郷土愛育む伝統の舞、釜石市郷土芸能祭〜次世代継承の願い込め、市内外から5団体出演
大船渡市三陸町越喜来に伝承される「浦浜念仏剣舞」
第24回釜石市郷土芸能祭(市、市教委主催)は8日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。市内から「橋野鹿踊り」「箱崎虎舞」など4団体、特別出演として大船渡市三陸町の「浦浜念仏剣舞」が出演。約450人が各地に継承される伝統の舞を堪能した。
開演に先立ち、同祭実行委の川原清文委員長は「郷土芸能は地域に根差した伝統文化であり財産。郷土愛を育むことにもつながる」とあいさつした。
トップを飾った「荒川熊野権現御神楽」は唐丹町の荒川町内会(雲南幹夫会長)が伝承する。1187(文治3)年に海上安全、火防などの守護神として紀州熊野から分霊を勧請した「荒川鎮座熊野神社」の信仰とともに今に至る。毎年小正月の時期に地域住民の厄をはらう門打ちを続けている。
同祭出演は22年ぶり4回目。神の使いとされる御獅子が悪魔をはらう御神楽舞、地の守舞など4演目を総勢約40人で披露した。文化部長の久保正春さん(67)は「地域になくてはならないもの。人が少なくなり大変だが、何とか後継者を育てていきたい」と願った。
信仰の対象として大事にされている「荒川熊野権現御神楽」
「“正調”釜石浜唄、釜石小唄」として両曲の踊りを披露したのは、瓦田季子さん(81)率いる「瓦田会」の5人。同浜唄は大正時代、釜石に入港した船頭衆が歌っていた九州の浜節からヒントを得て、尾崎神社の山本茗次郎宮司(当時)ら町の名主が作詞。お座敷唄として親しまれてきた。
浜町「幸楼」で73年間、芸者として浜唄を歌い継いできた藤間千雅乃さんは2016年に他界(享年89)。藤間さんの弟子で、さまざまな場で浜唄を踊っていた木皿宏子さんも翌17年に亡くなった(享年76)。
2人の遺志を継ぎ、踊りの伝承に励む瓦田さんは、13年の同祭にも藤間さんらと出演。「浜唄は釜石が誇る大事な文化の一つ。多くの人に知ってほしい」と願う。初舞台を踏んだ岩鼻千代美さん(46)は「継承への意欲を持つ若者が現れるよう、次世代につないでいきたい」と思いを新たにした。
藤間さんらの思いを継ぎ釜石浜唄を踊る「瓦田会」
県の無形民俗文化財に指定される「浦浜念仏剣舞」は、江戸時代中期に始まったと推測される。疫病や津波などで何度も途絶えたが、1972(昭和47)年に浦浜青年会が復活させ、保存会も結成された。同祭では舞台上に東日本大震災犠牲者を慰霊する塔婆を立て「念仏踊り」を披露したほか、悲しみを吹き飛ばすような荒々しい踊りが特徴の「長刀(なぎなた)」「高館(たかだち)」も見せた。
初めて足を運んだ大平町の70代女性は「最高でした。大船渡の念仏剣舞は興味深かった。釜石の芸能もなかなか見られないので、来て良かった」と声を弾ませた。
同祭は1977年にスタート。これまで市内59芸能が披露されている。2006年からは市外団体の特別出演も。近年は、ほぼ隔年度で開かれている。
(復興釜石新聞 2019年12月14日発行 第850号より)
第24回釜石市郷土芸能祭
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