先輩たちの助言を受け、防災学習への意識を高める釜石東中生
主体的、実践的な防災学習に力を入れる釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)で12日、全校生徒を対象にした防災講話があった。東日本大震災の前年まで同校の教諭だった岩手大大学院の森本晋也准教授(防災教育)と、同校卒業生で震災時に津波から避難した経験を持つ大学生2人が、防災に関する学びや活動を深めるために必要な視点を助言した。
講話のテーマは「当時の中学生に話を聞き、自分たちの防災の学習や活動に生かそう」。2006年4月から10年3月まで同校に勤務した森本准教授は、実際にグラウンドを走って海岸部到達時の津波の速さ(時速36キロ)を感じたり、過去の津波高を校舎に示したりした実践例を紹介しながら当時の防災学習の内容を説明した。
当時を知る卒業生として、現在母校で教育実習をしている古舘のどかさん(岩手県立大総合政策学部4年)、渡辺薫子さん(早稲田大文学部4年)が参加した。古舘さんは「防災学習と関わりがないように感じられる普段の授業にも、実はいざという時に生かせる学びがある」とし、日々の学習の大切さを強調。災害発生時に避難したことを知らせるカード「安否札」の考案・配布、地域の危険箇所の調査など、地域を巻き込んで行った防災活動の重要性も指摘した。
後輩に助言する(右から)渡辺さんと古舘さん、森本准教授
震災について、古舘さんは「切羽詰まった状態でどう生き残ればいいのか。自分一人が助かるだけでも大変だった」と振り返り、「どんな災害が起きても命を守れるよう真剣に考え、取り組んでほしい。地域の人たちに自信を持って伝えられるよう、学び続けてほしい」と呼び掛けた。
「あの時、どうして走りだせたのか」。渡辺さんが防災学習を進める上で大事にしていたのは、「災害は自分たちのまちに来る」との意識だという。森本准教授の指導のもと、防災学習に取り組んでいて、「実際の時に動けるかは訓練の積み重ねが欠かせない。『助けられる人から助ける人へ』との精神が擦り込まれていた。どこにいても災害はある。自分のまちのことと思って学びを進めてほしい」と語り掛けた。
後輩たちは、中学生でもできる支援活動などについて質問。先輩の2人は「中学生だから伝わりやすいこともある。地域に出て、今必要なことを聞きながら活動に生かせばいい。地域との関わりを深めてほしい」とアドバイスした。
同校生徒会役員で防災担当の佐々木李(もも)さん(3年)は「普段の授業、生活、訓練がいざという時に役立ったのは、防災意識が習慣づいていたからだと思った。先輩たちのように自分たちが地域につなげられるような取り組みをみんなで考えていきたい」と意識を高めた。
森本准教授は「みんなで命を守るためにできることはたくさんある。当時の中学生の思いに触れ、今できることを考えるきっかけになれば」と期待した。
(復興釜石新聞 2018年9月19日発行 第724号より)
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