釜石湾内クルーズへGO!モニターを乗せた漁船が魚市場付近の岸壁を出発
釜石市で観光地域づくりを進める「かまいしDMC」は、釜石湾で地元の漁船を活用したサッパ船クルーズ事業を始めるのを前に、4月28日、モニタークルーズを実施。地域住民や観光情報発信に取り組む県職員ら6人が乗船し、釜石港周辺の産業中心地や尾崎半島にかけての自然の景観を間近で楽しんだ。5月の大型連休期間中には3日間限定で定期運航。今後は予約に応じて船を出す不定期事業となるが、通年で運航し、海を生かした観光振興につなげる考えだ。
隆起した岩場や湾口防波堤を巡る船旅を楽しむモニターら
釜石湾の観光利用促進を目的とした同クルーズ事業は、市、同社、地元漁業者の連携で実現した。釜石湾漁業協同組合に所属する平田の漁業佐々木剛さん(68)と水戸一彦さん(62)が協力。漁を終えた午後に所有する船1隻ずつを出す。漁船はそれぞれ2・6トンの定員11人と、1・5トンの同5人。魚河岸の魚河岸テラス前発着で釜石湾内を約90分かけて1周する。
モニタークルーズでは漁師の船長2人がそれぞれガイドを務め、波でえぐられた岩場などリアス海岸の景観や養殖の磯場について解説。湾口防波堤から外海にも出て、内外の波の違いを体感してもらい、尾崎神社奥宮や青出浜など、船でしか行くことができない秘境スポットも案内。モニターらは正面から望む釜石大観音、海上から見上げるガントリークレーンの迫力に圧倒されながら、湾内を巡る船旅を満喫した。
釜石大観音を正面から望むことができるのも漁船クルーズの楽しみの一つ
市では東日本大震災前、観光船はまゆり(109トン)を運航したが、津波で被災し、解体処分された。元ガイド千葉まき子さん(70)=中妻町=も久々に船旅を体感。「やっぱり釜石の特徴は海。船でなければ行けない場所、いい景色を多くの人に楽しんでほしい」と期待を込めた。
日本海軍第48号駆潜艇が艦砲射撃を受け沈んだ場所。震災後に慰霊碑が建てられた
以前から観光船の復活を期待する声はあったものの、はまゆりは維持管理費などがかさんで赤字が続いた経緯があり、事業再開の在り方が課題となっていた。今回の漁船を使った取り組みは、漁業関係者の空き時間を活用しており、初期投資がかからず、経費も抑えることができる。
かまいしDMCの河東英宜(ひでたか)事業部長は「観光船の機能を残した上で再建する一つの形。運営する中でより良い在り方を検討していく」と強調した。
漁船の運航を担う2人も「自分たちの持っているものを役立てられる。高齢化する漁業者でもできる取り組みで、広げていきたい」とメリットを感じている様子。「墨絵のような風景、陸から見るのとは違う景色を楽しんでもらえるよう工夫したい」と意欲を見せている。
地元漁師との会話や触れ合いを通じて釜石の魅力を発信する
5月4日からは予約に応じて船を出す不定期事業とするが、通年で運航する。乗船料は1人3800円。乗船希望日の2日前までに予約が必要で、かまいしDMCが指定管理する魚河岸テラス(電話 0193-27-5566 )で受け付ける。