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会員の指導を受けながら三味線に取り組む生徒

和の響きに関心 釜石中で長唄三味線教室 「さくら」に挑む

バチの持ち方指導から始まった釜石中の三味線教室

バチの持ち方指導から始まった釜石中の三味線教室

 

 釜石中(佐々木猛校長、生徒308人)で9日、2年生を対象に長唄三味線教室が開かれた。初めて三味線に触れる生徒がほとんどだったが、わずか1時間の指導で、「さくら」をそろえて奏でるまで上達。指導した杵家会釜石支所(杵家弥多穂代表)の会員による演奏鑑賞会もあり、生徒たちは邦楽の響きに関心を寄せた。

 

会員の指導を受けながら三味線に取り組む生徒

会員の指導を受けながら三味線に取り組む生徒

 

 同校では2日も三味線の指導が行われている。9日は2年生116人(4学級)のうち2クラス約55人が受講。クラスごとに1限ずつ充て、弥多穂代表ら名取レベルの5人を講師に三味線の持ち方、バチの当て方を教わったあと早速、「さくら」の演奏に挑んだ。

 

 2年3組の授業では、独特の楽譜を見ながら練習を開始。最初はとまどい気味の生徒たちも会員の熱の込もった指導で繰り返すうちに指が滑らかに動くようになり、授業の最後には“合奏”ができるようになった。

 

独特の楽譜を示しながら指導に当たる杵家弥多穂代表

独特の楽譜を示しながら指導に当たる杵家弥多穂代表

 

 楽しそうに練習を重ねた小澤歩武(あゆむ)君と小山多聞君は「三味線に触れるのは初めて。難しかったけど、結構うまく弾けて楽しかった。機会があればまたやってみたい」と声をそろえた。

 

初めて触れた三味線での合奏を楽しむ男子生徒

初めて触れた三味線での合奏を楽しむ男子生徒

 

 演奏鑑賞会では四季の違いを表現した長唄などを披露。歌舞伎十八番「勧進帳」の一部も紹介され、生徒数人が寸劇に登場した。

 

 杵家会釜石支所の学校訪問指導は2002年から継続。地元のほか盛岡市など県内陸部にも広がり、受講した児童、生徒は約6000人になる。文化庁の芸術家派遣事業として実施する本年度は釜石市内2中学校で予定し、釜石東中はすでに終えている。

専門学校の設置を柱とする包括連携協定を結んだ野田市長(右)と龍澤理事長(左)=釜石市提供

釜石に専門学校開校へ 龍澤学館と包括連携協定

専門学校の設置を柱とする包括連携協定を結んだ野田市長(右)と龍澤理事長(左)=釜石市提供

専門学校の設置を柱とする包括連携協定を結んだ野田市長(右)と龍澤理事長(左)=釜石市提供

 

 釜石市は6日、学校法人龍澤学館(盛岡市、龍澤正美理事長)と、釜石市内での専門学校の開校を柱とする包括連携協定を結んだ。同法人は医療福祉系学科と留学生を受け入れる日本語学科の2学科を設置する考えで、2023年度以降の開校を目指すという。

 

 新たな専門学校は、釜石市教育委員会などが入る市教育センター(鈴子町、5階建て)を候補地とする。2~3年制の医療福祉系、2年制の日本語の2学科体制とし、定員はともに40人程度で計200人を想定している。

 

専門学校校舎として活用が検討される釜石市教育センター

専門学校校舎として活用が検討される釜石市教育センター

 

 同法人は盛岡中央高校や付属中のほか、ビジネスやデザイン、医療福祉などの専門学校を経営。釜石市とは12年10月に東日本大震災の復興支援協定を結び、生涯学習や産業振興の支援を行ってきた。人口減少や少子高齢化、医療福祉分野の人材育成などの地域課題に対応するため、これまで重ねてきた取り組みを深化させようと新たに協定を結ぶことにした。

 

 協定には、▽地域活性化(コミュニティー支援や復興住宅への訪問支援)▽地域産業の振興(地域特産物の事業化支援)▽多文化共生社会の実現に向けた取り組み(域内外国人や日本語学科学生による交流活動)▽地域文化の継承やスポーツの推進(地域行事の企画・支援やスポーツ交流)-なども盛り込んだ。締結を踏まえ、同法人は学校開設に向けた準備、釜石市は候補施設の環境整備や学生の住まいの確保に向けた作業を進める方針だ。

 

協定書に署名する野田市長(右)と瀧澤理事長=釜石市提供

協定書に署名する野田市長(右)と瀧澤理事長=釜石市提供

 

 締結式は、同法人が運営する盛岡情報ビジネス&デザイン専門学校(盛岡市)で行われた。龍澤理事長は「釜石を起点に沿岸部の底上げ、活性化を図り、地域課題に対応しながら人材を育てていく役割を担いたい」と意欲を示し、高等教育機関立地の必要性を認識してきた釜石市の野田武則市長は「長年の課題解決につながる。復興完遂の集大成であり、活力あふれる未来への道筋になる」などと応じたという。

「甲子歌う会」発足30周年記念コンサート

「甲子歌う会」震災、コロナ禍乗り越え30周年 感無量の記念コンサート

「甲子歌う会」発足30周年記念コンサート

「甲子歌う会」発足30周年記念コンサート

 

 釜石市の甲子公民館で活動する「甲子歌う会」(坂本慶子会長、会員44人)は5日、会発足30周年を記念し、大町の市民ホールTETTOでコンサートを開いた。平均年齢79歳というメンバーが、童謡や唱歌など全23曲を美しいハーモニーで歌い上げ、30年の歩みをかみしめながら活動継続へ意欲を高めた。

 

 会員33人が出演。指導する山﨑眞行さんの指揮、菅和佳子さんのピアノ伴奏で、古くから歌い継がれる曲を中心に披露した。1部は日本の情緒あふれる四季の歌。「春の小川」「夏の思い出」「赤とんぼ」「冬景色」など全10曲を、ソプラノ、アルトの女声合唱で聞かせた。

 

日本の原風景を思い起こさせる四季の歌を届けた第1部。優しい歌声が会場を包んだ

日本の原風景を思い起こさせる四季の歌を届けた第1部。優しい歌声が会場を包んだ

 

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 山﨑さんのフルート、釜石市民吹奏楽団・谷澤栄一さんのオーボエによるデュオ演奏をはさみ、3部がスタート。「花の街」「から松」「母」など著名な作詞、作曲家の作品のほか、本県出身者ゆかりの曲も歌唱。歌人石川啄木の短歌に曲を付けた「ふるさとの山に向かいて」(新井満作曲)、歌手新沼謙治さんが作詞作曲を手がけた「ふるさとは今も変わらず」を聞かせた。最後は「見上げてごらん夜の星を」など2曲を歌い、観客と心を通わせた。

 

衣装を替えて登場した第3部。人の思いが込められた曲を心をひとつに歌い上げた

衣装を替えて登場した第3部。人の思いが込められた曲を心をひとつに歌い上げた

 

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 新型コロナウイルス感染防止策を徹底した会場には約200人が来場。コロナ禍の疲弊を癒やす温かい歌声にマスク越しの笑顔を輝かせた。甲子町の野田笑美子さん(69)は「懐かしい曲に、先輩方の頑張っている姿。感動で涙があふれた。来て良かった。機会があればまた聞いてみたい」と喜びを表した。

 

感動のステージに大きな拍手を送る観客

感動のステージに大きな拍手を送る観客

 

 同会は1991年に「甲子童謡を歌う会」として10人余りで発足。2002年には童謡以外の曲も歌っていきたいと「甲子歌う会」に改称した。甲子公民館まつりや市民合唱祭、県内各地持ち回りで開催される「いわて童謡唱歌のつどい」への出演を続けるほか、市内の高齢者、保育施設の行事にも協力する。20周年を迎えた11年は東日本大震災が発生。以降の10年はまちの復興に思いを寄せながら活動してきた。

 

 現在、会員は60代以上の女性で、最高齢は93歳。会発足当初からのメンバーは7人いる。現指揮者の山﨑さんは99年から指導を続ける。30年間歌い続ける畠山カツ子さん(75)は「最初は楽譜も読めなかったが、山﨑先生の指導でいろいろな表現も身に付いてきた。会のモットーは『みんな仲良く元気に』。互いに顔を合わせ、歌声を重ねることが元気の源」と話す。

 

観客に感謝の気持ちを伝える坂本慶子会長(中央)

観客に感謝の気持ちを伝える坂本慶子会長(中央)

 

 1年前から準備してきた記念コンサート。坂本会長(75)は「今日は30年の頂点。足を運んでくれた皆さんにも感謝したい。会員の意欲、まとまりが会を継続してこられた要因。会員は歌うことで日常生活も潤っている。これからも楽しんで活動し、次の40周年につなげたい」と誓った。

「かまいし絆宣言」パネルの寄贈を喜ぶ絆会議メンバーら

震災の教訓つなぐ「かまいし絆宣言」パネルに 地元水産会社が贈る

「かまいし絆宣言」パネルの寄贈を喜ぶ絆会議メンバーら

「かまいし絆宣言」パネルの寄贈を喜ぶ絆会議メンバーら

 

 「私たちは伝え続けます 大震災から学んだことを 未来のみんなの笑顔のために 光輝く 未来へと」。釜石市の14小中学校でつくる「かまいし絆会議」が、東日本大震災の教訓継承のため今年3月に策定した「かまいし絆宣言」がパネルになり、市教育委員会と各校に届けられた。子どもたちは、さまざまな思いを紡いだ宣言を大切にし、内外に発信する気持ちを高めている。

 

 パネルの製作、寄贈は両石町の泉澤水産(泉澤宏代表取締役)と岩手銀行(田口幸雄頭取)による取り組み。同社が発行した、いわぎん「みらい応援私募債」の手数料の一部を活用した。

 

パネルを贈った泉澤さんの思いに子どもたちは耳を傾けた

パネルを贈った泉澤さんの思いに子どもたちは耳を傾けた

 

 8月5日、大町の市民ホールで絆会議が開かれるのに合わせ、贈呈式が行われた。泉澤代表取締役は「多様性を受け入れて多くの絆を結び、より良いまちをつくるリーダーに育ってほしい」と激励。岩銀釜石支店の野々村渉支店長は「宣言にある事柄を着実に実行してほしい」と期待した。

 

 贈られたパネルは全部で16枚。各校に配置されるのは縦45センチ、横60センチのパネルで、受け取った佐々木健心君(釜石東中3年)は「宣言に込めた思いを未来につなぎ、たくさんの人に発信していきたい」と感謝した。縦1メートル、横2メートルのものは市教委で保管。子どもたちの思いを多くの人に見てもらおうと、同ホールにもパネル(縦520センチ、横730センチ)を掲げることにしている。

 

高校生や大人を交えた絆会議で、小中学生が地域についての思いや考えを伝えた

高校生や大人を交えた絆会議で、小中学生が地域についての思いや考えを伝えた

 

 贈呈式の後に行われた会議では、9月25日の「絆の日」にちなんだ取り組みを話し合った。協働まちづくり推進に向け市民で構成する「かまいし未来づくりプロジェクト」、スーパーサイエンスハイスクール(SSH、文科省指定)として地域課題研究を行う釜石高の生徒らを交え、▽規則正しい生活▽地域防災▽釜石の良さ―などをテーマにした意見交換会も行った。

岸壁の潮だまりで海の生き物探し=平田漁港

海辺の生き物に歓声!「こどもエコクラブ」平田の磯場で観察会

岸壁の潮だまりで海の生き物探し=平田漁港

岸壁の潮だまりで海の生き物探し=平田漁港

 

 子どもたちが身近な自然に親しむことで、環境意識高揚を図る釜石市の「こどもエコクラブ」は7日、本年度初の体験学習で、海辺の生物観察を楽しんだ。県の「特別採捕許可」を受け、ペットボトルのしかけで生き物を捕獲。個体観察を行った後、海に放した。子どもたちは小さな命の営みに感激し、自然環境を守る大切さを学んだ。

 

 市内の小学生ら25人が参加。平田漁港に近い磯場が観察場所となった。市内で漁業体験や海洋教育のコーディネートを行う任意団体「すなどり舎」の齋藤孝信代表(60)が講師を務め、2カ所で生物観察を行った。岸壁の突端にできた潮だまりでは、海草などに隠れたイソガニ、ヤドカリ、ハゼの幼魚を確認。小さなカニは手にとって観察した。

 

「何か動いた!」潮だまりに目を凝らす子どもら

「何か動いた!」潮だまりに目を凝らす子どもら

 

小さなカニがたくさん見つかったよ!!

小さなカニがたくさん見つかったよ!!

 

 続いて、大きな岩や石が転がる海岸線を移動し、杉ノ浜手前の観察ポイントに向かった。ここでは、子どもたちが手作りしたペットボトルのしかけにえさとなるサンマの切れ端を入れ、岩の陰などに沈めて、生き物が入るのを待った。この捕獲法は県の特別許可、釜石湾漁協の同意を得て実施した。

 

手作りのペットボトルのしかけを海に投入。 この日だけの体験

手作りのペットボトルのしかけを海に投入。この日だけの体験

 

 約20分後、しかけを引き上げると、中にはイワガ二、ヤドカリのほか〝思わぬ珍客〟クサフグの姿が。子どもたちは掛かった生物をじっくり観察。中には卵を抱えたカニもいて、目を輝かせながら見入った。イカの短冊を付けたひもを岩の陰などに垂らし、カニ釣りにも挑戦した。

 

「何か入っているかな?」ペットボトルの中をのぞき込む子ども

「何か入っているかな?」ペットボトルの中をのぞき込む子ども

 

捕れたカニやフグを手に笑顔満開!観察後は「元気でね」と海に放した

捕れたカニやフグを手に笑顔満開!観察後は「元気でね」と海に放した

 

 ペットボトルのしかけにフグが掛かった久保伶奈さん(双葉小5年)は「最初は生き物が入るとは思わなかったので、実際に入ってびっくり。釜石は自然がいっぱい。これからも触れ合っていきたい」と話した。

 

 宝田明香里さん(小佐野小4年)、弟の空大(たかひろ)君(同1年)は昨年、仙台市から移住し、初めての釜石の夏を満喫。空大君は「カニを8匹捕まえた。いろんな生き物がいる海が好き」とご満悦。明香里さんは「カニは小さかったが、爪が鋭かった。生き物を守るには、人間が海にごみなどを投げ込まないことが大切。自分も気を付けている」と海洋環境にも目を向けた。

 

 講師の齋藤さんは「震災の影響などで心理的に遠くなっている海を近づける、いい機会。親子で自然の生き物に触れ合う姿はもともとある風景。足元には、まだまだ楽しい遊びがあることを感じてもらえれば」と願った。

屋形遺跡で発掘体験を行った小学生ら。地道な作業を熱心に続けた

唐丹町大石・屋形遺跡で発掘調査体験 唐丹小児童 地域の歴史に興味津々

縄文土器のかけらなどを掘り当てた子どもたち

縄文土器のかけらなどを掘り当てた子どもたち

 

 釜石市唐丹町大石の国史跡「屋形遺跡」で5日、小学生を対象にした発掘調査体験が行われた。唐丹小(柏﨑裕之校長)の4、5年生13人が挑戦。土の中から土器のかけらを見つけると「あった!」と歓声を上げた。

 

 同遺跡は東日本大震災の復興事業に伴う発掘調査で出土。縄文時代中期末から後期初頭(4000~3800年前)を主体とする竪穴住居や貯蔵蔵の遺構とともに、三陸沿岸では数少ない希少な事例の貝塚が発見された。三陸沿岸のなりわいの実体を示す遺跡として重要であることなどが評価され、今年3月に国史跡の指定を受けた。

 

 市文化振興課が遺跡の大きさなどを確認する試掘調査を進めていて、子どもたちに郷土の歴史に親しんでもらおうと企画。体験用に設けられた発掘現場に入った子どもたちはスコップなどで少しずつ土を掘り、埋まっている“何か”が見えたら、丁寧に周りの土を取り除いていくという作業を繰り返した。最初に何かを見つけて「ドキドキする」と胸を高鳴らせていたが、結果は石で「残念」と肩を落とす子も。めげずに掘り進めると、表面に紋様のある土器や石器のかけらが次々と見つかった。

 

屋形遺跡で発掘体験を行った小学生ら。地道な作業を熱心に続けた

屋形遺跡で発掘体験を行った小学生ら。地道な作業を熱心に続けた

 

 同課の加藤幹樹主任(36)は「見つかったものは約2300~4800年前のもの。唐丹では古くから魚を捕って暮らしていた」と解説した。試掘調査を行っている現場も案内。途中にある畑や草地に目をやると、縄による模様付けをされた土器のかけらが転がっていて、「普通にかけらが落ちている。この遺跡のすごさが分かる」と強調した。

 

子どもたちは試掘調査の現場も見学して地域の歴史に関心を寄せた

子どもたちは試掘調査の現場も見学して地域の歴史に関心を寄せた

 

 児童らは竪穴住居跡なども見学し、縄文時代から海の恩恵を受けて暮らしていた集落の様子を想像。鈴木琳雅君(5年)は「(土器のかけらが)簡単に出てきてびっくり。自分の住んでいるところにすごいものがあると思った。いろんなことを知った。また発掘してみたい。夏休みの思い出にもなった」と満足げだった。

 

 試掘調査は8日まで実施。市では今後は一般見学の受け入れを目指した整備・活用方法を探る考えだ。

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

釜石艦砲射撃76年 記憶語り継ぐ戦災記録集「かまいしの昭和20年」再版

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 太平洋戦争末期、釜石市が米英軍による2度の艦砲射撃で甚大な被害を受けてから今年で76年を迎えた。8月8日、艦砲射撃による戦禍から逃れた故岩切潤さん(享年82)の体験談をつづった記録誌が市内の書店に並んだ。「伝えねばなんねんだ」。戦争体験者が減る中で、戦災の記憶を語り継ぐ大切さを口にしていた岩切さんの遺志を継ぎ、遺族が再版した。

 

 記録誌は、2015年に岩切さんが自費出版した「戦後70年に想う かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」。艦砲射撃や避難した防空壕(ごう)での様子、疎開先での暮らしぶりなど当時釜石国民学校(現釜石小)5年生だった岩切さんの実体験を、艦砲射撃を受けた市内の風景などの写真や被弾図など資料を交え書き記している。

 

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

 

 初版は800部発行し、全て市や図書館、戦没者慰霊祭の参列者らに寄贈した。岩切さんは同時期に市内の小中学校や老人クラブなどでの講演活動も開始。戦争体験者として記憶の継承に精力的に取り組もうとした矢先、17年9月に急逝した。生前、関心のある人たちが購入という形で記録誌を手にし、「地域の歴史や平和について考えてほしい」と望んでいたという。

 

 そういった遺志を、長女晃子さん(54)=東京都杉並区=と妻久仁(くに)さん(78)=釜石市小佐野町=が引き継ぎ、再版した。新たに850部を発行。約670部を市内の中学3年生に贈る。残りは市内の桑畑書店、盛岡市のさわや書店などで販売する。A4判36ページで、1部990円(税込み)。

 

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 8日、桑畑書店を訪れ、店頭に本が並ぶ様子を見守った久仁さん。「家で多くは語らなかった。心の中で思っていたんだなと思う。70年たって語ろうとしたようだけど・・・」と本を見つめる。11年に東日本大震災を経験した岩切さんは、戦後復興の歩みに震災復興への思いを重ね合わせ、「戦災と震災は語り継がなければなんねんだ」と繰り返し言っていたという。久仁さんは「潤さん、喜んでいると思う。手に取って読んで、感じ、考えてもらえたら」と願う。

 

 太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、釜石市は7月14日と8月9日の2度にわたって米英連合軍から艦砲射撃を受けた。市街地は焼け野原になり、市民ら780人以上が犠牲になるなど大きな被害を出した。

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

三陸の海をもっと学ぼう!中学生対象に釜石でサマースクール開催

県漁業取締船「岩鷲」を見学したカレッジ参加者

県漁業取締船「岩鷲」を見学したカレッジ参加者

 

 次代を担う中学生に郷土が誇る海への関心を高めてもらおうと、「三陸マリンカレッジ~Summer School~」が7月31日、釜石市平田の岩手大釜石キャンパスなどで開かれた。県沿岸広域振興局と東京大大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター(大槌町)が主催。沿岸部の中学生ら13人が三陸の水産業や海洋環境、海上保安業務の一端に触れ、好奇心をかきたてられた。

 

 県と同センターは、震災で海に親しむ機会の減った子どもたちが興味を持つきっかけにと、昨年度初めて同カレッジを開催。1泊2日の合宿学習で知りたいことを絞り込み、同大研究者らのサポートを受けながら調査、実習を重ね、成果を発表する一連の取り組みを行った。今回は2年目の本開催を前に、導入部としてサマースクールを企画した。

 

 この日は4プログラムを体験。県水産技術センターでは、アワビの種苗生産・放流など本県を代表する養殖水産物の資源管理について学んだ。平田漁港の岸壁では、水中カメラで海底の様子や魚を観察。近年、活躍する水中ドローンの説明も受けた。県漁業取締船「岩鷲」では、普段見られない船内の装備機器を見学。業務内容について聞いた。釜石海上保安部の協力で海の安全講習もあり、救命胴衣の着用、応急的な救命器具作りを体験した。

 

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

 

ペットボトルを使った応急救命器具作りを体験

ペットボトルを使った応急救命器具作りを体験

 

 佐々木奈碧人君(大平中3年)は「水産技術センターの方からアワビの話を聞いたり、普段乗れない取締船に乗せてもらったり、全てが新鮮な体験だった。海についてもっと知りたくなった。この後行われるマリンカレッジにも参加してみたい」と興味をそそられた様子。

 

 昨年度の同カレッジには6人が参加。地元の海の環境と天気、生物との関係、カキの養殖棚に集まる生物、地元の海で捕れる魚とその漁獲法など、それぞれに興味をもった分野で学習に取り組んだ。サマースクールでは、昨年度の受講生が自身の経験や感想を語った。

 

 本年度の三陸マリンカレッジは11月に同センターでの合宿を予定。1人1人テーマを決めて、専門家の話を聞いたり関係施設での実地学習を行ったりして、冬休み中にレポートをまとめる。学習成果発表会は来年1月に開催する計画。県の担当者は「学校とは違った勉強ができる。沿岸部の海に関心のある中学生にどんどん参加してほしい」と呼び掛ける。参加者は秋から募集を始める。

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

宇宙から帰還、釜石市の花ハマユリの種~花咲く未来に期待

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

 

 東日本大震災から10年となる今年。被災地の復興を宇宙から発信する「東北復興宇宙ミッション2021」が行われた。被災地から集めたメッセージ、花や農作物の種などを国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げる取り組みで、釜石市も参加。宇宙を旅した市の花ハマユリの種が帰還し、7月26日、市に引き渡された。種は市の担当部局が育て、市内の学校や公園に植える予定。

 

 宇宙ミッションは福島、宮城、岩手の被災3県の市町村で結成する実行委員会の主催。一般財団法人ワンアース(茨城県龍ケ崎市)が企画し、事務局を務める。震災の記憶と教訓、復興支援への感謝を伝えるメッセージや写真、植物の種などを宇宙に送り、3月11日には野口聡一飛行士がISSからメッセージを発信した。

 

 ハマユリの種は平田・佐須地区の岩場から採取。震災の津波で水没したが、その年の夏に花を咲かせ、復興に向かう住民らの支えになったという。6月に米航空宇宙局(NASA)のロケットで宇宙に飛び、ISSに約1カ月“滞在”。7月10日に地上へ戻った。

 

長谷川代表理事(左)から種を受け取る子どもたち

長谷川代表理事(左)から種を受け取る子どもたち

 

 受領式は市役所で行い、実行委事務局長を務める同法人の長谷川洋一代表理事が野田武則市長や釜石小の6年生3人に種を手渡した。長谷川代表理事は「地域を元気に、他のまちと交流していけるか、種を生かした取り組みを考えてほしい。本当の意味はこれから始まる」と期待。野田市長は「大事に育てていく。花に関わる子どもたちの成長も楽しみにしたい」と感謝した。

 

 小澤和史君は「宇宙に行った貴重な種をありがとうございます」とお礼の言葉。防災マップ作りなど震災学習に取り組んでいることを伝え、「震災の出来事、経験した人の思いを語り継ぎたい」と気持ちを強めた。そもそもハマユリの花を見たことがないという佐々木友香さん、関悠汰君は「きれいに咲いたのを見たい」と期待を膨らませた。

2年ぶりに演奏会を開いた釜石商工高吹奏楽部

心を一つに10人が感謝の演奏~釜石商工高吹奏楽部2年ぶりの定演~

2年ぶりに演奏会を開いた釜石商工高吹奏楽部

2年ぶりに演奏会を開いた釜石商工高吹奏楽部

 

 釜石商工高吹奏楽部(佐藤諒華部長、8人)は7月25日、釜石市大町の市民ホールTETTOで第3回定期演奏会を開いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で昨年度は中止したため2年ぶりの開催。顧問の教諭2人も演奏に加わり、持てる力を発揮。支えてくれた仲間や家族への感謝を込め演奏した。

 

 「Unite Our Sounds~笑顔と感謝を届けよう~」をテーマに掲げ、1部は滝廉太郎の「花」をアレンジした「花のプロセッショナル」で幕開け。今年の吹奏楽コンクールで演奏した「ふたつの伝承歌」へと続いた。2、3年生5人は、昨年のアンサンブルコンテストで発表した管楽五重奏「未だ見ぬ景色へ続く道」を披露した。

 

2・3年生は管楽五重奏でコンテスト出場曲を披露

2・3年生は管楽五重奏でコンテスト出場曲を披露

 

2部は虎舞委員会が出演。ステージを盛り上げた

2部は虎舞委員会が出演。ステージを盛り上げた

 

 2部は同校虎舞委員会が友情出演。演目「跳ね虎」を舞い、昨年度の全国高校総合文化祭にWeb出場した際の映像を見せながら、虎舞の由来や演目について解説した。最終3部はポップスステージ。テレビドラマや映画の主題歌、アニメ曲メドレーなど7曲をソロを交えて聞かせた。ネット配信で人気に火がついたYOASOBIの「夜に駆ける」など難曲にも挑戦。ブラスサウンドならではの心地良い音の響きで楽しませた。

 

人気の曲を集め、楽しませたポップスステージ

人気の曲を集め、楽しませたポップスステージ

 

部員のソロにも注目!カジュアルな雰囲気の第3部

部員のソロにも注目!カジュアルな雰囲気の第3部

 

 同部は本年度、1年生3人、2年生2人、3年生3人で活動する。少人数、コロナ禍と活動にはさまざまな苦労も伴ったが、演奏会に向けては1人1人が自分の役割を全うし、プログラム構成からステージ演出まで生徒主体で取り組んだ。

 

 佐藤部長(3年)は高校から吹奏楽を始め、1年時に副部長を任された。自らの演奏技術向上、リーダーシップに大きなプレッシャーを感じ、部長として迎える本演奏会に向けても「正直逃げ出したい」と思う時があったという。それでも頑張ってこられたのは、部員の協力や支えがあったから。「何とか最後まで乗り切れた。失敗もしたが、まとまった演奏ができたと思う」。後輩たちには「失敗を恐れず、仲間を信じてやり切ることを大事にしてほしい」と願った。

 

 顧問の太田柚子教諭(27)は「準備段階から生徒の自主性が随所に光った。生徒会や虎舞委員会、家族の協力もあって初めて成立した演奏会。周りに助けられて自分たちも頑張れたという経験は、今後の人生にも生かされるのでは」と話した。

37人の力を結集した釜石高吹奏楽部の定期演奏会

釜石高吹奏楽部、音楽部 コロナ禍に負けず熱演 定期演奏会で元気発信

生ブラスで輝く時間を 心躍るステージに観客も笑顔

 

37人の力を結集した釜石高吹奏楽部の定期演奏会

37人の力を結集した釜石高吹奏楽部の定期演奏会

 

 釜石高吹奏楽部(石村海帆部長、37人)の第88回定期演奏会は7月17日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。1年生18人を迎え、例年より多い部員数で活動する同部。演奏会ではさらに厚みを増した音の響きで観客を魅了し、会場一体となって音楽の楽しみを味わった。

 

 3部構成のプログラム。1部は吹奏楽の醍醐味(だいごみ)を味わえる3曲。過去にコンクールの課題曲にもなった吹奏楽のための「風之舞」、今年のコンクールで同部が自由曲に選んだ交響詩「あんたがたどこさ」など、曲調の変化でストーリー性を感じさせる作品を届けた。

 

 2部は五輪イヤーにちなみ、テレビ中継各局がテーマソングに用いた曲など5曲を演奏。選手の活躍と重なる印象的な楽曲が観客の心を捉え、開幕を間近に控えた東京五輪への期待感を高めた。3部は人気グループのヒット曲やアニメソングのステージ。〝縄跳びダンス〟が話題となったNiziUの「Make you happy」など2曲は1年生部員がダンスパフォーマンスで盛り上げ、にぎやかなステージとなった。

 

1年生部員のダンスでステージは一層華やかに

1年生部員のダンスでステージは一層華やかに

 

休憩時間はアンサンブル演奏でも楽しませた

休憩時間はアンサンブル演奏でも楽しませた

 

 合間の休憩時間には各種楽器のアンサンブル演奏も披露。約350人の観客が生徒の頑張りをたたえ、盛んな拍手を送った。山田町の千代川博一さん(69)は、本年度入部した孫の陽琉さん(1年)の応援を兼ねて来場。同部の演奏は初めて聞くといい、「高校生の演奏はやはり音量や技術が違う。知らない曲も結構あったが楽しめた」と声を弾ませた。

 

ミッキーマウス・マーチでは各パートが楽器の魅力をアピール

ミッキーマウス・マーチでは各パートが楽器の魅力をアピール

 

 久しぶりの大所帯となった同部。コロナの影響が続く中、練習場所を増やしての〝密〟の回避、換気の徹底など感染防止対策を講じながら練習を重ねる。「昨年よりは練習時間を確保できているが、人前で演奏する機会は極端に減った。自分たちもお客様も共に楽しめる演奏会は気持ちが高ぶる。こういう場を大事にしたい」と石村部長(3年)。

 

 昨年度は中止され、2年ぶりの開催となった県吹奏楽コンクール沿岸地区大会(7月3、4日)では、高校小編成の部で金賞を受賞。1位通過で県大会出場を決めた。2日に北上市で開かれた県大会同部門には18校が出場。釜石高は銀賞だった。

 

部員7人が心を込め感動のハーモニー ミュージカルにも初挑戦

 

美しいハーモニーで観客を魅了する釜石高音楽部

美しいハーモニーで観客を魅了する釜石高音楽部

 

 釜石高音楽部(平松和佳奈部長、7人)は7月24日、市民ホールTETTOで第7回定期演奏会を開いた。会の実現へ協力してくれた同校の仲間、来場者に感謝しながら、最高のステージを届けた。

 

 3部構成の1部は「ア・カペラの響き」と題し、ラテン語の宗教曲「おお 聖なる宴よ」など3曲を披露した。2部は邦人作曲家による合唱曲。木下牧子作曲の「散歩」は4声部以上に分かれる難易度の高い曲で、練習の成果が光った。信長貴富編曲の「7つの子ども歌」からは「通りゃんせ」「ずいずいずっころばし」など4曲を抜粋。現代のアレンジでよみがえるわらべ歌は新鮮な感動を与えた。

 

 2部には、部員にOGがいる縁で「遠野少年少女合唱隊」が賛助出演。遠野地方に伝わるわらべ歌「ほたるのうた」「とんびとんび」などを聞かせ、演奏会を盛り上げた。

 

賛助出演した遠野少年少女合唱隊。地域を越えて合唱の輪を広げる

賛助出演した遠野少年少女合唱隊。地域を越えて合唱の輪を広げる

 

 3部は3年生が集大成としたミュージカル。名作「シンデレラ」のストーリーを同部オリジナル脚本で上演した。全部員で登場人物を演じ、各場面での歌が物語の世界観を高めた。アンコールは、震災を機に生まれた「群青」、「願い~震災を乗り越えて~」を歌唱。「願い―」は震災後、避難所となった釜石高体育館で当時の音楽部が歌った曲に作曲者が新たな歌詞を付けたもので、全国で歌い継がれる。

 

初挑戦のミュージカル「シンデレラ」。練習を重ねた演技、歌唱を大舞台で披露

初挑戦のミュージカル「シンデレラ」。練習を重ねた演技、歌唱を大舞台で披露

 

 甲子町の菊池幸紀さん(20)は「合唱曲もミュージカルも素晴らしい仕上がり。感動した。コロナ禍でも生徒たちの力を発揮する場は必要。鑑賞の機会は観客にとってもありがたい」と喜んだ。

 

 同部は本年度1年生2人、3年生5人で活動。演奏会にはピアノ伴奏や裏方スタッフで吹奏楽部など他部の生徒が協力。平松部長(3年)は「多くの支えをいただき、何とか成功できた。人数も少なく不安が大きかったが、出来は上々。自分たちも楽しんでやれた」と達成感をにじませた。

 

とびきりの笑顔でミュージカルを締めくくる部員ら

とびきりの笑顔でミュージカルを締めくくる部員ら

 

 前日には不来方高、前週には宮古高の定期演奏会に出演。震災後につながった両校との絆は今も途絶えることなく続く。震災から10年―。「私たちも大きな力をもらってきた。後輩にもつないでいってほしい」と平松部長。今月下旬に予定される全日本合唱コンクール県大会では「みんなが後悔なく、いい演奏ができれば」と願う。

作者の小野寺浩さんと、7月に開かれた「サムディ45」作品展で紹介した色鉛筆・パステル画

美術集団「サムディ45」小野寺さん、日仏美術展に初挑戦で初入選

作者の小野寺浩さんと、7月に開かれた「サムディ45」作品展で紹介した色鉛筆・パステル画

作者の小野寺浩さんと、7月に開かれた「サムディ45」作品展で紹介した色鉛筆・パステル画

 

 「第22回 日本・フランス現代美術世界展」(JIAS日本国際美術家協会主催)に色鉛筆画「三陸虎の舞い」を初出展した釜石市の美術集団「サムディ45」所属の小野寺浩(ゆたか)さん(61)=甲子町=が、このほど初入選を果たした。「素直にうれしい。虎舞をモチーフにシリーズ化したいと考えており、作品に向かう意欲も高まった」と力を得ている。

 

 同展は、フランスやオランダなど海外の著名作家作品と、公募により選出された邦人作家作品が合同展示される展覧会。フランスの老舗サロン「サロン・ドトーヌ」が特別協賛する。油彩画や日本画などの平面作品に加え、ガラス工芸や彫刻、建築デザインなど、多様な分野の作品を受け入れている。

 

 「三陸虎の舞い」(縦100センチ、横80・3センチ)は、地元の郷土芸能「虎舞」をモチーフに、色鉛筆とパステルを併用し色彩豊かに仕上げた作品。釜石も試合会場となった2019年のラグビーワールドカップ日本大会を盛り上げようと、地元の高校生が披露した躍動感あふれる演舞に心を引かれ、題材に選んだ。東日本大震災発生から復興を進める中、日々変化する地域を元気づけ、人をつなげてきた郷土芸能の価値を見つめてもらいたいとの願いも込めた。

 

入選作品「三陸虎の舞い」

入選作品「三陸虎の舞い」

 

 小野寺さんは4年ほど前、市内のパステル画教室に参加したのをきっかけに本格的に絵を描き始めた。もともと色鉛筆画に興味があったことから、画材を併用した作品づくりも開始。サムディや陸前高田市の美術団体に所属し、地元の美術展への出品などを通じ、画力を磨いてきた。

 

 初出展初入選に、「モチーフが良かった。世界から見ると、まだ知られていない、飽きていないものだったのだろう」と控えめに話す小野寺さん。自分の絵が世界的に認められたとの実感もあるようで、「世界観が変わる入り口にいる感じ。走り出したばかりだが、どんな変化があるか楽しみ」と、この先に広がる景色を思い描いている。

 

 第22回展は8月5日~15日に東京・六本木の国立新美術館で開催。小野寺さんの作品も展示される。今回、全国から約200人の公募があり、入選したのは約150人。海外の招待作家作品と合わせ、約500点が出展されるという。