震災11年「鵜住居青年会館」待望の再建 会員ら地域の宝「虎舞」継承へ決意新た
「鵜住居青年会館」の落成を喜ぶ会員ら=16日
釜石市鵜住居町の虎舞保存団体「鵜住居青年会」(小原正人会長、会員50人)はこの春、東日本大震災の津波で流失した活動拠点「鵜住居青年会館」の再建を果たした。被災から11年を経て、やっと得られた本設拠点。会員らは寅(とら)年の本年に踏み出す新たな一歩にさらなる活動意欲を高め、江戸時代から受け継がれる地域の宝を守り伝えていくことへ思いを強くする。
震災前の同会館は、被災して移転新設された現在の鵜住居小、釜石東中の駐車場付近にあった。建物の老朽化で2003年に新築したばかりだった会館は、11年の震災津波で跡形もなく流失。館内に保管していた虎舞の道具類も全て流された。希望の光となったのは、大量のがれきの中から見つかった道具類(小太鼓4、大太鼓3、虎頭1)。中には会所有で最古の1878(明治11)年作の大太鼓も。これらは全て修復され、大切に受け継がれる。
震災後、小中学校の仮設校舎体育館、復興支援で設置されたプレハブ施設、生活応援センターなどを借りて稽古を継続し、市内外で舞を披露してきた同青年会。完全復活へ最後の懸案となっていたのが、同会館の再建だった。
再建された鵜住居青年会館の外観。左側にシャッター開閉の山車収納庫を備える
新たな会館は、同町2丁目、鵜住神社参道近くの市有地約80平方メートルを借用して建設。木造平屋建ての建物は、延べ床面積53・82平方メートル。神棚を祭ったフローリングの居室、山車収納庫、流し、トイレを備える。費用は同会の自己資金で賄い、大槌町の建設業者が施工。昨年12月に着工、本年3月に落成した。
「鵜住居虎舞」の踊りで使う虎頭が並ぶ居室
天井が高い山車収納庫。左側に道具類を収納できる棚も設置されている
小原会長(35)は「ようやく念願の拠点ができた。まちの復興整備が遅れたこともあり、再建は今の時期にずれ込んだが、これでやっと落ち着ける」と一安心。震災後、転々としてきた道具類や山車の保管場、会議部屋などを確保でき、「今まで以上にもっといい踊りを見せられるよう精進したい」と意気込む。
鵜住居町は市内で最も甚大な津波被害を受けた。青年会会員も多くが自宅を失い、家族や親族を亡くした。深い悲しみや数々の困難に直面しながらも、全国からの支援や励ましでいち早く立ち上がり、11年秋には活動を再開した同会。これまで、地域復興の原動力、住民の心の支えとして貢献してきた功績は非常に大きい。
震災から半年後、被災した住民を元気づけようと舞った鵜住居青年会=2011年9月25日
がれきの中から見つかった太鼓を補修、代替道具などを用い手踊りを披露する会員
震災を機につながった全国の支援者との交流は今も続く。寅年の本年は、11年に招待された茨城県日立市の秋祭りへの出演が予定されている。「震災後、道具がそろって初めて、踊りを披露させてもらった思い出の地。10年以上たった今でも私たちのことを気にかけてくれる人たちがいるのは本当にありがたい」と小原会長。結ばれた絆を胸に最高の舞を届ける日を心待ちにする。
釜石新聞NewS
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