art at TETTO vol.3 Creator? 小笠原梓「イロトイロ」=市民ホールギャラリー
デザインを中心に多彩な創作活動を続ける釜石市甲子町在住の小笠原梓さん(36)が、大町の市民ホールTETTOで初の個展「イロトイロ」を開いている。釜石・大槌在住の作家を紹介する同ホールの自主事業「art at TETTO(アートアットテット)」の第3弾。小笠原さんがデザインした商品や市民と取り組んだまちなかアートなどカラフルで楽しい作品が並び、心躍る空間を提供している。26日まで同ホールギャラリーで開催(最終日は午後5時まで)。
自身初の個展で作品を公開した小笠原梓さん
小笠原さんは子どものころから絵を描くのが好きで、趣味で創作活動を続けてきた。近年はSNSへのアップなどで作品が多くの人の目に留まり、市内の事業者や団体から商業デザインの依頼を受けることも増えてきた。展示会では絵柄をデザインした手拭い、LINEスタンプ、冊子の表紙などを公開。依頼主のニーズ、釜石らしさなどを独自の感性で表現した作品は親しみやすく、温もりが感じられる。
釜石大観音仲見世通りのシェアオフィス「コーバ釜石マルダイ」のオリジナル手拭い
2017年の尾崎半島林野火災の復旧支援を目的に作ったLINEスタンプ。収益は釜石地方森林組合に全額寄付
市民グループ「ほ~でなす釜石」企画の“釜石すごろく”のイラストも手掛けた
個人の創作活動に加え、市民を巻き込んだアート活動にも取り組む。2020年には市内の建造物の外壁をアートで彩るグループ「ゼロスポット」を仲間と立ち上げ、釜石大観音仲見世通りのオフィスやカフェ、防潮堤を飾る活動で脚光を浴びた。震災後に生まれた劇団「もしょこむ」の18年公演では、登場キャラクターの衣装デザイン、制作を担当。脚本、演出も手掛けるなど、幅広い分野で才能を発揮する。展示会では防潮堤アートや劇の衣装も披露した。
2018年、劇団もしょこむ公演の劇「華とワカメとヒーロースーツ」。登場キャラクターの衣装が個展で展示されている
18、19の両日は、ものづくりの楽しさを味わってもらおうとワークショップも開催した。自然乾燥で固まる市販の粘土を用い、エアプランツ(葉から水分を吸収する植物)ポットを作る体験で、ミニ鉢には人の顔をデザイン。子どもも大人も夢中になって造形を楽しんだ。谷古宇温大君(釜石小6年)は「粘土で作れるのは初めて知った。形をきれいにするのが難しかったけど、またやってみたい。作品は家に飾る」と大事に持ち帰った。
ワークショップ「エアプランツポット作り」
長さ365センチの絵巻(下絵は小笠原さん)に来場者が色を塗る体験コーナーも
現在、子育て支援センターのパート勤務、2人の娘(中1、小5)の子育てをしながら創作活動を続ける小笠原さん。ゼロスポットのイベントには親子連れの参加も多く、子どもたちの創造力醸成、協力して作品を作り上げる達成感など、さまざまな相乗効果も生み出している。
今回、多くの人たちに作品を見てもらえる機会を得て、「夢のような経験。すごく幸せ。見た人が笑顔になったり褒めてくれたりするとうれしくて励みになる」と感謝。「これからも、ものづくりは続けていきたい。現代アートにも興味があり、勉強しつつ挑戦できたらいいな」。好きなことを形にする創作への意欲はまだまだ尽きない。