釜石市民吹奏楽団、固い絆 ブラスで奏でる〜音楽で育む友情、板橋区吹奏楽団 賛助出演
釜石、板橋の団員が同じステージに立ち、音楽の楽しさを伝えた演奏会
釜石市民吹奏楽団(谷澤栄一団長、60人)の第53回定期演奏会(市民芸術文化祭参加)は24日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。昨年、創立40周年を迎え、震災後初のホール公演で新たな一歩を踏み出した同団。今年は、被災からの復活を物心両面で支援してきた東京都の板橋区吹奏楽団(辻啓宏団長、60人)が賛助出演し、音楽が結ぶ両市区の絆を観客と共に分かち合った。
演奏会は3部構成。1部と3部は釜石のステージで、ファンファーレ「輝く日への前奏曲」で幕開け。「寄港地~3つの交響的絵画~」、映画「海の上のピアニスト」のテーマ曲など、港町釜石を印象づける楽曲のほか、「ジョーズ」「ある愛の詩」など米映画の大作、ディズニー映画の各メドレーも披露された。
2部に登場した板橋は「~音・楽・絵・巻~ミュージック・ページェント」と題し、音と映像で送るステージを披露。ジュラシック・パークのテーマ、組曲「動物の謝肉祭」など自然や生き物を意識した曲を演奏し、曲の世界観を目と耳に訴えた。
板橋区吹奏楽団(板吹)は2011年10月、東日本大震災の津波で楽器を失った釜石へティンパニーなどの大型楽器と管楽器を寄贈した。同年は板吹の創立25周年にあたり、団は大型楽器の入れ替えを予定していたが、折しも震災が発生。被災した同じ社会人吹奏楽団を支援できないかと考え、盛岡吹奏楽団の仲介で釜石への楽器寄贈が実現した。以来、両団は互いの演奏会に招き合うなど交流を重ね、「釜石にホールが再建された際には一緒に演奏を」という夢を、ついにかなえた。
この日は板吹の団員35人が来釜。アンコールでは釜石市吹と「木陰の散歩道」など2曲を合同演奏し、感動の演奏会を締めくくった。板吹の辻団長(35)は「自分たちの楽器が現役で活躍しているのを見て、うれしく思う。釜石の団員はすごく楽しそうで、演奏から『音楽が生きる力になっている』のを感じる」と喜びの表情。同団が誇る「ステージドリル」を釜石で披露したいという新たな夢も描き、継続交流を願った。会場では名誉団長の坂本健板橋区長のメッセージも披露された。
釜石市吹の谷澤団長(60)は念願の合同演奏に「音楽に言葉はいらないというのはまさにその通りで、前から一緒にやっているような感じ」。板吹の支援に改めて感謝し、「いろいろな方に助けられ、真摯(しんし)に音楽に取り組んできたからこそ今がある。今後は各所に出向いての演奏もできるだけ増やしていきたい」と意気込んだ。
釜石高吹奏楽部の朝倉芽生さん(1年)、佐藤七海さん(同)は板吹のステージに「映像とライトの演出が曲と合っていて、すごく引き込まれた」と感激し、「場所は離れていても音楽でつながり、助け合う姿は素晴らしい」と大先輩に敬意を表した。
(復興釜石新聞 2019年11月30日発行 第846号より)
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