タグ別アーカイブ: 子育て

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「防災ポリパン」って? 幼い子を持つ母親ら災害時に役立つ知識学ぶ 震災経験の先輩ママが伝授

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

かまいしこども園子育て支援センターバンビルーム「防災に役立つポリパン作り」

 
 災害時、被災者の命をつなぎ、心身に力を与えるのはやはり食事。限られた食材、調理器具で簡単に作れるメニューは知っておいて損はない。その一つが「ポリパン」。高密度ポリエチレンの袋に材料を入れてゆでるだけでできるパンだ。蒸しパンのようなやわらかい食感、具材を入れれば味のアレンジも可能で、幼い子どもでも食べやすい。釜石市天神町のかまいしこども園子育て支援センターバンビルームが開催したポリパン作り教室を取材した。
 
 同センターの3月のイベント。市保健福祉センター内の調理室で開かれた教室にはセンターを利用する母親4人が参加した。講師を務めたのは同市在住で、一般社団法人ポリパンスマイル協会(梶晶子代表理事)認定のポリパンジュニアマイスター櫻井京子さん(40)。天然酵母を使ったフライパンでのパン作りなども教えている。
 
 ポリパンの材料は強力粉、薄力粉、ベーキングパウダー、砂糖、塩、卵、牛乳、オリーブオイル。湯せん調理が可能な高密度ポリエチレン袋に2種の粉を同量ずつ入れ、砂糖、塩、ベーキングパウダーを加えて、袋を振ってよく混ぜる。次に、溶いた卵に牛乳とオリーブオイルを加えたものを袋に入れ、さらに混ぜる。卵や牛乳のアレルギーがある場合は水でも代用可能。この日は具材として甘納豆、レーズンが用意され、好みで入れた。材料が混ざったら空気を抜いて袋を閉じる。袋は菜箸につるし、湯を沸かした鍋に入れて、弱火で20分ほどゆでる。時々、袋を動かし、熱が均一に伝わるようにする。
 
粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

粉類を入れた高密度ポリ袋は空気を入れて振り、よく混ぜる

 
卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

卵を溶き牛乳、オリーブオイルを加えたものを袋に入れ粉と混ぜる。空気を抜いた袋は菜箸につるしてゆでる

 
 櫻井さんは「災害時は断水で洗い物ができない場合がある。袋調理なら食器も不要。計量スプーンの代わりにペットボトルキャップ(約大さじ2分の1)も利用可能。最近は計量目盛りのある紙コップも販売されている」などと教えた。この日は、同じ要領で作る簡単“肉じゃが”も作った。肉の代わりにコンビーフを入れ、調味料は麺つゆを使った。
 
 ゆで時間を利用し、講師の櫻井さんは自身の東日本大震災の経験を語った。当時は海岸部の会社に勤務。後輩と避難し津波から逃れた。妊娠初期だった櫻井さんは避難所に身を寄せたが、体調が悪くても自分からは言い出しにくかったという。「困った時に『助けて』と言えるのは大事。声を上げないと、助けたいと思っている人も助けることができない。子育ても同じで1人では限界がある。『受援力』を身に付けて」とアドバイス。
 
 産前産後の母親のサポート活動も行い、2児の母でもある櫻井さん。小学生の子どもが準備したという防災(避難)バッグも見せ、非常持ち出し品や飲料水、非常食など備えの例を説明した。「車に膝掛け、子どもの着替え、お菓子などを常備しておくと、普段はもちろん、災害時にも役立つ。幼い子どもがいる場合はそれ用の準備も必要」と話した。
 
講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

講師の櫻井さんは自身の子の避難バッグを紹介。必要と思うものを子どもが自分で詰めたという

 
震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

震災時の経験や乳幼児と避難するための準備について話す櫻井京子さん

 
 ゆで上がったパンは少し試食し、子どもと一緒に食べるのを楽しみに持ち帰った。1歳2カ月の子を持つ沼倉絵梨さん(34)は「ゆでるだけでパンができるのは新たな発見。とても簡単。子どもも食べられそう」と感激。災害時の心配は、やはり子どもの食事。「何を食べさせたら…と不安はある。今日はいろいろ勉強できてありがたかった」と話し、「この機会に防災バッグの中身も再度確認したい」と意識を高めた。
 
時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

時間がたつにつれ、袋の中の生地が膨らむ。出来上がりを待つ参加者

 
袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

袋の中のパンを切ってみると、ふっくらとした仕上がりに…

 
 ポリ袋調理は災害時だけでなく、キャンプなどアウトドア活動でも活躍。講師の櫻井さんは、みそを使った常備食のレシピなども教えた。防災食といっても災害時に特化したものばかりではない。日常の食のアレンジが非常時にも有効であることが分かる教室となった。
 
ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

ポリ袋調理でできた簡単肉じゃが(写真左)。みそに切干し大根や椎茸を混ぜた常備食は湯で溶けばみそ汁に(同右)

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バリアフリーな環境で心豊かな体験を 子どもたちが旬の魚マダラをさばいて食す 生態にも興味津々

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

インクルーシブおさかな体験教室=根浜海岸レストハウス

 
 障害の有無や性別、人種などに関係なく、互いを認め合い共生していく「インクルーシブ」社会。その理念を基にした各種取り組みが釜石市でも行われている。2月25日、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでは「インクルーシブおさかな体験教室」が開かれた。バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会(佐々木江利代表)が主催。市内外から13家族37人が参加し、旬のマダラをさばいて調理。食事も楽しんだ。
 
 講師は同市地域おこし協力隊員で、魚食普及活動を行っている清原拓磨さん(26)。この日は地元の定置網で漁獲された体長60~80センチのマダラ3匹が用意された。はじめに生態を説明。水深約200メートルの深海に住み、口元のひげでにおいなどを感知して餌を探すこと、雄は白子に価値があり、雌の倍の値段で取引されることなどを教えた。子どもたちは体を触ったりしながら観察。疑問に思ったことを次々に質問した。
 
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体のまだら模様が特徴の魚「マダラ」。触ってみると?

 
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マダラの生態について教える清原拓磨さん(左)

 
 観察後はさばき方。子どもたちが最初に体験したのはうろこ取り。専用の道具や金たわしを使って、きれいにうろこを取り除いた後、清原さんが腹を切り開き、身と内臓を分けた。子どもたちは初めて見る腹の中に興味津々。驚きの声を上げながら見入った。切り分けた身から細かい骨を取り除く作業も体験した。切り身はタラフライに。衣をつける調理にも挑戦した。
 
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うろこ取りを体験。清原さんいわく、残っていると食感が悪くなったり、においが出てしまうそう

 
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目を凝らして細かい骨抜きにも挑戦した

 
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清原さんが丁寧にさばき、体の中の各部位も観察した=写真提供:主催者

 
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切り身はタラフライに。衣をつける作業も子どもたちで

 
 盛岡市の菅原蓮君(10)は「タラの体は思ったよりやわらかい。胃袋は大きくてイワシが入っていたのにはびっくり」と目を丸くした。友人の冨澤えみりさん(7)は「ちょっと魚がかわいそうだけど、人は魚を食べて生きているので感謝しないと。自分で調理したのを食べるのは楽しみ」と声を弾ませた。2人の母親は、切り身になる前の魚の姿を見る貴重な機会を歓迎。「魚への興味、調理への関心も高まれば」と期待した。
 
 同教室を企画した「バリアフリーでつくる釜石自然遊びの会」は昨年発足。医療的ケア児の母である佐々木代表(44)が根浜でのバリアフリービーチ実現への第一歩として、インクルーシブを理念とした交流の場を持ちたいと立ち上げた。これまでに海辺でのお茶会、たき火やカレー調理、ピザ作りなどのキャンプ体験を観光施設・根浜シーサイドの協力で実施。当事者家族だけでなく同年代の子を持つ家族を含めた活動の機会を通じて、互いに助け合える関係づくりの構築を進めてきた。
 
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タラフライは手作りパンにはさんでバーガー風に(写真上段)。楽しい体験を終え笑顔を輝かせる参加者(同下段)=写真提供:主催者

 
 今回の教室には障害などで支援が必要な親子4組が参加した。親の一人は「これまで海に行くのはすごくハードルが高かった。今回、室内ではあるが、魚と触れ合えたことで、海にも一歩近づけた気がする」と話した。
 
 医療的ケアや支援が必要な子どもたちの親は、助けが必要な場面でも「自分たち家族の問題」と我慢してしまいがちだという。しかし、家族だけが頼りでは限界がきてしまう。佐々木代表は「本人にとっても家族以外の人に甘えられる環境は必要。まずは顔見知りになり、お互いを理解するところから」と小さな一歩の積み重ねを願う。未来に生きる同様の家族のためにも「『これが大変だから手伝ってほしい』と声をあげられる環境をみんなで作っていきたい」と思いを込めた。

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日ごろの見守り「ありがとう!」 上中島こども園児 中妻応援センターで感謝のお遊戯披露

上中島こども園児が中妻地区生活応援センターでお遊戯を披露=19日

上中島こども園児が中妻地区生活応援センターでお遊戯を披露=19日

 
 釜石市の上中島こども園(楢山知美園長、園児60人)の年中園児12人は19日、園の近くの中妻地区生活応援センター(菊池拓朗所長)でお遊戯を披露した。日ごろ、園児らを見守ってくれている地域住民に感謝の気持ちを伝えようと訪問。同センターで活動する約20人を前に元気いっぱいの踊りを見せ、心温まるひとときをプレゼントした。21日には年少園児も訪れ、音楽劇を披露した。
 
 同園では10日に3~5歳児の生活発表会を園内で開催。お遊戯や音楽劇などを保護者らが観覧した。園児らの取り組みの成果を、いつもお世話になっている地域の人にも見てもらいたいと、今回の訪問を企画。19日は同センターで週2回、ラジオ体操を行っている高齢者などが集まった。
 
 年中園児は2グループに分かれ、「江戸火消しこ組出動」、「サチアレ」のダンスを披露。かわいらしい衣装に身を包み、いきいきと踊る姿に観客は目を細め、それぞれの発表が終わると盛んな拍手を送った。
 
鉢巻き、腹掛け姿でかっこよく踊った「江戸火消しこ組出動」

鉢巻き、腹掛け姿でかっこよく踊った「江戸火消しこ組出動」

 
キラキラのポンポンとチアの衣装で「サチアレ」を踊り、元気を届けた

キラキラのポンポンとチアの衣装で「サチアレ」を踊り、元気を届けた

 
子どもたちの頑張りに拍手を送る地域住民ら

子どもたちの頑張りに拍手を送る地域住民ら

 
 ポンポンを持って「サチアレ」を踊った菊池咲陽ちゃん(5)は「ちょっと恥ずかしかったけどうまく踊れた。おじいちゃん、おばあちゃんたちも喜んでくれた」と満足そう。同センターが入る上中島2期復興住宅に暮らす女性(71)は「素晴らしかった。やっぱり子どもはかわいいね。見ているだけで幸せな気持ちになる。孫とも離れて暮らしているので、こういう触れ合いの場はありがたい」と声を弾ませた。
 
 同センターの菊池所長は「復興住宅の住民は高齢者、独居の方も多いので、小さい子どもたちとの交流は心の癒やしになる。今日は皆さんのすごくいい笑顔が見られて、こちらもうれしくなった」と話した。
 
応援センターからはお礼にクリスマスプレゼントが贈られた

応援センターからはお礼にクリスマスプレゼントが贈られた

 
また会うことを願って、園児がお別れのあいさつ

また会うことを願って、園児がお別れのあいさつ

 
 同園と同復興住宅の敷地は市道をはさんで隣り合い、これまでも住民と園児がラジオ体操を一緒にやったり、互いの行事に参加し合うなど交流を続けてきたが、コロナ禍になってから、その機会も減ってしまった。楢山園長は「地域の人たちには園児の散歩の際に声をかけてもらったり、見守り活動にも協力していただいている。地域との関わりは子どもたちの成長にも大事な要素。今後もコロナと向き合いながら、できることを続けていきたい」と願う。

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台風で倒木・ユリノキ→積み木に加工 岩手県緑化推進委、かまいしこども園に贈る

たくさんの積み木を前に、笑顔を見せる子どもたち

たくさんの積み木を前に、笑顔を見せる子どもたち

  
 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児78人)に11月28日、台風被害を受けた盛岡市内の倒木・ユリノキを加工して作られた積み木90個が贈られた。ユリノキの苗木1本も届き、子どもたちが園庭に植樹。「一緒に大きくなろうね」と苗木の根元にそっと土をかぶせた。
   
 積み木の材料となったユリノキは盛岡・高松公園地内にあったが、2019年10月の台風19号による強風で倒木。県緑化推進委員会が盛岡市から譲り受け、東日本大震災被災地の幼稚園、保育園、こども園を対象に子どもたちの「木育」の推進を図ろうと、積み木を製作、寄贈している。今回、同委員会から釜石市に寄贈先の調整依頼があり、各施設に意向を確認。同園が希望したことから、苗木と合わせて贈ることを決めた。
  
小山田課長(右)から積み木を受け取る園児と藤原園長

小山田課長(右)から積み木を受け取る園児と藤原園長

  
 この日は同委員会釜石支部事務局を担う市水産農林課の小山田俊一課長らが同園を訪問。小山田課長は、▽モクレン科の落葉樹▽大きな枝を広げて高さ15メートルにもなり、街路樹や公園樹として植栽されている▽8年くらいで、おわんに似たチューリップのような花が咲く―といったユリノキの特徴を紹介した。
  
ユリノキの苗木を植えるかまいしこども園の年長児たち

ユリノキの苗木を植えるかまいしこども園の年長児たち

  
 年長児8人が植樹作業をお手伝い。小山田課長は「みんなと一緒に成長することを期待。積み木を通して木に親しみ、森や緑の大切さを知ってほしい」と、園児と藤原園長に積み木を手渡した。
  
「共同作業でロボットを作ろう」。積み木遊びを楽しむ年長児

「共同作業でロボットを作ろう」。積み木遊びを楽しむ年長児

  
 園内に戻り、木箱に入った大小さまざまな積み木が広げられると、年長児は「わー、しんぴん」などと歓声。思い思いの形に並べたり、高く積み上げたりして積み木遊びを楽しんだ。中村日陽(ひより)ちゃん(5)は「すてきなかおりがした。つるつるしてた。人とかいっぱい作って遊ぶ」とはにかんだ。

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釜石大観音仲見世通りに子連れオフィス「LIFULL FaM」 空き家改修しオープン

作業デスクに子どもと並んで座り、仕事をする母親

作業デスクに子どもと並んで座り、仕事をする母親

  
 働く母親が子どもを連れて出勤できる「子連れオフィス」が4日、釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りに開所した。同市と東京都の不動産情報サービス業LIFULL(ライフル、井上高志社長)が結ぶ連携協定の一環で整備。テレワーク普及など働き方改革に関わる事業を行う同市のロコフィル(佐藤薫代表社員)が管理運営する。空き店舗を地域住民やボランティアの力を借りて改修。キッズスペースを備え、未就学児を持つ母親らの仕事と育児の両立を応援する。
  
子連れワークができるオフィス「LIFULL FaM釜石」

子連れワークができるオフィス「LIFULL FaM釜石」

 
釜石大観音仲見世通りの空き家を改修しオープン

釜石大観音仲見世通りの空き家を改修しオープン

 
 施設名は「LIFULL FaM(ライフル・ファム)釜石」。同通りにある木造2階建ての空き家を改修。延べ床面積は約70平方メートルで、1階は遊具などを置くキッズスペース、2階がテレワーカーの作業デスクなど配置したワークスペースで仕事や打合せなど多目的に利用することができる。
 
 同市とライフルは今年2月に結んだ連携協定に基づき、未就学児を持つ母親らの就労支援を促進。育児しながら仕事を通じてスキル取得やキャリアアップを目指すことができる新たな働き方として、Webマーケティングなどのテレワークへの挑戦を応援する。本年度は6~8月にテレワーカー育成研修を実施。修了生で、ロコフィルスタッフとして登録した人などの施設利用を想定する。
 
関係者がテープカットし、開所を祝った

関係者がテープカットし、開所を祝った

 
 この日、現地で開所式があり、関係者がテープカットで祝った。野田武則市長は「人口減に歯止めをかけるため、地元で暮らしながら、やりたい仕事ができるまちを目指したい。若者、子育て中の女性たちが活躍する拠点を温かい目で見守ってほしい」と願った。
 
 式の後には内覧会も。この空き家は、同通りでシェアオフィスを運営しながら、にぎわい再生と交流の場づくりに取り組んでいる宮崎達也さん(50)が、不動産賃貸事業を行う会社を新たに立ち上げて取得した。床の張り替えや壁塗りなど改修作業の大部分を地域住民や市内外の企業ボランティアの協力を得て進めた。階段には地元産スギ材を使い、木のぬくもりを感じてもらえるよう工夫。透かしの装飾が施された欄間(らんま)など和の雰囲気を残しつつ、温かみのある空間を作り上げた。
 
キッズスペースを備えたテレワークオフィスを内覧する関係者

キッズスペースを備えたテレワークオフィスを内覧する関係者

 
作業や打ち合わせなど多目的に利用できるワークスペース

作業や打ち合わせなど多目的に利用できるワークスペース

 
昔ながらの和の風情を残しつつ、落ち着いて仕事ができる環境を整えた

昔ながらの和の風情を残しつつ、落ち着いて仕事ができる環境を整えた

  
 研修の修了生で、5歳と2歳の娘を持つ源太沢町の平松寿倖(ひさこ)さん(32)は「託児付きで使える施設なら利用し、少しずつ仕事をしてみたい」と前向きに捉えた。ロコフィルから仕事の紹介を受け、「ママレポーター」として事業所紹介の記事作成を受注。今後もこうした情報通信技術(ICT)を活用し時間や場所の制約を受けず、柔軟に働く形を続けたいと考えていて、「作業している時に託児してもらえたり、子どもを遊ばせるスペースがあれば集中できる。同じ年代の子を持つ人たちとのつながりを持てるのもうれしい」と歓迎した。
 
保育士や子育て支援員らが見守る体制も用意する

保育士や子育て支援員らが見守る体制も用意する

 
 ライフルは、福井県鯖江市や島根県雲南市など全国にキッズスペース付きの拠点を開設しており、釜石は5カ所目。ライフルファム事業責任者の秋庭麻衣さんは「一人で仕事する日が続くとストレスを抱える。週に1、2回集まって話し合うコミュニケーションの場があることで、日々のモチベーションアップにもつながる」と利点を強調した。空き家の再生という地域と作り上げた施設にも手応えを実感。テレワーカーを目指す講座やイベントなどの開催を見据え、「気軽に来てもらえるような地域に開かれた場所にしたい」と力を込めた。

 

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新園舎の完成祈願 小佐野保育園(釜石)で上棟式 祝いの風習・餅まきに園児ら大喜び

園の関係者と施工業者が屋根に上って餅まきし安全祈願

園の関係者と施工業者が屋根に上って餅まきし安全祈願

  
 園舎の新築建て替え工事を進めている釜石市小佐野町の小佐野保育園(小笠原真理子園長)で10月26日、上棟式があった。園児30人と園の職員、施工業者、地域住民らが集まり、工事の無事故と完成を祈願。祝いの風習だが、今では珍しくなった餅まきも行われ、子どもたちが夢中で記念の縁起物を拾い集めた。
   
 上棟式は建築儀礼の一つで、建物を新築する際に「完成後も建物が無事であるように」と願い、基本構造が完成して棟木を上げる時に行われるもの。酒や米などを飾った上で餅や硬貨をまくもので、これを拾うことで縁起が良いと言われている。
  
 時代の変化もあり、上棟式が行われることは珍しくなっており、施工を担当する山元(只越町)の現場代理人佐々木竜一さん(48)も「東日本大震災後は行っていないし、やる業者も少ないのでは」と話す。今回は「建物を建てる時の風習を子どもたちに教えたい」と企画。楽しい記憶として残してもらえるよう餅のほか、お菓子も用意した。
  
子どもたちは豪快にまかれた縁起物を夢中で拾い集めた

子どもたちは豪快にまかれた縁起物を夢中で拾い集めた

  
両手に抱えきれないほどの餅やお菓子に大満足の園児

両手に抱えきれないほどの餅やお菓子に大満足の園児

   
 上棟式の神事は、棟上げ後の建物の屋根上で執り行われ、園児らは園庭から見守った。伝統的な儀式の餅まきでは、同園を運営する社会福祉法人釜石愛育会(中妻町)の小野寺哲理事長らが餅や菓子を豪快にまき、園児らが歓声を上げながら受け取った。
  
 両手いっぱいに縁起物を抱えて大満足の子どもたちは、工事関係者に手作りのお礼状をプレゼント。「あたらしいほいくえんをつくってくれてありがとう!えんですごせるひをたのしみにしているよ」とわくわく感を伝えた。
  
たくさんの餅やお菓子を抱えて笑顔を見せる子どもたち 

たくさんの餅やお菓子を抱えて笑顔を見せる子どもたち

  
園児は工事関係者(中)にお礼状を贈って感謝を伝えた

園児は工事関係者(中)にお礼状を贈って感謝を伝えた

  
 工事は旧施設の老朽化解消や耐震化に対応した園舎整備のため、新しく建て替えるもの。木造一部2階建て、延べ床面積は約648平方メートル。7月に着工、来年1月下旬の完成予定で、同2月中の利用開始を目指している。子どもたちのたくさんの笑顔に触れた佐々木さんは「いいものをしっかり作りたい」と力をもらった。
  
新築建て替え工事が進む小佐野保育園。来年1月の完成を予定する

新築建て替え工事が進む小佐野保育園。来年1月の完成を予定する

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SUP、カヤック、生き物探し…海遊び満喫「この夏一番の思い出」 釜石・箱崎白浜でワンデイキャンプ

思い思いに海遊びを楽しむ家族連れら

思い思いに海遊びを楽しむ家族連れら

  
 ふるさと釜石の海の素晴らしさを体感し、自然とともに生きる力を育む「海あそびワンデイキャンプ」が21日、釜石市箱崎白浜地区で開かれた。市内で海に関わる活動を展開する団体や地元漁師らでつくる「海と子どもの未来プロジェクト実行委員会(通称・さんりくBLUE ADVENTURE)」が主催し、今年で9回目。新型コロナウイルス禍でさまざまな体験活動が制限される中にあっても、子どもたちに夏の思い出を提供しようと感染症対策を講じて実施。海辺にはたくさんの歓声と笑顔が広がった。
   
 コロナの影響で、2年ぶりの開催。参加者を釜石市と近隣市町村在住者に限定。過去2週間に感染の可能性がある滞在や接触がないことを確認し、シュノーケリング用具などに名前を付け1日同じものを使うことなど感染対策に気を配った。
  
通称「小白浜」と呼ばれる海岸に地元漁師の船で上陸

通称「小白浜」と呼ばれる海岸に地元漁師の船で上陸

  
 海遊びの場は、白浜漁港から船で約3分の隠れ家的ビーチ、通称「小白浜」と呼ばれる海岸。古くから地元住民らがレジャーを楽しんでいた場所で、実行委によると、美しい景観と安全確保の条件の良さが魅力。有事の際にはハイキング路を利用し、高台避難も可能だという。市内を中心に小学生や保護者同伴の幼児ら約40人が参加し、地元漁師の船で上陸した。
   
水しぶきを上げるだけで弾ける笑顔

水しぶきを上げるだけで弾ける笑顔
  
カヤックから落ちたとしてもみんな笑い顔

カヤックから落ちたとしてもみんな笑い顔

  
SUPを乗りこなし満面の笑みを見せる子も

SUPを乗りこなし満面の笑みを見せる子も

  
 ウエットスーツとライフジャケットを身に着けた参加者は、インストラクターらに教わりながらシーカヤックやスタンドアップパドルボード(SUP)で水上散歩を楽しんだ。シュノーケリングでは海中の生き物探しに挑み、ヒトデやカニ、小魚などを観察。釜石ライフセービングクラブによる「浮いて待て」を合言葉にした海辺の安全講習もあり、もしもの時を想定した浮き身の方法を学んだ。
  
 遠野市の伊勢崎歩君(綾織小5年)は「水の透明度がすごい。きれい。SUP、カヤックとか普段できない遊びができて、めっちゃ面白い。海の生き物もいっぱい見つけた。この夏一番の思い出」と笑顔を弾けさせた。
   
シュノーケリングで生き物探しを楽しんだ

シュノーケリングで生き物探しを楽しんだ

  
子どもたちは海の生き物に興味津々

子どもたちは海の生き物に興味津々

  
 東日本大震災後に進んだ“海離れ”を食い止めたい、地元の自然に誇りと愛着を持ってほしい―と始められたキャンプ。震災後に生まれた子どもが多くなる中、津波の記憶を残す親世代が海に行くことにためらいを持つことなどから、海になじみのない子どもが増えているという面もある。中妻町の櫻井京子さん(38)も一時期、海から足が遠のいていたが、「安全に遊ぶことを分かりやすく教えてくれるキャンプ」への参加を重ね、海が身近な存在に戻ったという。
  
 同実行委共同代表の佐藤奏子さん(43)は「海や自然は脅威にもなるが、豊かな恵みをもたらし、命を支える、美しくて楽しい存在。海で遊ぶ子どもたちの笑顔を間近に見ることで、『夏は海に行く』という古里の原風景をいい思い出として心に残してほしい」と願う。同キャンプは、釜石にゆかりのある元プロトライアスリートのマイケル・トリーズさん(英国出身)が設立した社会貢献団体「Tri 4 Japan(トライ・フォー・ジャパン)」の寄付で継続実施、運営する。
  
古里の海で夏の思い出をつくったワンデイキャンプ

古里の海で夏の思い出をつくったワンデイキャンプ

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小佐野保育園、新園舎待望の着工 来年2月に供用開始へ~釜石愛育会、地鎮祭で安全願う

小佐野保育園の完成予想図

小佐野保育園の完成予想図

  
 釜石市中妻町の社会福祉法人釜石愛育会(小野寺哲理事長)が運営する小佐野町の小佐野保育園(小笠原真理子園長)の新築工事が始まるのを前に、7月29日、小佐野町の現地で地鎮祭が行われた。旧施設の老朽化を解消し、耐震化に対応した園舎を整備。来年1月下旬に完成する見通しで、同2月中の供用開始を目指す。
  
旧施設を取り壊し更地になった新施設建設地

旧施設を取り壊し更地になった新施設建設地

  
 旧施設を取り壊し更地にした約1162平方メートルの用地に、木造一部2階建ての園舎を整備。延べ床面積は約648平方メートルで、1階には保育室や遊戯室、乳児室、医務室、事務室、厨房などを配置する。2階には会議室などを設置。山元(只越町)が施工する。総事業費は約3億7000万円。
   
工事の安全を願い、くわ入れする小野寺理事長

工事の安全を願い、くわ入れする小野寺理事長

   
 地鎮祭には同法人や同園職員、施工、電気設備(ユアテック)、機械設備(松村工業)、設計(カクタ設計)の工事関係者ら約20人が出席。神事でくわ入れし、工事の安全を祈った。小野寺理事長は「建物の老朽化が著しいが、園児が少なくなる中、建て替えていいものか悩んだ。でもやっぱり子どもたちが楽しめることが一番。安全な生活を過ごせる環境を提供できるので、着工となり、ほっとしている」と頬を緩めた。
  
新園舎の完成に期待を膨らませる関係者ら

新園舎の完成に期待を膨らませる関係者ら

  
 旧園舎は1967年に建てられ、55年ほどが経過。東日本大震災の地震は乗り切ったが、今後の災害に耐え得るか不安があった。新築工事が決まり、現在は野田町の野田集会所を仮園舎としている。0歳から就学前の69人を保育。小笠原園長は「市内でも古い園舎となっていて、子どもはもちろん保護者、地域も新しい施設を望んでいた。待ちに待った工事で、完成を楽しみにしている」と目を細めた。

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子育てママも生き生きと仕事ができる釜石へ テレワーカー育成研修スタート

子育て中の女性を対象とした「テレワーカー育成プログラム」研修

子育て中の女性を対象とした「テレワーカー育成プログラム」研修

 
 子育て中でもキャリアアップをあきらめない―。釜石市は未就学児を持つ母親を対象に、在宅で柔軟に仕事ができる「テレワーカー」の育成プログラムを始めた。子育てと仕事を両立しながら自分らしく働きたい女性たちを応援する。全5回の講座で、仕事に必要なパソコンスキルや遠隔でも受注可能な業務を学び、人材需要が高まっているWebマーケティングなどでの就労を目指す。
 
 20日、大町の市民ホールTETTOで1回目の講座が開かれ、応募した釜石、大槌、遠野3市町の女性16人が参加。開講に先立ち、野田武則市長は「テレワーク導入は新たなまちづくりへの大きな転換点。第1号となる皆さんにロールモデルを示していただきたい」と激励した。
 
 初回はテレワークの種類(雇用型、自営型)や仕事受注のポイントを学んだ後、今後のキャリアプランを考えるワークショップが行われた。過去の仕事や活動を振り返り、自分の強みを把握。子どもの成長なども見据え、5年後のなりたい自分を思い描きながら、働き方や収入の目標を立てた。グループワークでは仕事をする上での悩みや思いも共有した。
 
講師を務めるLIFULL地方創生推進部FaMグループの秋庭麻衣さんが講座内容を説明

講師を務めるLIFULL地方創生推進部FaMグループの秋庭麻衣さんが講座内容を説明

 
 同市は今年2月、子連れワークの環境整備で実績のある東京都の不動産情報サービス業、LIFULL(ライフル、井上高志社長)と連携協定を締結。子どもを保育施設に預けなくても仕事ができる体制構築への一歩として、今回の人材育成プログラムに着手した。同社の社員が研修の講師を務め、地域パートナーとして同市のロコフィル(佐藤薫代表社員)がサポートにあたる。本年度中に空き家を活用した子連れワーク可能なオフィスも整備する予定。
 
 事業を担当する市総合政策課オープンシティ推進室の金野尚史室長は「子育てと仕事の両立に悩み、一歩踏み出せないでいる女性たちはまだまだ多いと実感。本事業を皮切りにそうした閉塞感を打破し、子育て中でも生き生きと働ける環境を整えたい。釜石に来れば、こんな働き方ができるというような移住促進のモデルにもなれば」と今後の展開に期待を寄せる。

感染症、熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会

コロナ禍吹き飛ばす躍動 「思いをひとつに」栗林小運動会 保護者も全面協力

熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会<

感染症、熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会

 
 釜石市内の小学校は21日、運動会のピークを迎えた。新型コロナウイルス禍でさまざまな制限がある中、各校とも感染防止対策を徹底し開催。栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)では練習から本番まで各種対策に力を入れ、児童らの安全確保に努めた。事前準備、当日の進行には保護者が全面協力。児童らは運動会ができる喜びを感じながら、思い切り躍動した。
 
 同校の今年の運動会スローガンは「全力・団結 思いをひとつに」。開会式で児童会長の小笠原虹南さん(6年)は「全校児童33人が自分の目標を持ち、競技に取り組みます。一人一人の頑張りに注目してほしい」とあいさつ。運動会実現に協力し、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを表し、「笑顔で終われるような最高の運動会に」と呼び掛けた。
 
 プログラムは全13種目。徒競走や玉入れのほか、趣向を凝らしたさまざまな競技で赤、白の組団が得点を競い合った。同校伝統の「栗林旋風」は、長い棒を持った親子が2カ所のコーンを回りながら走り、次の親子にバトンタッチするリレー競技。4~6年生が父母らと息を合わせ、スピード感あふれるレースを展開した。表現種目、組団応援パフォーマンス対決などもあり、これまでの練習の成果を存分に発揮した。
 
4~6年生の親子競技「栗林旋風」。棒を持つ手には手袋をして感染対策

4~6年生の親子競技「栗林旋風」。棒を持つ手には手袋をして感染対策

 
1~3年生の表現種目。ダンスや縄跳びを交え栗小の元気を発信!

1~3年生の表現種目。ダンスや縄跳びを交え栗小の元気を発信!

 
勝利への気合い十分!赤組の応援パフォーマンス

勝利への気合い十分!赤組の応援パフォーマンス

 
 同校では大型連休明けから運動会の練習を本格化。密な接触を避け、マスクを外した時には声を出さない、みんなで共有する道具は軍手をはめて使う、活動の前後には手洗い、うがいを徹底する―などの感染対策を講じ、各家庭では毎日の健康観察に気を配った。
 
 そして迎えた当日―。児童らは朝から心も体も弾み、楽しみでしょうがないといった様子だったという。「コロナ禍で日々の生活も制限が多い。感染対策をしながらではあるが、のびのびと体を動かせる場ができたことが本当にうれしい」と八木澤校長。運動会は子どもたちの成長に欠かせない行事。仲間と協力し種目をやり遂げることで絆が深まり、リーダーシップやフォロアーシップも育つ。八木澤校長は会の成果を糧に「互いの良さを認め合って、全体として高め合っていければ」と今後の児童らに期待した。
 
栗林小運動会
 

運動会入場門を手作り 栗林小の学校活動に保護者、地域の力

 
保護者らが手作りした入場門。同校PTA伝統の取り組み

保護者らが手作りした入場門。同校PTA伝統の取り組み

 
 栗林小では運動会の入場門を毎年、児童の保護者が手作りしている。父親らが中心となり、山から丸太を切り出して皮むき。地元の建設業者に設計図面を引いてもらい、精巧に作り上げる。
 
 組団陣地の間に建てられた門は、全体がなだらかな半円を描くアーチ形。上部の文字や絵などは児童が担当し、約3カ月かけて完成させた。当日は、見事な出来栄えの門が各種目の入退場に花を添えた。
 
斜めから見ると技術の高さに驚かされる入場門。前日夕方に、父親たちが力を合わせて設置した

斜めから見ると技術の高さに驚かされる入場門。前日夕方に、父親たちが力を合わせて設置した

 
 保護者らは運動会開催中も運営に協力。道具出しやグラウンドの水まき、決勝係などを担い、スムーズな進行を支えた。PTA会長の小笠原亮さん(36)は「協力体制が自然とできているのが一番すごいこと。これは脈々とつながれている栗橋地域の力。これからも子どもたちのベストを考え、支えていければ」と意を強くした。
 
親子競技で思い出づくり。笑顔満開!5・6年生の「にっこりカメラ」

親子競技で思い出づくり。笑顔満開!5・6年生の「にっこりカメラ」

 
1・2年生の「くじびき!じゃんけん!おやこでゴー!」

1・2年生の「くじびき!じゃんけん!おやこでゴー!」

 
 同校の運動会では例年、各地区で取り組む郷土芸能の披露も行われるが、コロナ禍を考慮し、ここ3年は休止中。市内の感染状況を見ながらの判断となるが、今年は11月に改めて発表会を行う予定。

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

釜石市内で6番目 子育て応援企業に認定 エヌエスオカムラ 仕事との両立支援

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

子育て応援企業に認定されたエヌエスオカムラの佐藤副社長(右から2人目)ら

 
 釜石市は21日、鋼製家具製造事業を手掛ける鈴子町のエヌエスオカムラ(鎌倉康雄社長)を、子育てと仕事の両立支援など男女が働きやすい職場環境づくりに取り組む「子育て応援企業」に認定した。市内での認定は6番目。
 
 この認定制度は市の少子化対策の一環として2009年に設けられた。従業員の育児休業や介護休業に対し法の規定を上回る措置や職場復帰支援を行うなどの取り組みを進めている企業側の申請を受け、一定基準を満たした企業を市が認定。認定企業は市の広報紙やホームページで紹介され、子育て応援企業であることをPRできる。
 
 同社では、介護休暇を通算1年(法定は93日)取得できるほか、育児・介護のための所定外労働の制限については就学前(法定では3歳未満)の子を持つ職員が利用できるよう期間を延長。育児や介護休業期間中の社員への職場復帰支援や年次有給休暇の取得促進など独自の取り組みも行っている。
 
野田市長らとの懇談で、より良い職場づくりへの思いを語る佐藤副社長(左)

野田市長らとの懇談で、より良い職場づくりへの思いを語る佐藤副社長(左)

 
 認定書交付式は市役所で行われ、同社の佐藤裕副社長、藤原由香里総務課長が出席。野田武則市長から認定書を受けた佐藤副社長は「少子高齢化で採用環境は悪い。能力ある女性は多く、潜在的能力を生かせる企業、働く満足感を得られる職場環境づくりは会社、従業員双方にメリットがある」と強調した。現在の従業員数は約140人で、うち女性はパートを含め16人。従業員に対し3年ごとに満足度調査を行っているといい、「(満足度は)まだ低い。やれることを示し、納得感のある形で取り組みを進めていく」と力を込めた。
 
 野田市長は「各企業が取り組むことで、子育てしやすいまちづくりが進む。女性が安心し仕事に専念できる企業づくりを続けてほしい。他の企業に子育てを支える取り組みを参考にしてもらい、制度に目を向けるきっかけになれば」と期待した。

鈴子広場に新たに設置された遊具で遊ぶ子どもたち

だれもが楽しく「まちなかの遊び場」 釜石・鈴子広場リニューアル

鈴子広場に新たに設置された遊具で遊ぶ子どもたち

鈴子広場に新たに設置された遊具で遊ぶ子どもたち

 
 東日本大震災後に仮設飲食店用地となっていた釜石市鈴子町の公園「鈴子広場」。市が進めてきた復旧整備工事が完了し16日、一般利用が始まった。障害がある子もない子も年齢を問わず一緒に楽しめる「インクルーシブ遊具」、車いすやベビーカーでも気軽に散策できるよう傾斜を緩やかにした築山、市内外からの広域的な利用を想定し駐車場などを設置。地域の子どもから大人まで幅広い世代の声をくみ上げながら作り上げた「まちなかの遊び場」で、多様な人が集い地域活性化を促す拠点として期待されている。
 
 面積約0・5ヘクタールの公園内を5エリアに分類。「遊具広場」は、復興支援で民間企業により13年に設置された複合遊具を生かしつつ、車いすのままで遊ぶことができる砂遊び用テーブルや感覚遊びのパネルを取り入れた滑り台、トランポリンのように遊べるネット遊具などを新たに加えた。同様に既存の健康遊具がある「運動広場」には新たにバスケットボールのゴールリンクを設置。ボール遊びを楽しめるスペースを確保した。
 
リニューアルした鈴子広場。子どもたちは砂遊びに夢中

リニューアルした鈴子広場。子どもたちは砂遊びに夢中

 
緑地を生かした築山エリアを駆け回る子どもたち

緑地を生かした築山エリアを駆け回る子どもたち

 
 既存の緑地を生かした「築山広場」は傾斜を緩やかにし、イベント時に簡易ステージとして利用可能な木製のデッキや土管トンネルを設置した。コンクリートブロック舗装だった「中央広場」は細かく砕いた石を敷いたダスト舗装に改修し、転倒時などの安全性の向上を図った。震災殉職消防団員の顕彰碑周辺は「やすらぎの広場」とし、園内にある既存のモニュメント2基を移設。そのほか、熱中症対策として水を霧状に噴射する「ミスト」、東屋(あずまや)2棟、バリアフリー化したトイレ棟なども備えた。
 
 利用者から要望が多かった駐車場は、仮設店舗に利用されていた広場両サイドのスペースに整備。乗用車10台、障害者用2台、幼稚園などの中型バス1台の計13台が駐車できる。駐輪場(8台分)も整備。事業費は2億869万円。
 
ボール遊びを楽しめるスペースも確保した

ボール遊びを楽しめるスペースも確保した

 
後方には消防署。消防車両をデザインした遊具もある

後方には消防署。消防車両をデザインした遊具もある

 
 一般開放された初日は、多くの親子連れらでにぎわい、子どもたちのうれしそうな歓声が響いた。甲子町の佐々木琉心(りこ)ちゃん(3)は「いっぱい遊んだ。楽しい」と笑顔。父勇人(はやと)さん(45)、妹彩凪(あいな)ちゃん(8カ月)を抱きかかえた母江利さん(42)は「いつもより活発に遊んでいる。低年齢向けの遊び場が柵で区切られていて、安心して遊ばせることができる。親同士、情報交換の場にもなる」と歓迎した。
 
 東屋でおしゃべりを楽しんでいた地元の70代の女性3人組は「いつもの散歩コース。木が手入れされ見通しがよくなり、開放的。子どもたちの声が聞こえてきて、元気が出る」と目を細めた。
 
広場は仮設飲食店用地として使われた=2013年5月

広場は仮設飲食店用地として使われた=2013年5月

 
 同広場には震災後、被災飲食店が入居する仮設飲食店街がつくられ、最大約40店舗が軒を連ね、2018年3月まで営業した。建物の撤去後、公園の復旧整備に向け市は、「みんなでつくる鈴子広場」を目指し、子育て世代や地域住民らを交えたワークショップを3回開催。寄せられた意見を設計に反映させ、21年5月に着工、今年3月に整備を終えた。