文化の光を継承・発展させよう 第51回釜石市民芸文祭 新たな発信手段に挑戦
多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭
第51回釜石市民芸術文化祭(市、市芸術文化協会主催)は12日から14日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス禍でも文化芸術の光を発信しようと、市内の表現者たちは「チャレンジ」を合言葉に創作意欲を込めた作品を展示。初のYouTube(ユーチューブ)生配信も行い、発表部門の団体は仲間とともに舞台に立つ喜びや躍動する姿を伝えた。
13日の開会セレモニーで芸文協(27団体、約400人)の河東眞澄会長は「会員、先人の思いをつなぎ継承、発展させるべく開催。懸命に活動する姿を発信したい」とあいさつ。県内で芸術文化振興に取り組む「幸せ出ずる国いわて実行委員会」(尾関良夫実行委員長)による寄付贈呈があり、東日本大震災の復興支援コンサートで集めた応援金約27万円が芸文協に贈られた。復興応援のため「おひなさま色紙」を送り続ける北九州市の近藤紫鳳さんには感謝状を送ることにし、オンラインでつないで10年の心温まる思いに謝意を表した。
特別展示された故星山駿さんの作品。中央が寄贈者の東子さん
戦後、教員として釜石に赴任した故星山駿さん(1954年死去)の絵画2点が市に贈られ、特別展示された。釜石の風景が題材で、1点は魚市場から見た漁船。もう1点は朝日に照らされる三貫(さんがん)島がテーマの作品だが未完で、仕上げる直前に59歳で亡くなったという。
寄贈したのは星山さんの長女東子(はるこ)さん(83)=東京都調布市。「高校1年の途中まで過ごした釜石は古里。この古里を大好きだった父の絵を釜石に帰したい」と思いを明かす。野田武則市長の「宝物が増えた」との言葉に感激し、亡父の思いが未来に向けて歩んでいくまちへの力強いメッセージになることを期待した。
一般参加として元仮設住宅住民が作った虎頭も並び、釜石らしさが光った
展示部門は協会加盟の16団体が参加。絵画や生け花、水墨画、切り絵、写真、書道など各分野の力作が並んだ。ステンドグラス教室「BEHOLD(ビホールド)」(佐藤敏子主宰)はクリスマスや花など季節をモチーフにした壁掛け、ランプシェードなど電球を仕込んだ作品を紹介。大船渡市から月2回、約10年通い続ける阿部仲子さん(54)は「陽の光を通すとガラスの色や表情が変わる。その美しさに、ときめきが止まらない」と魅力を語った。
好評の体験コーナー。色鮮やかな折り紙に女性たちは夢中になった
折り紙、エコクラフト、ちぎり絵、レザークラフトの体験コーナーもあり、来場者が手作りの面白さに触れた。桜木町の女性(70代)は2つのクラフトづくりに挑戦。「いろんな経験ができ、楽しかった。市民が集い、マスクをしながらでも会話ができるのは幸せなこと」と目を細めた。
稽古の様子を舞台上で紹介した裏千家茶道こども教室
ステージでは5団体が大正琴、バレエ、歌や舞踊を披露した。今回初登場となったのは、裏千家又新会(菊池宗英会長)を母体に組織する実行委が実施する茶道こども教室。コロナの感染状況は落ち着いているが、団体活動が難しい現状に変わりはなく、同教室も年間18回開催予定のうち、稽古できたのは4回だけ。それでも、成果発表の機会になると出演を決め、舞台に茶席を設け、お点前の稽古風景を見せた。6年目の横田楽(がく)君(甲子小6年)は「緊張したが、うまくできた。見てもらえる機会をつくってもらって、うれしい」とうなずいた。
ユーチューブ動画の公開は12月末まで。検索ボックスに「第51回釜石市民芸術文化祭」と入力し、動画を選択すると視聴できる。
釜石新聞NewS
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