釜石を舞台にした3冊目の絵本「ぼんやきゅう」を手にする指田和さん
東日本大震災で被災した釜石市鵜住居町で昨夏、7年ぶりに復活した「お盆野球」を題材にした絵本「ぼんやきゅう」(ポプラ社)が出版された。制作を企画し、文も担当した児童文学作家の指田和さん(50)=埼玉県鴻巣市=は「被災して大変な中でも日常には笑いがあり、浜のたくましさを表現したかった。野球に一生懸命で子どものように無邪気なおじちゃんたちの奮闘記です」と話す。
指田さんは6日、市教育委員会を訪れ、絵本の出版を報告。20冊を寄贈することにしており、「たくさんの人に見てほしい」と思いを託した。
鵜住居地区では戦後、地域のお盆恒例行事として「水野旗争奪お盆野球大会」が続いてきた。同大会は地元の開業医、水野勇さんが、戦後の荒廃した若者の生活態度に心を痛め、地区対抗の野球大会を提案したのが始まり。1948年に第1回大会が開かれ、55年に水野さんが寄贈した優勝旗が今に受け継がれる。
お盆中に行われることで帰省者らも多く参加し、旧交を深め合う場になっていたが、震災の影響で大会休止を余儀なくされた。「伝統ある大会をなくしてはならない」「地域コミュニティー再生にも大会は必要」。地元への愛着と復興への思いから、大人たちが大会復活に向け動き出した。
2017年8月15日、高台に再建された釜石東中グラウンドで、震災後初の大会が実現した。64回目となった大会には中学生チームを含め6チームが参加。復興に向かう地域に野球仲間の歓声が7年ぶりに響き渡った。
絵本は、震災後途絶えていた盆野球の復活に情熱を燃やす大人たちの姿を子どもの視点で描いた。指田さんは市内の地域おこし活動を通じて親交のあった鵜住居地区主任児童委員の市川淳子さん(54)=箱崎町=から盆野球の存在を教えられ、「おもしろい」と絵本作りを企画。2016年夏から約1年半かけて取材し、大会の歴史や住民の思い、7年ぶりに開かれた大会の盛り上がりを伝える絵本に仕上げた。絵は絵本作家の長谷川義史さんがユーモアあふれる独特のタッチで描いた。
これまでにも震災後の釜石を舞台に絵本2冊を出版している指田さん。「絵本を通じて釜石の文化の発信ができたらいいな。地域の一員として、一緒に笑って泣きながらこれからも本を作りたい」と話した。
絵本はB4変形判、40ページ。全国の書店で販売(1404円、税込み)している。
(復興釜石新聞 2018年7月11日発行 第705号より)
復活「お盆野球」に完成沸く〜鵜住居、箱崎、両石 – 縁とらんす
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