届け!「防災」の願い 釜高生 うのスタ震災伝承活動で「オリジナル安否札」配布


2022/05/20
釜石新聞NewS #文化・教育 #防災・安全

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

 
 釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」(30人)は8日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで防災啓発活動を行った。ジャパンラグビーリーグワン2部、釜石シーウェイブス(SW)RFCのホーム戦に合わせて実施。観戦客に東日本大震災の経験を伝え、新たに作成した「オリジナル安否札」の配布などで災害への備えの大切さを呼び掛けた。
 
 スタジアムでの試合開催時に伝承活動を続けている夢団。今季4回目の活動となったこの日は、12人が参加した。施設内に建つ震災の教訓を伝える祈念碑の前では、矢内舞さん、戸澤琉羽さん(ともに3年)が「語り部」活動。鵜住居で起こった当時の出来事などを伝え、命を守る行動、日ごろの備えの重要性を訴えた。
 
スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

 
震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

 
 メンバーの発案で作成したオリジナルデザインの安否札は、この日が初お披露目。災害避難時に玄関に掲示し、すでに避難したことを知らせる安否札は、家族や地域の犠牲を減らすことにつながる。B5判サイズで、表面には避難場所、裏面には連絡先や伝言を書き込める欄を設け、活用の仕方も記載した。メンバーは観戦客らに直接手渡し、防災意識を高めるのに一役買った。
 
安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

 
 安否札を配った佐々木結咲さん(2年)は「初めて知った人もいるよう。今日は県外から来ている人も多く、震災の経験を伝えるにはいい機会。教訓を広め、防災を身近にしてもらい、これからの被害を少しでも小さくできたらいい」と願った。
 
 「夢団」は2019年12月に結成。同スタジアムが会場となったラグビーワールドカップ(W杯)開催時に、震災の教訓と復興支援への感謝を伝えようと活動した生徒らが、継続的な活動をしたいと団体を立ち上げた。生徒のアイデアで作成し、W杯来場者に配った「津波伝承うちわ」は団に受け継がれ、今も伝承活動で生かされる。これまでに6千枚を配り切り、今回の安否札作成に合わせて1千枚を増刷。2種のツールでさらなる防災力向上を促す。
 
この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

 
 語り部を担当した矢内さんは震災時6歳。唐丹町の自宅が津波で全壊し、仮設住宅で7年間を過ごした。自身の経験も盛り込み、感じたことを伝える中で口にしたのは、多くの支援に対する感謝と助け合いの精神。「災害時は近隣はもちろん、見ず知らずの人でも助け合いや声掛けが重要」とし、「話を聞いた人が家庭や地域で広めてくれて、多くの人が防災知識を身に付けるきっかけになれば」と期待した。
 
自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

 
 東京都の平木香織さん(38)は「当時、幼かった子たちが怖い思いをしながら逃げたこと。今、こうして自分たちの経験を次につなげようとする姿。話を聞いていると涙が出そうになった」と思いを共有。平木さんの母博美さん(65)=兵庫県神戸市在住=は、阪神・淡路大震災で実家が半壊した経験を持つ。「釜石の『津波てんでんこ』は有名。多くの子どもたちが助かったのは、家庭や地域で受け継がれてきたからなのだろう。率先して逃げられるのは(避難が)体に染みついている証拠」と地域の力を実感。全国で大規模災害が多発する現状に「重要なのは防災と減災。自然は止められないが、どう対処できるかを知っていることで被害を減らせることは確か」と話した。

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