日本人初作成の海図「釜石港之図」 市郷土資料館、刊行時の銅板を特別展示
釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板
日本人だけで初めて作られた海図「陸中國釜石港之圖(りくちゅうのくにかまいしこうのず)」の刊行150周年を記念し、釜石市鈴子町の市郷土資料館(藤井充彦館長)でその歴史を紹介する企画展が開かれている。刊行時に使われた銅板など貴重な資料を展示。海図の更新は現在も行われており、海岸線の変化などを見ることができる。13日まで。
海図は、船が安全に航行できるよう海岸の地形や水深、灯台などの目標物を分かりやすく示した海の地図。国内では1871(明治4)年、兵部省海軍部内に水路局が設置され、海洋調査から海図作成を一貫して行う近代的水路業務が始まった。
そうして作成された海図の第1号が、72(同5)年に刊行された「陸中國釜石港之圖」。当時の釜石は、国内主要港の横浜―函館間航路の中間に位置し重要な補給地点だったことに加え、官営釜石製鉄所が完成する直前だったこともあり、海軍が注目すべき重要な港湾の一つだった。
「釜石港之図」のレプリカ(手前)などの資料で海図の歴史を解説する
企画展では、第2管区海上保安本部の提供資料を中心に約30点を展示する。釜石港が第1号に選ばれた背景や新旧海図の比較、海軍伝習所でオランダ式の航海術・測量術を学んだ津の藩士で海図づくりの先駆者となった柳楢悦(やなぎ・ならよし、1832-91年)の業績などをパネルで解説。江戸時代の測量家、伊能忠敬(いのう・ただたか、1745~1818年)と測量隊が作成した「大日本沿海輿地(よち)全図」(伊能図)が、近代海図に果たした役割も紹介する。
当時、第1号海図を印刷するために手彫りで作られた銅板(同本部所蔵)を特別展示。同館の佐々木寿(ひさし)館長補佐は「めったに見ることができないもの。じっくりと見ることができる貴重な機会」と強調する。同館所蔵の羅針盤や記念切手なども並べ、海図づくりの歴史を伝える。
資料館所蔵品も並べて海図の歴史を伝える
「釜石は明治時代からポテンシャルを持ったまち」と佐々木館長補佐。「海図からまちの移り変わりに理解を深め、見直し、誇りを持つきっかけになれば。いい面、優れたところを未来にどう生かすかを考える機会にもしてほしい」と話す。
午前9時半~午後4時半(最終入館同4時)。火曜休館。入館料は大人200円、小中高校生と障害者手帳を持つ人は無料。
海図第1号クリアファイル、販売中
釜石港之図(手前)、ナウマン博士の地質図(奥右)、鉄の歴史館をテーマにしたクリアファイル
同館では、陸中國釜石港之圖をデザインしたクリアファイルを販売している。A4サイズで、1枚200円。海図の歴史などをまとめた解説が挟み込まれていて、展示を見た後に振り返りができる。
ドイツ人地質学者ハインリッヒ・エドムント・ナウマン博士(1854-1927年)の調査に基づき、日本で初めて作成された地質図「大日本予察地質図東北部」をモチーフにしたクリアファイル、近代製鉄発祥の地・釜石を紹介する写真などを散りばめた「市鉄の歴史館」オリジナルファイルもある。それぞれ1枚200円だが、今なら3枚まとめて500円で購入できる。この3種は、鉄の歴史館でも販売している。
海図、地質、製鉄…と興味を持つ人が限定されがちなテーマだが、佐々木館長補佐がいう‶釜石のポテンシャル″を感じるグッズとして手に取って、地域理解を深めてもらえたら―。
釜石新聞NewS
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