澄んだ音色に広がる笑顔、「希望のピアノ」唐丹小・中に〜唐丹希望基金から贈り物
「希望のピアノ」を喜ぶ唐丹小高学年の児童と「唐丹希望基金」の高舘代表(左)
東日本大震災で校舎を失った唐丹小(佐々木康人校長、児童44人)と唐丹中(菊地正道校長、生徒32人)の支援を続ける「唐丹希望基金」(高舘千枝子代表)は12日、両校兼用の体育館で使用するグランドピアノ1台を寄贈した。児童・生徒全員が「希望のピアノ」を囲み、澄んだ音色に笑顔を広げた。
体育館で行われた贈呈式で、菊地校長は「唐丹の子どもに新しいピアノを―と支援した全国の人たちの思いを忘れてはいけない。大切に使おう」と呼び掛けた。
矢巾町から訪れた高舘代表(70)は「以前のピアノが使えないという話を聞き、今年6月から募金を始めた。唐丹出身者の東京唐丹町会、釜石市の姉妹都市である東京都荒川区のみなさんや、全国の570人以上の方々が協力してくださった。唐丹の子どもたちが元気に勉強し、立派な大人になるよう願う」と期待を述べた。
唐丹小児童会長の岩澤優真君(6年)は「きれいな音色に合わせて、きれいな声で合唱練習します」、唐丹中生徒会長の久保翔太君(2年)は「ピアノに合わせて心を込めて歌い、多くの人に感謝の気持ちを伝えたい」と喜びを語った。
寄贈されたグランドピアノはヤマハ製。側面に「希望のピアノ」とサインされた。児童らが鍵盤に触れ、「前のピアノより音がきれい」と期待を膨らませた。
唐丹町片岸地区にあった唐丹小は震災の津波で校舎や体育館が壊れ、ピアノも使えなくなった。小白浜地区にあった唐丹中も地震で校舎が使用不能に。小学校は震災の翌年度から平田小で間借り授業。中学生は地震に耐えた体育館を仕切った教室で学んだ。12年12月、小白浜地区に両校の仮設校舎が完成、移転した。17年4月から、現在の本設校舎で共に学ぶ。
これまで体育館にあったピアノは震災後に東京芸大が支援したが、耐用年数を過ぎて楽器の機能を失った。
震災後に唐丹教育支援プロジェクトを立ち上げ「唐丹希望基金」として支援を継続する元教員の高舘代表らが全国の仲間に呼び掛け、ピアノに特化した支援金を募った。これまでの支援金総額は3千万円以上に上るが、物品を贈るのは今回のピアノが初めて。
「この9年の間に子どもや地域の人たちの心が柔らかくなったと感じる。ピアノを贈るのは、いい記念になった。感無量」と高舘代表。募金活動は本年度で終えるが、管理している積立金を運用した支援活動は今後もしばらく続けるという。
来年3月の唐丹中の卒業式後、両校PTAが中心となり「唐丹希望基金への感謝のつどい」を開く。
(復興釜石新聞 2019年12月14日発行 第850号より)
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