切り絵の「迦楼羅」中美展で初入賞、独学の創作 光放つ〜美術集団「サムディ45」黒須さん


2018/11/22
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

入賞作「迦楼羅」

入賞作「迦楼羅」

 

 中央美術協会が東京都美術館で開いた「第70回記念中美展」で、釜石市の美術集団サムディ45に所属する黒須由里江さん(40)の切り絵作品「迦楼羅(カルラ)」が小品部門賞に選ばれた。中美展には2015年から出品し毎回入選していたが、賞を受けるのは今回が初めて。黒須さんは「びっくりしたが、やっときたかという感じ。独学で頑張ってきたが、やってきたことは間違いでなかった。続けてきて本当に良かった」と喜びをかみしめた。

 

 中美展は協会員が作品を出展するほか、油彩画、日本画、水彩画、版画、工芸、水墨画など多様な美術ジャンルで作品を全国から公募。その中から審査を通過した入選・入賞作品も展示する美術展。今回の記念展は10日から16日まで開かれ、黒須さんの作品も会場に展示された。

 

 入賞作品は、インド神話に登場する鳥神「ガルーダ」がモチーフ。題名は、仏教に取り込まれ守護神となった「迦楼羅天」から付けた。サイズは縦約110センチ、横約80センチ。口から金の火を吹き、赤い翼を持つとされる「鳥頭人身有翼」の姿を繊細な技で作り込み、躍動感あふれる独創的な世界観を表現した。

 

 黒須さんは大槌町出身。美術学校を卒業するなど専門的に学んでいないものの、デッサンには自信があったという。「描くだけでは落書きと思われる。形に残したいが、色を塗るのは、学んだ人たちにはかなわない」と、描いた線を際立たせる手段として選んだのが、切り絵。7年ほど前に始め、同じ頃に同集団にも参加した。

 

黒須さん

作者の黒須由里江さん

 

 釜石市内の郵便局に勤める傍ら創作活動に励んでいて、「仕事だけでは得られない、さまざまな人との出会い、体験のできる環境が創造の力になっている。やりがいもある」と黒須さん。展示会で人に見てもらう機会ができたことも、「上達した」との実感につながっている。

 

 全国公募の美術展に応募したのは中美展が初めて。3回の入選で、昨年には会友に推挙された。今回は会友として出品し、念願の初入賞。「テンション、モチベーションが上がる」と満面の笑顔を見せた。

 

 黒須さんの作品づくりの原動力は「今に見てろー」という向上心。この気持ちは変わることはなく、「どこまで勝負できるか。もっと上位の賞を目指す。面白そうな刺激を受けられることにも積極的に挑戦したい」と意欲を高めている。

 

(復興釜石新聞 2018年11月17日発行 第741号より)

 

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