タグ別アーカイブ: 文化・教育

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

税の高校生作文で釜石商工高生2人表彰 釜石税務署

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

入賞を喜ぶ村越さん(左から2人目)、佐藤さん(中央)

 

 国税庁主催の「税に関する高校生の作文」で県立釜石商工高(菊池勝彦校長、生徒234人)の村越梨緒菜さん(総合情報科2年)が最高賞の国税庁長官賞に次ぐ仙台国税局長賞に選ばれた。佐藤凜さん(同)は釜石税務署長賞を受賞。2人は16日、同校を訪れた同税務署の霜崎良人署長から賞状と記念品を受け取った。

 

 高校生作文は租税教育の充実を目的に、1962年度から毎年実施。今回は全国1563校から17万8807編、同国税局管内(東北6県)では147校1万4750編の応募があった。

 

釜石税務署では受賞作をポスターにして税に関する啓発に役立てる

釜石税務署では受賞作をポスターにして税に関する啓発に役立てる

 

 同校では同科2年生35人が夏休みの課題として取り組んだ。村越さんの受賞作の題は「人を支える『税』」。税金の使われ方や納税の仕組みを調べ、国全体で支え合っていることに気づいた一方、超高齢化社会による労働力不足で納税の負担は大きくなるだろうと考察する。税に関する問題はこれからを担う自分たちこそが目を向けるべきと強調。「一年後に選挙権を得る。国民全員が平等に、より良い暮らしができるよう投票を通じて参政することで、支える人になりたい」と結んだ。

 

 佐藤さんの作文のテーマは「消費税」。増税のメリット、デメリットを分析し、「賛否はあるが、増税分がどう使われ、どれほど重要かを理解したうえで意見を出すべき。将来、自分たちの生活にも関わってくることであり、税の重要性を考えてみてほしい」と求めている。

 

 2人は「受賞は驚いた。聞いたことがない言葉が多くて難しかったが、知識が深まった。これからも税について興味を持って調べてみたい」と前向きに捉えた。

 

釜石市役所本庁舎1階税務課に掲示中の高校生作文

釜石市役所本庁舎1階税務課に掲示中の高校生作文

 

 霜崎署長は「自分の考えをしっかり持ち、心強く感じた。税の意義、役割を理解し、生活に役立ててほしい」と期待。2人の作文は只越町の市役所本庁舎1階税務課窓口、鈴子町のシープラザ釜石に掲示されている。11月末まで。

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

鉄づくりの歴史文化に理解 釜石小でたたら製鉄体験

釜石小5年生が挑んだ鉄づくり。れんがで積んだ炉に炭を入れる=12日

釜石小5年生が挑んだ鉄づくり。れんがで積んだ炉に炭を入れる=12日

 

 釜石小(及川靖浩校長、児童109人)で11、12の両日、昔ながらの鉄づくり「たたら製鉄」体験が行われた。5年生16人が築炉から粗鉄(ケラ)の取り出しまでを体験。鉄産地の歴史文化に理解を深めながら、ものづくりの面白さに触れた。

 

 同校の製鉄体験は釜石市地域学校協働本部事業の一環で実施し、今年で4回目。鉄づくりに関する市の出前講座を活用し、市文化振興課文化財係の加藤幹樹主任(36)らが指導した。

 

高炉づくりに取り組む児童。れんがを積み上げる作業に「重労働だ」と実感した=11日

高炉づくりに取り組む児童。れんがを積み上げる作業に「重労働だ」と実感した=11日

 

 初日は校庭の一角で高炉の築造、木炭を割る作業に取り組んだ。高炉はコンクリートブロックを基盤に耐火レンガ約100個を組み上げ、モルタルで隙間をふさいで補強。送風口、炉内を見る接眼レンズなどを固定した。木炭は、炉を温めるために使う分も合わせて約50キロ必要で、児童は「炭まみれ」になりつつ黙々とハンマーで砕いた。

 

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

鉄鉱石と石灰を混ぜたものを炉に投入する児童=12日

 

 2日目が本格的な製鉄体験。木炭20キロ、釜石鉱山が提供した鉄鉱石10キロ、石灰1キロを原料に鉄の生産に挑んだ。炉に火入れし、順調に加熱。炎を上げた炉は内部が1300度ほどにもなる。児童は5分に1度、鉄鉱石と石灰を混ぜたものや炭を入れる作業を20回ほど繰り返した。

 

 昼前から鉱滓(ノロ)の抽出を行い、午後に炉を解体。粗鉄を取り出した。加藤主任はハンマーでたたいて鉄とノロの違いを示した。

 

不純物のノロ出しを見守る児童たち。鉄づくりの作業が順調に進んでいることを確認した=12日

不純物のノロ出しを見守る児童たち。鉄づくりの作業が順調に進んでいることを確認した=12日

 

作業の合間に行われた鍛冶体験。ものづくりの大変さ、楽しさを味わった=12日

作業の合間に行われた鍛冶体験。ものづくりの大変さ、楽しさを味わった=12日

 

 合間には、鍛冶体験も。児童は炭火で熱してオレンジ色になったくぎを何度もハンマーでたたいて薄くし、ペーパーナイフ風に仕上げた。同課の手塚新太課長補佐(49)がサポートした。

 

 5年生は総合的学習として事前に、鉄の歴史館の見学や近代製鉄の父・大島高任に関する講話で「鉄のまち釜石」について理解を深めてきた。木炭の破砕作業を担当した佐々木愛菜さんは「いろんな役割があり、しかもすべて手作業なので大変だった。鉄ができるか、わくわくしたし、みんなでやって達成感がある。一生懸命にやったことをこれからの生活に生かしたい」と充実感をにじませた。

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

活気のある地域づくりへ思い込め 釜石東中生が応援ポスター作成

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

釜石東中2年生が作った地域応援ポスター

 

 釜石市鵜住居町の釜石東中(米慎司校長、生徒97人)の2年生40人が、東日本大震災の復興に力を尽くしながら地域で働き続ける大人たちの姿を取材した。住民らの生き方、古里に対する愛着を知った生徒たちは、「もっと活気のある街になるよう、一緒に頑張りたい」との気持ちを強くし、応援ポスターを作って町内の店や施設に掲示している。

 

 新型コロナウイルス禍で中止となった職場体験学習の代替えとして企画。少人数、短時間の受け入れで可能な職業インタビューという形式で行い、協力事業者への感謝を伝えようと作成した。震災から10年がたち、復興は進んでいるが、「もっと地域を盛り上げるために中学生が力になれることはないか」と考えたのも理由の一つだ。

 

 職業インタビューは7月に行い、学区内の高齢者施設や保育施設、飲食店、自動車整備店など32の事業所が協力した。復興や仕事への思いを聞き取った生徒は、まとめとしてポスター作りに取り組み、9月に完成させた。

 

ポスターには鵜住居地域で働く人たちの手と思いが散りばめられている

ポスターには鵜住居地域で働く人たちの手と思いが散りばめられている

 

 ポスターはA2サイズ(縦420センチ、横594センチ)で、生徒40人の学びを散りばめている。モチーフは取材に協力した住民の「手」。復興を支えてきた証しであり、職業によって味が出る面白さもある。「この手につながりたい」。生徒たちが感じた思い、印象に残ったイメージを言葉にして添えた。

 

 タイトルは「頑張っぺし釜石!!」。生徒たちが大好きだという根浜海岸を背景に配置した。震災で苦しい思いはしたが、「海とともに生きていく鵜住居」を表している。

 

 人に関わる仕事がしたいとぼんやり思い描いている小澤空泉(そらみ)さんは栗林小を訪ね、舞良昌孝校長に働く上で大切にしていることなどを聞いた。ポスターには差し出された大きい手のひらと、その仕事を選んだ理由を尋ねた時に返ってきた「子どもたちの人生に関われる」という言葉をのせた。文字は優しい印象の人柄をイメージしたピンク色を選び、添えた矢印には「未来につながる仕事だ」との実感を込めた。

 

 取材を通して、コミュニケーション力の大切さを学んだ小澤さん。「いろんな人の意見を聞きながら、将来の夢、選択肢を広げられるようにしたい」と前を向く。

 

応援ポスターは鵜住居郵便局にも掲示されている

応援ポスターは鵜住居郵便局にも掲示されている

 

 鵜住居郵便局(小笠原博人局長)では、入り口の掲示板で応援ポスターを紹介。中学生の活動を知る機会になると好感を持ったようで、「将来、地元に残り地域の力になってほしい」と期待する。

 

 ポスターは校舎内にも掲示中で、学年主任の菅原隆宏教諭は「地域の人たちの職業にかける思いを知ることで、地元を愛してほしい。将来を見据え、自分の意思で選択し、行動できる人になってほしい」と願う。

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

文化の光を継承・発展させよう 第51回釜石市民芸文祭 新たな発信手段に挑戦

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

多様な表現活動に取り組む市民らの個性豊かな作品を紹介する芸術文化祭

 

 第51回釜石市民芸術文化祭(市、市芸術文化協会主催)は12日から14日まで、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス禍でも文化芸術の光を発信しようと、市内の表現者たちは「チャレンジ」を合言葉に創作意欲を込めた作品を展示。初のYouTube(ユーチューブ)生配信も行い、発表部門の団体は仲間とともに舞台に立つ喜びや躍動する姿を伝えた。

 

 13日の開会セレモニーで芸文協(27団体、約400人)の河東眞澄会長は「会員、先人の思いをつなぎ継承、発展させるべく開催。懸命に活動する姿を発信したい」とあいさつ。県内で芸術文化振興に取り組む「幸せ出ずる国いわて実行委員会」(尾関良夫実行委員長)による寄付贈呈があり、東日本大震災の復興支援コンサートで集めた応援金約27万円が芸文協に贈られた。復興応援のため「おひなさま色紙」を送り続ける北九州市の近藤紫鳳さんには感謝状を送ることにし、オンラインでつないで10年の心温まる思いに謝意を表した。

 

特別展示された故星山駿さんの作品。中央が寄贈者の東子さん

特別展示された故星山駿さんの作品。中央が寄贈者の東子さん

 

 戦後、教員として釜石に赴任した故星山駿さん(1954年死去)の絵画2点が市に贈られ、特別展示された。釜石の風景が題材で、1点は魚市場から見た漁船。もう1点は朝日に照らされる三貫(さんがん)島がテーマの作品だが未完で、仕上げる直前に59歳で亡くなったという。

 

 寄贈したのは星山さんの長女東子(はるこ)さん(83)=東京都調布市。「高校1年の途中まで過ごした釜石は古里。この古里を大好きだった父の絵を釜石に帰したい」と思いを明かす。野田武則市長の「宝物が増えた」との言葉に感激し、亡父の思いが未来に向けて歩んでいくまちへの力強いメッセージになることを期待した。

 

一般参加として元仮設住宅住民が作った虎頭も並び、釜石らしさが光った

一般参加として元仮設住宅住民が作った虎頭も並び、釜石らしさが光った

 

 展示部門は協会加盟の16団体が参加。絵画や生け花、水墨画、切り絵、写真、書道など各分野の力作が並んだ。ステンドグラス教室「BEHOLD(ビホールド)」(佐藤敏子主宰)はクリスマスや花など季節をモチーフにした壁掛け、ランプシェードなど電球を仕込んだ作品を紹介。大船渡市から月2回、約10年通い続ける阿部仲子さん(54)は「陽の光を通すとガラスの色や表情が変わる。その美しさに、ときめきが止まらない」と魅力を語った。

 

好評の体験コーナー。色鮮やかな折り紙に女性たちは夢中になった

好評の体験コーナー。色鮮やかな折り紙に女性たちは夢中になった

 

 折り紙、エコクラフト、ちぎり絵、レザークラフトの体験コーナーもあり、来場者が手作りの面白さに触れた。桜木町の女性(70代)は2つのクラフトづくりに挑戦。「いろんな経験ができ、楽しかった。市民が集い、マスクをしながらでも会話ができるのは幸せなこと」と目を細めた。

 

稽古の様子を舞台上で紹介した裏千家茶道こども教室

稽古の様子を舞台上で紹介した裏千家茶道こども教室

 

 ステージでは5団体が大正琴、バレエ、歌や舞踊を披露した。今回初登場となったのは、裏千家又新会(菊池宗英会長)を母体に組織する実行委が実施する茶道こども教室。コロナの感染状況は落ち着いているが、団体活動が難しい現状に変わりはなく、同教室も年間18回開催予定のうち、稽古できたのは4回だけ。それでも、成果発表の機会になると出演を決め、舞台に茶席を設け、お点前の稽古風景を見せた。6年目の横田楽(がく)君(甲子小6年)は「緊張したが、うまくできた。見てもらえる機会をつくってもらって、うれしい」とうなずいた。

 

 ユーチューブ動画の公開は12月末まで。検索ボックスに「第51回釜石市民芸術文化祭」と入力し、動画を選択すると視聴できる。

 

sousakuhiroba

手作りのかざりで素敵なクリスマス&お正月を!「創作ひろば」

手作りのかざりで素敵なクリスマス&お正月を!「創作ひろば」

 

開催要項・参加申込書チラシ(PDFファイル/578KB)

目的

季節の行事に伴う飾り作りを通して、文化に触れながらもの作りを楽しむ。

日時と内容

【①】令和3年12月 5日(日) 9:30~11:30
Aコース『サンタの庭』:自然素材で、温かみのある作品に
Bコース『クリスマスツリー』:自シーグラスor松ぼっくりでツリーに挑戦!
 
【②】令和3年12月12日(日) 9:30~11:30
Cコース『しめ縄飾り』:稲わらでしめ縄体験
Dコース『ミニ門松』:自然素材で門松づくりに挑戦!
 
※受付開始9:00

場所

岩手県立陸中海岸青少年の家
(〒028-1371 下閉伊郡山田町船越2-42)

対象・定員

幼児・小学生 ~ 一般
※小学校3年生以下は保護者同伴とします。
※各コース定員30名とし、定員になり次第しめきります。

参加料

A・Bコース:1作品 300円
C・Dコース:1作品 500円

携行品等

・創作活動にふさわしい服装
・上履き
・作品持ち帰り用の袋等
・マスク
・飾り付けたい物等(付けたい飾りがございましたらご持参ください。)

その他

①と②へ複数の参加も可能です。
・傷害保険には加入しませんので、必要な方は各自で加入手続きをお願いします。
・申込締切日(11月27日)以降にキャンセルされる場合は、後日参加料をお支払いいただき、材料をお渡しします。

参加申込

11月7日(日)~11月26日(金)9:00~17:00
①〜⑥を明記して、FAXまたはメール、郵送でお知らせください。
①氏名(漢字/ふりがな)
②学校名・学年
③性別
④郵便番号・住所
⑤電話・FAX番号
⑥希望のコースと作品数
 
岩手県立陸中海岸青少年の家(マリンランド陸中)
〒028-1371 岩手県下閉伊郡山田町船越2-42
TEL 0193-84-3311
FAX 0193-84-3312
メール kenriturikuchu@echna.ne.jp

主催

(公財)岩手県スポーツ振興事業団・陸中海岸青少年の家

青少年の家

(公財)岩手県スポーツ振興事業団 岩手県立陸中海岸青少年の家

公式サイト / TEL 0193-84-3311 / FAX 0193-84-3312 〒028-1371 山田町船越2-42

釜石リアスライオンズクラブ主催 第31回釜石地域中学校バスケットボール大会

釜石リアスLC杯中学校バスケ大会 競技力向上の一助に/県新人戦初優勝の釜石中男子 さらなる躍進に期待

釜石リアスライオンズクラブ主催 第31回釜石地域中学校バスケットボール大会

釜石リアスライオンズクラブ主催 第31回釜石地域中学校バスケットボール大会

 

 第31回釜石リアスライオンズクラブ杯釜石地域中学校バスケットボール大会は7日、釜石市鵜住居町の市民体育館で開かれた。男女とも釜石、大平、大槌の3校が参加。リーグ戦を行い、優勝を競い合った。

 

 同大会は青少年の健全育成、スポーツ振興などを目的に1992年にスタート。近年は11月に日程が設定されるが、昨年の第30回大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期され、年度をまたいで本年4月に開催された。前回大会同様、今回も観戦は届け出た保護者のみとし、手指消毒、競技時以外のマスク着用など感染防止策を講じた。

 

保護者が見守る中、熱戦を繰り広げる選手たち

保護者が見守る中、熱戦を繰り広げる選手たち

 

女子「大平―釜石」の試合。勝利へ全力プレー

女子「大平―釜石」の試合。勝利へ全力プレー

 

 

 各チームは3年生引退後の1、2年生選手で結成。来年度の中総体に向けた新たなチーム作りを進める上で、競技力強化を図るための実戦経験の場となった。大会を主催する同クラブ(会員41人)の山崎智千(ともゆき)会長(58)は「少子化で生徒数が減る中でも大会を開けるのは幸せなこと。これまで言われてきた内陸の学校との力の差を埋める一助になるよう、今後も大会を続けていきたい」と願った。

 

 大会の結果は次の通り。
【男子】
釜石 117-20 大平
大平 52-42 大槌
釜石 121-27 大槌
 
優勝 釜石(5大会連続)
準優勝 大平
3位 大槌

 

【女子】
大平 102-10 大槌
釜石 95-17 大槌
大平 66-34 釜石
 
優勝 大平(2大会連続)
準優勝 釜石
3位 大槌

 

山崎会長から賞状を受け取る優勝の釜石中男子

山崎会長から賞状を受け取る優勝の釜石中男子

 

優勝杯を贈られる大平中女子。カップには歴代優勝校の名前が連なる

優勝杯を贈られる大平中女子。カップには歴代優勝校の名前が連なる

 

県新人戦初優勝の釜石中男子バスケ部 来年の東北中総体目指しチーム一丸

 

10月の県中学校新人大会で初優勝を果たした釜石中男子バスケットボール部

10月の県中学校新人大会で初優勝を果たした釜石中男子バスケットボール部

 

 釜石リアスライオンズクラブ杯大会で圧倒的強さを見せた釜石中男子バスケットボール部は、10月16、17の両日行われた県中学校新人大会(新人戦)で初優勝に輝いた。県制覇は、統合前の小佐野中が県中総体で果たして以来、約20年ぶり。新人戦での優勝は同校、釜石・大槌地区にとっても初の快挙となった。

 

 県新人戦バスケ競技には県内各地区の代表16チームが参加。釜石は1回戦で、磐井(一関地区)を68対63の接戦で下し、2回戦(釜石60-42見前)、準決勝(釜石70-56水沢南)と勝ち進んだ。決勝では、県大会上位の常連、石鳥谷(花巻地区)と対戦。71対42で勝利し、初の栄冠を勝ち取った。

 

 鈴木琥太郎主将(2年)は「フットワークとディフェンスを強化してきた結果だ。(初優勝は)自分たちの頑張りもあるが、支えてくれるコーチや先生、親のおかげ」と感謝。来年の中総体に向け、「他チームは釜中を倒そうと必死になってくると思う。自分たちも負けないよう頑張りたい。県制覇を達成して、東北大会ベスト4に入るのが目標」と意気込む。

 

釜石リアスLC杯大会でも相手チームを圧倒した釜石中男子(白ユニフォーム)

釜石リアスLC杯大会でも相手チームを圧倒した釜石中男子(白ユニフォーム)

 

 

 コーチを務める小澤弘貴さん(44)は「きつい練習にも耐えて頑張る頼もしい子たち。釜中出身の先輩高校生が練習相手になってくれて、部員らも吸収する部分が多い」と急成長の要因を明かす。この1年は「防御は最大の攻撃」をチームスローガンに、攻めるディフェンスを意識してきた。さらなるチーム力強化のため、「冬場の体力づくりをしっかりやって、攻撃のバリエーションを増やすのが目標。相手チームの研究も必要」と次年度を見据える。

 

 

 釜石中は13、14の両日、奥州市で開かれる県U15バスケットボール選手権大会に出場する。県新人戦の上位8チームと県内のクラブチームが参加し、16チームによるトーナメント戦を行う。優勝チームは全国大会への切符を手にする。

震災の記憶継ぐCD、来年3月発売へ 釜石高吹奏楽部も参加「復興の力に」

震災の記憶継ぐCD、来年3月発売へ 釜石高吹奏楽部も参加「復興の力に」

リハーサルでCD収録曲を練習する釜石高吹奏楽部の生徒ら

リハーサルでCD収録曲を練習する釜石高吹奏楽部の生徒ら

 

 毎年3月11日に発売されている東日本大震災の復興支援CD「絆~忘れない」。NPO法人日本アクティブ・フード協会(東京都中央区、神原進理事長)が、2016年から展開する被災地支援プロジェクトの一環で制作している。来年発売の7枚目のCDに、釜石高吹奏楽部(川崎真菜部長、部員26人)が参加することになり、3日、釜石市大町の市民ホールで収録に臨んだ。

 

 同部が担当するのは、被災地復興を願ってつくられた「がんばれニッポン」と、元気を届けようと生徒たちが選んだ「マーチ・シャイニング・ロード」の2曲。リハーサルではホール内での音の響きや強弱、音出しのタイミングなどを丁寧に確認した。緊張気味の仲間たちをリラックスさせようと、指揮を担当する生徒が馬のかぶりもので登場。肩と気持ちをほぐした生徒たちは心を一つに軽快な音色を響かせた。

 

生徒たちは聴く人に元気を届けようと録音に臨んだ

生徒たちは聴く人に元気を届けようと録音に臨んだ

 

 指揮のほか、チューバも担当した佐藤碧さん(1年)は「高校生らしい華やかさと元気で、聴く人を勇気づけられたら」と思いを込め演奏。トランペットを担当する川崎部長(2年)は「震災復興に携わる、大きな経験ができる機会。微力だが、精いっぱいの演奏で復興の力を盛り上げたい」と感情を音に乗せた。

 

 このCDには被災地復興の願いを込めつくられた「花の冠」「群青」「わせねでや」「未来の光へ」などが収録され、曲を通して震災の記憶を語り継いでいこうと制作が続けられている。収益金は被災地の子どもたちの支援に活用。神原理事長は「震災から10年たつが、今なお苦しい思いを抱えている人がいる。被災地の子どもたちの歌声、演奏を届けることで、忘れないという思いをつないでいく」と強調する。

 

 釜石高吹奏楽部が参加するCDは来年3月11日に全国販売される。今回は歌手のさとう宗幸さんらアーティストのほか、宮城、福島両県の子どもらも参加。ジョン・レノンの「イマジン」も収録される予定だという。

参加者は環境やエネルギー問題を楽しみながら学んだ

海の環境問題、廃プラアートで考えよう~釜石湾で始まる波力発電も紹介

プラスチックを使ったアート作品づくりに取り組む親子ら

廃プラスチックを使ったアート作品づくりに取り組む親子ら

 

 廃プラスチックを使ったアート制作で環境問題や再生可能エネルギーについて学ぶワークショップが3日、釜石市新浜町の釜石波力発電観測所で開かれ、市内の小学生と家族ら約30人が参加した。釜石青年会議所(菊地裕理事長)が企画し、波の力を利用する発電システムの技術開発を進める平田のマリンエナジー(泉修一社長)が実施。身近にある海を活用した新たな取り組みをPRしながら、海に関わるさまざまな問題を知る機会を提供した。

 

 参加者は持続可能な開発目標(SDGs)や海洋プラスチックごみに関する動画を見た後、工作に挑戦。回収し破砕されたプラスチック片をカラースプレーで色付けし、瓶に詰め、造花で彩りを添えたインテリア作品を完成させた。

 

参加者は環境やエネルギー問題を楽しみながら学んだ

参加者は環境やエネルギー問題を楽しみながら学んだ

 

 えい船での釜石湾口防波堤の見学、釜石商工高生が作った波力発電システム(模型)の実演もあり、子どもたちは興味津々。青木結惟さん(甲子小4年)と稜征君(同1年)姉弟は「いろんな体験ができて楽しかった。海の環境が危険な感じがした。プラスチックごみを出さないよう、買い物するときはマイバックを使う」と学びを深めた。

 

エネルギーの地産地消を目指し、湾口防波堤で波力発電開発中

 

波力発電の実証実験に向け設置された新浜町の観測所

波力発電の実証実験に向け設置された新浜町の観測所

 

 マリンエナジーは、市内にある及川工務店、小鯖造船工業、アイ・デン、エイワの4社が出資する株式会社。釜石湾の湾口防波堤を舞台に、波の力で発電してエネルギーを地産地消する仕組みづくりに向けた実証実験を始める準備を進めている。

 

釜石湾口防波堤で実施する波力発電のイメージ図

釜石湾口防波堤で実施する波力発電のイメージ図

 

 構想では、防波堤の上に発電装置を設置し、波の上下や斜めの揺れなどでダクトを通った空気の動きを利用してタービン発電機を回す。AI(人工知能)を使って波の強さを予測、制御しながら効率よく発電機を回転させる。年間発電量の見込みは33万2000キロワット時で、一般家庭約80世帯分の使用量にあたる。小規模だが、蓄電して漁港施設など水産業に役立つ機器で活用する。

 

観測所に展示されている波力発電システムの模型

観測所に展示されている波力発電システムの模型

 

 環境省の「二酸化炭素(CO2)排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」に採択され、東京大学先端科学技術研究センターなどと事業を開始。来年6月に発電装置1台を設置し、9カ月間運転させる。技術開発と実証実験を進めながら、装置を5台に増やす予定。低コスト化や改良を進めて量産化を図り、漁港などへの普及を目指す。

 

 泉社長は「震災で失ったものは大きいが、再生した地域を再生可能エネルギーで盛り上げたい。小規模だが、実用化できれば全国、世界の漁港でも活用できる」と可能性を強調。催しを通じ市民が事業を知り、エネルギーや環境問題を一緒に考え、取り組んでもらえるよう期待している。

出来上がった2品を手に笑顔を輝かせる参加者ら

釜石・大槌の食文化を次世代に! 食の匠を講師に郷土料理伝承会

釜石・大槌郷土料理伝承会=根浜シーサイド

釜石・大槌郷土料理伝承会=根浜シーサイド

 

 釜石・大槌郷土料理伝承会(同地域農業振興協議会など主催)は1日、釜石市鵜住居町の観光施設「根浜シーサイド」レストハウスで開かれた。地域に伝わる郷土料理を若い世代に継承し、次代の伝承者育成につなげようと企画。釜石・大槌郷土料理研究会(前川良子会長、11人)会員で、本県の「食の匠」に認定されている2人を講師に迎え、公募で集まった7人が「がんづき」と「しそ巻きずし」の作り方を学んだ。

 

 講師を務めたのは、釜石市の藤原政子さん(67)=2012年度、食の匠認定=と大槌町の飛田奈都子さん(58)=19年度、同認定=。藤原さんは幅広い世代に愛される郷土菓子「がんづき」を、飛田さんは同町の山間部で祝い事の際によく出されてきた「しそ巻きずし」の作り方を教えた。

 

 「がんづき」は蒸し上がった丸い形を“月”に、上に散らすくるみやごまを夜空を飛ぶ鳥“ガン”に見立て、そう呼ばれるようになったとされる(諸説あり)。ふわふわの食感とやさしい甘さが特長。農作業の休憩時のおやつ、お茶請けなどとして長年、親しまれてきた。この日は、藤原さんが研究を重ねたレシピを伝授。生地をきれいに膨らませる重曹の分量や材料の混ぜ方のポイントなどを教えた。

 

藤原政子さん(左から2人目)から、がんづきの作り方を教わる参加者

藤原政子さん(左から2人目)から、がんづきの作り方を教わる参加者

 

がんづきの蒸し上がり具合を串を刺してチェック

がんづきの蒸し上がり具合を串を刺してチェック

 

 「しそ巻きずし」は酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べ、広げたすし飯の上にさまざまな具を配置して巻く。赤シソは、のりが貴重だった時代に代用品として重宝され、塩や酢に付け込んだものを常備し、さまざまな料理に活用されたという。飛田さんはシソの並べ方や、すし飯が崩れないように巻く方法などを実演。今回の具材は厚焼き卵、シイタケの煮物、キュウリの塩漬け、くるみ、梅干しの5種で、巻いた後に切ってみると断面の色合いも食欲をそそった。

 

しそ巻きずしの巻き方を実演する飛田奈都子さん

しそ巻きずしの巻き方を実演する飛田奈都子さん

 

酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べていく作業。隙間ができないように並べるのがポイント

酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べていく作業。隙間ができないように並べるのがポイント

 

 参加者は講師に教わりながら調理に挑戦。初めて体験するメニューに興味津々だった。同市中妻町の櫻井京子さん(37)は「しそ巻きずしは初めて知った。大槌出身でも私は海側で、山側にはまた違った地域性があるんだなと。こうして教わる機会がもっとあれば」と期待。10歳と7歳の子ども(女子)は料理に興味を持ち始めていて、「家で一緒に作ってみたい。食べる専門から卒業して、自分も伝承活動などに携われたらいい」と笑った。

 

出来上がった2品を手に笑顔を輝かせる参加者ら

出来上がった2品を手に笑顔を輝かせる参加者ら

 
 同研究会は震災前、年4回ペースで一般客を対象にした郷土料理を楽しむ会を開催。震災後は、市外から訪れるボランティアらに「郷土料理を教えてほしい」と頼まれることも多く、「伝承会」という形で調理体験の場を設けてきた。藤原さんは「地元の身近な食材を使っていたからこそ、郷土料理として残ってきたと思う。手作りは食材選びからでき、家族の栄養や健康にも配慮できる。昔の人の知恵と工夫を今のお母さんたちにも教えたい」と望んだ。

会場全体が大きな感動に包まれたフィナーレ

~釜石ゆかりの故井上マスさん~ミュージカルでよみがえる半生に市民ら感動

ミュージカル「人生はガタゴト列車に乗って」

ミュージカル「人生はガタゴト列車に乗って」

 

 人気作家故井上ひさしさんの母マスさん(1907-91、神奈川県出身)の激動の半生が、親子ゆかりの地釜石でミュージカルとしてよみがえった―。マスさんの自叙伝「人生はガタゴト列車に乗って」を釜石市民が舞台化。10月31日、同市大町の市民ホールTETTOで上演され、困難に立ち向かい、たくましく生きたマスさんの姿が多くの感動を呼んだ。

 

 ミュージカル「人生はガタゴト列車に乗って」(同実行委主催)は、若くして夫を亡くした井上マスさんが3人の息子を育てるため、あらゆる仕事をしながら力強く生きる姿を描いた作品。戦後、たどり着いた釜石で飲食業で成功し、定住したマスさんが76歳の時に執筆した自叙伝(83年刊行)を基に3幕の舞台を作り上げた。

 

 夫と死別後、薬店や美容室、土建業の経営などで家族の生活を支えてきたマスさん。夫の故郷山形県小松町から本県一関市、釜石市と移り住む中、戦禍や事業の失敗、愛する息子たちとの別れなど数々の辛苦を経験する。釜石市では、製鉄や漁業で栄えるまちの勢いを背景に焼き鳥屋台を繁盛させ、安住への足掛かりを得た。

 

三男修佑を預け、後ろ髪を引かれながら一関から釜石へ出発するマス(左)

三男修佑を預け、後ろ髪を引かれながら一関から釜石へ出発するマス(左)

 

マスは一関の知人から釜石の飲食店を任された

マスは一関の知人から釜石の飲食店を任された

 

念願の焼き鳥屋台を開店。金を払わず帰ろうとする柄の悪い客にも正面から渡り合う

念願の焼き鳥屋台を開店。金を払わず帰ろうとする柄の悪い客にも正面から渡り合う

 

 舞台の脚本は、井上ファミリーの記念館建設を目指す同市のNPO法人ガバチョ・プロジェクトの山﨑眞行理事長(70)=実行委会長=が書いた。音楽家の本領を発揮し、劇中歌も自ら作詞作曲。主題歌は釜石出身のシンガー・ソングライターあんべ光俊さんが手掛け、同出身の瓦田尚さんが指揮するオーケストラ(ムジカ・プロムナード、釜石市民吹奏楽団)が生演奏した。

 

 キャストは子どもから大人まで22人。主人公マス役は、東日本大震災後の復興支援コンサートで釜石・大槌を訪れていた東京都のオペラ歌手菊地美奈さん(50)が務めた。釜石のまちのにぎわいを描いた場面には市内の歌やダンスのグループが出演し、舞台を盛り上げた。

 

港町釜石のにぎわいをマドロスの歌とダンスで

港町釜石のにぎわいをマドロスの歌とダンスで

 

市内の愛好者が当時のダンスホールの活気を再現

市内の愛好者が当時のダンスホールの活気を再現

 

 マスさんの自伝は、プロによるテレビドラマや舞台化はあるが、地方で市民手作りのミュージカルとして上演されるのは初めて。2回の公演に計約750人が来場。マスさんの生き方や釜石人の力を結集した舞台を通じ、勇気や希望、明日への活力をもらった。

 

 

 甲子町の田中勝江さん(77)は「マスさんは身近な存在。本も読んだ。釜石でこういう舞台が見られるなんて」と大感激。大渡町で生まれ育ち、マスさんが出していた屋台も記憶にあるといい、「飲みに行っていた父親を迎えに行った覚えもある」と懐かしんだ。

 

 仙台市の白田正行さん(71)は高校まで釜石で暮らし、この日は同級生らと観劇。「釜石の良さを再認識し、古里に誇りを持てるような舞台だった。出演者の表情もすごく明るくて、みんなで力を合わせて作り上げているのを感じた」と絶賛。「いろいろな可能性がある舞台。今後どうなっていくか楽しみ」と期待を込めた。

 

 主役の菊地さんは「マスさんはまさに肝っ玉母さんという感じで、何があっても前向きに頑張る女性。地元の皆さんに受け入れてもらい、このような大役を演じられた」と感謝。今回の舞台、市民との触れ合いを通して「人情の厚さを身に染みて感じた。東京の人たちにも釜石のことを自慢したい」と話した。

 

大学を休学して釜石に帰ってきた次男ひさしとマスの再会。「ひさしの歌」を振り付きで披露

大学を休学して釜石に帰ってきた次男ひさしとマスの再会。「ひさしの歌」を振り付きで披露

 

 次男ひさし(成年)役で演劇初挑戦となった柳谷雄介さん(52)は、合唱活動で培った美声を生かし独唱も披露。「家族の支えもあってここまでこられた。感無量」と胸を熱くし、「マスさんの物語を子どもを含め若い人たちに紹介できたことも良かった。釜石に根付く手作り舞台の文化を次世代に伝えていければ」と願った。

 

 ミュージカル公演を発案し、市内外の賛同者の協力で成功させた山﨑実行委会長は「生き生きとした出演者。一緒に楽しんでくれる観客。人間のエネルギーの素晴らしさを見させてもらった。最高の日。私たちの思いに共感し、集まってくれた全ての人たちに感謝したい」と大きな喜びに浸った。

 

会場全体が大きな感動に包まれたフィナーレ

会場全体が大きな感動に包まれたフィナーレ

 

脚本を執筆、実行委会長を務めた山﨑眞行さん(中央)。左隣が主題歌を作ったあんべ光俊さん

脚本を執筆、実行委会長を務めた山﨑眞行さん(中央)。左隣が主題歌を作ったあんべ光俊さん

衣装を替え、フランスの作曲家の曲を奏でた後半

ふるさと釜石での演奏に大きな喜び 高橋碧伊さんピアノリサイタル

高橋碧伊さんによるピアノリサイタル=TETTO

高橋碧伊さんによるピアノリサイタル=TETTO

 

 釜石市出身のピアニスト高橋碧伊さんのリサイタルが10月24日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。フランス留学を経て、東京を拠点に演奏活動を続ける高橋さん。今回は、同ホールの自主事業、釜石・大槌ゆかりの演奏家による「地域アーティストコンサート」シリーズの第1弾に招かれた。市内外から約150人が鑑賞。高橋さんの思いがこもった曲の数々を素晴らしい演奏技術と共に堪能した。

 

 プログラムは、ライフワークにしているフランス音楽を中心に組んだ。クープラン(フランス)のチェンバロ(鍵盤楽器)曲「シテール島の鐘」で幕開け。シューマン(ドイツ)の「子供の情景」は、高橋さんが生まれた時に父親が枕元で聞かせてくれていた曲。現在、自身も2人の愛娘(1歳、5歳)の育児真っ最中で、親としての思いを重ねながら演奏した。

 

留学などで培った技、表現力で観客を魅了。音の響きの良いホールで最高の演奏を届けた

留学などで培った技、表現力で観客を魅了。音の響きの良いホールで最高の演奏を届けた

 

 後半はフランスの作曲家ドビュッシー、プーランク、ラベルの作品を集めた。プーランクは15の即興曲集から、有名な「エディット・ピアフを讃えて」など6曲を披露。ラベルの「ラ・バルス」は19世紀の華やかな舞踏会に思いを巡らせた曲で、ワルツの高揚感や優雅さをピアノの調べで届けた。

 

衣装を替え、フランスの作曲家の曲を奏でた後半

衣装を替え、フランスの作曲家の曲を奏でた後半

 

 ピアノを習って3年という高橋杏奈さん(小佐野小5年)は「強弱の付け方や滑らかな演奏がすごかった。迫力があって憧れる」と刺激を受けた様子。奥州市から駆け付けた千田陽子さん(53)は「感動しました。碧伊さんとは親戚関係。活躍はうれしいし、さらに有名になってほしい」とエールを送った。

 

 高橋さんは1986年生まれ。小佐野小・中、釜石南高から桐朋学園大音楽学部に進んだ。卒業後渡仏し、オルネー・スー・ボア音楽院、パリ地方音楽院最高課程で学び、優秀な成績を修めた。2013年に帰国後は東京を拠点に活動。歌曲伴奏や室内楽奏者として活躍するほか、ピアノ教室を開き、後進の指導にも力を入れる。

 

演奏後、観客の拍手に笑顔で応える高橋碧伊さん

演奏後、観客の拍手に笑顔で応える高橋碧伊さん

 

 釜石でのリサイタルは、15年に平田の古民家で行って以来6年ぶり。震災後に新設された市民ホールでは初めての演奏会となった。「子どものころからお世話になってきた方々も多くみえられ、家族的な雰囲気の中で演奏できた。感謝と幸福感でいっぱい」と高橋さん。

 

 自身にとっても久しぶりのリサイタル。2人の幼子の世話をしながらの準備は大変だったというが、「母親になって曲への思いや音楽に関して深まる部分があったり、新たな発見が多い。抱っこで筋力が鍛えられ、演奏時の体の使い方にも変化が」と思わぬ深化を口にする。今後、挑戦したいこととして「子ども向けのコンサート」を挙げ、「ぜひ、このTETTOでもやってみたい」とふるさと愛をにじませた。

釜石市民ホールギャラリーで開かれているhanaさんの作品展

釜石の写真家hanaさん 作品展「思い出」 アート・アット・テット第2弾

釜石市民ホールギャラリーで開かれているhanaさんの作品展

釜石市民ホールギャラリーで開かれているhanaさんの作品展

 

 釜石市上中島町の写真家小澤はなさん(68)=活動名・hana=の作品展「Remember」が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。地域の四季折々の風景や表情豊かな人物、自然の中で生きる動植物などを独自の視点で切り取った作品約30点を展示している。31日まで、入場無料。

 

 hanaさんが個展を開くのは3回目。今回の「Remember」には「思い出」という意味を当てはめている。笑顔弾ける新1年生、伝統を受け継ぐ職人たちの誇り、命をつなぐ営み。「一枚一枚に思い入れがあり、撮影時を思い出す。今まで撮りためた歴史、思い出を楽しみ、優しい気持ち、癒やしになれば」と厳選した。

 

 会期中の2日間はワークショップも行った。23日に参加した釜石商工高写真部の安藤大翔君、吉岡颯世君(いずれも機械科1年)はカメラマンに撮影してもらう体験をしながら、写真を今より上手に撮るこつを教えてもらった。2人は風景写真を撮ることが多いというが、「光の加減、背景のぼかしとか、なるほどと思うことがたくさんあった。人物や背景にこだわったものとかも撮ってみたい」と刺激を受けていた。

 

hanaさんの思い出に触れる作品が並んでいる

hanaさんの思い出に触れる作品が並んでいる

 

 hanaさんが本格的に写真を撮るようになったのは50歳を過ぎてから。親の介護を終え、自分の時間が持てるようになった頃に友人から勧められてブログを始めたのがきっかけだという。自己流ながらカメラを相棒に写真を学んで10数年、現在はカメラマンとして成人式や七五三、ブライダルなどの撮影を請け負っている。地域の魅力を発信するイベントで撮影技術を教える講師を務めることもある。

 

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23日に行われたワークショップで出会いを楽しんだhanaさん(右)と釜石商工高生ら

 

 写真の魅力は「カメラを通した出会い」とhanaさん。ジャンルにこだわらず、「いいな」と心動かされたモノの一瞬をとらえるのが「快感」だという。「見るものすべてが被写体」と言い切り、これからも「思い出」という宝物を増やし続けていく。

 

 釜石・大槌地域で活動する作家を紹介する同ホール自主事業「art at TETTO」シリーズ(年4回)の2回目。午前9時から午後9時まで鑑賞できる。