釜石市の桜の名所、甲子町松倉の甲子川沿いの市道と大町の薬師公園で2、3の両日、市民らによる清掃活動が行われた。ごみのないきれいな環境で花見を楽しんでもらおうと老若男女が汗を流し、美しい景観を整えた。9日から最高気温20度超えの日が続き、初夏の陽気となった市内。各地の桜の開花は一気に加速している。
甲子町の桜並木周辺で行われた清掃活動=2日
松倉の甲子川沿いの市道は、複数種の桜の大木が連なる並木道。2日の「お花見クリーンアップ」と銘打った同所の清掃活動は、環境保護活動団体「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表)が市民に参加を呼び掛け、毎年実施している。今年は釜石市が後援し、市の広報で事前告知したこともあり、昨年より多い約70人が参加した。
清掃範囲は県立釜石病院裏手から市球技場付近まで。3年目となる新型コロナウイルス感染症の流行を考慮し、今回も一斉参集は行わず、活動時間(午前9時半~10時半)内で自由参加、解散という形をとった。参加者はごみ袋を手に土手や河川敷、並木の下を歩き、さまざまなごみを拾い集めた。
甲子川沿いを歩き、ごみを拾う参加者。通行者のマナーアップを願う
空き缶・瓶・ペットボトル、たばこの箱・吸い殻など後を絶たない“ポイ捨て”ごみに加え、金属、ガラス、プラスチック類など悪質な投棄ごみも見つかった。集積場所に持ち込まれたごみの重量は約110キロ。自主的に家庭に持ち帰った分も合わせるとさらに多いとみられる。
祖母と参加した髙橋龍之助君(甲子小5年)は「ごみは思った以上に多かった。こうして捨てる人がいるのは残念」と心を痛めた。野鳥が好きで、甲子川にもよく足を運ぶ。自然環境を守るため、「自分もリサイクルとかを積極的にやって協力したい」と意欲を高めた。
この日、桜はまだつぼみの状態。今年も満開の美しい光景を期待
清掃活動に励んだ市民ら。今年は企業など団体での参加もあった
地球温暖化、海洋ごみ問題などが深刻化し、世界中で対策が進む昨今。国内では1日から「プラスチック資源循環促進法」が施行され、事業者がプラスチックごみ削減への取り組みを始めた。加藤代表は「これを機に環境への意識がさらに高まれば。ここでの活動は川から海へのごみの流出防止啓発も狙いの一つ。日常生活から気を付けてほしい」と願った。同ネットワークでは、春と秋の「海ごみゼロウィーク」にも活動を予定する。
SDGs(持続可能な開発目標)への貢献も視野に、市内の企業や団体も環境問題解決への取り組みを活発化させる。今回の活動には新菱和運送の社員や女性奉仕団体「国際ソロプチミスト釜石はまぎく」のメンバーらが団体参加した。
大町3丁目の薬師公園で行われた清掃活動=3日
中心市街地の高台に位置する薬師公園の清掃活動は、みなとかまいし地区会議(事務局・釜石地区生活応援センター)が主催し、3日に行われた。大町、大渡町の住民を中心に約40人が参加。坂道の遊歩道から頂上広場までを清掃し、桜シーズンに備えた。同公園桜まつりとして、園内は紅白のちょうちんで彩られ、3日から夜の点灯(日没から午後9時まで)を開始した。17日まで実施予定。
参加者は各所に散らばり、ごみのほか冬期間にたまった大量の落ち葉を回収。遊歩道の階段などは掃き清掃もしてきれいにした。人由来のごみは少なかったが、吹きだまりの枯れ葉が多く、約1時間の作業で大型ごみ袋約80袋がいっぱいになった。
歩行に支障がないよう遊歩道は掃き清掃も実施
大量の落ち葉も回収し、園内はすっきりとした景観を取り戻した
大渡町の山口トクさん(94)は今回の参加者の中で最高齢。頂上広場までの急坂も上り切り、作業に精を出した。「全く丈夫だから幸せ。こういう活動があると大体来ている。みんなの元気な顔を見て、若さをもらいたいから」とはつらつ。夫が会社勤めをしていたころは、薬師公園が花見宴会の会場。「家が近いから料理を差し入れたりしてね。楽しかったよ」と懐かしい思い出に浸った。
しっかりとした足取りで階段を上る山口トクさん(右)。現役時代は橋上市場で衣料品店を開いた
同公園は震災後の2016年、復興支援で環境整備が行われ、寄付された桜の苗木が新たに植樹された。桜まつりは震災前、公園周辺の町内会、商店会で組織する「薬師公園愛護会」が続けていたが、震災後に組織は解体。以降は、釜石観光物産協会が協力し、継続してきた。今年は同協会のほか、同地区会議、東部地区事業者協議会の3者の主催でまつりを実施。ちょうちんのほか、コロナ感染対策をしながら桜見物を楽しんでもらうための注意看板を入り口に設置した。
本年度着任した同応援センターの奥村謙治所長は「多くの方々に清掃に協力していただき、非常にうれしい。公園を訪れる人たちがより良い環境で楽しめるようになった。マナーを守り、快く利用していただければ」と話した。