タグ別アーカイブ: 文化・教育

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

一針一針丁寧に ちりめん布でひな人形づくり、平田で教室

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

熱心にひな人形を縫い上げる参加者=7日、平田集会所

 

 釜石市平田町の平田集会所で7日、「ちりめん手芸教室」が開かれ、地域住民ら15人が桃の節句を前に、「おひなさま」作りに取り組んだ。平田地区生活応援センター(平田公民館)コミュニティ支援員サロン事業の一環。参加者は会話も楽しみつつ熱心に手を動かしていた。

 

 2回シリーズの最終回。講師は、ミシン・手芸用品の販売などを行う大町のニコー商会の里舘恭子さん(61)が務めた。参加者は色鮮やかな模様の付いたちりめん布を使い、高さ5センチほどの男びなを縫い上げた。オレンジやピンク、グリーンなどの色が付いた布で花飾りのタチバナと桜も作製。ひな人形の目が太かったり細かったり、タチバナの実も大きさがバラバラで、「みんな違っていい。どれもかわいい」と笑顔の連鎖も作った。

 

参加者は細かい作業も楽しんで取り組んだ=7日、平田集会所

参加者は細かい作業も楽しんで取り組んだ=7日、平田集会所

 

 細かな作業が続き、90歳女性は「目が悪いから大変。だけど、手芸が好きだから。いい出来栄え。どこに飾ろうかな」と思いを巡らす。ひざを悪くし、集会所の階段を上るのは苦になるが、「おしゃべりが好き。一人で家にいるよりいい」と目を細めた。

 

 同教室は昨年秋にも3回シリーズで実施。好評だったことから、今回のひな人形づくりが企画された。参加者から継続実施の要望が多く、4月以降、月1回程度開催することが、同日に決まった。「お月見」にちなんだ飾りづくりを楽しむという。

 

釜石市民ホールでひなまつり展 25日から

 
ひなまつり展のチラシを手に来場を呼び掛ける里館さん=10日、大町・ニコー商会

ひなまつり展のチラシを手に来場を呼び掛ける里館さん=10日、大町・ニコー商会

 

 里館さんは、釜石の店舗や大槌町で手芸教室を開いている。参加する女性たちの作品を紹介する「ひなまつり展」を25日から、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで予定する。

 

 釜石では木曜日に教室を開催。50~80代の女性10人ほどが通う。10日午前の教室には5人が参加し、展示会で並べるつるし飾りづくりを進めた。平田の女性(78)は「縫うのが楽しい。みんなとおしゃべりできるのもいい。ストレス発散、情報交換の場で、生活に欠かせない」と頬を緩めた。

 

 おひなさま展には壁掛けや人形、和の細工物など約200点を出品予定。里館さんは「一つひとつ表情が違う。見て楽しんでほしい。コロナ禍、少しでもほっこりしてもらえたら」と来場を呼び掛ける。ものづくりと会話を楽しむ手芸教室への参加は随時募集中。問い合わせは同社(電話0193・24・2366)へ。

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

釜石市の全14小中学校 22年度から「コミュニティー・スクール」に

コミュニティスクール

 

 釜石市教委は2022年度、市内全小中学校(14校)に地域住民や保護者が参画する学校運営協議会を設置する。地域と学校が一体となり、子どもたちの豊かな成長を支える「コミュニティー・スクール」実現への取り組み。協議会は学校運営について意見を述べ、子どもたちが抱える課題解決のための議論などを行う。委員には消防団などの防災関係者も入り、同市が力を入れる防災を核とした命の教育を後押しする。

 

 小・中が同学区の甲子、唐丹は合同設置とし、12協議会が発足する予定。委員は地域、保護者、学校から選定した15人以内で構成。必要に応じ、目標達成のための部会を設け、関係する団体、組織と連携を図りながら地域と学校の協働活動を推進する。各校で委員の選出を進めており、研修などを経て、市教委が4月に任命する。

 

 取り組みの背景にあるのは、子どもたちを取り巻く環境、学校が抱える課題の複雑・多様化。今後、学校と地域の連携はさらに重要になってくると考えられ、社会総がかりでの教育によって、釜石の未来を担う子どもたちの育成をサポートする。教育の課題や目標を共有し、それぞれが当事者として主体的に取り組むことで、市が第6次総合計画に掲げる「地域と人のつながりの中でみんなが育つまち」の実現も目指す。

 

 コミュニティー・スクール(学校運営協議会制度)は、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部改正により、17年度から導入が努力義務化された。本県では既に16市町村が導入し、22年度は全市町村で導入される見込み。

 

釜石市 22年度から10年間の「第3次生涯学習推進計画」策定へ

 

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

生涯学習推進を図る「釜石市社会教育委員会議」

 

 釜石市社会教育委員会議(委員12人)の2021年度2回目の会議は1日、鈴子町の市教育センターで開かれた。委員と事務局(まちづくり課)職員ら22人が出席。市民を対象に実施した生涯学習基礎調査の結果、22年度を初年度とする「第3次市生涯学習推進計画」策定に向けた骨子案が示され、委員の意見を聞いた。

 

 協議に先立ち、22年1月から新任期に入った委員(再任9、新任3)に委嘱状を交付。23年12月まで2年間の任期を確認した。市教委は22年度に導入するコミュニティー・スクールについて説明。社会教育分野にも関係することから、理解と協力を求めた。

 

第3次釜石市生涯学習推進計画骨子案などを協議

第3次釜石市生涯学習推進計画骨子案などを協議

 

 市生涯学習基礎調査は、第3次計画策定の基礎資料とする目的で、昨年8~9月に実施。無作為抽出による16歳以上80歳未満の男女1500人を対象に郵送で行った。回収率は40・5%(回答数608)。

 

 調査によると、「生涯学習」という言葉自体は認知されているものの、「仕事や家事が忙しく時間がない」「きっかけがつかめない」という理由などで、学習活動に踏み出せていない実態があるほか、新型コロナウイルス感染症の影響も各質問項目で挙がった。希望する情報の入手方法で顕著だったのが年代による違い。若年層はインターネット、高齢者層は市広報や公民館だよりなど紙媒体を望む傾向が見られる。市は調査結果を公民館など関係職員で共有し、今後に生かす。

 

 第3次市生涯学習推進計画は、22年度から10年間を計画期間とする。「学びと実践が循環し、つながりを創出する生涯学習社会を目指して」という基本方針のもと、6つの基本目標と施策を示す。▽ライフステージや社会の要請に応じた学習機会の提供▽大学や関係機関との連携強化など生涯学習推進体制の整備▽学習支援・指導を行うボランティアやコーディネーターの育成―などを目指す。「地域全体で子どもを育む環境づくり」では、コミュニティー・スクールとの兼ね合いも盛り込まれる予定。

 

委員からは計画策定へさまざまな意見が出された

委員からは計画策定へさまざまな意見が出された

 

 委員からは「コロナで不自由さを感じながら生活している。手足を伸ばせる(心が開放される)ような活動を」「心のコミュニケーションが大切。実現可能な部分をどうするか」「地域に参加しやすい取り組みがあることが大事。健康な高齢者が社会貢献、自己実現を図れる場が必要」などの意見が出された。市は委員の意見を参考に計画案を策定。3月に開く本年度最後の会議で示すことにしている。

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

子どもも大人も粘土遊びに夢中 釜石公民館で陶芸教室「出来上がりが楽しみ」

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

釜石公民館の陶芸教室で思い思いの創作に励む参加者

 

 釜石公民館主催の「やさしい陶芸教室」は5日、同館が入る釜石市大町の青葉ビルで開かれ、市民約20人がオリジナルの陶作品づくりに挑戦した。講師は、釜石を拠点に活動する陶芸作家澤田麟太郎さん(40)=甲子町。参加者の自由な発想を生かした「粘土遊び」を後押しし、ものづくりの楽しさを伝えた。

 

 基本的な作り方やポイントの説明を受けた参加者は、粘土を平らにしたり細長く伸ばしながら小皿や小鉢などの食器、埴輪(はにわ)やアニメのキャラクターなどをかたどった置物づくりに取り組んだ。粘土を手に、真剣な表情で黙々と手を動かす人もいれば、途中経過を見せ合っては褒め合う親子連れも。高齢の女性たちは作るものを決めずに参加した様子だったが、軟らかな土の感触に「童心に帰る」と夢中になっていた。

 

大人も作品づくりに熱中、力作を生み出した

大人も作品づくりに熱中、力作を生み出した

 

 澤田さんは、身近な自然から見つけた松ぼっくり、ヤシ科の樹木シュロの葉、マメ科のつる性植物フジの豆鞘(まめさや)などの素材を持ち込んでいて、それを粘土に押し当てて模様付けした作品を紹介。「陶芸は粘土遊びの延長。身近にあるもので、いろんな表現ができることを知り、楽しさを感じてほしい。何か分からないものをどんどん作ってもらえたら」と、ものづくりのヒントを残した。

 

参加者が作った置物などの仕上がりを確かめる澤田さん(右から2人目)

参加者が作った置物などの仕上がりを確かめる澤田さん(右から2人目)

 

澤田さん(右)の作品に参加者は興味津々

澤田さん(右)の作品に参加者は興味津々

 

 白鳥をモチーフにした皿を作った土井陽菜香(ひなこ)さん(双葉小3年)は「形を作るのが楽しかった。うまくできた。またやってみたい」と満足げ。恐竜の置物を完成させた弟颯馬君(同1年)と「出来上がるのが楽しみ」と声をそろえた。母裕子さん(51)は「コロナで催しが中止になり、寂しかった。こうした体験活動は子どもたちの刺激にもなる。できるだけ続けてほしい」と望んだ。

 

 制作した作品は、澤田さんが乾燥、釉(ゆう)薬を掛けて焼き入れを実施。約1カ月後に参加者に渡される。

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

方言の温もりをオンラインで 「南部弁サミット」コロナ禍で初の試み

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

 

 第8回南部弁サミットin釜石「おらほ弁で昔話を語っぺし」は5日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。文化庁の「被災地における方言の活性化支援事業」に取り組む岩手大が主催。新型コロナウイルス感染拡大を受け無観客開催とし、ユーチューブによる動画生配信と地元ケーブルテレビ・三陸ブロードネットの生放送で、昔話語りを視聴者に届けた。

 

 オープニングを飾ったのは甲子小2年の大信田さくらさん(7)。大槌町吉里吉里の海を見下ろす民家の庭に設置される電話ボックス「風の電話」をモチーフにした絵本を読み聞かせた。震災などで家族を亡くした人が故人に思いを伝えられる癒やしの場所。2014年刊行(金の星社)の絵本を大信田さん自らが選び、練習を重ねて本番に臨んだ。初の大舞台を終え、「緊張した」と胸をなでおろす大信田さん。出来栄えを問うと「99点!」と元気な答えが返ってきた。

 

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

 

 方言による民話の伝承活動を行う同市の「漁火の会」(須知ナヨ会長、9人)からは6人が出演。「釜石の笛吹峠」「三枚のお札」「矢の浦の渡し」など市内に伝わる民話のほか、会員が遠野出身の須知会長や身内から伝え聞いた話を地元の方言で語った。語り部の後では、会員などが描いた物語のイラストも上映され、各場面の情景を目でも楽しませた。

 

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

 

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

 

 ゲストコーナーには、民話の宝庫・遠野市から「遠野昔話語り部の会」の2人が出演。「天福 地福」「迷い家」を熟練の話術で聞かせた。同サミットに初回から協力する青森県八戸市の「八戸童話会」の2人は、コロナ禍のため、昨年に続きビデオ出演となった。

 

 最後は同サミット名物の「漁火の会」会員による民話劇。今回は全国に知られる昔話「貧乏神と福の神」の一部をアレンジし、方言を交えて熱演。今に通じる教訓も込められた話を楽しい寸劇で伝えた。

 

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

 

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

 

 漁火の会の北村弘子事務局長(69)は初めての無観客開催に、「お客様の反応や息づかいを感じながらやってこられた今までが、いかに幸せで、ありがたいことだったかとあらためて思う」。この2年間はイベントなどが次々に中止となり、語りを披露する機会も減ってしまった。状況の改善は見通せないが、「雨にも負けず、風にも負けず、コロナにも負けず…。宮沢賢治の精神で何とか乗り切っていきたい。早くお客様の目の前で語れる日が来ることを願う」と思いを込めた。

 

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

地域振興へ連携深化 釜石市と岩手大フォーラム 成果示すパネル展も

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

自治体と大学の連携事例を紹介するフォーラム

 

 岩手大学地域連携フォーラム(岩手大、釜石市主催)は3日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルスの流行が続く中、オンライン配信を取り入れて行い、会場参加と合わせて約100人が聴講。「ポストコロナにおける新しい地域連携・課題解決-デザイン思考の活用」をテーマに、連携事例の紹介や研究成果の報告、パネル討論が行われた。

 

 同大は2001年に締結した相互協定に基づき、釜石市と共同研究に取り組むとともに、市の職員を大学の共同研究員として受け入れ、多くの分野で連携を重ねてきた。震災後に釜石サテライトを設け、13年には三陸水産研究センターを設置。18年からは農学部食料生産環境学科水産システム学コースの学生が釜石キャンパスを拠点として研究活動に取り組んでいる。20年度には両者と民間企業などが連携し、釜石湾でサクラマスの養殖試験を始めた。

 

学生や教授らの成果報告に耳を傾けた参加者

学生や教授らの成果報告に耳を傾けた参加者

 

 現在、釜石に在住し水産分野の研究や地域連携活動に取り組んでいる学生は24人。同コース4年の古澤直哉さんが、市学生活動支援事業補助金を活用し企画展開した出前授業、定置網見学とすし作り体験ツアーなど市民との交流活動について報告した。魚食の魅力や海の豊かさを発信できたと成果を強調。「企画した交流活動が成功した時の喜びや事前準備の大切さを実感。社会人としての助走の機会になった。人とのつながりを得て、釜石への愛着も湧いた」と充実感を見せた。

 

共同研究員の役割や取り組み事例を報告する佐々木千里さん

共同研究員の役割や取り組み事例を報告する佐々木千里さん

 

 5代目共同研究員として20年4月から同大に派遣されている市職員の佐々木千里さんは、歴代研究員が手掛けた連携事例を紹介。研究員が大学の知見を得たい市内企業と同大を結ぶ窓口となることで、スムーズな連携相談、関係構築が可能になるとし、「効率的、効果的な取り組みができるよう調整役を担っていく」と意欲を示した。

 

 同大理工学部教授らが、商品販売やまちづくりなどのさまざまな課題を解決するための思考方法「デザイン思考」をテーマにした地方創生の取り組み、SDGs(持続可能な活動目標)活動の事例を紹介。釜石の老舗和菓子会社社長らを加えたパネル討論では、この思考法を取り入れた地域振興と人材育成の在り方を共有した。

 

釜石高の探究活動などがパネル展示で紹介された

釜石高の探究活動などがパネル展示で紹介された

 

 文科省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている釜石高はオンラインで参加し、郷土芸能「虎舞」の起源など地域に関わる探究活動の成果を発表した。クジラ資源の利用をテーマに研究に取り組んだグループは「捕鯨問題は世界各国の文化の違いがあり解決は難しいが、全身を余すところなく利用できるクジラは重要な海洋資源となりうる」と考察した。 

 

 同大の小川智学長は「今後も三陸地域の活性化のため、教育をテーマにさまざまな活動を継続する」と強調。野田武則市長は「大学が持つ知に期待。地域振興に向け連携を深めたい」と望んだ。

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

コロナ下の読書活動推進「できることを」 読み聞かせボランティア講座

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

環境変化に合わせた読書推進活動を紹介する江刺さん

 

 子どもの読書活動推進ボランティア講座は1月28日、釜石市小佐野町の市立図書館で開かれた。学校や地域で子どもたちの読書活動を支えるボランティア、読み聞かせ活動に関心のある人が対象で、9人が参加。市内外の活動団体による事例紹介や実演などから、活動のヒントを得、スキルアップを図った。

 

 大船渡市を中心に読み聞かせや本を通じた交流活動を展開するNPO法人「おはなしころりん」理事長の江刺由紀子さんが「新型コロナウイルス禍での活動と学校ボランティアとの連携」をテーマに講義。「読み聞かせは本を通じた気持ちの手渡しができる大事な活動。できることをできる範囲で続けていく」と強調し、▽文通活動▽軒下古本屋▽新聞での本紹介―など新事業について説明した。

 

 子どもの読書活動を支えるには「地域全体で子どもの成長を後押しするイメージが大切」と指摘。読書ボランティアらの地域を越えたつながりも促し、「情報交換しながら互いに元気を注入していきましょう」と呼び掛けた。江刺さんは実際に読み聞かせをし、「魔法のオレンジの木-ハイチの民話」に集録された「フクロウ」を紹介。声色の変化や強弱で登場人物を演じ分け、子どもの心を持った大人たちを物語の世界に誘い込んだ。

 

千田さんはおすすめ本を示して本選びのヒントを伝えた

千田さんはおすすめ本を示して本選びのヒントを伝えた

 

 釜石市内外の図書館で読み聞かせのボランティア活動に取り組む読書サポーター「颯(かぜ)・2000」事務局長の千田雅恵さんは、本の選び方をアドバイス。「自分が読んで共感できる本を選ぶこと。興味や関心のアンテナを張り巡らして自分の感性を磨くことが大切」と伝えた。「ぜつぼうの濁点」「ことろのばんば」など、子どもの年齢に合わせたおすすめ本を紹介。手遊びやわらべ歌を取り入れ、読み聞かせの場をさらに楽しい空間にするための工夫も見せた。

 

 甲子町の女性(60代)は「江刺さんの読み聞かせに引きつけられた。本を読むことで心がしなやかになる、子どもならなおさら。発想も豊かになる」と実感。昨年から小学校図書室の運営補助などを行う学校図書ボランティアとして活動していて、楽しい空間づくり、児童への読み聞かせに意欲を見せた。

 

 同館の川畑広恵館長は「コロナ禍、天災といった避けられないことがあっても、子どもたちが伸び伸びと強く育つためにできることがある」と確信する。コロナの流行を踏まえ参加型行事は減るが、多様なテーマで企画展を展開。2月1~22日に「猫の図書展」、同23日からは「ひなまつり展」を予定する。自宅で過ごす時間が増えている今だからこそ、本に触れ関心分野を広げてみては――。

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

日本人初作成の海図「釜石港之図」 市郷土資料館、刊行時の銅板を特別展示

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

釜石市郷土資料館で開催中の海図第1号「釜石港之図」刊行150周年記念展。手前にあるのが海図印刷用の銅板

 

 日本人だけで初めて作られた海図「陸中國釜石港之圖(りくちゅうのくにかまいしこうのず)」の刊行150周年を記念し、釜石市鈴子町の市郷土資料館(藤井充彦館長)でその歴史を紹介する企画展が開かれている。刊行時に使われた銅板など貴重な資料を展示。海図の更新は現在も行われており、海岸線の変化などを見ることができる。13日まで。

 

 海図は、船が安全に航行できるよう海岸の地形や水深、灯台などの目標物を分かりやすく示した海の地図。国内では1871(明治4)年、兵部省海軍部内に水路局が設置され、海洋調査から海図作成を一貫して行う近代的水路業務が始まった。

 

 そうして作成された海図の第1号が、72(同5)年に刊行された「陸中國釜石港之圖」。当時の釜石は、国内主要港の横浜―函館間航路の中間に位置し重要な補給地点だったことに加え、官営釜石製鉄所が完成する直前だったこともあり、海軍が注目すべき重要な港湾の一つだった。

 

「釜石港之図」のレプリカ(手前)などの資料で海図の歴史を解説する

「釜石港之図」のレプリカ(手前)などの資料で海図の歴史を解説する

 

 企画展では、第2管区海上保安本部の提供資料を中心に約30点を展示する。釜石港が第1号に選ばれた背景や新旧海図の比較、海軍伝習所でオランダ式の航海術・測量術を学んだ津の藩士で海図づくりの先駆者となった柳楢悦(やなぎ・ならよし、1832-91年)の業績などをパネルで解説。江戸時代の測量家、伊能忠敬(いのう・ただたか、1745~1818年)と測量隊が作成した「大日本沿海輿地(よち)全図」(伊能図)が、近代海図に果たした役割も紹介する。

 

 当時、第1号海図を印刷するために手彫りで作られた銅板(同本部所蔵)を特別展示。同館の佐々木寿(ひさし)館長補佐は「めったに見ることができないもの。じっくりと見ることができる貴重な機会」と強調する。同館所蔵の羅針盤や記念切手なども並べ、海図づくりの歴史を伝える。

 

資料館所蔵品も並べて海図の歴史を伝える

資料館所蔵品も並べて海図の歴史を伝える

 

 「釜石は明治時代からポテンシャルを持ったまち」と佐々木館長補佐。「海図からまちの移り変わりに理解を深め、見直し、誇りを持つきっかけになれば。いい面、優れたところを未来にどう生かすかを考える機会にもしてほしい」と話す。

 

 午前9時半~午後4時半(最終入館同4時)。火曜休館。入館料は大人200円、小中高校生と障害者手帳を持つ人は無料。

 

海図第1号クリアファイル、販売中

 

釜石港之図(手前)、ナウマン博士の地質図(奥右)、鉄の歴史館をテーマにしたクリアファイル

釜石港之図(手前)、ナウマン博士の地質図(奥右)、鉄の歴史館をテーマにしたクリアファイル

 

 同館では、陸中國釜石港之圖をデザインしたクリアファイルを販売している。A4サイズで、1枚200円。海図の歴史などをまとめた解説が挟み込まれていて、展示を見た後に振り返りができる。

 

 ドイツ人地質学者ハインリッヒ・エドムント・ナウマン博士(1854-1927年)の調査に基づき、日本で初めて作成された地質図「大日本予察地質図東北部」をモチーフにしたクリアファイル、近代製鉄発祥の地・釜石を紹介する写真などを散りばめた「市鉄の歴史館」オリジナルファイルもある。それぞれ1枚200円だが、今なら3枚まとめて500円で購入できる。この3種は、鉄の歴史館でも販売している。

 

 海図、地質、製鉄…と興味を持つ人が限定されがちなテーマだが、佐々木館長補佐がいう‶釜石のポテンシャル″を感じるグッズとして手に取って、地域理解を深めてもらえたら―。

釜石市民劇場キャストの稽古=1月27日夜、市民ホールTETTO

釜石市民劇場 唐丹の天文学者・葛西昌丕をめぐる物語で3月6日公演へ

釜石市民劇場キャストの稽古=1月27日夜、市民ホールTETTO

釜石市民劇場キャストの稽古=1月27日夜、市民ホールTETTO

 

 第35回釜石市民劇場(同実行委主催)は、江戸時代の唐丹村で名をはせた天文学者・葛西昌丕(まさひろ)の人物像をフィクションで描く創作劇。3月6日に大町の市民ホールTETTOでの公演を予定する。新型コロナウイルス禍で2年ぶりとなる公演に向け、キャスト、スタッフらは気合い十分。本番まで1カ月余りとなり、熱のこもった稽古を続けている。

 

 葛西昌丕(1765―1836)は唐丹村本郷生まれ。葛西家は代々、五十集(いさば=水産加工)を営む地元の名家で、昌丕は若くして勉学の道へ。仙台で国学、天文地理などを学んだとされる。江戸幕府の命で全国を測量して歩いた伊能忠敬が唐丹を訪れた際に、関わりがあったとの説もあり、昌丕は測量から13年後の1814年に忠敬の偉業を記した石碑を建立している。同所の緯度と周りに星座名を刻んだ星座石も残し、これらは忠敬の測量事績を江戸時代に示したものとしては全国唯一とされる。1985年に県指定文化財となった。

 

葛西昌丕が建立した「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」写真提供=市文化振興課

葛西昌丕が建立した「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」写真提供=市文化振興課

 

唐丹の緯度(北緯39度12分)を中心に星座名を刻んだ「星座石」写真提供=市文化振興課

唐丹の緯度(北緯39度12分)を中心に星座名を刻んだ「星座石」写真提供=市文化振興課

 

 今回の市民劇場の脚本は同実行委の久保秀俊会長(73)が執筆。劇中では昌丕の功績はナレーションでの紹介にとどめ、人物像に焦点を当てる。「人間味のある人だった」という資料の一文から発想を膨らませ、地域の人たちとの関わりをフィクションで描いた。歴史資料によると、葛西家は明治三陸大津波で滅亡。一家や昌丕個人の私生活を詳しく記した資料はなく、地元で伝え聞く人も今となってはいないという。

 

 久保会長は「私財を投げ打って地域に新道を造るなど、科学者だけでなく人格者としても尊敬に値する人物だったのではないか。人にやさしく接し、話をよく聞いてあげただろう姿を想像し物語を書いた」と話す。二幕十場、約2時間の公演予定で、劇の前には地元本郷の「桜舞太鼓」がステージを盛り上げる。

 

 キャストは小学生から60代まで14人で、4人が初挑戦。昨年11月末から稽古を開始し、今はセリフと動作を組み合わせながら演技の基礎固めを行う。久保会長が総監督を務め、キャストの武田仁一さん(71)、小笠原景子さん(37)が助演出を兼ねる。舞台制作も始まっており、今後、キャストの協力も得ながら準備を進めていく。

 

地元言葉のイントネーションを教える助演出の武田仁一さん(右)

地元言葉のイントネーションを教える助演出の武田仁一さん(右)

 

現在、週4回ほどのペースで稽古を続けるキャスト。観客に楽しんでもらおうと熱心に励む

現在、週4回ほどのペースで稽古を続けるキャスト。観客に楽しんでもらおうと熱心に励む

 

総監督を務める久保秀俊実行委会長。今作品の脚本も手掛けた

総監督を務める久保秀俊実行委会長。今作品の脚本も手掛けた

 

 市民劇場初参加の西山彩菜さん(16)は、物語の主要人物となる「おユキ」役。「本心を出せず、どこか強がっている子ども。自分とは正反対」と役柄を分析。「本番では、おユキがこの場にいると錯覚させたい。ベテランの先輩たちに負けないよう、存在感を放っていけたら」と意気込む。

 

葛西昌丕役の久保修二さん(右)とおユキ役の西山彩菜さん

葛西昌丕役の久保修二さん(右)とおユキ役の西山彩菜さん

 

 主人公「葛西昌丕」役は久保修二さん(54)。20代初めに出演経験があり、一昨年の前回公演で約30年ぶりに復帰した。釜石出身で、自営業を営む花巻市から稽古に通う。初めての主役抜てきに「(多くの人と絡むので)相手とのセリフの間に苦労している」と難しさを実感。「恵まれた環境で勉強する昌丕が、つらい境遇を生きてきた人たちと接する中で芽生える心情の変化を表現できれば。人物像をしっかりイメージしながらやっていきたい」と気を引き締める。

 

 第35回釜石市民劇場「満天の星は知っている『天文学者葛西昌丕』若き日の私記」は、3月6日(日)午前10時半、午後2時半の2回公演。チラシやポスターが完成次第、チケット販売を開始する。

長唄三味線子ども教室発表会=中妻北地区コミュニティ消防センター

コロナに負けず稽古継続 長唄三味線子ども教室10人が成果発表

長唄三味線子ども教室発表会=中妻北地区コミュニティ消防センター

長唄三味線子ども教室発表会=中妻北地区コミュニティ消防センター 

 

 杵家会釜石支所(杵家弥多穂代表)が主催する伝統文化長唄三味線子ども教室は1月23日、本年度の教室最終日を迎え、受講した10人がこれまでの稽古の成果を発表した。新型コロナウイルス影響下での教室は2年目を迎えたが、意欲ある子どもたちの成長を止めまいと、感染防止策を徹底しながら稽古を継続。全15回の日程を終えた受講生は、さらなる上達を願い、来年度の開講に期待した。

 

 同教室は2008年度に開始し、東日本大震災による中断を経て再開。13年目となる本年度は昨年6月に開講し、小中高生9人と大人1人が受講した。継続受講は3~9年目。初受講した釜石中の2年生3人は、同会が昨年9月に学校に出向いて行った三味線体験会を機に教室へ。杵家代表ら4人の講師が、受講年数に応じてきめ細かく指導した。感染症対策として受講生を3組に分け、時間をずらして稽古した。

 

修了証書を授与される濱田真由香さん(右)

修了証書を授与される濱田真由香さん(右)

 

 発表会に先立ち行われた閉講式では、受講9年目となった濱田真由香さん(釜石中3年)が代表で修了証書を受け取った。来賓の市文化振興課・藤井充彦課長は、コロナ禍での学びの機会提供に敬意を表し、「先生方の熱意が子どもたちの意欲につながっているものと思う。教室で学んだことを日々の暮らしにも生かし、心身豊かに成長していくことを願う」と期待した。

 

「釜石市民歌」の演奏、歌で開演した発表会

「釜石市民歌」の演奏、歌で開演した発表会

 

 演奏は「釜石市民歌」からスタート。初心者2人は長唄三味線の入門曲「松の緑」の合いの手(間奏)で稽古の成果を発表。歌舞伎「娘道成寺」の合いの手など2曲が続いた。後半は講師が唄で加わり、「元禄花見踊り」(三部合奏)と「雪」の合方(あいかた)を演奏。春と冬の風情を醸す曲で季節の違いを表現した。最後は歌舞伎十八番の「勧進帳」から「寄せ」「こだま」「滝流し」「舞い」の4つの合方を披露。高度な技と息の合った音色で、見守った保護者や来賓をうならせた。

 

中級、上級者らによる演奏は聞きごたえ十分

中級、上級者らによる演奏は聞きごたえ十分

 

来賓や保護者は見事な調べに感心しながら拍手

来賓や保護者は見事な調べに感心しながら拍手

 

 稽古を始めて5カ月の及川美結さん(釜石中2年)は、学校での体験会を機に興味を持ち、「自分も弾けるようになりたい」と教室に通うように。10回の受講ながら、入門曲を演奏できるまでに上達した。「難しかったが、自分なりに頑張ってこられた」と達成感を見せ、「ちょっとずれただけで音が変わる。難しさもあるけど、それが楽しい。先輩方みたいに弾けるようになるのが目標」と稽古の継続を誓った。

 

 姉妹で三味線を学んできたのは佐藤七海さん(釜石高3年)、永愛さん(小佐野小6年)、あいなさん(同2年)の3人。七海さんは小学6年時に教室のチラシを見て、弟海輝人(みきと)君(現釜石高1年)と受講を開始。その後、2人の姿を追って妹2人も入り、昨年度まで4人で稽古に励んだ。

 

仲良く三味線を学んだ佐藤3姉妹。あいなさん、七海さん、永愛さん(左から)

仲良く三味線を学んだ佐藤3姉妹。あいなさん、七海さん、永愛さん(左から)

 

 就学前から教室に通い、長唄に親しんできたあいなさんは、3年目の本年度から三味線の稽古を本格化。6年目の永愛さんは、名取でも難しいという「滝流し」に初挑戦し、発表会で中高生らと見事な演奏を見せた。七海さんは年の離れた妹らと三味線で絆を深められたことを喜び、「昨年はきょうだいみんなで楽しんで演奏できた」とにっこり。7年の学びを振り返り、「練習を重ねるたびに上達するのがうれしくて。部活で吹奏楽をやってきたので、洋楽、邦楽それぞれの魅力を感じることができた」。高校卒業後は進学のため釜石を離れる予定で、「何らかの形で三味線も続けられたら」と願った。

 

「松の緑」の合いの手を堂々と弾く佐藤あいなさん(左)。将来が楽しみ

「松の緑」の合いの手を堂々と弾く佐藤あいなさん(左)。将来が楽しみ

 

「勧進帳」の合方「滝流し」を弾く佐藤永愛さん(前列右)。姉七海さん(後列左)と難曲に挑む

「勧進帳」の合方「滝流し」を弾く佐藤永愛さん(前列右)。姉七海さん(後列左)と難曲に挑む

 

 杵家代表は「長く続けてくれるのは(三味線が)好きだからこそ。稽古中は私語も無く、覚えるのに真剣。成長とともに難しい曲に挑戦できるのも励みになっているのでは」と話し、今後の開講にも意欲を示した。

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国際協力で地域振興・人材育成を―釜石市とJICA東北、覚書締結

連携に関する覚書を結んだ野田市長(左から2人目)と小林所長(同3人目)、海外協力隊候補生の川松さん(右)ら

連携に関する覚書を結んだ野田市長(左から2人目)と小林所長(同3人目)、海外協力隊候補生の川松さん(右)ら

 

 釜石市と独立行政法人国際協力機構東北センター(JICA東北、宮城県仙台市、小林雪治所長)は14日、国際協力を通じた地域振興や人材育成に取り組むことを目的として「連携に関する覚書」を結んだ。取り組みの第1弾として、JICA海外協力隊の派遣前研修を実施。早速、候補生1人が活動を開始し、海外での協力活動に役立つ地域活性化や地方創生の取り組みについて知見を深める。

 

 JICA東北は東日本大震災の復興支援で釜石入りし、防災や減災のまちづくり、高校生のキャリア教育などに関わる活動で市と協力関係をつないできた。市では、外部との交流で新たな活力を育む「オープンシティ戦略」を掲げ、復興後の持続的成長を導く試みを進めており、今回の覚書もその一環。協働での活動を充実させることで戦略を強化させる。

 

 連携の内容は、▽海外協力隊合格者に対する市内での研修の実施▽帰国した隊員らのIターン促進▽開発途上地域からの技術研修員の受け入れや同地域への専門家の派遣▽市内での国際理解教育や多文化共生の促進-など。最長5年間、取り組みを進める。

 

野田市長(左)と小林所長(右)が覚書に署名した

野田市長(左)と小林所長(右)が覚書に署名した

 

 締結式は釜石市役所で行われ、野田武則市長と小林所長が覚書を取り交わした。野田市長は「復興後の将来を見据えた取り組み、時代の変わり目に合わせた人材が必要になる。互いが持つ知見を生かし、ウィンウィンの形に」と強調。小林所長は「関係人口、UIターンによる人口増加、地域振興の一助になれば。いろんな面で協力を深化させたい」と期待を込めた。

 

 派遣前研修に臨む隊員候補生、川松秀夫さん(61)も同席した。出身地の茨城県で36年間教員(高校)を務め、一昨年定年退職。今年8月以降、理科(専門は生物)分野で南アフリカ共和国への派遣が予定されている。地方創生や地域活性化に関心があり、震災復興の応援にもなればと釜石での研修を希望。高校、大学時代、ラグビーに打ち込んでいたことから、縁も感じている。

 

釜石で研修に臨む意気込みを伝えた川松さん(右)

釜石で研修に臨む意気込みを伝えた川松さん(右)

 

 研修期間は約3カ月間。活動先は市オープンシティ推進室、釜石シーウェイブスRFC、根浜MINDなどで、地域の現状把握や課題解決に向けた事業への理解を深める。川松さんは「地域に溶け込み、コミュニケーションをとりながら状況把握に努める。明るいまちづくりへ貢献できるよう取り組みたい」と意欲を見せた。

TETTOホールBで初めて開催された彩美会の展示会。会員の個性が光る作品が並んだ

コロナ禍の人々に心の潤いを 絵画グループ「彩美会」2年ぶりの作品展

TETTOホールBで初めて開催された彩美会の展示会。会員の個性が光る作品が並んだ

TETTOホールBで初めて開催された彩美会の展示会。会員の個性が光る作品が並んだ

 

 釜石市の絵画グループ、彩美会(小原孝夫会長、15人)は14日から16日まで、大町の市民ホールTETTOで作品展示会を開いた。年に1回、習作画展として開催してきた同展は、新型コロナウイルス感染症の影響で昨年度は中止。2年ぶりとなった本展は名称を「彩美会展」と改め、初めて市民ホールを会場とした。久しぶりの発表の場に会員は笑顔を輝かせ、来場者との交流を楽しんだ。

 

 会員と講師の佐々木実さん(二科会会友)が計67点を出品。油彩、水彩、色鉛筆、クレヨンなど各種技法で描かれた大小の力作が並んだ。風景、静物、芸能、動物など会員それぞれが描きたい題材に取り組み、講師の指導や仲間のアドバイスを受けながら作品を仕上げた。会場には昨年逝去した前会長の松坂寛一さんの遺作も展示された。

 

さまざまな技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞

さまざまな技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞

 

松坂寛一前会長(故人)の遺作「大橋鉱山」

松坂寛一前会長(故人)の遺作「大橋鉱山」

 

 会員最年長の菅原オトメさん(95)は、浄土ヶ浜や合掌造りの家屋のある田園風景など油彩5点を出品した。「風景を描くのが好き」で、家族と出かけた先で気に入った景色を写真に撮ってきて、思い出しながらキャンバスに向かう。60代で同会に入会、油絵一筋できた。以前は1カ月に1枚ペースで新しい作品を完成させ、仲間も驚くほど。「出来上がりが楽しみで(描き続ける)」。足が弱くなったこと、コロナの心配もあって、最近は活動日に顔を出せていないが、自宅で創作に没頭。会員の憧れの存在で、生涯現役を貫く。

 

最年長会員の菅原オトメさん(95)も会場に

最年長会員の菅原オトメさん(95)も会場に

 

菅原オトメさんが描いた風景画(油彩)の数々

菅原オトメさんが描いた風景画(油彩)の数々

 

 一方、昨年6月に入会した佐々木道彦さん(66)は、秋の猊鼻渓やアフリカ原住民の狩猟用仮面などをアクリル絵の具で描いた3点を出品。絵画経験ゼロからのスタートだったが、「楽しい。頭も使うのでぼけ防止にも」と新たな世界に魅了される。先輩会員の作品に「それぞれ個性があって面白い」と刺激を受け、「気軽にアドバイスをくれる和気あいあいの雰囲気もいい」と喜ぶ。発想力豊かな佐々木さんは、展示会場入り口を飾るオブジェも制作。運搬用一輪車の荷台に穴を開け、仮面風に仕上げた。タイトルは「SDGs(ネコ車)」。ユニークな再生アートが来場者の目を引いた。

 

仮面の作品を指差し、小原会長と会話を弾ませる佐々木道彦さん(66)

仮面の作品を指差し、小原会長と会話を弾ませる佐々木道彦さん(66)

 

入り口で来場者を迎えた佐々木さん制作オブジェ

入り口で来場者を迎えた佐々木さん制作オブジェ

 

 同会は定内町3丁目のひまわり集会所で月2回活動。歴代講師は釜石製鉄所OBで、3代目の佐々木さんは海外にも勉強に出向き、二科会岩手支部長も務めてきた。小原会長(73)は「佐々木先生は会員の描きたいものに合わせ指導してくれる。コロナ禍のこの2年も活動は継続できた。若い世代が興味を持ち、入会してもらえるよう今後、働きかけも進めていきたい」と話した。

 

 展示会は通算35回目。会場には市内の他の絵画グループ会員も足を運び、作品展開催を祝福。これまでとは違った展示空間での作品鑑賞を楽しみ、絵画談義に花を咲かせた。

ボーイスカウト釜石第2団創立60周年記念式典

ボーイスカウト釜石第2団60周年 釜石に残る唯一の団が活動継続へ意欲

ボーイスカウト釜石第2団創立60周年記念式典

ボーイスカウト釜石第2団創立60周年記念式典

 

 ボーイスカウト釜石第2団(菊地次雄育成会長、末永正志団委員長、64人)は12日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで、創立60周年記念式典を開いた。関係者約80人が出席。団に貢献した企業や団体の代表、団役員ら16人に感謝状を贈った。戦後、市内各地区で団が結成され、最盛期には7団が活動した釜石のボーイスカウト(BS)。現在は第2団のみが活動する。式典出席者は伝統を継承し、「地域や社会に役立つ人材育成」へ力を注いでいくことを誓い合った。

 

 式辞に立った菊地育成会長は「60年間のスカウト(団員)は1千人に及ぶ。大自然の中での仲間と助け合いながらの活動は後の大きな財産になる。次代を担う子どもの健全育成は大人の責任」と活動意義を強調。末永団委員長は東日本大震災後の活動について、「BS岩手連盟や県内の野外活動団体の協力で、遊び場の提供やキャンプへの招待を行い、被災地の子どもたちの心のケアに努めてきた。身を粉にして尽力した指導者らに感謝したい」と述べた。

 

末永正志団委員長が団の歴史や震災後の活動について紹介した

末永正志団委員長が団の歴史や震災後の活動について紹介した

 

2012年5月にBS岩手連盟と釜石第2団が開いた「遊びの広場」=シープラザ遊

2012年5月にBS岩手連盟と釜石第2団が開いた「遊びの広場」=シープラザ遊

 

 施設・設備の提供、寄付、永年奉仕(10年以上)などの功労で、団内外の16人に感謝状を贈呈。発団時からスカウト活動を継続し、指導者として長年貢献してきた育成会副会長の奥田耕一さん(73)に名誉役員の称号「先達」を贈った。奥田さんは中学2年生で入団。班長として団員を率い、第2団の礎を築いた。指導者となってからも団を精力的に支え、2019年度までの16年間、団委員長を務めた。発団時から60年間在籍するのは、奥田さんと現団委員長の末永さん(71)だけとなっている。

 

感謝状を受ける山崎義勝副団委員長。山崎さんは5月にBS日本連盟の功労賞「たか章」も受章

感謝状を受ける山崎義勝副団委員長。山崎さんは5月にBS日本連盟の功労賞「たか章」も受章

 

名誉役員の称号「先達」を贈られた奥田耕一さん

名誉役員の称号「先達」を贈られた奥田耕一さん

 

 式典では、副団委員長の山崎義勝さん(68)が本年5月の全国大会で、公益財団法人ボーイスカウト日本連盟の功労賞「たか章」を受章したことも報告された。第2団で同章を受けるのは4人目。式後の活動報告会ではスカウトらが歌で60周年を祝い、直近10年間の活動を映像で振り返った。

 

 BS釜石第2団は1961年、釜石小只越地区PTAが青少年の健全育成を目指し発団。地区の小・中学生32人でボーイ隊(小6~中3)を結成した。後にカブ隊(小3~小5)、ベンチャー隊(高校生)、ビーバー隊(小1、2)が発足。81年には同団最多のスカウト81人を数えた。野外活動を通じて安全、環境、防災などの知識とスキルを習得。仲間との活動で協調性や忍耐力を育み、現代社会で求められる生きる力を身に付ける。本年度はローバー隊員(19~25歳)含め47人がスカウト登録する。

 

60周年を祝ううちわを掲げるビーバー、カブ隊

60周年を祝ううちわを掲げるビーバー、カブ隊

 

りりしい制服姿で歌うボーイ、ベンチャー隊

りりしい制服姿で歌うボーイ、ベンチャー隊

 

 ボーイ隊2班班長の川端海惺君(釜石中2年)は「先輩たちに倣い、自分も後の人たちにつなげていけるようにしっかりリードし、活動の質を高めていきたい」、同1班班長の阿部雅俊君(大槌学園8年)は「何でも便利になっているが、それが無くなった時、自分で考え行動する力が求められる。スカウト活動で身に付けたことは災害時にも役立つ」とし、今後の活動へ意欲を示した。

 

 感謝状の贈呈は次の通り。
▽寄付=釜石東ロータリークラブ(齊藤裕基会長)
▽施設・設備提供=日東自動車工業(菊地次雄社長)
▽自然体験プログラム提供=浜千鳥(新里進社長)
▽維持会費提供(寄付)=奥田耕一(育成会副会長)、末永正志(団委員長)、山崎義勝(副団委員長)、山崎幹雄(元事務局長)
▽施設・設備提供、永年奉仕=高木稔(ビーバー隊長)、大信田信恵(カブ隊長)、小井土元彦(ボーイ隊長)、菊地次雄(育成会長)、新里進(育成会副会長)、奥田耕一、千田雅恵(育成会会計係)、末永正志、山崎義勝、千田与一(事務局長)、菊地敏文(団委員)、山口貴廣(同)、川端俊一(同)、工藤誠(同)