研ぎ終えたパン切り包丁を澤口さん(左)に手渡す堺工科高定時制課程の生徒

大阪の高校生、包丁研ぎで被災地支援 釜石・鵜住居の住民と交流つなぐ

研ぎ終えたパン切り包丁を澤口さん(左)に手渡す堺工科高定時制課程の生徒

研ぎ終えたパン切り包丁を澤口さん(左)に手渡す堺工科高定時制課程の生徒

 

 大阪府立堺工科高校(堺市)定時制課程の生徒らが19日、釜石市の鵜住居地区を訪れ、「包丁研ぎ直し」のボランティア活動で住民らと交流した。東日本大震災の被災地を匠(たくみ)の技で支援する同校の取り組みの一環。先輩たちが贈るなどした包丁を一丁一丁、切れ味を確認しながら研ぎ上げた。

 

 同校では刃物づくりなど地場の伝統産業を学ぶ「堺学」を授業に取り入れ、ものづくり技術を伝えている。震災を受け、授業で製作したステンレス包丁を岩手、宮城両県の被災地に贈る活動を継続。6年前から「アフターケア」の研ぎ直しで釜石などを訪問している。

 

高度な職人技で刃物研ぎの支援を行う味岡さん(左)

高度な職人技で刃物研ぎの支援を行う味岡さん(左)

 

 今回のボランティア活動には生徒3人と保田光徳進路指導部長(62)ら6人が参加。堺学を指導している伝統工芸士で堺市ものづくりマイスターの称号を持つ味岡知行さん(78)と弟子2人も同行した。釜石・鵜住居での活動は4回目となる。

 

 鵜住居地区生活応援センターには、同校が届けた包丁のほか、愛用の刃物を持った住民らが相次いで訪れた。味岡さんらは回転研磨機を操ってさびを落とし、ぼろぼろになった刃物も丁寧に再生させ、生徒らが砥石(といし)で仕上げた。

 

生徒は砥石での仕上げを担当。研ぎ具合を確認しながら丁寧に作業した

生徒は砥石での仕上げを担当。研ぎ具合を確認しながら丁寧に作業した

 

 鵜住居町でパン屋を経営する澤口和彦さん(55)はパン切り包丁など6本を持参。丁寧な手仕事を感じ取り、「切れ味がいいとすぐ分かる。生徒と交流できるのもうれしい。ものづくり技術が受け継がれていると感じ、成長も楽しみ」と感謝した。片岸町の浅利金一さん(72)は亡妻が愛用した包丁2本を依頼。「とても古いものだが、思い出があり捨てることができない。新品のようになった。大事に使う」と、しみじみ語った。

 

 角田優樹君(総合学科2年)は仕上げの作業で気を付けたことなどを伝え、住民と親交を深めた。「ありがとう」と喜ぶ住民らの姿にモチベーションが高まったと充実した表情を見せ、「進学して、映像系の仕事をしたい。形は違っても、ものづくりに携わりたい」と将来を見据えた。

 

鵜住居地区で包丁研ぎのボランティア活動に取り組んだ生徒や教員、伝統工芸士ら

鵜住居地区で包丁研ぎのボランティア活動に取り組んだ生徒や教員、伝統工芸士ら

 

 同校では同じ堺学で取り組む線香づくりの技術を生かし、販売実習の益金を義援金として被災地に贈る活動も継続。今回はセンター近くの「いのちをつなぐ未来館」に線香60個を届け、来館者に配布してもらう。保田進路指導部長は「喜んでもらうのが一番。こちらも元気をもらい、生徒たちの良い変化にもつながっている」と、ものづくり学校ならではのボランティア活動を続ける考えだ。

東北清酒鑑評会の吟醸酒、純米酒両部門で優等賞を受賞した浜千鳥(釜石市小川町)の社員ら

釜石の浜千鳥 味や香り高評価 東北清酒鑑評会で吟醸、純米酒ダブルで優等賞

東北清酒鑑評会の吟醸酒、純米酒両部門で優等賞を受賞した浜千鳥(釜石市小川町)の社員ら

東北清酒鑑評会の吟醸酒、純米酒両部門で優等賞を受賞した浜千鳥(釜石市小川町)の社員ら

 

 釜石市の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)は2021年の東北清酒鑑評会(仙台国税局主催)吟醸酒、純米酒の2部門で優等賞を受賞した。2年連続のダブル受賞。春の全国新酒鑑評会(独立行政法人酒類総合研究所主催)で群を抜いた金賞受賞率を誇る東北6県の酒蔵が出品する鑑評会は、非常に高レベルで入賞が難しいとされる。新里社長は「各蔵とも年々、技術が上がってきている中での連続受賞はうれしい。今後も品質向上に励んでいく」と意気込む。

 

 東北清酒鑑評会は、吟醸酒と純米酒の味や香りについて総合的に判断し、製造技術の優劣の観点から品質評価を行う。予審、決審を行い、決審の成績が上位の出品酒を「優等賞」とする。部門ごとに優等賞の製造場の中から決審の成績上位3場を選定。1位に「最優秀賞」、他2場に「評価員特別賞」を授与する。評価員は国税局鑑定官、管内の指導機関職員、製造場の技術者など。

 

 本年は144の製造場から吟醸酒145点(121場)、純米酒127点(111場)の出品があり、10月上旬に行われた評価の結果、吟醸51点(45場)、純米41点(38場)が優等賞を獲得した。本県からは両部門で7製造場(社)が受賞したが、ダブル受賞は浜千鳥のみが成し遂げた。

 

釜石税務署の霜崎良人署長から表彰状を受け取る浜千鳥の新里進社長(左)

釜石税務署の霜崎良人署長から表彰状を受け取る浜千鳥の新里進社長(左)

 

 今月17日、同社で表彰式が行われ、釜石税務署の霜崎良人署長が表彰状を伝達。新里社長、奥村康太郎杜氏(とうじ)・醸造部長が受け取り、社員らと喜びを分かち合った。霜崎署長は「東北清酒鑑評会には全国トップクラスの杜氏、蔵人らが醸造、管理してきた酒が出品される。その中でのダブル受賞はまさに皆さんの努力のたまもの」とたたえ、「岩手の酒がどんどん世に出て飲まれるといい」と期待した。

 

新里社長、霜崎署長、奥村康太郎杜氏(右から)

新里社長、霜崎署長、奥村康太郎杜氏(右から)

 

酒造りの現場で働く社員らも受賞の喜びを共有

酒造りの現場で働く社員らも受賞の喜びを共有

 

 吟醸酒の部受賞の「浜千鳥 大吟醸」、純米酒の部受賞の「浜千鳥 純米大吟醸 結の香」は、共に岩手オリジナル酵母「ジョバンニの調べ」で醸造。純米大吟醸は本県最上級のオリジナル酒米「結の香」を原料とする。「岩手の香りが認められた」と新里社長。結の香で仕込んだ酒は県内他社も入賞し、「県酒造組合としても非常にうれしいこと。結の香は使い始めて来年で10年。徐々に入賞率も上がり、岩手の米の優秀さが認められてきている」と喜んだ。

 

 鑑評会ではインバウンド消費や輸出促進に役立ててもらうため、受賞者に英語の賞状も授与している。18年からは評価員に外国人専門家も加えた。

 

 同社は2012年に奥村杜氏(41)が就任以降、東北鑑評会8回(今年含む)の出品中、吟醸酒で6回、純米酒で4回の優等賞を受賞。このうち4回がダブル受賞で、昨年は純米酒で東北1位の栄誉となる最優秀賞に初めて輝いた。

平田小で行われた建設業ふれあい事業。児童はずらりと並んだ重機の操作に夢中になった

迫力!重機操作、試乗に夢中 平田小で建設業ふれあい事業

平田小で行われた建設業ふれあい事業。児童はずらりと並んだ重機の操作に夢中になった

平田小で行われた建設業ふれあい事業。児童はずらりと並んだ重機の操作に夢中になった

 

 県建設業協会釜石支部青年部(山元一輝部会長、27社)による「建設業ふれあい事業」は16日、平田小(鈴木崇校長、児童150人)で行われ、1、2年生52人が実際の工事現場で活躍する重機を動かした。

 

 青年部会員に協賛事業所、重機のリース事業所が協力し、合わせて40人が児童を迎えた。校庭にはバックホー、土やアスファルトを固めるローラー車、除雪作業などで使うショベルローダー車、高所作業車の建設機械6台が並び、児童はヘルメットをかぶって順番に乗車。青年部会員に手伝ってもらいながら操作レバーを握り、土をすくい取ったり、コンクリートブロックを持ち上げて移動させるなど簡単な作業を体験した。

 

高所作業車に試乗し、「海、見えるね」と喜ぶ児童と青年部会員

高所作業車に試乗し、「海、見えるね」と喜ぶ児童と青年部会員

 

 高所作業車には安全帯を身に付けて乗り、校舎3階ほどの高さまで上がると、「ヤッホー」「イエーイ」などと校庭にいる友達に自慢げに手を振っていた。田中玲那さん(1年)は「大きい機械で少し怖かったけど、動かすのは楽しかった。動かし方を優しく教えてくれてうれしかった」とはにかみ、中里陽(あきら)君(2年)は「おじいちゃんが建設業で、橋とか作っている。こんな機械を動かしているんだと思った。かっこいい」と胸を張った。

 

子どもたちとの交流を楽しむ青年部会員ら。気分をリフレッシュさせ、本業に励む

子どもたちとの交流を楽しむ青年部会員ら。気分をリフレッシュさせ、本業に励む

 

 同事業は、建設業への理解と関心を深めてもらおうと継続する地域貢献活動。操作体験の後には奉仕活動も行い、校門周辺の水はけをよくするため砂利を敷きならした。山元部会長は「建設の仕事を見て、触れてもらうことで、将来の職業選択にも役立てば」と期待する。

第28回釜石市ふれあい福祉まつり

第28回釜石市ふれあい福祉まつり

第28回釜石市ふれあい福祉まつり

 

第28回釜石市ふれあい福祉まつりを開催します。当日は福祉事業所による「まごころ物販会」と「作品展示会」を行います。皆さまのご来場をお待ちしております。
 
第28回ふれあい福祉まつりチラシ[PDF:1.97MB]
 

日時

2021年11月27日(土)10:00〜14:00

会場

釜石市民ホールTETTO ホールB・共通ロビー

内容

・福祉事業所・団体による販売会(お菓子や雑貨、手芸品など)
・作品展示会(小林覚さんほかアーティスト作品、県立釜石祥雲支援学校)
・ボランティア・福祉活動PRパネル展示

お問い合わせ先

第28回釜石市ふれあい福祉まつり実行委員会 (釜石市社会福祉協議会)
電話:0193-22-2310

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 保健福祉部 地域福祉課 障がい福祉係
〒026-0025 岩手県釜石市大渡町3丁目15番26号
TEL 0193-22-0177 / Fax 0193-22-6375 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021111600017/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

津波の歴史を後世に 唐丹「海嘯遭難記念之碑」レプリカ 市郷土資料館に展示

「海嘯遭難記念之碑」レプリカの搬入作業=釜石市郷土資料館=15日

「海嘯遭難記念之碑」レプリカの搬入作業=釜石市郷土資料館=15日

 

 東日本大震災の津波で損傷した釜石市唐丹町本郷の明治三陸大津波の碑「海嘯(かいしょう)遭難記念之碑」の原寸大レプリカが、鈴子町の市郷土資料館にお目見えした。本年3月に同碑の修復作業を行った大阪府吹田市の国立民族学博物館が寄贈。資料館の津波展示コーナーに据えられ、過去の津波被害の歴史と教訓を後世に伝える。

 

 15日、修復作業を主導した博物館の日髙真吾教授(50)=保存科学専攻=ら職員5人が資料館にレプリカを搬入。市文化振興課から藤井充彦課長(郷土資料館長)らが立ち会い、寄贈に感謝した。

 

大阪からトラックで運ばれてきたレプリカを降ろす国立民族学博物館の職員

大阪からトラックで運ばれてきたレプリカを降ろす国立民族学博物館の職員

 

碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

碑の修復にあたった日髙真吾教授(右)、市文化振興課の藤井充彦課長(左)ら

 

 同碑は1896(明治29)年6月15日に発生した三陸大津波から33回忌にあたる1928(昭和3)年、地元住民の発案で建立された。碑文には流失家屋300戸、犠牲者800人、生存者20人という壊滅的な被災状況とともに未来への伝承を願う強い思いが刻まれていた。

 

 レプリカは修復方針を立てるためのサンプルとして制作され、同博物館が3月に開いた震災10年を振り返る特別展「復興を支える地域の文化」の中で一般公開された。原寸大で高さ250センチ、幅160センチ。自然石の碑を再現するために用いた素材はFRP(繊維強化プラスチック)で、同加工を得意とするアーティストが造形、吹き付け塗装して仕上げた。

 

 実物の碑は、アスファルト状素材の基盤に浮き彫り、刻字した題字と碑文をくりぬいた石にはめ込んでいたが、震災の津波で碑文の半分が欠損した。修復は「震災遺構」としての意義を重視し、残存部分を補強、接着し直す作業にとどめている。レプリカの文字板は石こう製。3D機器を駆使し、実物そっくりに作られた。

 

実物の質感、色味が忠実に再現された文字部分

実物の質感、色味が忠実に再現された文字部分

 

東日本大震災の津波で欠損した碑文。衝撃の強さを物語る

東日本大震災の津波で欠損した碑文。衝撃の強さを物語る

 

 日髙教授は「原寸大サンプルで検証するのは珍しい。レプリカは出来栄えも上々。釜石の皆さんが震災の記憶をつなぐための一助として活用してもらえれば」と寄贈の理由を明かした。

 

 教授の研究グループは同震災の検証を進める中で、三陸沿岸に過去の津波碑が多く残されている点に注目。現存する場所を地図上に示し、データベース化している。「各地に残る碑に刻まれた大事な教訓が忘れ去られている部分があった。今回の震災であれだけの被害を出してしまったのは大きな反省点。今度こそ、しっかりと記憶を継承していく必要がある」と日髙教授。

 

 市文化振興課の手塚新太課長補佐(文化財係長)はレプリカを目にし、「インパクトがある。ここまで正確に作られているとは驚き。館にとっても貴重な資料となる」と喜んだ。明治、昭和の三陸大津波、東日本大震災と、市内には被害状況や教訓を伝える津波碑が数多く存在する。「石でできたものは残るので強み。末代まで続く伝承ツールとして大きな意味がある」とし、さらなる情報発信に意欲を示した。

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

税の高校生作文で釜石商工高生2人表彰 釜石税務署

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

 

 国税庁主催の「税に関する高校生の作文」で県立釜石商工高(菊池勝彦校長、生徒234人)の村越梨緒菜さん(総合情報科2年)が最高賞の国税庁長官賞に次ぐ仙台国税局長賞に選ばれた。佐藤凜さん(同)は釜石税務署長賞を受賞。2人は16日、同校を訪れた同税務署の霜崎良人署長から賞状と記念品を受け取った。

 

 高校生作文は租税教育の充実を目的に、1962年度から毎年実施。今回は全国1563校から17万8807編、同国税局管内(東北6県)では147校1万4750編の応募があった。

 

釜石税務署では受賞作をポスターにして税に関する啓発に役立てる

釜石税務署では受賞作をポスターにして税に関する啓発に役立てる

 

 同校では同科2年生35人が夏休みの課題として取り組んだ。村越さんの受賞作の題は「人を支える『税』」。税金の使われ方や納税の仕組みを調べ、国全体で支え合っていることに気づいた一方、超高齢化社会による労働力不足で納税の負担は大きくなるだろうと考察する。税に関する問題はこれからを担う自分たちこそが目を向けるべきと強調。「一年後に選挙権を得る。国民全員が平等に、より良い暮らしができるよう投票を通じて参政することで、支える人になりたい」と結んだ。

 

 佐藤さんの作文のテーマは「消費税」。増税のメリット、デメリットを分析し、「賛否はあるが、増税分がどう使われ、どれほど重要かを理解したうえで意見を出すべき。将来、自分たちの生活にも関わってくることであり、税の重要性を考えてみてほしい」と求めている。

 

 2人は「受賞は驚いた。聞いたことがない言葉が多くて難しかったが、知識が深まった。これからも税について興味を持って調べてみたい」と前向きに捉えた。

 

釜石市役所本庁舎1階税務課に掲示中の高校生作文

釜石市役所本庁舎1階税務課に掲示中の高校生作文

 

 霜崎署長は「自分の考えをしっかり持ち、心強く感じた。税の意義、役割を理解し、生活に役立ててほしい」と期待。2人の作文は只越町の市役所本庁舎1階税務課窓口、鈴子町のシープラザ釜石に掲示されている。11月末まで。

栗林ラビーが主催した復興応援ありがとうカップ

震災10年 釜石に小学生バレーボールチーム招き復興応援ありがとうカップ

栗林ラビーが主催した復興応援ありがとうカップ

栗林ラビーが主催した復興応援ありがとうカップ

 

 県内の小学生バレーボールチームが参加した「復興応援ありがとうカップ兼合同練習会」は14日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた。同市の栗林ラビーバレーボールスポーツ少年団(藤原明広監督)が、震災後に県内の仲間から受けた支援に対し、感謝の思いを伝えようと企画。沿岸と内陸から計6チームが参加し、試合を通じて親睦と交流を深めた。

 

 3チームずつ予選リーグを行った後、その順位を基に決勝トーナメントを実施。試合は2セットマッチで、セットカウント1対1の場合は得点の多いチームの勝利とする形で行われた。新型コロナウイルス禍で大会が減っている選手たちに多くの試合の場を提供し、実力向上につなげてもらう機会とした。

 

3チームで競った予選リーグ(釜石―奥州胆沢)

3チームで競った予選リーグ(釜石―奥州胆沢)

 

 栗林ラビーが練習場所としている栗林小体育館は、2011年の東日本大震災直後、被災者らの避難所となり、団はしばらく練習ができない状態が続いた。この時、支援の手を差し伸べてくれたのが県内陸部のチーム。自分たちの練習拠点に招いて体を動かす場を提供してくれたり、新しいシューズなどを用意してくれたりと物心両面で支えられた。

 

 「いつか恩返しができればと思っていた」と藤原監督。大会には10チーム以上から参加希望があったが、会場の体育館はコートを2面しか確保できないため、いつも練習会をしているチームを招いて6チームでの開催となった。

 

内陸から招かれた山岸ジュニアスポ少(盛岡市)

内陸から招かれた山岸ジュニアスポ少(盛岡市)

 

試合ができる喜びを胸に熱戦を繰り広げる選手ら

試合ができる喜びを胸に熱戦を繰り広げる選手ら

 

 栗林ラビーの金野涼葉主将(鵜住居小6年)は「震災後に新設されたこの体育館で、復興の記念の大会ができてうれしい。2週間後にも大会があるので、しっかり練習して備えたい」と意気込んだ。同じ市内のチーム、釜石ブルーウイングの小笠原桃華主将(鵜住居小6年)は「いい雰囲気で試合ができた。内陸のチームにも感謝の気持ちを返せた」と貴重な機会を喜んだ。

 

 決勝では栗林ラビーと江刺家ジュニアクラブ(九戸村)が対戦。2-0で栗林が勝利し、安定した強さを見せた。県内では27、28日に奥州市で県小学生バレーボール育成大会(いわて純情りんご杯)が開かれ、12月4日に住田町でベスト4のチームによる決戦が行われる。

 

優勝した栗林ラビーの選手、コーチら。次の目標は11月末の県育成大会優勝!

優勝した栗林ラビーの選手、コーチら。次の目標は11月末の県育成大会優勝!

 

今大会全試合を2―0で制した栗林ラビー(奥)

今大会全試合を2―0で制した栗林ラビー(奥)

 

 栗林ラビーは今年2月の県新人大会以来、複数の県大会で優勝しているものの、コロナ禍で東北、全国大会が中止され、県代表として上位大会に出場する夢はかなっていない。藤原監督は「育成大会は全国大会につながる。現チームで全国の舞台に行ける最後のチャンス」とし、チーム一丸となって優勝を目指す。

 

 今大会の決勝トーナメントの結果は次の通り。
【1回戦】
釜石1―1下矢作・横田(21―14、16―21)2点差で釜石の勝ち
山岸1-1江刺家(18―21、21-18)ジャンケン3―4で江刺家の勝ち
【準決勝】
栗林2―0釜石(21―8、21―2)
江刺家2―0奥州胆沢(21―10、21―20)
【決勝】
栗林2―0江刺家(21―12、21―10)

後半7分、釜石2本目のトライで喜びに沸き立つ

ラグビーW杯から2年 うのスタで釜石SWとコベルコ神戸が記念試合

約2100人の観衆が見守る中、行われた釜石シーウェイブスとコベルコ神戸の記念試合

約2100人の観衆が見守る中、行われた釜石シーウェイブスとコベルコ神戸の記念試合

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)2019日本大会から2年。会場の1つとなった釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで14日、記念試合が行われ、地元の釜石シーウェイブス(SW)RFCと神戸製鋼からチーム名を替えたコベルコ神戸スティーラーズが対戦した。SWは格上の神戸相手に善戦。25-40(前半11-19)で敗れはしたが、闘志あふれるプレーにスタンドは大いに盛り上がり、W杯の熱気をほうふつとさせた。

 

 来年1月に開幕するリーグワン(3部構成)で1部の神戸と2部の釜石。強豪神戸に挑む釜石は終始追う展開ながら、強化してきたFWを中心に成長した姿を見せた。前半、神戸の2本のトライで14点のリードを許した釜石は17分、ゴール正面のPGをFB中村良真が確実に決め3-14。23分にはマイボールラインアウトからモールに持ち込み、HO芳野寛が右隅にトライ。8-14と点差を縮めた。ロスタイムの40分すぎ、釜石は何度も神戸ゴールライン付近まで切り込むも攻め切れず、終了間際にCTBヘルダス・ファンデルヴォルトが決めたPGで、前半を11-19で折り返した。

 

モールを抜け出し、インゴール目がけて突進する芳野寛選手

モールを抜け出し、インゴール目がけて突進する芳野寛選手(写真:西条佳泰 Grafica Inc.)

 

 前半23分、待望のトライを決める釜石SW。8―14と点差を縮める

前半23分、待望のトライを決める釜石SW。8―14と点差を縮める

 

 後半、神戸のトライで11-26とされた釜石は7分、敵陣5メートル付近のラインアウトからのモールで一気に押し込み、FL木村優太がトライ。ゴールも決まり、18-26と押し戻した。神戸もすかさず反撃。3分後にトライ(ゴール成功)を奪い、15点差に突き放した。釜石は26分にもモールで攻め、途中出場のNo8王野尚希がゴール下にトライ(ゴール成功)。25-33と追い上げるも、試合終了2分前に神戸にトライを決められ、25-40で敗れた。

 

後半7分、釜石2本目のトライで喜びに沸き立つ

後半7分、釜石2本目のトライで喜びに沸き立つ

 

 試合後の記者会見で、釜石SWの須田康夫ヘッドコーチは「FWのモールスコアなど神戸に対して通用する部分も多く、自分たちの武器を確信できた。足りない部分を修正し、リーグ開幕までにクオリティーを高めていく」と気を引き締めた。CTB小野航大主将は「自分たちが目指す形にはまだ遠い。しっかり勝ち切りたい」とし、東北唯一のリーグワン参戦チームとして「多くの人が応援したいと思う強いチームになれるよう頑張っていく」と意気込みを示した。

 

善戦した釜石SWの選手ら。試合終了後、観戦客にあいさつに向かった

善戦した釜石SWの選手ら。試合終了後、観戦客にあいさつに向かった

 

両チームの健闘をたたえる観戦客。揺れる赤いフラッグが2年前のW杯を思い起こさせる

両チームの健闘をたたえる観戦客。揺れる赤いフラッグが2年前のW杯を思い起こさせる

 

 同スタジアムでのSWの試合は、3月のトップチャレンジリーグ近鉄戦以来8カ月ぶり。桜庭吉彦ゼネラルマネジャーは「このスタジアムに多くの人が集まってラグビーを通じて1つになることが、地元チームとしての活動意義。地域との距離が近い強みも生かし、リーグワンの集客につなげていきたい」と話した。

 

 コベルコ神戸の選手、スタッフらは前日に、陸前高田市の津波復興祈念公園なども訪問。福本正幸チームディレクターは阪神・淡路大震災の被災経験と重ね合わせ、「釜石SWが市民と一緒に震災復興を成し遂げてきたことを聞き、大きな学びを得ることができた。チームの力にし、神戸の皆さんにも還元していきたい」と感謝した。

 

記念試合を盛り上げるイベントも多彩に 幅広い世代が笑顔で満喫

 

桜舞太鼓と鵜住居幼稚園児の虎舞で作る花道を進む釜石、神戸の選手ら

桜舞太鼓と鵜住居幼稚園児の虎舞で作る花道を進む釜石、神戸の選手ら

 

 今回の記念試合は、W杯釜石開催のレガシー継承などを目指し、県や市で組織するいわて・かまいしラグビーメモリアルイベント実行委が主催した。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、観戦者を県内在住者に限定。約2100人が来場した。

 

 紫波町のラグビースクールで活動する藤尾陽成君(赤石小2年)は「プロの試合を間近で見られてうれしい。試合から学んだことを生かして頑張りたい」と力をもらった。盛岡市の森敬司さん(71)は19年のW杯開催時、釜石ファンゾーンで運営ボランティアとして活動。今回は純粋に試合観戦を楽しもうと駆け付け、「ここで作られたレガシー、ラグビー熱を体感。スポーツはいい。元気をもらった」と喜んだ。

 

 試合前には、歌手の平原綾香さんが県内のダンススクールの子どもたちと共演。市内の小中学生はハーフタイムに、世界への感謝を伝える「ありがとうの手紙」を合唱した。菅原優作君(甲子中3年)は「W杯とは規模が違うが、たくさんの方に見てもらう機会で、みんなで力を合わせて歌った。感謝の気持ちをしっかり伝えられた」と胸を張った。

 

試合前、感動の歌声を響かせた平原綾香さん。18年のスタジアム完成時にも招かれている

試合前、感動の歌声を響かせた平原綾香さん。18年のスタジアム完成時にも招かれている

 

合唱で震災復興への感謝を伝える市内の小中学生

合唱で震災復興への感謝を伝える市内の小中学生

 

 同スタジアムではW杯のフィジー対ウルグアイ戦が行われた。ナミビア対カナダ戦は台風の影響で中止され、県や市は昨年から両国を招いての記念試合を模索する。野田武則市長は「コロナで延びているが、引き続き努力していく。これが実現しない限り、19年のW杯は終わらない」と思いを述べた。

 

スタジアムで試合ができなかったナミビア、カナダの国旗を掲げ、両国への思いを発信

スタジアムで試合ができなかったナミビア、カナダの国旗を掲げ、両国への思いを発信

 

 敷地内には大画面で試合を楽しめるファンゾーンも設けられ、約360人が来場した。試合後のスペシャルトークショーには、対戦カードの釜石、神戸両チームに在籍した元日本代表FWの伊藤剛臣さんが登場。「釜石はチャレンジャー精神で神戸にぶつかり、試合は大いに盛り上がった。夢、希望、元気、勇気が釜石のレガシー。これからも一緒に盛り上げていきたい」などと話し、会場を沸かせた。

 

トークショーで盛り上げた伊藤剛臣さん(右)

トークショーで盛り上げた伊藤剛臣さん(右)

 

 八幡平市の藤原シゲ子さん(60)は記念試合のチケットを取ることはできなかったが、久しぶりの大きなイベントを楽しみたいと足を運んだ。W杯釜石開催を振り返る展示や飲食ブースを回り、催された抽選会で記念グッズをゲット。「来たかいがあった」と満足そうだった。

 

 飲食ブースには県内の業者やキッチンカーが出店。ホタテの浜焼き400食を提供したNPO法人おはこざき市民会議の佐藤啓太理事長(39)は「人が集まる景色は久々。新鮮な海産物をPRし、地域を盛り上げたい」と腕を振るった。

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

鉄づくりの歴史文化に理解 釜石小でたたら製鉄体験

釜石小5年生が挑んだ鉄づくり。れんがで積んだ炉に炭を入れる=12日

釜石小5年生が挑んだ鉄づくり。れんがで積んだ炉に炭を入れる=12日

 

 釜石小(及川靖浩校長、児童109人)で11、12の両日、昔ながらの鉄づくり「たたら製鉄」体験が行われた。5年生16人が築炉から粗鉄(ケラ)の取り出しまでを体験。鉄産地の歴史文化に理解を深めながら、ものづくりの面白さに触れた。

 

 同校の製鉄体験は釜石市地域学校協働本部事業の一環で実施し、今年で4回目。鉄づくりに関する市の出前講座を活用し、市文化振興課文化財係の加藤幹樹主任(36)らが指導した。

 

高炉づくりに取り組む児童。れんがを積み上げる作業に「重労働だ」と実感した=11日

高炉づくりに取り組む児童。れんがを積み上げる作業に「重労働だ」と実感した=11日

 

 初日は校庭の一角で高炉の築造、木炭を割る作業に取り組んだ。高炉はコンクリートブロックを基盤に耐火レンガ約100個を組み上げ、モルタルで隙間をふさいで補強。送風口、炉内を見る接眼レンズなどを固定した。木炭は、炉を温めるために使う分も合わせて約50キロ必要で、児童は「炭まみれ」になりつつ黙々とハンマーで砕いた。

 

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

 

 2日目が本格的な製鉄体験。木炭20キロ、釜石鉱山が提供した鉄鉱石10キロ、石灰1キロを原料に鉄の生産に挑んだ。炉に火入れし、順調に加熱。炎を上げた炉は内部が1300度ほどにもなる。児童は5分に1度、鉄鉱石と石灰を混ぜたものや炭を入れる作業を20回ほど繰り返した。

 

 昼前から鉱滓(ノロ)の抽出を行い、午後に炉を解体。粗鉄を取り出した。加藤主任はハンマーでたたいて鉄とノロの違いを示した。

 

不純物のノロ出しを見守る児童たち。鉄づくりの作業が順調に進んでいることを確認した=12日

不純物のノロ出しを見守る児童たち。鉄づくりの作業が順調に進んでいることを確認した=12日

 

作業の合間に行われた鍛冶体験。ものづくりの大変さ、楽しさを味わった=12日

作業の合間に行われた鍛冶体験。ものづくりの大変さ、楽しさを味わった=12日

 

 合間には、鍛冶体験も。児童は炭火で熱してオレンジ色になったくぎを何度もハンマーでたたいて薄くし、ペーパーナイフ風に仕上げた。同課の手塚新太課長補佐(49)がサポートした。

 

 5年生は総合的学習として事前に、鉄の歴史館の見学や近代製鉄の父・大島高任に関する講話で「鉄のまち釜石」について理解を深めてきた。木炭の破砕作業を担当した佐々木愛菜さんは「いろんな役割があり、しかもすべて手作業なので大変だった。鉄ができるか、わくわくしたし、みんなでやって達成感がある。一生懸命にやったことをこれからの生活に生かしたい」と充実感をにじませた。

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

釜石来訪者のおもてなし強化へ 観光ガイド会新人6人が養成講座修了

釜石観光ガイド養成講座の現地研修=13日

釜石観光ガイド養成講座の現地研修=13日

 

 釜石市の釜石観光ガイド会(三浦達夫会長、27人)は14日、10月から開いてきたガイド養成講座の全日程を終えた。公募で集まった40~60代の男女6人が受講。今後、先輩ガイドの補助を受けながら実習を重ね、独り立ちを目指す。同会には世界遺産「橋野鉄鉱山」や東日本大震災、まちなかガイドなど多様な依頼が寄せられる。会では新人6人の活動に期待し、釜石のさらなる魅力発信に取り組んでいく考えだ。

 

 同会のガイド会員確保のための養成講座は、ほぼ隔年で行われる。10期目となる今回は10月2日から11月14日まで全7回の日程で実施。現会員が講師となり、ガイドの心構え、同市の歴史、観光名所に加え、釜石を発展させた製鉄業の歴史、東日本大震災の被災・復興状況、三陸ジオパークなどについて座学と現地研修を行った。

 

両石町の震災慰霊碑(18年建立)前での研修

両石町の震災慰霊碑(18年建立)前での研修

 

現会員を含む10人が参加し、知識を深めた

現会員を含む10人が参加し、知識を深めた

 

 現地研修最終日の13日は、甲子町の旧釜石鉱山事務所など製鉄業の関連遺産を巡った後、震災研修として両石町の慰霊碑、鵜住居町の祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館などを訪問。受講者の八幡恵史さん(48、橋野町)、小笠原明彦さん(65、同)、岩間ゆかりさん(59、中妻町)が、会員からガイドをする際に伝えるべきポイントや分かりやすい説明の仕方を学んだ。

 

 震災研修で講師を務めた瀬戸元さん(76)は各地の被災状況とともに、明治、昭和の三陸大津波の歴史も紹介。先人が伝えてきた津波の教訓“命てんでんこ”や沿岸部に残る津波石碑の重要性を改めて説き、「先人の教訓を生かし切れなかったのが今回の震災。話を聞く人が確実な避難行動をとれるように導くのもガイドの役割」と教えた。

 

鵜住居町の祈りのパークでは、震災犠牲者に手を合わせてから説明を始めることを教えた

鵜住居町の祈りのパークでは、震災犠牲者に手を合わせてから説明を始めることを教えた

 

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

震災ガイドで伝えるべき基本事項を受講者に解説する瀬戸元さん(左から2人目)

 

 受講者の岩間さんは「震災を経験し、微力ながら自分も伝承という部分で釜石のために役立つことができれば」と応募。一連の講座を終え、「すごく勉強になった。まだ不安のほうが大きくイメージは湧かないが、会員として長く活動できるように頑張りたい」と意欲を示した。

 

 同会のガイド分野は、2011年の東日本大震災、13年の「三陸ジオパーク」認定、15年の「橋野鉄鉱山」世界遺産登録により、この10年で大幅に拡大。依頼者の増加、ニーズの多様化に対応するには、会員の能力向上と人員確保が求められる。会員の瀬戸さんは「新人の加入はありがたい。会員の高齢化もあり、引き継いでいく人材が必要。何回も数をこなすことで自信も生まれてくると思うので、ぜひ戦力になり第一線で活躍してほしい。個性を生かしながら活動してもらえれば」と願った。

 

 14日は修了式が行われ、受講者に修了証を交付。活動時に着用するユニフォームが貸与された。

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

活気のある地域づくりへ思い込め 釜石東中生が応援ポスター作成

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

 

 釜石市鵜住居町の釜石東中(米慎司校長、生徒97人)の2年生40人が、東日本大震災の復興に力を尽くしながら地域で働き続ける大人たちの姿を取材した。住民らの生き方、古里に対する愛着を知った生徒たちは、「もっと活気のある街になるよう、一緒に頑張りたい」との気持ちを強くし、応援ポスターを作って町内の店や施設に掲示している。

 

 新型コロナウイルス禍で中止となった職場体験学習の代替えとして企画。少人数、短時間の受け入れで可能な職業インタビューという形式で行い、協力事業者への感謝を伝えようと作成した。震災から10年がたち、復興は進んでいるが、「もっと地域を盛り上げるために中学生が力になれることはないか」と考えたのも理由の一つだ。

 

 職業インタビューは7月に行い、学区内の高齢者施設や保育施設、飲食店、自動車整備店など32の事業所が協力した。復興や仕事への思いを聞き取った生徒は、まとめとしてポスター作りに取り組み、9月に完成させた。

 

ポスターには鵜住居地域で働く人たちの手と思いが散りばめられている

ポスターには鵜住居地域で働く人たちの手と思いが散りばめられている

 

 ポスターはA2サイズ(縦420センチ、横594センチ)で、生徒40人の学びを散りばめている。モチーフは取材に協力した住民の「手」。復興を支えてきた証しであり、職業によって味が出る面白さもある。「この手につながりたい」。生徒たちが感じた思い、印象に残ったイメージを言葉にして添えた。

 

 タイトルは「頑張っぺし釜石!!」。生徒たちが大好きだという根浜海岸を背景に配置した。震災で苦しい思いはしたが、「海とともに生きていく鵜住居」を表している。

 

 人に関わる仕事がしたいとぼんやり思い描いている小澤空泉(そらみ)さんは栗林小を訪ね、舞良昌孝校長に働く上で大切にしていることなどを聞いた。ポスターには差し出された大きい手のひらと、その仕事を選んだ理由を尋ねた時に返ってきた「子どもたちの人生に関われる」という言葉をのせた。文字は優しい印象の人柄をイメージしたピンク色を選び、添えた矢印には「未来につながる仕事だ」との実感を込めた。

 

 取材を通して、コミュニケーション力の大切さを学んだ小澤さん。「いろんな人の意見を聞きながら、将来の夢、選択肢を広げられるようにしたい」と前を向く。

 

応援ポスターは鵜住居郵便局にも掲示されている

応援ポスターは鵜住居郵便局にも掲示されている

 

 鵜住居郵便局(小笠原博人局長)では、入り口の掲示板で応援ポスターを紹介。中学生の活動を知る機会になると好感を持ったようで、「将来、地元に残り地域の力になってほしい」と期待する。

 

 ポスターは校舎内にも掲示中で、学年主任の菅原隆宏教諭は「地域の人たちの職業にかける思いを知ることで、地元を愛してほしい。将来を見据え、自分の意思で選択し、行動できる人になってほしい」と願う。

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

文化の光を継承・発展させよう 第51回釜石市民芸文祭 新たな発信手段に挑戦

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

 

 第51回釜石市民芸術文化祭(市、市芸術文化協会主催)は12日から14日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス禍でも文化芸術の光を発信しようと、市内の表現者たちは「チャレンジ」を合言葉に創作意欲を込めた作品を展示。初のYouTube(ユーチューブ)生配信も行い、発表部門の団体は仲間とともに舞台に立つ喜びや躍動する姿を伝えた。

 

 13日の開会セレモニーで芸文協(27団体、約400人)の河東眞澄会長は「会員、先人の思いをつなぎ継承、発展させるべく開催。懸命に活動する姿を発信したい」とあいさつ。県内で芸術文化振興に取り組む「幸せ出ずる国いわて実行委員会」(尾関良夫実行委員長)による寄付贈呈があり、東日本大震災の復興支援コンサートで集めた応援金約27万円が芸文協に贈られた。復興応援のため「おひなさま色紙」を送り続ける北九州市の近藤紫鳳さんには感謝状を送ることにし、オンラインでつないで10年の心温まる思いに謝意を表した。

 

特別展示された故星山駿さんの作品。中央が寄贈者の東子さん

特別展示された故星山駿さんの作品。中央が寄贈者の東子さん

 

 戦後、教員として釜石に赴任した故星山駿さん(1954年死去)の絵画2点が市に贈られ、特別展示された。釜石の風景が題材で、1点は魚市場から見た漁船。もう1点は朝日に照らされる三貫(さんがん)島がテーマの作品だが未完で、仕上げる直前に59歳で亡くなったという。

 

 寄贈したのは星山さんの長女東子(はるこ)さん(83)=東京都調布市。「高校1年の途中まで過ごした釜石は古里。この古里を大好きだった父の絵を釜石に帰したい」と思いを明かす。野田武則市長の「宝物が増えた」との言葉に感激し、亡父の思いが未来に向けて歩んでいくまちへの力強いメッセージになることを期待した。

 

一般参加として元仮設住宅住民が作った虎頭も並び、釜石らしさが光った

一般参加として元仮設住宅住民が作った虎頭も並び、釜石らしさが光った

 

 展示部門は協会加盟の16団体が参加。絵画や生け花、水墨画、切り絵、写真、書道など各分野の力作が並んだ。ステンドグラス教室「BEHOLD(ビホールド)」(佐藤敏子主宰)はクリスマスや花など季節をモチーフにした壁掛け、ランプシェードなど電球を仕込んだ作品を紹介。大船渡市から月2回、約10年通い続ける阿部仲子さん(54)は「陽の光を通すとガラスの色や表情が変わる。その美しさに、ときめきが止まらない」と魅力を語った。

 

好評の体験コーナー。色鮮やかな折り紙に女性たちは夢中になった

好評の体験コーナー。色鮮やかな折り紙に女性たちは夢中になった

 

 折り紙、エコクラフト、ちぎり絵、レザークラフトの体験コーナーもあり、来場者が手作りの面白さに触れた。桜木町の女性(70代)は2つのクラフトづくりに挑戦。「いろんな経験ができ、楽しかった。市民が集い、マスクをしながらでも会話ができるのは幸せなこと」と目を細めた。

 

稽古の様子を舞台上で紹介した裏千家茶道こども教室

稽古の様子を舞台上で紹介した裏千家茶道こども教室

 

 ステージでは5団体が大正琴、バレエ、歌や舞踊を披露した。今回初登場となったのは、裏千家又新会(菊池宗英会長)を母体に組織する実行委が実施する茶道こども教室。コロナの感染状況は落ち着いているが、団体活動が難しい現状に変わりはなく、同教室も年間18回開催予定のうち、稽古できたのは4回だけ。それでも、成果発表の機会になると出演を決め、舞台に茶席を設け、お点前の稽古風景を見せた。6年目の横田楽(がく)君(甲子小6年)は「緊張したが、うまくできた。見てもらえる機会をつくってもらって、うれしい」とうなずいた。

 

 ユーチューブ動画の公開は12月末まで。検索ボックスに「第51回釜石市民芸術文化祭」と入力し、動画を選択すると視聴できる。