生ブラスで輝く時間を 心躍るステージに観客も笑顔
37人の力を結集した釜石高吹奏楽部の定期演奏会
釜石高吹奏楽部(石村海帆部長、37人)の第88回定期演奏会は7月17日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。1年生18人を迎え、例年より多い部員数で活動する同部。演奏会ではさらに厚みを増した音の響きで観客を魅了し、会場一体となって音楽の楽しみを味わった。
3部構成のプログラム。1部は吹奏楽の醍醐味(だいごみ)を味わえる3曲。過去にコンクールの課題曲にもなった吹奏楽のための「風之舞」、今年のコンクールで同部が自由曲に選んだ交響詩「あんたがたどこさ」など、曲調の変化でストーリー性を感じさせる作品を届けた。
2部は五輪イヤーにちなみ、テレビ中継各局がテーマソングに用いた曲など5曲を演奏。選手の活躍と重なる印象的な楽曲が観客の心を捉え、開幕を間近に控えた東京五輪への期待感を高めた。3部は人気グループのヒット曲やアニメソングのステージ。〝縄跳びダンス〟が話題となったNiziUの「Make you happy」など2曲は1年生部員がダンスパフォーマンスで盛り上げ、にぎやかなステージとなった。
1年生部員のダンスでステージは一層華やかに
休憩時間はアンサンブル演奏でも楽しませた
合間の休憩時間には各種楽器のアンサンブル演奏も披露。約350人の観客が生徒の頑張りをたたえ、盛んな拍手を送った。山田町の千代川博一さん(69)は、本年度入部した孫の陽琉さん(1年)の応援を兼ねて来場。同部の演奏は初めて聞くといい、「高校生の演奏はやはり音量や技術が違う。知らない曲も結構あったが楽しめた」と声を弾ませた。
ミッキーマウス・マーチでは各パートが楽器の魅力をアピール
久しぶりの大所帯となった同部。コロナの影響が続く中、練習場所を増やしての〝密〟の回避、換気の徹底など感染防止対策を講じながら練習を重ねる。「昨年よりは練習時間を確保できているが、人前で演奏する機会は極端に減った。自分たちもお客様も共に楽しめる演奏会は気持ちが高ぶる。こういう場を大事にしたい」と石村部長(3年)。
昨年度は中止され、2年ぶりの開催となった県吹奏楽コンクール沿岸地区大会(7月3、4日)では、高校小編成の部で金賞を受賞。1位通過で県大会出場を決めた。2日に北上市で開かれた県大会同部門には18校が出場。釜石高は銀賞だった。
部員7人が心を込め感動のハーモニー ミュージカルにも初挑戦
美しいハーモニーで観客を魅了する釜石高音楽部
釜石高音楽部(平松和佳奈部長、7人)は7月24日、市民ホールTETTOで第7回定期演奏会を開いた。会の実現へ協力してくれた同校の仲間、来場者に感謝しながら、最高のステージを届けた。
3部構成の1部は「ア・カペラの響き」と題し、ラテン語の宗教曲「おお 聖なる宴よ」など3曲を披露した。2部は邦人作曲家による合唱曲。木下牧子作曲の「散歩」は4声部以上に分かれる難易度の高い曲で、練習の成果が光った。信長貴富編曲の「7つの子ども歌」からは「通りゃんせ」「ずいずいずっころばし」など4曲を抜粋。現代のアレンジでよみがえるわらべ歌は新鮮な感動を与えた。
2部には、部員にOGがいる縁で「遠野少年少女合唱隊」が賛助出演。遠野地方に伝わるわらべ歌「ほたるのうた」「とんびとんび」などを聞かせ、演奏会を盛り上げた。
賛助出演した遠野少年少女合唱隊。地域を越えて合唱の輪を広げる
3部は3年生が集大成としたミュージカル。名作「シンデレラ」のストーリーを同部オリジナル脚本で上演した。全部員で登場人物を演じ、各場面での歌が物語の世界観を高めた。アンコールは、震災を機に生まれた「群青」、「願い~震災を乗り越えて~」を歌唱。「願い―」は震災後、避難所となった釜石高体育館で当時の音楽部が歌った曲に作曲者が新たな歌詞を付けたもので、全国で歌い継がれる。
初挑戦のミュージカル「シンデレラ」。練習を重ねた演技、歌唱を大舞台で披露
甲子町の菊池幸紀さん(20)は「合唱曲もミュージカルも素晴らしい仕上がり。感動した。コロナ禍でも生徒たちの力を発揮する場は必要。鑑賞の機会は観客にとってもありがたい」と喜んだ。
同部は本年度1年生2人、3年生5人で活動。演奏会にはピアノ伴奏や裏方スタッフで吹奏楽部など他部の生徒が協力。平松部長(3年)は「多くの支えをいただき、何とか成功できた。人数も少なく不安が大きかったが、出来は上々。自分たちも楽しんでやれた」と達成感をにじませた。
とびきりの笑顔でミュージカルを締めくくる部員ら
前日には不来方高、前週には宮古高の定期演奏会に出演。震災後につながった両校との絆は今も途絶えることなく続く。震災から10年―。「私たちも大きな力をもらってきた。後輩にもつないでいってほしい」と平松部長。今月下旬に予定される全日本合唱コンクール県大会では「みんなが後悔なく、いい演奏ができれば」と願う。