「震災俳句」に思い込め〜俳人 照井翠さん講演


2017/08/17
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

 照井さんは「震災を経験したことでたくさんの言葉を編むことができた」と振り返った

照井さんは「震災を経験したことでたくさんの言葉を編むことができた」と振り返った

 

 7月に釜石市大町に本設店舗をオープンした桑畑書店の再出発を記念した講演会が1日、釜石PITで開かれた。講師は、店主の桑畑眞一さん(63)と親交がある俳人の照井翠さん(54)=北上市。「震災と俳句~朗読を中心に」をテーマに、震災体験などを基に詠んだ句を紹介しながら言葉の持つ力を伝えた。

 

 高校教師でもある照井さんは今年3月までの7年間、釜石高校で教べんをとった。震災時、アパートのある釜石市中心部が津波で大きな被害を受け、高校の体育館での避難生活を体験。2013年に震災をテーマにした句集「龍宮」で第12回俳句四季大賞を受賞した。

 

 講演会は市民ら約70人が聴講。照井さんは「龍宮」などから計80句を朗読しながら、五七五という17音に込めた思いを紹介した。

 

 「喪(うしな)へば うしなふほどに 降る雪よ」(龍宮より)は震災直後、何をどれだけ失うのか先が見通せない手探り状態の中で生み出した句。「さよならを言ふために咲く 桜かな」(同)は、移りゆく季節の中で変わらず咲く花も、目に映る美しさがいつもとは違ったと強く感じ、したためた。「まだ立ち直れないのか 三月来(く)」には、まちの復興は進んでいても、現実を受け止められず立ち止まったままの人、心を閉ざして声を出せない人もいる現実を伝え、「寄り添う気持ちを持ち続けてほしい」との願いを込めた。

 

 「震災のつらい、厳しい経験、現実には限度があり、虚(フィクション、空想)に支えられているところがあると感じた。虚の側に身を置き、さまざまに思いを巡らせ心で真実に迫り、大きな世界を詠んでいきたい」と照井さん。新たなスタートを切った桑畑さんに「釜石の文化活動の拠点として、ファイティングポーズを持ち続けて」とエールを送った。

 

 大平町の紺野きぬえさん(72)は自身も俳句をたしなんでおり、「句に込められた思いを聞くことができ、すっきりした。言葉に感動。今日の思いを俳句に生かしたい」と刺激を受けていた。

 

(復興釜石新聞 2017年8月5日発行 第611号より)

 

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