大阪の高校生、包丁研ぎで被災地支援 釜石・鵜住居の住民と交流つなぐ
研ぎ終えたパン切り包丁を澤口さん(左)に手渡す堺工科高定時制課程の生徒
大阪府立堺工科高校(堺市)定時制課程の生徒らが19日、釜石市の鵜住居地区を訪れ、「包丁研ぎ直し」のボランティア活動で住民らと交流した。東日本大震災の被災地を匠(たくみ)の技で支援する同校の取り組みの一環。先輩たちが贈るなどした包丁を一丁一丁、切れ味を確認しながら研ぎ上げた。
同校では刃物づくりなど地場の伝統産業を学ぶ「堺学」を授業に取り入れ、ものづくり技術を伝えている。震災を受け、授業で製作したステンレス包丁を岩手、宮城両県の被災地に贈る活動を継続。6年前から「アフターケア」の研ぎ直しで釜石などを訪問している。
高度な職人技で刃物研ぎの支援を行う味岡さん(左)
今回のボランティア活動には生徒3人と保田光徳進路指導部長(62)ら6人が参加。堺学を指導している伝統工芸士で堺市ものづくりマイスターの称号を持つ味岡知行さん(78)と弟子2人も同行した。釜石・鵜住居での活動は4回目となる。
鵜住居地区生活応援センターには、同校が届けた包丁のほか、愛用の刃物を持った住民らが相次いで訪れた。味岡さんらは回転研磨機を操ってさびを落とし、ぼろぼろになった刃物も丁寧に再生させ、生徒らが砥石(といし)で仕上げた。
生徒は砥石での仕上げを担当。研ぎ具合を確認しながら丁寧に作業した
鵜住居町でパン屋を経営する澤口和彦さん(55)はパン切り包丁など6本を持参。丁寧な手仕事を感じ取り、「切れ味がいいとすぐ分かる。生徒と交流できるのもうれしい。ものづくり技術が受け継がれていると感じ、成長も楽しみ」と感謝した。片岸町の浅利金一さん(72)は亡妻が愛用した包丁2本を依頼。「とても古いものだが、思い出があり捨てることができない。新品のようになった。大事に使う」と、しみじみ語った。
角田優樹君(総合学科2年)は仕上げの作業で気を付けたことなどを伝え、住民と親交を深めた。「ありがとう」と喜ぶ住民らの姿にモチベーションが高まったと充実した表情を見せ、「進学して、映像系の仕事をしたい。形は違っても、ものづくりに携わりたい」と将来を見据えた。
鵜住居地区で包丁研ぎのボランティア活動に取り組んだ生徒や教員、伝統工芸士ら
同校では同じ堺学で取り組む線香づくりの技術を生かし、販売実習の益金を義援金として被災地に贈る活動も継続。今回はセンター近くの「いのちをつなぐ未来館」に線香60個を届け、来館者に配布してもらう。保田進路指導部長は「喜んでもらうのが一番。こちらも元気をもらい、生徒たちの良い変化にもつながっている」と、ものづくり学校ならではのボランティア活動を続ける考えだ。
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