80年の創作活動集大成、元小学校長の鈴木洋一さん 市民ホールで初の個展〜絵を描くことが生きがいに、「元気なうちに」と家族が企画


2019/09/10
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

初の個展を開いた鈴木洋一さん(中央)、後押しした家族ら

初の個展を開いた鈴木洋一さん(中央)、後押しした家族ら

 

 釜石市民絵画教室の講師を務めるなど長くキャンバスに向かい続けてきた鈴木洋一さん(87)=釜石市甲子町大畑=の絵画展は8月30日から9月1日まで、大町の釜石市民ホールTETTOで開かれた。自身初となる個展は、高齢の鈴木さんに代わって長男崇さん(56)ら家族が後押しし、米寿を記念して企画。釜石の港の風景をはじめ、遠野、江刺、秋田、函館など県内外の風景、花や魚などの静物を写実的に描いた油彩画合わせて93点を展示した。

 

 鈴子町出身の鈴木さんは釜石工業高(現釜石商工高)を卒業後、代用教員として働きながら通信教育で正規の教員となり、釜石や遠野市の小学校に勤務。校長として平田小(2年間)、釜石小(4年間)に務め、1992年に定年退職した。

 

 幼いころから絵を描くことが好きだった鈴木さん。小学5年の時に写生大会で“1番いい賞”をもらったうれしさで、さらに夢中になった。当時は「いたずらだった」と振り返るが、描く楽しさは教員となってからも残り、独学で描き続けた。美術の会派には属さず活動。退職後に同教室の講師などを務めた。

 

 同教室の作品展には数点の作品を出展。これまで描いた作品を見てもらう機会にと、画集の制作や個展の開催などを考えたことはあるが、忙しさで実現しなかった。

 

 ここ数年、鈴木さんは体調を崩し、入退院を繰り返すようになった。「元気なうちに実現させたい」。崇さんら家族が個展の開催を勧め、鈴木さんも「米寿の記念に」と発起した。

 

 古里を残しておきたい―。そんな思いを込め、筆を走らせた四季折々の海、川、山、街角といった風景画が並んだ。特にお気に入りのモチーフは製鉄所のクレーンと船が行き交う釜石港。「釜石らしさ」を見せる作品として10点近く紹介した。

 

 同教室のスケッチ旅行で訪れた奥入瀬(青森県)や小泊港(秋田県)、函館(北海道)の教会などを描いた作品も。「みんなで歩いた楽しい思い出」を残した。

 

 風景画だけでは見る人が息苦しくなると心を配り、動植物の静物画、孫など人物画も展示。郷土芸能の躍動感を表現した作品もあった。

 

 これまで描きためた作品は200点近くある。その一部を紹介でき、鈴木さんは「みんなに応援、力添えをもらい、ありがたい。思い残すことはない」と満足顔。だが、絵を描くことは生きがいで、「スケッチをしていて作品に仕上げてないモチーフがある。まだ描くでしょうね」と、キャンバスへ向かう思いは尽きない。

 

 崇さんは「(父は)昔からの知り合いに会い、話ができて楽しそうだ。生き生きして、目に力が戻った。絵を通してたくさんの人に喜んでもらい、うれしい」と目を細めた。

 

(復興釜石新聞 2019年9月4日発行 第821号より)

 

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