タグ別アーカイブ: 文化・教育

先輩たちの助言を受け、防災学習への意識を高める釜石東中生

防災意識 先輩から学ぶ、釜石東中で講座〜欠かせない訓練の積み重ね、元同校教諭 森本准教授(岩手大大学院)アドバイス

先輩たちの助言を受け、防災学習への意識を高める釜石東中生

先輩たちの助言を受け、防災学習への意識を高める釜石東中生

 

 主体的、実践的な防災学習に力を入れる釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)で12日、全校生徒を対象にした防災講話があった。東日本大震災の前年まで同校の教諭だった岩手大大学院の森本晋也准教授(防災教育)と、同校卒業生で震災時に津波から避難した経験を持つ大学生2人が、防災に関する学びや活動を深めるために必要な視点を助言した。

 

 講話のテーマは「当時の中学生に話を聞き、自分たちの防災の学習や活動に生かそう」。2006年4月から10年3月まで同校に勤務した森本准教授は、実際にグラウンドを走って海岸部到達時の津波の速さ(時速36キロ)を感じたり、過去の津波高を校舎に示したりした実践例を紹介しながら当時の防災学習の内容を説明した。

 

 当時を知る卒業生として、現在母校で教育実習をしている古舘のどかさん(岩手県立大総合政策学部4年)、渡辺薫子さん(早稲田大文学部4年)が参加した。古舘さんは「防災学習と関わりがないように感じられる普段の授業にも、実はいざという時に生かせる学びがある」とし、日々の学習の大切さを強調。災害発生時に避難したことを知らせるカード「安否札」の考案・配布、地域の危険箇所の調査など、地域を巻き込んで行った防災活動の重要性も指摘した。

 

後輩に助言する(右から)渡辺さんと古舘さん、森本准教授

後輩に助言する(右から)渡辺さんと古舘さん、森本准教授

 

 震災について、古舘さんは「切羽詰まった状態でどう生き残ればいいのか。自分一人が助かるだけでも大変だった」と振り返り、「どんな災害が起きても命を守れるよう真剣に考え、取り組んでほしい。地域の人たちに自信を持って伝えられるよう、学び続けてほしい」と呼び掛けた。

 

 「あの時、どうして走りだせたのか」。渡辺さんが防災学習を進める上で大事にしていたのは、「災害は自分たちのまちに来る」との意識だという。森本准教授の指導のもと、防災学習に取り組んでいて、「実際の時に動けるかは訓練の積み重ねが欠かせない。『助けられる人から助ける人へ』との精神が擦り込まれていた。どこにいても災害はある。自分のまちのことと思って学びを進めてほしい」と語り掛けた。

 

 後輩たちは、中学生でもできる支援活動などについて質問。先輩の2人は「中学生だから伝わりやすいこともある。地域に出て、今必要なことを聞きながら活動に生かせばいい。地域との関わりを深めてほしい」とアドバイスした。

 

 同校生徒会役員で防災担当の佐々木李(もも)さん(3年)は「普段の授業、生活、訓練がいざという時に役立ったのは、防災意識が習慣づいていたからだと思った。先輩たちのように自分たちが地域につなげられるような取り組みをみんなで考えていきたい」と意識を高めた。

 

 森本准教授は「みんなで命を守るためにできることはたくさんある。当時の中学生の思いに触れ、今できることを考えるきっかけになれば」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2018年9月19日発行 第724号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

ラグビーを通じて友情を育んだホストタウン事業の参加者

釜石小6年生、オーストラリアの小学生と交流〜「ありがとう」ホストタウン、ラグビーで触れ合う

釜石SW選手との触れ合いを楽しむオーストラリアの小学生

釜石SW選手との触れ合いを楽しむオーストラリアの小学生

 

 釜石小(高橋勝校長、児童130人)に14日、オーストラリアの小学生5人が訪れ、同校の6年生20人と交流した。釜石市は2020年東京五輪・パラリンピックでオーストラリアのホストタウンで、「復興『ありがとう』ホストタウン」関連事業の一環。互いの文化を紹介し、ラグビーで触れ合いを楽しんだ。

 

 訪問したのは、オーストラリア東部のニューサウスウェールズ州にあるタムワース市の小学校の6年生。釜石小の児童は英語を交えて地域の歴史、特産品などを紹介した。郷土芸能の虎舞を披露すると、オーストラリアの児童は興味津々。おはやしの太鼓のたたき方や虎舞の踊り方を教わり、日本の文化に触れた。

 

虎舞のおはやしでリズムを合わせる子どもたち

虎舞のおはやしでリズムを合わせる子どもたち

 

 ラグビー交流には釜石シーウェイブス(SW)RFCの選手が合流。パス練習の後、SW選手をかわしてトライを決める遊びを共に楽しんだ。最後に「ガンバロウカマイシ」「頑張ろうオーストラリア」とエール交換。友情を育んだ。

 

 ファーガス・ハリソン・フレーダー君は「素晴らしい経験をありがとう。思い出を大事にし、地元に戻って友達にたくさん伝えたい」と笑った。

 

 白野陽士(はると)君は「オーストラリアの子と一緒にラグビーをしたら楽しくて関心を持てた。釜石の良いところをいっぱい伝えられた」と満足げ。藤原和海(なごみ)さんは「国や言葉が違っても仲良くできると思った。世界の人ともっとたくさん交流したい」と刺激を受けていた。

 

ラグビーを通じて友情を育んだホストタウン事業の参加者

ラグビーを通じて友情を育んだホストタウン事業の参加者

 

 5人はこの日、鵜住居小も訪問。15、16日は釜石鵜住居スタジアムを会場にしたラグビーイベントなどに参加し、17日に帰国した。

 

 「復興『ありがとう』ホストタウン」事業は、震災で被災した3県の自治体が、支援してもらった国・地域の住民らと、東京五輪・パラリンピックに向けて交流する取り組み。市では、震災当時にSWに所属していたオーストラリア出身のスコット・ファーディー選手が救援活動に協力したり、震災後の海外派遣事業で中学生を受け入れるなど心を寄せていることに感謝し、相手国に選んだ。関連事業は、今年3月にファーディー選手を迎えて行われたイベントに続いて2回目の実施となった。

 

(復興釜石新聞 2018年9月19日発行 第724号より)

 

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釜石から始まるコンサートに意欲を見せる由紀さん(右から2人目)、中川さん(右)ら

「こころの歌人たち」釜石からスタート、9月30日 NHK BSで放送予定〜日本の音楽史に焦点、初回は作曲家の都倉さんに

「こころの歌人たち」で歌声を響かせた出演者ら=JASRAC提供

「こころの歌人たち」で歌声を響かせた出演者ら=JASRAC提供

 

 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は3日、釜石市大町の釜石市民ホールTETTOで、コンサートシリーズ「こころの歌人たち」をスタートさせた。JASRACが東日本大震災支援を目的に展開する「こころ音(ね)プロジェクト」から同ホール建設費として寄付金が贈られたのが縁となり、1回目の開催地に選ばれた。記念すべき初演となった今回、歌人として取り上げられたのは、同プロジェクトの発案者でもある作曲家の都倉俊一さん。ゆかりのある歌手たちが演奏とトークを繰り広げながら、曲作りの面白さや音楽の魅力を伝えた。

 

 こころの歌人たちは、日本の音楽史を支えてきた作詞家、作曲家らに焦点を当て、その作品の魅力と、彼らに影響を与えた作家たちの作品をトークとコンサートで紹介するシリーズ。年2回程度の開催を予定する。

 

 都倉さんは、1948年、東京都生まれ。4歳でバイオリンを始め、小学校、高校時代を過ごしたドイツで基本的な音楽教育を受ける。学習院大学在学中に作曲家としてデビュー。70年代には、「どうにもとまらない」「あずさ2号」「UFO」など数々のヒット曲を生み出した。2010年からJASRAC会長を3期務め、現在は特別顧問に就任。映画や舞台音楽も手掛け、現在もアイドルグループなどに楽曲を提供するなど幅広いジャンルで活躍している。

 

 この日のコンサートには、兄弟デュオの狩人、歌手の山本リンダさん、太川陽介さん、つるの剛士さん、ダンス・ボーカルグループのMAXらが出演し、都倉さんの代表曲の数々を歌い上げた。合間には都倉さんと出演者らが、それぞれの曲にまつわるエピソードを紹介。抽選によって選ばれた約700人の無料招待客で満席となった会場は大いに盛り上がりを見せた。

 

 特別演奏として釜石高吹奏楽部が登場。山本さんの「狙いうち」で爽やかな演奏を披露した。

 

 中妻町の菊池とし子さん(66)、町子さん姉妹は「青春時代を思い出す懐かしい曲ばかり。何回聴いても飽きない。やっぱり生で聴くのが最高。できれば踊りたかった。新しいホールができて、こうした催しを楽しめるようになって良かった」と笑顔を重ねた。

 

 コンサートの模様は30日午後7時半からNHKBSプレミアムで放送予定。

 

由紀さおりさん「息の長いコンサートに」 釜石初演の縁を無駄にせず

 

釜石から始まるコンサートに意欲を見せる由紀さん(右から2人目)、中川さん(右)ら

釜石から始まるコンサートに意欲を見せる由紀さん(右から2人目)、中川さん(右)ら

 

 コンサートの開始を前に、主催するJASRACが同ホールで記者会見を行い、こころ音プロジェクトや公演概要を発表した。司会を務める歌手の由紀さおりさん、中川晃教さんも出席し、意気込みを表明。スタート地となった釜石市の野田武則市長は「歌の素晴らしさ、楽しさを伝える手伝いができれば」と歓迎した。

 

 同プロジェクトは、JASRAC会員や作詞者、作曲者、音楽出版社など信託者からの申し出を受け、JASRACが分配する著作物使用料を「こころ音基金」として、復興と被災地の音楽文化の振興に役立てる取り組み。2015年に同ホールの建設費の一部として1千万円が釜石市に贈られた。

 

 JASRACの浅石道夫理事長が釜石開催の経緯を説明し、「この巡り合わせが今回の開催につながった。震災以降、日本各地で深刻な自然災害が発生している。音楽を通じた取り組みをここから続けていきたい。被災した人を癒やす一助になれば」と意義を強調。いではく会長は「コンサートで歌われる曲は、きっと皆さんの心の中にある思い出とリンクすると思う。楽しみながら鑑賞してほしい」と願った。

 

 由紀さんは、13年に開いた童謡コンサート以来の来釜。多様な文化に触れることができる新ホールの完成を喜び、「釜石で初演される縁を無駄にせず、息の長いコンサートに成長させたい。若い世代とコラボするのも楽しみ。次の世代に音楽をつなげられるような司会をしたい」と力を込めた。

 

 今回、司会に初挑戦する中川さんは「歌を通して感動、元気、音楽の魅力を届けたい」と気合十分。宮城県出身だが、釜石は初めての訪問で、「この地で始まる縁が全国につながっていくことを楽しみにしている」と期待を寄せた。

 

(復興釜石新聞 2018年9月8日発行 第721号より)

 

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「何かいたよ」。海には生き物がいっぱい

マリンスポーツに輝く笑顔、海の素晴らしさ満喫〜5年目のワンデイキャンプ、箱崎町白浜

ボードやシーカヤックで海の上を進む爽快感は格別

ボードやシーカヤックで海の上を進む爽快感は格別

 

 震災の影響で海に親しむ機会が減った子どもたちに、自然の脅威だけではない海の素晴らしさを感じてほしい──。5年目を迎えた「海あそびワンデイキャンプ」が8月26日、釜石市箱崎町白浜地区で開かれ、市内外の親子らがシュノーケリングやシーカヤック、ボード体験などに笑顔を輝かせた。

 

 海で活動する団体や漁師らが2013年に立ち上げた、海と子どもの未来プロジェクト実行委員会「さんりくBLUE ADVENTURE(ブルー・アドベンチャー)」が主催。地元釜石を中心に中学生以下の子どもと保護者42人が参加した。

 

 会場は、白浜漁港から船で約3分の隠れ家的ビーチ。地元で“小白浜”と呼ばれる場所で、岩場と砂浜、背後の森林が融合した美しい光景が目を引く。

 

 漁港でウエットスーツに着替え、ライフジャケットを身に着けた参加者は、地元漁師の船で浜に上陸。ライフセーバーやマリンスポーツの指導者らが見守る中、海の魅力を体感できる各種遊びに興じた。シュノーケリングで海中観察をする子、シーカヤックやスタンドアップパドルボード(SUP)で海上散歩を楽しむ子、波の動きに身をゆだね海に浮く心地良さを味わう子―。それぞれの楽しみ方で遊びに夢中になった。救助用水上バイクの試乗体験や、いざという時に救助を待つ場合の浮き身姿勢を学ぶ講習も。

 

「何かいたよ」。海には生き物がいっぱい

「何かいたよ」。海には生き物がいっぱい

 

 3回目の参加という平田小4年の堀切結太君(9)、今野礼翔君(10)は生き物探しで、「細長い魚や白いカニ、ヤドカリもいた」と大はしゃぎ。震災後、海で遊ぶ機会はあまりなかったといい、「この場所は山もあって景色も最高。いろいろな大人の人とも仲良くなれて楽しい」と声を弾ませた。

 

 盛岡市の杜陵小1年菅井絢音さん(7)は「海で追いかけっこをして面白かった。お友達もできた」とにっこり。母・文さん(42)は「学校が始まった疲れも吹き飛び、充電されているよう」と一安心。初めて訪れるビーチに「海がこんなにきれいだとは。裸足でもけがなく遊べる砂浜もいい。娘には五感を使って海の良さを感じてほしい」と願った。

 

 実行委によると、同キャンプ参加者数は年々増加。スタッフ希望者も増えていて、今回は大学生ボランティアを含め44人が運営面で力を発揮した。充実のサポート、安全体制は保護者の安心にもつながり、リピーターも多数。キャンプで培った海の専門家の連携は、復活が待たれる根浜海岸の海開きに向け、観光客の多様なニーズへの対応を可能にするものと期待される。

 

 同実行委共同代表の柏㟢未来さん(33)は「海で遊んだことがないという子はまだまだ多い。こういう催しが足を運ぶきっかけになれば。釜石の海が地元の誇りとして心に刻まれ、古里への愛着につながっていけばうれしい」と語った。

 

(復興釜石新聞 2018年9月1日発行 第719号より)

 

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本格的な劇場公演の復活に意気込むスタッフら

第32回釜石市民劇場、新市民ホールで初公演へ〜伝説「浜の孝子〜両石村庄助と鐘」海に生きる人々の姿を描く

本格的な劇場公演の復活に意気込むスタッフら

本格的な劇場公演の復活に意気込むスタッフら

 

 11月10日と11日の2回、釜石市民ホールTETTOで上演される第32回釜石市民劇場「伝説 浜の孝子(こうし)~両石村庄助と鐘」(同実行委員会主催、市、市教委、市芸術文化協会後援)に向けたスタッフやキャストの初顔合わせが24日、大町の青葉ビルで開かれた。市民劇場は東日本大震災後、鈴子町の大型テント・シープラザ遊を会場に5回を重ねてきたが、市民ホールの完成を受けて「劇場公演」が復活する。初顔合わせでは実行委のメンバーら約30人が役割を確認し、本格的な舞台設備を駆使した上演へ期待を高めた。

 

 「浜の孝子―」は2幕9場で、上演は約2時間。第12回公演の「漁(すなどり)の孝子」を実行委の久保秀俊会長(70)が書き直したリメーク作品だ。原作は、岩手県小学校国語教育研究会編に収録されたうちの1作で、釜石市の元教員、故石関正男さんが採収した。

 

 江戸時代中期、両石村に住む漁師の息子庄助は、親孝行で知られた。出漁して嵐に遭遇、岩場に沈んでいる美しい鐘を発見し、持ち帰った。庄助の誠実さ、孝行ぶりは南部藩にも伝わり…。さまざまな人間模様を織り交ぜ、海を頼り、漁を糧に生きる人々の姿を描く。

 

 久保会長は「大震災を経験し、海を恐れる心情が広まった。それでも、海を糧に生きる人は多い。(釜石と)海との長く、深い絆を考える機会になれば」と願いを込める。

 

 顔合わせでは、事業の日程、役割、作業工程などの大枠を協議した。演出は久保会長が担当する。舞台に船を登場させるなど、大道具は大掛かりになる。小道具を含めた工房、組み立て、保管場所の手当て。また、時代劇とあって、かつら、衣装を準備する必要もある。

 

 公演は初回が11月10日午後6時、2回目は11日午後1時の開演。
 引き続きスタッフ、キャストを募集している。問い合わせ・申し込みは久保会長(電話090・7798・2307)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年8月29日発行 第718号より)

 

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軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

水中観察船でクルーズ、釜石湾も一望〜震災から復興の海を満喫、2日間で588人乗船

釜石湾クルーズの参加者。県内外から家族連れなどが参加し、夏の思い出を作った=11日

釜石湾クルーズの参加者。県内外から家族連れなどが参加し、夏の思い出を作った=11日

 

 広島県尾道市の造船業、ツネイシクラフト&ファシリティーズ(神原潤社長)が所有する高速水中観察船「ハーモニー」(19トン、旅客定員70人)によるクルーズが11、12の両日、釜石湾で行われた。日本中小型造船工業会(東徹会長)と日本財団(笹川陽平会長)が実施する「海と日本PROJECT」の一環。2日間で計11便が運航され、588人が東日本大震災の津波から復興してきた海を満喫した。

 

軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

 

 11日は運航前に、発着場所の釜石魚市場脇岸壁で安全祈願の神事が行われた。東会長は「震災以降、海に対し怖いイメージを持つ人もいると思うが、海に囲まれた日本にとって海や船は生活に欠かせない。大切さを再認識してもらえれば」とあいさつ。震災前に運航していた釜石市の観光船「はまゆり」の元ガイド千葉まき子さんが船内アナウンスを務め、約1時間の湾内巡りに向かった。

 

 船は、津波被害から復旧した港施設や新たに設置されたガントリークレーンなどを見ながら進み、今年3月に復旧工事を終えた釜石港湾口防波堤へ。外海にも出て、内外の波の違いを体感してもらった。帰路は昨年5月に林野火災が発生した尾崎半島沿いを航行。尾崎神社奥宮のある青出浜周辺で、津波や火災を乗り越えた自然の姿を目の当たりにした。 

 

 同船には水深約1メートルの視点から海中をのぞける水中観察室がある。この日は先日来の雨の影響で視界は良くなかったが、乗船者はめったにない体験を楽しんだ。

 

 家族4人で乗船した甲子町の松田翔希君(7)は「防波堤が津波を抑えると知り、すごいと思った。海の中はあまり見えなかったけど、何か動いているものが見えた」と目を輝かせた。母真帆さん(42)は「船で海上に出られるのは貴重な経験。こういう機会が増えれば。観光船の復活にも期待したい」と話し、次男駿希君(3)も「また乗りたい」とはしゃいだ。

 

水中観察室で海の中の雰囲気を楽しむ親子

水中観察室で海の中の雰囲気を楽しむ親子

 

 インターンで釜石に滞在中の立教大観光学部3年、小玉佳穂さん(21)は「防波堤を抜けたら一気に波が出てきて、その役割の大きさを実感。初めて見るリアス式海岸は景色もきれい。被災を感じないくらい港も復興している」と驚いた様子。同じインターン生の小林大さん(20)は「釜石のまち並みを海上から一望できるのが面白い。海からだと地形も分かるし、遠目から見ると、さまざまなものが陸上とは違って見える」と新鮮な感動を表した。

 

 同会会員の神原社長は2011年の震災を機に山田町に子会社ティエフシー(同社長)を設立。造船技能者を養成し、13年から工場を稼働している。船舶建造技術を生かし、これまでにアルミ浮揚型津波シェルターも開発した。

 

 「ハーモニー」は元々、渦潮観潮船として徳島県の鳴門観光汽船が運航していたもので、代替わりする際、代々受注してきたツネイシが「震災被災地で役立てたい」と下取りした。船は山田町に運ばれ、昨年7月、湾内で初クルーズを実施。カキの養殖棚見学などで地元水産業の一端を学んだ。

 

 同プロジェクトは2015年に始動。各地の船を活用したクルーズや造船所見学などで船や海に親しみを感じてもらい、業界の担い手育成につなげる狙いがある。このクルーズには予定定員の約2倍、1068人分の応募があり、抽選で乗船者を決定した。

 

(復興釜石新聞 2018年8月18日発行 第715号より)

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釜石市出身で東北の童話の語り手活動を続ける宮園智子さん

宮園智子さん 釜石で初のおはなし会、復興の願い「賢治童話」に〜震災でふるさとの大切さを知る

宮園さんの語りに耳を傾ける同級生ら

宮園さんの語りに耳を傾ける同級生ら

 

 「釜石弁で語る宮澤賢治の世界」と題し、釜石市出身で東北の童話の語り手活動を続ける宮園智子さん(65)=旧姓赤崎、福岡市在住=が7月21日、ふるさと釜石で初めて、大町のミッフィーカフェでおはなし会を開いた。語り手活動を続けて30年になるが、「東日本大震災で、自分が育ったふるさとの大切さを知った」と宮園さん。中学、高校時代の同級生らを前に、ふるさとへの思いを釜石弁に乗せ、賢治童話などを情感豊かに語った。

 

 宮園さんは結婚を機に九州に移り住み、震災では釜石にいる長姉を津波で亡くし、多くの親戚や知人も被災。長年続ける語り手活動を通じて被災地への支援を呼び掛け、集まった募金を釜石に届け続けている。

 

 今回は、高校、大学の1年後輩に当たる桑畑眞一さん(64)が経営する桑畑書店の開店1周年記念に招かれ、おはなし会を開いた。

 

 「ムガス ムガス アルドゴロニ ナヌモカヌモ セッコギヤミノ ズサマ、バサマガイダンダド……」(「力太郎」)。「釜石で、釜石弁で語るのが一番のプレッシャー。オショス(恥ずかしい)」と言いながらも、宮園さんの語りは確信に満ちて力強く、よどみなく流れた。

 

ふるさと釜石復興の願いを重ねて「賢治童話」を語る宮園智子さん

ふるさと釜石復興の願いを重ねて「賢治童話」を語る宮園智子さん

 

 続けて、宮澤賢治の「注文の多い料理店」。自ら演奏するリコーダー(たて笛)のメロディーに乗せながら、「フタルノ ワガイ スンスガ……」と、やさしく語りかける。釜石弁のイントネーションが、聴く人の耳にすうっと吸い込まれた。

 

 宮園さんは30年ほど前から、図書館などで絵本の読み聞かせボランティア活動を始めた。レパートリーは現在、昔話が30ほど、賢治作品は「よだかの星」など6つ。「賢治が生まれた明治29年、亡くなった昭和8年はいずれも三陸が大津波に襲われた年」と宮園さん。震災後は「被災した東北に目を向けてほしい」との思いで活動を続けているという。

 

 「震災を機に私は変わった」と宮園さん。この日の客席には、今も仮設住宅で暮らす母正(まさ)さん(93)の姿もあった。釜石弁による童話に耳を傾けた中学、高校時代の同級生からは「釜石弁を大事にしてくれて、ありがとう」と感謝の声が上がった。

 

(復興釜石新聞 2018年8月1日発行 第711号より)

 

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世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

 

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業
特別企画展 橋野鉄鉱山って?!―登録関連資料・発掘資料展示会―

 

今年は、国内では19番目、県内では「平泉の文化遺産」に続いて2番目の世界遺産である橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されて3年になります。

 

橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでは、8月31日(金)まで世界遺産登録3周年を記念して、特別企画展を開催します。(入場無料)

 

展示内容

橋野鉄鉱山の世界遺産登録までの経緯や発掘調査資料などを展示します。

開催期間

8月8日(水)~31日(金)

場所

橋野鉄鉱山インフォメーションセンター 展示室(釜石市橋野町2-6)

開館時間

9時30分~16時30分

問い合わせ

釜石市世界遺産課 ☎ 0193-22-8846

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 世界遺産課
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-8846 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/kanko/detail/1221043_2430.html
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完成間近のスタジアム内にある花壇にドウダンツツジを植える釜石東中の1年生と釜石SW選手ら

鵜住居復興スタジアムに植樹、ラグビーW杯へ機運高め〜釜石東中生ら「緑のバトン」、横浜市老松中 東京都環境衛生協会も協力

完成間近のスタジアム内にある花壇にドウダンツツジを植える釜石東中の1年生と釜石SW選手ら

完成間近のスタジアム内にある花壇にドウダンツツジを植える釜石東中の1年生と釜石SW選手ら

 

 来年のラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場として釜石市鵜住居町に整備中の釜石鵜住居復興スタジアムで18日、今月末の完成を前に大会に向けた機運を高めようと植樹会が開かれた。釜石東中(佐々木賢治校長、生徒117人)の1年生39人のほか、釜石シーウェイブス(SW)RFCの選手、地域住民ら約90人が参加。同スタジアム敷地内にあるサブグラウンド周辺の花壇に、ドウダンツツジ約140本を植えた。

 

 苗木は岩手県産で、群馬、東京、神奈川、静岡、愛知の5都県、8つの小・中学校、高校の児童生徒が釜石の復興を願って、学校で1年間育てた。この取り組みは、子どもたちが学校で育てた苗木を被災地に植樹する「緑のバトン運動」の一環。参加者は、思いが込められた苗を丁寧に植え付けた。

 

釜石の復興を願い、協力し合って作業に励んだ参加者

釜石の復興を願い、協力し合って作業に励んだ参加者

 

 90本の苗木を提供した横浜市立老松中(生徒413人)の谷博章校長が代表して来釜。創立70周年を記念し社会貢献できるものをと、生徒会を中心に取り組んだ。植樹を見守り、「これも何かの縁。元気よく育ってほしい」と願った。

 

 釜石東中の佐々木太一君は「育ててくれた人たちの思いを引き継いで立派な木にしたい。大きくなるのが楽しみ」と話した。

 

 植樹には東京都環境衛生協会の会員20人も協力。理容・美容、公衆浴場、ホテル・旅館などで構成する同協会は震災後に支援で釜石を訪れており、W杯釜石開催の決定後にはスタジアム周辺の植栽活動のため、募金活動で集めた1100万円を市に寄付している。森本善三理事長は「釜石がさらに発展するよう願う。未来に向け頑張りましょう」とエールを送った。

 

 同スタジアム周辺では9月末にも植樹を予定している。

 

(復興釜石新聞 2018年7月21日発行 第708号より)

 

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「東北希望コンサート」で歌を楽しんだ唐丹小・中の児童生徒ら

たて琴で奏でる弾き語り、唐丹小・中で希望コンサート〜木村弓さん「いつも何度でも」

「東北希望コンサート」で歌を楽しんだ唐丹小・中の児童生徒ら

「東北希望コンサート」で歌を楽しんだ唐丹小・中の児童生徒ら

 

 音楽の力で被災地の子どもたちの心の復興を応援する「歌を絆に~東北希望コンサート」(同実行委主催)が13日、唐丹小(佐々木康人校長、児童46人)、唐丹中(菊地正道校長、生徒35人)体育館で開かれた。児童・生徒のほか、地域住民ら約30人も招待。作曲家で歌手の木村弓さんが、たて琴ライアーの弾き語りで歌声を届けた。

 

 木村さんはドイツで生まれた楽器と言われているライアーを奏で、自身が作曲した映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」を披露。作曲家でピアニストの中川俊郎さんの伴奏に合わせ、映画「ハウルの動く城」の主題歌「世界の約束」や「花は咲く」などで美しい歌声を響かせた。

 

 知っている曲では手拍子で盛り上げ、一緒に口ずさんだりしてコンサートを楽しんだ児童、生徒たち。全員で両校の校歌を歌って締めくくった。

 

たて琴の弾き語りで歌声を届けた木村弓さん

たて琴の弾き語りで歌声を届けた木村弓さん

 

 5、6年生13人はお礼にトーンチャイムで「いつも何度でも」を合奏。演奏を聴いた木村さんは「一つ一つの音を大切に奏でていると感じた。味わいのある演奏で、ぐっときた」と目を潤ませ、心に残る時間を過ごせたと優しい笑顔を残した。

 

 唐丹中の生徒会長、鈴木萌々夏さん(3年)は「感動。音楽は楽しいだけじゃなく、励ましや喜びなどさまざまな感情を感じることができるものだと思った。素晴らしい時間を届けてもらった」と感謝。唐丹小の大坂凛さん(6年)は「大好きな曲を生で聴くことができ、演奏もミスをしないでできたので良かった。ピアノをやっていて、2人のように思いを伝えられるような演奏ができるように頑張りたい」と目を輝かせた。

 

 同コンサートは東日本大震災の被災3県のラジオ局などが中心となって2012年5月から被災地の小中学校で開いている。このコンサートの模様はIBC岩手放送で8月18、25、9月1日の3週にわたって放送する予定。

 

(復興釜石新聞 2018年7月18日発行 第707号より)

 

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古里で初めての個展を実現した藤枝新悦さん

震災後の古里の風景描く、甲子町洞泉「こすもす」で油彩展〜「海が好き」「釜石が好き」定年退職 Uターンの藤枝新悦さん

古里で初めての個展を実現した藤枝新悦さん

古里で初めての個展を実現した藤枝新悦さん

 

 釜石市甲子町砂子で「アトリエ陽炎(かげろう)」を主宰する画家、藤枝新悦さん(66)の油彩展が甲子町洞泉の「創作農家こすもす」で開かれている。神奈川県から古里にUターンして4カ月。地元では初めての個展で、震災後に描いた釜石港周辺の油彩画を中心に11点が展示されている。

 

 藤枝さんは大町出身。もともと絵を描くのが好きだったが、高校時代に出会ったゴッホの作品に衝撃を受け、独学で油彩を始めた。画家を目指し美術大学を受けたものの入り口は狭く、親の反対もあったことから就職を選択。神奈川県川崎市の大手電機メーカーで材料開発に携わった。

 

 絵を描くことを諦め切れず、川崎の美術協会に所属。どんなに仕事が忙しくても毎日協会のアトリエに通い、描き続けた。20代前半に仲間とともに絵画グループ「陽炎会」を結成。神奈川県内でグループ展や個展などを毎年開催するなど精力的に活動した。

 

 定年退職後、化学製品の製造販売会社に再就職したが、2年前、妻の介護に専念するため退職。以前から「釜石にアトリエを作り、古里の自然を描きたい」との思いがあり、昨年3月に妻を亡くすと、そうした思いが一層強まった。今年3月に地元釜石へ。当初、実家のあった大町周辺での暮らしを考えていたが断念し、現在の場所で中古物件をリフォーム、自宅兼アトリエを構えた。

 

 実家が海に近いこともあり、「海を描いた絵が多い」と藤枝さん。今回の展示も、新浜町の魚市場や浜町の高台、港町、嬉石町などから眺める海の風景画が中心だ。ほとんどが震災後に描かれたもので、現場に行って感動した風景をキャンバスに残している。

 

 藤枝さんは10年ほど前から毎年里帰りした際、古里の風景を描いてきたが、震災で実家が被災。保管していた10点を超える作品も失った。「それでもやっぱり海が好き。釜石が好き。生まれたところだから」。見慣れた風景が変わってしまったことに寂しさを感じつつ、海に足を運び続ける。

 

 古里に戻り、一つの夢をかなえた藤枝さん。次なる目標は「甲子地区の冬の風景を描くこと」。現在の住まい周辺でも知り合いが増え、「記録として人物画も描きたい。自分なりに表現し、残したいもの、やりたいことはいっぱいある」と意欲は衰えない。

 

 藤枝さんにとって、絵は「表現するための手段で、生きがい」。今回の展示は8月上旬までを予定している。その後も作品を変えながら継続したい考え。「釜石の自然の良さを見て感じてもらえたら」と来場を呼び掛ける。

 

 創作農家こすもすの営業時間は午前11時から午後4時。火・水曜日は定休日。

 

(復興釜石新聞 2018年7月14日発行 第706号より)

 

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鵜住居小児童と協力してキリの苗木を植える一冊の会会員(右)

「未来をつくって」と願い込め、復興見守るキリ植樹〜NPO法人一冊の会、鵜住居小児童と3本

鵜住居小児童と協力してキリの苗木を植える一冊の会会員(右)

鵜住居小児童と協力してキリの苗木を植える一冊の会会員(右)

 

 NPO法人一冊の会(事務所・東京都、大槻明子会長)による東日本大震災・復興祈念植樹式は11日、鵜住居小(中軽米利夫校長、児童138人)で行われ、同校校舎敷地内にキリの苗木3本を植えた。

 

 同法人は50年以上前から図書や文房具、物資の寄贈を通して途上国や被災地の支援活動を行っている。震災後は福島県相馬市から青森県八戸市までの被災地を回って物資を届けたり、キリの植樹などの活動を展開。今回の釜石訪問で125回目になるという。

 

 この日、植えたのは20センチほどに育った「雪香プロスパーポローニア」と名付けられたキリの苗木。同法人の活動に尽力した故相馬雪香さんにちなんだものだという。相馬さんは「憲政の神」「議会政治の父」と呼ばれた政治家、尾崎行雄の三女。「難民を助ける会」を立ち上げるなど生涯、社会貢献活動に取り組んだ。キリの花言葉は「高尚」。社会のため、人のために活動した相馬さんの生き方を伝え、東北の復興を願って今回の植樹が企画された。

 

 同法人が支援するアフリカ南部にあるレソト王国も植樹に協力。大槻会長、同国大使館の藤江武洋通商・投資促進担当官らとともに、同校6年生19人が正面入り口階段周辺ののり面に植えられた苗木の根元に代わる代わる土を盛った。

 

苗木と子どもの健やかな成長を重ね合わせた野田市長ら参加者

苗木と子どもの健やかな成長を重ね合わせた野田市長ら参加者

 

 大槻会長は「何事も本気が大事。小さなことでも真心を込めれば思いは伝わる」との相馬さんの言葉を胸に活動を続けていることを紹介。「木が育つように、皆さんも大きく立派に成長し、日本の中心で活躍、未来をつくってほしい」と願った。

 

 児童会長の佐々木大和(とわ)君は「遠いところから来てくれてありがとうございます。大事に育て、すごいと思ってもらえるようにしたい。また鵜住居に来てほしい」と感謝。澤本美海(みうな)さんは「木に負けないよう、いろんなことを頑張って立派な大人になる」と力をもらった様子だった。

 

 式には野田武則市長も参加。「鵜住居地区は震災の光と影を併せ持つ場所。キリの木に込められた思いを大事にし、子どもたちや地域とともに成長を見守りたい。復興を遂げ、さらなる発展に尽力する」と約束した。

 

(復興釜石新聞 2018年7月14日発行 第706号より)

 

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