4人で心を合わせ、美しいハーモニーを届けるメンバー。アニメ曲や童謡・唱歌メドレーで楽しませた
釜石市の「親と子の合唱団ノイホフ・クワィアー」(小澤一郎代表)は9日、第141回ファミリーコンサート「ははのそぼたちのうた~その27~」を大町の市民ホールTETTOで開いた。母の日にちなんだコンサートは5月の恒例行事だが、昨年は新型コロナウイルス感染拡大で全国に発令された緊急事態宣言を受け、やむなく中止された。収束が見通せない中で、感染防止と合唱活動をいかに両立させるか。本演奏会は、withコロナ時代の新たな形を模索していく一歩となった。
演奏会では感染防止のガイドラインに示されている対策を可能な限り講じた。会場内全員のマスク着用、手指消毒、検温、来場者の連絡先記入、間隔を空けた客席配置のほか、出演者の振り付けも接触を避けるなど慎重を期した。合間には換気タイムも設けた。
心温まるステージに感激し、団員に拍手を送る観客
2年ぶりの母の日コンサートは3部構成。1部の「スタジオ・ジブリ名曲集」は、昨年12月のクリスマスコンサートで歌う予定だったが、コロナ禍で中止となり、念願の披露となった。「魔女の宅急便」「もののけ姫」など名作アニメから10曲を演奏。2部は「童謡・唱歌四季のメドレー」から春と夏の曲をテンポよく歌い上げた。
3部は昨年のNHK連続テレビ小説で主人公となった作曲家・古関裕而(福島県出身)の楽曲を集めた。昭和初期に数々の名曲を残した古関氏。「とんがり帽子」「長崎の鐘」など年配者には懐かしい曲のほか、早稲田大、慶応義塾大の応援歌、多くの人になじみのある夏の全国高校野球大会の歌「栄冠は君に輝く」など、その手腕が光るメロディーが続いた。古関氏は釜石市とも縁がある。1937(昭和12)年の市制施行を記念して作られた「釜石市民歌」は古関氏が作曲。この日は5番まで全て聞かせた。
ワークショップメンバーが加わった第3部「古関裕而の世界」。振り付けも交え、曲の世界観を表現した
同団1期生として創始者の故渡辺顕麿さんから指導を受けたという市内の男性(79)は「涙、涙で言葉にならない」と感激し、「市民歌も久しぶりに聞いた。ノイホフの歌は心が潤う。コロナも当分寄り付かないと思います」と明日への活力を得た様子。
今回の出演者は市内在住の6人。例年、東京から駆け付けるメンバーなど4人が出演を見合わせ、少人数でのステージとなった。石山友里花さん(釜石高3年)は「いつかは(演奏会が)できるという気持ちで、みんな頑張ってきた。お客様がにこにこしながら聞いてくれて、うれしくなった」と喜びの表情。小学4年からの活動を振り返り、「誰かを笑顔にできる歌の力ってすごい。自分の生活の中でも合唱は大きい存在。卒業しても続けたい」と思いを強くした。1カ月のワークショップを経てステージに立った佐藤禮子さん(73)は「最初はドキドキでしたけど、歌っているうちにワクワクしてきた。声を出しているとコロナのストレスとか気持ちも発散できる」と充実感をにじませた。
釜石高3年の石山友里花さん(右)、同1年の千代川陽琉さんはフレッシュな歌声で「ひこうき雲」を披露
同団は昨年、緊急事態宣言が明けた6月から活動を再開。呼吸がしやすいマスクグッズを活用するなど工夫しながら、感染防止策と両輪で練習を重ねてきた。小澤代表(44)は本演奏会について「悩みつつも、開催する方向で取り組んできた。発表の場を失っている他団体が再び動き出すきっかけにもなれば」と話した。