方言の温もりをオンラインで 「南部弁サミット」コロナ禍で初の試み


2022/02/11
釜石新聞NewS #文化・教育

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

オンラインで方言の魅力を伝えた語り部、関係者

 

 第8回南部弁サミットin釜石「おらほ弁で昔話を語っぺし」は5日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。文化庁の「被災地における方言の活性化支援事業」に取り組む岩手大が主催。新型コロナウイルス感染拡大を受け無観客開催とし、ユーチューブによる動画生配信と地元ケーブルテレビ・三陸ブロードネットの生放送で、昔話語りを視聴者に届けた。

 

 オープニングを飾ったのは甲子小2年の大信田さくらさん(7)。大槌町吉里吉里の海を見下ろす民家の庭に設置される電話ボックス「風の電話」をモチーフにした絵本を読み聞かせた。震災などで家族を亡くした人が故人に思いを伝えられる癒やしの場所。2014年刊行(金の星社)の絵本を大信田さん自らが選び、練習を重ねて本番に臨んだ。初の大舞台を終え、「緊張した」と胸をなでおろす大信田さん。出来栄えを問うと「99点!」と元気な答えが返ってきた。

 

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

絵本「かぜのでんわ」を堂々と朗読する大信田さくらさん。大人たちも絶賛

 

 方言による民話の伝承活動を行う同市の「漁火の会」(須知ナヨ会長、9人)からは6人が出演。「釜石の笛吹峠」「三枚のお札」「矢の浦の渡し」など市内に伝わる民話のほか、会員が遠野出身の須知会長や身内から伝え聞いた話を地元の方言で語った。語り部の後では、会員などが描いた物語のイラストも上映され、各場面の情景を目でも楽しませた。

 

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

「漁火の会」による昔話語り。地域に伝わるさまざまな物語が興味深い

 

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

手ぶりを交え、民話を語り聞かせる磯崎彬子さん

 

 ゲストコーナーには、民話の宝庫・遠野市から「遠野昔話語り部の会」の2人が出演。「天福 地福」「迷い家」を熟練の話術で聞かせた。同サミットに初回から協力する青森県八戸市の「八戸童話会」の2人は、コロナ禍のため、昨年に続きビデオ出演となった。

 

 最後は同サミット名物の「漁火の会」会員による民話劇。今回は全国に知られる昔話「貧乏神と福の神」の一部をアレンジし、方言を交えて熱演。今に通じる教訓も込められた話を楽しい寸劇で伝えた。

 

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

藤原マチ子さん(左)、磯崎彬子さんの劇の掛け合いは前回に続いて。今回も笑いを誘う演技で楽しませた

 

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

地元の方言で繰り広げた「貧乏神と福の神」の劇

 

 漁火の会の北村弘子事務局長(69)は初めての無観客開催に、「お客様の反応や息づかいを感じながらやってこられた今までが、いかに幸せで、ありがたいことだったかとあらためて思う」。この2年間はイベントなどが次々に中止となり、語りを披露する機会も減ってしまった。状況の改善は見通せないが、「雨にも負けず、風にも負けず、コロナにも負けず…。宮沢賢治の精神で何とか乗り切っていきたい。早くお客様の目の前で語れる日が来ることを願う」と思いを込めた。

 

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

来年は観客を迎えて開催できることを祈って閉幕

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