出産や子育ての不安解消に向けたサポートに意欲を高める「妊産婦支援チーム」のメンバー=9月10日、市保健福祉センター
釜石市甲子町の県立釜石病院で10月から普通分娩(ぶんべん)の取り扱いを休止することを受け、市は妊産婦支援に向けた対策の強化に乗り出した。9月1日から、市子育て世代包括支援センター内に、保健師と助産師ら5人体制の「妊産婦支援チーム」を設置。分かりやすい相談窓口として門戸を開き、妊産婦らの不安解消につなげる。市外で出産する妊産婦の通院交通費や待機宿泊費などを助成する支援策も拡充し、10月に開始。関係機関と連携、情報共有し、女性の意見も取り入れながら、「安心して子どもを産み育てられるまちづくり」を進める。
妊産婦の不安解消へ 支援チーム設置
妊産婦への支援や対応を話し合うチームメンバーら=9月10日、市保健福祉センター
妊娠・出産・子育ての総合相談窓口となる同支援センター(大渡町、市保健福祉センター2階)は、市保健福祉部内に2017年度に設置された。健康推進課で妊娠届出書の受け付けや母子健康手帳の交付時に妊産婦らと面談し、状況を初期から把握。相談支援に応じ、必要なサービスを切れ目なく利用してもらう体制を整えてきた。
妊産婦支援チームは市内での分娩機能休止を受け、出産を控える女性らの不安を解消し、安心して出産できる体制を強化するため設置。妊娠期の食事や栄養、出産後の体調管理、子どもの発育、育児など幅広く相談に応じる。子育て期まで必要な情報提供や専門知識を生かした助言、保健指導も行う。
「妊産婦支援チーム、分かりやすい名称が一番のポイント。窓口はここです」と強調するリーダーの村上美波さん(保健師)。女性たちが地域で安心して出産を迎え、子育てができるよう専門スタッフで支えていこうと奮闘中で、「ささいなことでも心配事を気軽に相談してほしい」と呼び掛ける。
市外での出産支援策 交通、宿泊費など助成 給付金も
【写真・意見交換会】県立釜石病院の分娩機能休止に関する意見交換会。子育て世代の声も取り入れて支援策をまとめた=7月16日、釜石市民ホール
市外で出産する妊産婦の経済負担を軽減するため、市は支援策として通院交通費や出産前の待機宿泊費などを助成する。県のハイリスク妊産婦助成(1人10万円上限)に加え、市独自事業としてハイリスク以外の妊産婦も妊娠32週以降の通院費などを1人5万円を上限に助成する。妊婦が周辺の宿泊施設に待機が必要な場合の付き添いの家族らの宿泊費、交通費にはタクシーも含め、上限額の範囲で助成。里帰り出産を予定する妊婦も助成対象とする。事業費は334万円。
追加策として、妊婦1人当たり3万円を給付する。対象は市に住民登録があり、10月1日以降に出産予定の妊婦などで母子健康手帳交付時に申請を受け付ける。開始日以前に県立釜石病院から市外病院に転院した妊婦らも対象とする方針で、給付・申請に関する周知に集中して取り組む。事業費は450万円。2つの支援策は2021年度一般会計補正予算案に盛り込まれ、17日の市議会9月定例会で可決された。
こうした支援策は県や大槌町との協議、子育て中の女性らの声を参考にまとめた。支援チームの立ち上げもその一つ。市地域医療連携推進室の岩崎隆室長は「妊産婦の不安を解消しながら、安心して産み育てる環境の整備に全力で取り組む」と力を込める。
問い合わせは妊産婦支援チーム(市健康推進課内、電話0193・22・0179)へ。
県も支援策 安全確保・不安解消・産後ケアを柱に
妊産婦支援策について説明する県医師支援推進室、県立釜石病院の関係者ら=9月17日、県釜石地区合同庁舎
県は17日、妊産婦の安全確保、不安解消、産後ケアの充実を柱とする支援策を発表した。患者搬送車などで利用するモバイル型妊婦胎児遠隔モニター2台を県立釜石病院に追加整備し、安全を確保。電子カルテの一元化や分娩施設の事前見学などで検診と出産する病院が変わることの不安解消につなげる。
同病院内でデイサービス型の産後ケア(有料)事業を始める。健康状態のチェックや乳房マッサージ、赤ちゃんの食事や発育の相談などを検討しており、産後ケアを強化。妊産婦からの電話相談は同病院の助産師が24時間態勢で対応する。
県医師支援推進室の植野歩未室長は「地元の思いを重く受け止め、安全確保や不安解消に取り組む。支援策の運用開始後のさまざまなニーズや改善要望に柔軟に対応していく」とした。