えるものについては深く考えない。無理だと割り切ることも必要」とアドバイスした。

 

 釜石高女子バスケットボール部部長の前川育緒佳さん(2年)は「練習は短時間に集中してやる、目標を高く持つなど川淵さんから学んだことを今後に生かしたい。互いに技術を向上し合える練習環境を作っていかなければ」、釜石商工高硬式野球部の青木優馬君(1年)は「川淵さんの言葉は説得力があり、リーダーの受け答えのポイントなどためになった。教わったことをノートに書き留め、部の中でもしっかり共有していきたい」と、3年生引退後のチーム作りへヒントを得ていた。

 

 川淵さんは来場者の質問にも答え、「3年後のラグビーW杯は新日鉄釜石の七連覇、まちぐるみでラグビーを応援していることを再び全国にアピールする機会になるだろう。”ラグビーのまち”の復権に市民が気概と自信を持って取り組み、W杯を成功させてもらえば。日本代表の試合が釜石で開催されれば、さらにインパクトがある」と期待を込めた。

 

(復興釜石新聞 2016年10月29日発行 第533号より)

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青葉通りの"啄木歌碑"の前で、上田初子さんから啄木の旅について話を聞く参加者

啄木さん、こんにちは 歌碑建立1周年を記念〜釜石とのつながり示す、歌人の足跡「かるた」でたどる

青葉通りの"啄木歌碑"の前で、上田初子さんから啄木の旅について話を聞く参加者

青葉通りの”啄木歌碑”の前で、上田初子さんから啄木の旅について話を聞く参加者

 

 岩手を代表する歌人石川啄木の歌碑が昨年10月、釜石市大町の青葉通りに建立されてから1周年を迎えるのを記念し、16日、「啄木さん、こんにちは!」と題した集いが青葉ビルで開かれた。歌碑を建立した大町の工藤英明さん(55)ら親族と支援者でつくる「啄木の足跡を後世に伝えよう会」が主催。市内の小学生など12人が、啄木の歌のかるたや言葉遊びを楽しみ、啄木の世界の一端に触れた。

 

 参加者は、啄木の短歌25首を集めたかるたに挑戦。言葉遊びでは、啄木の歌集「一握の砂」から抜粋した5音と7音の歌の一節を自由に組み合わせ、「五・七・五」の作品を作った。子どもたちは「初めて啄木のことを知った」「たくさん歌を作っているのが印象的だった」などと感想を話した。

 

 啄木の歌のかるたで、下の句の絵札取りに挑戦する子どもら

啄木の歌のかるたで、下の句の絵札取りに挑戦する子どもら

 

 青葉通りの歌碑は、啄木と釜石とのつながりを多くの人に知ってもらおうと建てられた。啄木は1900(明治33)年、中学の同級生と盛岡から一関まで南下し、三陸沿岸に出て、陸前高田から釜石まで北上する旅を行った。当時、釜石には、啄木のいとこの工藤大助さん(故人、英明さんの曽祖父)が医師として赴任しており、啄木は旅の終わりに大助さん宅に2週間ほど滞在した。その時の様子は、共に旅をした同級生の船越金五郎の日記に記されている。

 

 歌碑には、啄木が10(明治43)年に詠んだ短歌「ゆゑもなく海が見たくて海に来ぬ こころ傷みてたへがたき日に」のほか、釜石を訪れたことを示す船越の日記の一部も刻まれている。集いの参加者は歌碑の前で、大助さんの孫(英明さんの叔母)の上田初子さん(74)=一戸町在住=から、啄木らが9日間にわたる旅のほとんどを徒歩で移動したことなどを聞いた。

 

 国際啄木学会盛岡支部会員の照井モトさん(79)=甲子町=は「インドや台湾など海外でも啄木の研究が盛んで、学生の卒論テーマになるほど。世界から愛される啄木の歌碑がゆかりの地釜石に建ったのは、市民にとってもうれしいこと。もっと啄木を知る機会を設けなければ」と関心の広がりを期待。照井さんによると、釜石の啄木歌碑は全国で181番目。岩手県内には、これまでに125基の歌碑が建立されているという。

 

 「啄木に詳しい人たちから『やっと釜石も(歌碑が)できたね』と言われ、皆さんが待ち望んでいたのを実感する。1周年にあたり、子どもたちも貴重な経験ができた。市とも相談して、今後の生かし方を考えたい」と英明さん。

 

 釜石の歌碑は、旅行会社が企画する「啄木歌碑巡りツアー」に組み込まれたり、ホテルの観光案内パンフレットで紹介されるなど、観光資源としても注目され始めている。

 

(復興釜石新聞 2016年10月22日発行 第531号より)

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井上ひさしさんに関する資料の展示を開始したガバチョ・プロジェクト事務所で、山崎理事長(左)と井上副理事長

「井上ひさし記念館」建設へ、ガバチョプロジェクト〜母(マスさん)兄(滋さん)の手紙など公開、歌声広場もスタート

井上ひさしさんに関する資料の展示を開始したガバチョ・プロジェクト事務所で、山崎理事長(左)と井上副理事長

井上ひさしさんに関する資料の展示を開始したガバチョ・プロジェクト事務所で、山崎理事長(左)と井上副理事長

 

 釜石市にゆかりの深い小説家・脚本家、井上ひさしさん(1934~2010)に関する「井上ひさしファミリー記念館」の建設を目指すNPO法人ガバチョ・プロジェクト(山崎眞行理事長)は今月から、小佐野町の事務所で井上さんや母マスさん、兄滋さん(共に故人)の手紙など資料の定期展示を始めた。展示資料に囲まれながら毎月1回、井上さんファミリーや作品について語り合い、生演奏の伴奏で歌を楽しむ「歌声広場」も開始した。

 

 同法人は2012年10月に設立認定を受け、天神町の仮設商店街に事務所を開設。昨年7月、事務所を小佐野町1丁目、JR釜石線・小佐野駅向かいに新築した建物の1階に移した。ミニホールの形で、広さは約40平方メートル。ピアノがあり、テーブルも配置。壁面を展示スペースにした。

 

 新しい事務所では、音楽家として活動する山崎理事長の招きにより、第一線で活躍する演奏家などのコンサートや講演会を開催。記念館の開設に向け、釜石で暮らしていたマスさん、滋さんと交わした手紙、井上さんが仙台や東京で過ごした学生時代の生活から、文筆活動に入った初期までの文書資料、戯曲のポスター、写真などを展示している。

 

展示機能を備えた小佐野町のガバチョ・プロジェクト事務所

 

 マスさんは1991年5月に84歳で、滋さんは2007年8月に78歳で、井上さんは10年4月に75歳で亡くなった。同法人の井上淑子副理事長は滋さんの妻、井上さんの兄嫁にあたり、母マスさんの晩年は一緒に暮らした。「義母(はは)は、息子たちから届いた便りを数年後、まとめて返送していました。理由は不明ですが、そのおかげで資料に残すことができました」と淑子さん。

 

 資料には、井上さんが1953年、上智大学に入学した夏休みにマスさんの暮らす釜石に帰り、そのまま休学して2年半勤めた現在の国立釜石病院に提出した履歴書の下書きもある。自伝的青春小説「青葉繁れる」でも「履歴書の下書きを5枚書いた」と触れており、その1枚と推測される。

 

 仙台一高在学中、当時は山形県で暮らしていたマスさんに生活費の増額を求めた手紙は、国の省庁が財務省と折衝する予算要求文書を連想させる。書籍代や用紙代が数十円規模なのに、理詰めで大げさな言葉づかい。その手紙を読むマスさんの心中を想像させ、親子の心の通い合いをうかがわせる。

 

 滋さんは音楽家を志しながら、病気や稼業を継ぐために諦めた。ところが、井上さんの舞台作品「藪原検校」のポスターには「作曲/井上滋」とあり、ギターを演奏した。兄弟の温かい心のありようをしのばせる。

 

 同事務所の無料公開は毎週土曜日の午後1時から4時まで。歌声広場は入場料1千円(ドリンク付き)。毎月1回の開催で、11月5日と12月3日を予定する(いずれも午後1時から3時まで)。問い合わせはガバチョ・プロジェクト(電話0193・27・5044)へ。

 

(復興釜石新聞 2016年10月22日発行 第531号より)

関連情報 by 縁とらんす
NPO法人ガバチョ・プロジェクト
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表彰された11人の児童。「いずれも素晴らしい中身で甲乙つけがたい作品ばかりだった」と野田武則市長

思い描く未来のかまいし、環境絵日記11点入賞〜「大賞」に新沼哲舟君(釜小4年)、20日まで展示

表彰された11人の児童。「いずれも素晴らしい中身で甲乙つけがたい作品ばかりだった」と野田武則市長

表彰された11人の児童。「いずれも素晴らしい中身で甲乙つけがたい作品ばかりだった」と野田武則市長

 

 「わたしが想い描く未来のかまいし」をテーマに釜石市が募集した「環境絵日記」の表彰作品が決まり、12日、展示会場のイオンタウン釜石2階イベントスペースで表彰式が行われた。応募作品は20日まで展示される。

 

 市内の小学生を対象とした環境絵日記の募集は、2011年12月に内閣府から「環境未来都市」の認定を受けた同市が普及啓発を目的に実施。環境や福祉などをテーマに、自分たちが住むまちに期待(希望)する未来を絵と文章で表現してもらっている。

 

 3年目の今年は、4小学校から166点の応募があり、野田武則市長らによる最終審査で、表彰作品11点(大賞1、金賞5、銀賞5)が選ばれた。入賞者には野田市長から賞状が贈られた。

 

 「かまいし未来大賞」に輝いた釜石小4年の新沼哲舟君は、市民が出したごみの行方に着目し、沿岸南部クリーンセンターで働く人に話を聞いた。絵日記には「溶融炉で、ごみを高温で溶かして処理しているので、あまり灰が出ない。あとは道路用の砂に使ったり、鉄分も再利用していると教えてくれた。ごみもできるだけリサイクルされている。でも、普段の生活でごみを減らすことが大切」とつづり、牛乳パックや空き瓶などのリサイクルで地球が笑顔になっている絵を描いた。

 

 「これからはリサイクルをもっとして、いろいろなものに変えることが大切だと思う」と新沼君。震災で被災し仮設住宅に暮らしており、「今は復興途中だけど、未来の釜石は人口も増えてにぎやかなまちになってほしい」と願った。

 

小学生が思い描く釜石の未来が詰まった環境絵日記展

小学生が思い描く釜石の未来が詰まった環境絵日記展

 

 この他の入賞者の作品は、洋上風力発電などのクリーンエネルギーや豊かな自然に目を向けたもの、高齢者が住みよいまち、子どもの意見を取り入れるまちなど独自の視点が光った。市は優秀作品数点を、30日に横浜市で開かれる「環境未来都市・環境絵日記展2016」(横浜市資源リサイクル事業協同組合主催)に出品する予定。

 

 野田市長は「皆さんが絵日記に描いた夢に向かって歩んでほしい。自分たちの住むまち釜石をさらに住みよい、また、未来へ発信できるまちにしていただきたい」と期待を込めた。

 

 金、銀賞受賞者は次の通り。かっこ内は学校と学年。

 

【金賞】
白石愛莉(甲子4)、佐々木瑞希(小佐野3)、吉田光樹(同4)、前見皇雅(同5)、沖怜(同)
【銀賞】
矢浦望那(釜石4)、菊池悠里(甲子4)、野崎翔愛(同)、小原一輝(小佐野5)、佐藤穂波皇(同)

 

(復興釜石新聞 2016年10月15日発行 第529号より)

 

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第46回 釜石市民芸術文化祭

第46回 釜石市民芸術文化祭を開催します

第46回 釜石市民芸術文化祭

 

釜石市、釜石市教育委員会及び釜石市芸術文化協会では、「ひらめく芸術、きらめく文化のまち釜石を創ろう」をテーマに、第46回釜石市民芸術文化祭を開催いたします。

 

今年度は「こども芸術文化の鑑賞~次世代を担う若い息吹に触れよう・育てよう~」をスローガンに、書道、華道、絵画、水墨画、切り絵、押し花、リボンフラワー、山野草、皐月、切手、写真、ビデオ上映、茶道、合唱、三曲、民謡、唄と踊り、バレエ、詩吟、吹奏楽など、発表部門と展示部門がメーン会場となるシープラザ遊での開催となります。

 

また、メーンのシープラザ以外にも、9月から12月にかけて市内各所において各団体が発表、展示を行います。

 

震災後も絶えず芸術文化活動に勤しみ、多くの方々へ感動と癒しを提供した釜石市の芸術家の素晴らしいステージ・作品の数々をぜひご覧ください。

 

第46回 釜石市民芸術文化祭

 

1.主催:釜石市、釜石市教育委員会及び釜石市芸術文化協会
2.期間:平成28年9月から12月
3.発表部門参加団体:
岩手三曲協会釜石支部、岩手県民謡保存会釜石支部、釜石芸能連合会、釜石混声合唱団、山﨑音楽教室、八雲吟詠会、小柳玲子バレエ教室、釜石市合唱協会、釜石ユネスココーラス、釜石フィルハーモニック・ソサィェティ、平稀流糸扇会、琴城流大正琴白百合会、釜石吟詠会、釜石茶道協会、古川舞踊教室、親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー、(一社)岩手県ピアノ音楽協会釜石支部、釜石市民吹奏楽団、釜南44
4.展示部門参加団体:
美術集団サムディ45、ステンドグラス「BEHOLD」、釜石写遊会、(特財)日本原色押花福祉協会釜石支部、(公財)日本郵趣協会釜石支部、MOA美育ネットワーク釜石、釜石皐月愛好会、釜石草友会、リボンフラワー石垣教室、釜石草月会、彩美会、釜石ビデオクラブ、釜石書道協会、切り絵サークル「はまゆり」、池坊釜石会、水墨画遊心会、龍生派釜石支部、釜石市民絵画教室、釜石写光クラブ、釜南44

 

第46回 釜石市民芸術文化祭(メーン会場)

 

1.開催日時:平成28年11月4日(金)から6日(日)
・4日(金曜日)10:00から17:00
・オープニングセレモニー 13:00から
・5日(土曜日)9:00から17:00
・6日(日曜日)9:00から15:30
・エンディングセレモニー 15:00から
2.開催場所:シープラザ遊(大型テント)、シープラザ釜石
3.参加団体及びプログラムは後日掲載いたします
4.駐車場:シープラザの駐車台数(有料)には限りがありますので、公共交通機関のご利用をお願いいたします。

 

メーン会場以外での開催

日本郵趣協会釜石支部 岩手国体釜石開催記念切手展

1.主催:日本郵趣協会釜石支部
2.開催日:平成28年10月1日(土曜日)から3日(月曜日)
3.時間:午前9時から午後6時
4.場所:ジョイス釜石店 展示スペース
5.入場料:無料
6.問い合せ先:千坂(090-2605-3798)

美術集団サムディ45 第50回展

1.主催:美術集団サムディ45
2.開催日:平成28年10月7日(金曜日)から9日(日曜日)
3.時間:午前9時から午後6時(最終日は午後5時まで)
4.場所:青葉ビル 第1、2研修室
5.入場料:無料
6.問い合せ先:岩井(0193-22-3734)

ステンドグラス「BEHOLD」展示会

1.主催:ステンドグラス「BEHOLD」
2.開催日:平成28年10月22日(土曜日)
3.時間:午前10時30分から午後5時30分
4.場所:釜石情報交流センター2階
5.入場料:無料
6.問い合せ先:佐藤(0193-23-6341)

 

ステンドグラス「BEHOLD」展示会

 

終了したメーン会場以外での開催

第47回 ピアノコンサート(岩手県ピアノ音楽協会釜石支部)

※終了しました

 

1.主管:岩手県ピアノ音楽協会釜石支部
2.開催日:平成28年9月25日(日曜日)
3.開演:午後1時
4.場所:遠野市文化交流施設みやもりホール
(遠野市宮守町下宮守32-133-1)
5.入場料:無料
6.問い合せ先:大久保(0193-27-2229)

 

第47回 ピアノコンサート(岩手県ピアノ音楽協会釜石支部)

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 教育委員会 生涯学習文化課
〒026-0031 岩手県釜石市鈴子町15番2号
電話:0193-22-8835 / 0193-22-3633 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/bunka/detail/1195894_2462.html
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絵本にちなんだ劇を楽しむ子どもたち

サロンで絵本を身近に、盛岡市の3.11絵本プロジェクトいわて

絵本にちなんだ劇を楽しむ子どもたち

絵本にちなんだ劇を楽しむ子どもたち

 

 盛岡市の「3・11絵本プロジェクトいわて」(末盛千枝子代表)による出張絵本サロンは10日、釜石市甲子町の甲子子育て支援センターで開かれ、訪れた親子らは絵本の読み聞かせやクイズ、紙工作の遊びなどを楽しみながら絵本の世界を満喫した。

 

 おはなし会では、手遊び歌や「だるまさんが」など大型絵本の読み聞かせ、絵本「お月さまってどんなあじ」からヒントを得て製作されたパネルシアターなどを上演。絵本を飛び出し、劇として披露された「おおきなかぶ」では子どもたちも「うんとこしょ どっこいしょ」と掛け声を送り、最後に大きなかぶが抜けると笑顔を輝かせた。

 

 会場内には、紙でできた魚の釣りやミニ絵本づくりを楽しむコーナーが設けられたほか、絵本を読んで質問に答えるクイズラリーも行われた。小型の移動図書館車「えほんカー」も盛岡からやってきて絵本をプレゼント。親子らは本選びに夢中になっていた。

 

 甲東こども園に通う瀬戸莉帆ちゃん(4)は「絵本すき。ワニの話がおもしろかった」とにっこり。母親の由里香さん(29)は「ひらがなを覚え始めて絵本を読むのを楽しんでいるようだ。園以外の子どもたちとも触れ合えるいい機会になった」と見守った。

 

 3・11絵本プロジェクトいわては被災地の子どもたちに絵本を届ける取り組みとして立ち上がった。「絵本があって、ほっとできる場所」を提供しようと絵本サロンを盛岡で定期的に実施。その中で行う遊びをボランティアが考案し、子どもたちの反応も参考に改良し、被災地に出張して読み聞かせ団体にノウハウを伝えている。

 

 釜石市への支援は5千冊超の絵本の寄贈のほか、6台あるえほんカーの1台を市内の読み聞かせグループに贈っている。出張サロンの開催は初めて。同プロジェクトの赤沢千鶴事務局長は、多くの親子が思い思いに楽しむ様子に「これからも絵本を通した応援を続けていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年9月17日発行 第521号より)

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SSH委員会の液体窒素を使ったアイスクリーム作りに興味津々の小学生

釜高祭「新たな革命」をテーマに、SSHの企画も注目集める〜「センバツ初勝利」特別展示、釜石祥雲支援校は製品販売

SSH委員会の液体窒素を使ったアイスクリーム作りに興味津々の小学生

SSH委員会の液体窒素を使ったアイスクリーム作りに興味津々の小学生

 

 県立釜石高校(佐藤一也校長、全日制533人、定時制35人)の「釜高祭」は28日、一般公開された。学校統合で新たな歴史を重ねて9年目の同祭。今年のテーマに「Revolution~新たな革命~」を掲げ、一昨年の学校創立100周年から続く、生徒らの”さらに上へ”という意識がさまざまな企画に表れた。

 

 展示発表では、文科省の「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」指定校ならではの企画が注目を集めた。1年生は「統合科学」で取り組んだグループ単位の研究成果をポスターにまとめ、来場者に解説。味覚、睡眠、記憶など日常に関わるテーマのほか、「チョロギの効能と食べ方」「地震雲と地震の関係」「夢と感情の関係性」など生徒らの着眼点が光る研究が並び、来場者の興味をそそった。

 

 明るさが学習に与える影響を調べた佐々木祥太君(1年)は「今度は明るさの度合いを数段階に分けて実験してみたい。自分でテーマを見つけ調べる学習は難しいが面白い」と一歩進んだ研究に新たな意欲を示した。

 

 SSH委員会のメンバーはマイナス196度の液体窒素を使った実験を公開。材料を瞬間的に凍らせて作るアイスクリーム、凍ったテニスボールを床に落とすと茶わんのように砕け散る実演などで来場者を驚かせた。甲子小6年の藤井彩さん、鷹木寿菜さんは、滑らかな食感のアイスのおいしさに感激。「こういう実験ができる高校は楽しそう。いろいろ勉強になった」と目を輝かせた。

 

 同委員の平松孝基君(2年)は「釜高祭は委員会活動をアピールできる機会。自分自身も科学やロボットに興味があり、特殊な実験などができる委員会は魅力的」と喜ぶ。

 

 同校のSSH指定は2012年度から5年間で本年度が最終年度。理数科・SSH推進室副主任の高橋一成教諭は「(指定により)多様な学習の機会を得て、生徒たちの興味、関心は確実に高まった。特に理数科の課題研究では学校で習う範囲以外のことにも挑戦し、自ら考える力、積極的な学習姿勢も身に付けている」と成果を実感。同校は来年度からの指定も目指し、申請への準備を進めることにしている。

 

野球部の春のセンバツ大会の活躍を紹介した特別展示

野球部の春のセンバツ大会の活躍を紹介した特別展示

 

 釜高祭ではこの他、春の全国選抜大会で初勝利を収めた野球部の活躍を紹介する特別展示、各種文化部の展示やステージ発表、定時制の授業や行事、部活動の紹介など、日ごろの学校生活の様子や学びの成果を広く公開した。また、昨年度から同校舎内に移転した県立釜石祥雲支援学校高等部(14人)は、作業学習で取り組んだ製品を販売した。

 

 同祭は全日制、定時制、祥雲校の3生徒が交わる機会にもなる。今年は祥雲校の販売スペースがある1階のコミュニティーホールに、定時制の模擬店とPTAの喫茶を併設し、生徒らが自然に交流できる空間を設けた。また、祥雲校の生徒が積極的に全日制の教室を回る姿も見られた。

 

(復興釜石新聞 2016年8月31日発行 第516号より)

 

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出演映画の撮影秘話や役柄について語る俳優、永瀬正敏さん

てっぱん映画祭 9作品上映、心豊かな時間共有〜永瀬正敏さん 役作り明かす

永瀬さん出演の「あん」を鑑賞後、トークショーを楽しんだ観客

永瀬さん出演の「あん」を鑑賞後、トークショーを楽しんだ観客

 

 「釜石てっぱん映画祭」(同実行委主催)が26から28日まで、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。映画を通じた心の復興、交流促進、地域活性化などを目指す釜石初の試み。3日間で9作品が上映され、延べ約430人が鑑賞。映画館が無くなって久しい釜石のまちに、映画の感動を共有する心豊かなひとときがよみがえった。

 

 同映画祭は「市民が選ぶ”てっぱん映画”の上映」をコンセプトに、映画好きの釜石市民14人が推薦した一押し作品の中から見たい映画(1人3作品)を選んでもらう市民投票で、上映作品を決定。488人が票を寄せ、上位の6作品(「最高の人生の見つけ方」「かもめ食堂」「ミニオンズ」「ひまわり」「フラガール」「はじまりのうた」)が選ばれた。これに実行委推薦の3作品(「台風クラブ」「あん」「我が人生最悪の時」)を加え9作品を上映した。

 

 28日の「あん」「我が人生最悪の時」の上映後には、両作品に出演する俳優、永瀬正敏さんがゲストで登場した。ハンセン病の元患者と罪を犯した過去を持つどら焼き職人との交わりを描いた「あん」で、どら焼き職人・千太郎を演じた永瀬さん。河瀬直美監督が求める千太郎になるために、撮影に使われたマンションに住み、撮影時以外もどら焼きを焼いて接客をする生活を送っていたことを明かした。

 

出演映画の撮影秘話や役柄について語る俳優、永瀬正敏さん

出演映画の撮影秘話や役柄について語る俳優、永瀬正敏さん

 

 大槌町の綿澤孝枝さん(44)は「(元患者役の)樹木希林さんの演技、永瀬さんの存在感が光る。前回見た時とまた違ったシーンが印象に残った」と2回目の鑑賞を喜んだ。

 

 震災で被災した大槌町のファンから届いたメールを心に刻み、「いつかこの町で映画を撮ってほしい」という願いに応えた永瀬さん。震災直後には釜石も訪れており、この5年間、被災地への深い思いを抱き続けてきた。トークショーの最後には「またここで上映していただけるような作品に出て、皆さんと一緒に見られれば」と気持ちを込めた。

 

 魅力的な企画を織り交ぜた同映画祭。来場者はお目当ての作品を大スクリーンで堪能し、明日への力を得た。中妻町のみなし仮設で暮らす女性(55)は「見たかった作品を安い料金で鑑賞できた。スクリーンで映画が見られるイベントが今後もあれば」と願った。

 

 平松伸一郎実行委員長は「こういう場が求められている感じがした。映画を見ることが釜石の人たちの生活に溶け込んでもらえたら。映画祭はそのきっかけ。年に1回開催していければ」と釜石の映画文化再生に意欲を見せた。

 

(復興釜石新聞 2016年8月31日発行 第516号より)

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