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JR山田線の鵜住居−大槌間を試験走行するディーゼル機関車=釜石市片岸町

三陸鉄道リアス線、全線開通へ前進〜JRから移管 宮古−釜石間 試験走行始まる、鵜住居駅舎も完成

JR山田線の鵜住居−大槌間を試験走行するディーゼル機関車=釜石市片岸町

JR山田線の鵜住居−大槌間を試験走行するディーゼル機関車=釜石市片岸町

 

 東日本大震災で被災し不通になっているJR山田線宮古―釜石間(55・4キロ)は今年度中に復旧し、三陸鉄道に移管され、来年3月23日から「リアス線」として運行を再開する。7月には全区間でレールがつながり、工事を行うJR東日本盛岡支社東北工事事務所は21日、同区間で始まった試験走行の現場や全壊からの再建工事が終わった釜石市鵜住居町の鵜住居駅の駅舎を報道陣に公開。追い込み段階に入った全線開通に向け、順調に作業が進んでいることをアピールした。

 

 試験走行はこの日がスタート。完成した線路や構造物の強度などを確認するのが目的で、ディーゼル機関車が釜石―大槌間の一部約3キロを走行した。

 

 公開されたのは片岸町の第三釜石街道架道橋。約65トンの車両が速度を変えて数回走り安全性を確認した。今後は徐々に距離を延ばし、9月中に全区間を通して試験走行を行う予定だ。

 

 鵜住居駅は、来年のラグビーワールドカップ(W杯)の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアムの最寄り駅。震災前とほぼ同じ場所に、約20平方メートルと同規模の鉄骨造り平屋の駅舎を再建。5月に着工し、今月8日に完成した。

 

 海が近いことから、外壁は砂浜をイメージしたクリーム色。W杯開催にちなみ、窓ガラスにラグビーボールの模様がデザインされている。スクラムをモチーフにし東西交互に据えた窓も特徴の一つ。駅舎内には、昨年5月に平田尾崎半島で発生した林野火災の被害木(スギ)を活用した16席のベンチが設置された。

 

再建工事が終わり、報道陣に公開された鵜住居駅

再建工事が終わり、報道陣に公開された鵜住居駅

 

 同区間は津波で約8・5キロが流失し、駅舎7カ所が被災した。同事務所では2015年から200億円をかけた復旧事業を各地で進行。先月18日に軌道の敷設を完了し、全区間のレールがつながった。今後は軌道の修繕、各種鉄道施設の安全性検査、信号などの整備工事を進め、来年1月以降に試運転、2月以降に三鉄の訓練運転に入る予定となっている。

 

 被災駅舎の復旧は7駅中5駅をJR東日本が担当する。磯鶏駅(宮古市)、織笠駅(山田町)、鵜住居駅が再建され、津軽石(宮古市)、浪板海岸(大槌町)は9月末に完成する見込み。陸中山田駅と大槌駅は自治体側が受け持つことになっている。

 

 三鉄への移管後は、同区間を挟んで、既に運行再開している北リアス線(久慈―宮古間)と南リアス線(釜石―盛間)がつながり、「リアス線」(久慈―盛間163キロ)と名前を変えて運行される。

 

 同支社の小林宏基設備部長は「震災から7年以上かかったが、レールがつながり万感の思い。今後も三陸鉄道にしっかり引き渡せるよう安全第一で取り組みたい」と強調。鵜住居駅については「交流人口の増加、産業や観光の振興に役立ち、復興のシンボルとして地域に愛される駅舎になってほしい」と願った。

 

(復興釜石新聞 2018年8月25日発行 第717号より)

 

復興釜石新聞

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軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

水中観察船でクルーズ、釜石湾も一望〜震災から復興の海を満喫、2日間で588人乗船

釜石湾クルーズの参加者。県内外から家族連れなどが参加し、夏の思い出を作った=11日

釜石湾クルーズの参加者。県内外から家族連れなどが参加し、夏の思い出を作った=11日

 

 広島県尾道市の造船業、ツネイシクラフト&ファシリティーズ(神原潤社長)が所有する高速水中観察船「ハーモニー」(19トン、旅客定員70人)によるクルーズが11、12の両日、釜石湾で行われた。日本中小型造船工業会(東徹会長)と日本財団(笹川陽平会長)が実施する「海と日本PROJECT」の一環。2日間で計11便が運航され、588人が東日本大震災の津波から復興してきた海を満喫した。

 

軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

軽合金製高速水中観察船「ハーモニー」。航海速力は20ノット

 

 11日は運航前に、発着場所の釜石魚市場脇岸壁で安全祈願の神事が行われた。東会長は「震災以降、海に対し怖いイメージを持つ人もいると思うが、海に囲まれた日本にとって海や船は生活に欠かせない。大切さを再認識してもらえれば」とあいさつ。震災前に運航していた釜石市の観光船「はまゆり」の元ガイド千葉まき子さんが船内アナウンスを務め、約1時間の湾内巡りに向かった。

 

 船は、津波被害から復旧した港施設や新たに設置されたガントリークレーンなどを見ながら進み、今年3月に復旧工事を終えた釜石港湾口防波堤へ。外海にも出て、内外の波の違いを体感してもらった。帰路は昨年5月に林野火災が発生した尾崎半島沿いを航行。尾崎神社奥宮のある青出浜周辺で、津波や火災を乗り越えた自然の姿を目の当たりにした。 

 

 同船には水深約1メートルの視点から海中をのぞける水中観察室がある。この日は先日来の雨の影響で視界は良くなかったが、乗船者はめったにない体験を楽しんだ。

 

 家族4人で乗船した甲子町の松田翔希君(7)は「防波堤が津波を抑えると知り、すごいと思った。海の中はあまり見えなかったけど、何か動いているものが見えた」と目を輝かせた。母真帆さん(42)は「船で海上に出られるのは貴重な経験。こういう機会が増えれば。観光船の復活にも期待したい」と話し、次男駿希君(3)も「また乗りたい」とはしゃいだ。

 

水中観察室で海の中の雰囲気を楽しむ親子

水中観察室で海の中の雰囲気を楽しむ親子

 

 インターンで釜石に滞在中の立教大観光学部3年、小玉佳穂さん(21)は「防波堤を抜けたら一気に波が出てきて、その役割の大きさを実感。初めて見るリアス式海岸は景色もきれい。被災を感じないくらい港も復興している」と驚いた様子。同じインターン生の小林大さん(20)は「釜石のまち並みを海上から一望できるのが面白い。海からだと地形も分かるし、遠目から見ると、さまざまなものが陸上とは違って見える」と新鮮な感動を表した。

 

 同会会員の神原社長は2011年の震災を機に山田町に子会社ティエフシー(同社長)を設立。造船技能者を養成し、13年から工場を稼働している。船舶建造技術を生かし、これまでにアルミ浮揚型津波シェルターも開発した。

 

 「ハーモニー」は元々、渦潮観潮船として徳島県の鳴門観光汽船が運航していたもので、代替わりする際、代々受注してきたツネイシが「震災被災地で役立てたい」と下取りした。船は山田町に運ばれ、昨年7月、湾内で初クルーズを実施。カキの養殖棚見学などで地元水産業の一端を学んだ。

 

 同プロジェクトは2015年に始動。各地の船を活用したクルーズや造船所見学などで船や海に親しみを感じてもらい、業界の担い手育成につなげる狙いがある。このクルーズには予定定員の約2倍、1068人分の応募があり、抽選で乗船者を決定した。

 

(復興釜石新聞 2018年8月18日発行 第715号より)

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あでやかな舞を披露する「よいさ小町」

逆境乗り越え踊り継ぐ、釜石よいさ 30回目の夏〜国際色も豊かに、36団体1900人がパレード

30回目の節目を迎えた釜石よいさ。約6千人の市民が集まった

30回目の節目を迎えた釜石よいさ。約6千人の市民が集まった

 

 釜石の夏を彩る「釜石よいさ」(同実行委員会主催)は4日、大町の特設会場で開かれた。東日本大震災による2年間の休止を経て復活して6回目、通算ではちょうど30回目。「踊り継ぎたい夏がある」を合言葉に、36団体、約1900人が熱い群舞を繰り広げた。震災後は支援などで釜石に入る外国人が増え、釜石よいさも国際色豊かに。幅広い年代の市民が息の合った踊りを披露し、1年後に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)を成功させようと盛り上がった。

 

横断幕を掲げ、「ラグビーW杯を成功させよう」と呼び掛ける釜石SWの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー兼監督(左)ら

横断幕を掲げ、「ラグビーW杯を成功させよう」と呼び掛ける釜石SWの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー兼監督(左)ら

 

釜石市民劇場は山車でラグビーW杯をPR

釜石市民劇場は山車でラグビーW杯をPR

 

 開会セレモニーで近藤和貴実行委員長(35)が「みんなで釜石の夏を盛り上げよう」とあいさつ。野田武則市長は「震災から7年、釜石はまだまだやれる、がんばれる」と呼び掛けた。

 

 にぎやかに餅まきが行われたあと、震災にも負けずに活動する「箱崎虎舞」の面々が勇壮な舞を披露。釜石よいさの立ち上げメンバーで、シンガーソングライターとして活躍するあんべ光俊さん(64)が仙台市から駆けつけ、デビュー曲の「遠野物語」などを歌い上げて30回の節目に花を添えた。

 

震災を乗り越え躍動する箱崎虎舞

震災を乗り越え躍動する箱崎虎舞

 

 総勢50人の笛や太鼓が鳴り響き、そろいの浴衣姿の「よいさ小町」があでやかに前ばやしを披露すると、いよいよ本番がスタート。企業や団体、学校など、それぞれに趣向を凝らしたスタイルで踊りの輪が回り始めた。

 

あでやかな舞を披露する「よいさ小町」

あでやかな舞を披露する「よいさ小町」

 

元気よく練り歩く上中島こども園の園児ら

元気よく練り歩く上中島こども園の園児ら

 

 拓殖大、聖学院大、法政大の学生、外資系企業のUBS証券グループ社員など、釜石の復興を外から支え続ける団体も参加。数多くの外国人も踊りの輪に加わった。

 

 涼やかな浴衣姿で踊りを披露したホアン・ティ・トウイさん(21)は、ベトナムからやって来た水産加工技能実習生。多くの仲間と釜石市国際交流協会のグループに加わり、〝日本の夏〟を満喫した。

 

ベトナムの水産加工実習生らも「ヨイサッ」

ベトナムの水産加工実習生らも「ヨイサッ」

 

 「すごく発展している日本で働き、学びたかった」とトウイさん。「ベトナムにはないお祭り。おもしろーい!」と笑顔で躍動した。昨年から3年間の予定で、大平町の井戸商店で働いている。浴衣をプレゼントした大橋武一社長(60)は「ベトナムの子たちはまじめによく働いてくれる。性格も非常に温和」と沿道で目を細めながら見守った。

 

 イオンタウン釜石グループの先頭に立ったのは、同店の立ち上げに奮闘した及川和之さん(62)=イオンタウン営業統括部長。「4年前と比べ、まちににぎわいが増えた。地域に貢献する店になって良かった」と感慨を口にした。

 

(復興釜石新聞 2018年8月8日発行 第713号より)

 

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釜石鉱山の坑道で採掘現場も見学

涼しさ満点「地底探検」〜夏休み 釜石鉱山で坑道見学

釜石鉱山の坑道で採掘現場も見学

釜石鉱山の坑道で採掘現場も見学

 

 釜石鉱山の坑道見学会は7月30日、釜石市甲子町大橋の現地で行われ、家族連れなど26人が参加。「鉄のまち釜石」を支えた鉱石採掘に思いをはせ、真夏日となった猛暑の外とは別世界の冷涼な「地底探検」を楽しんだ。坑道見学は今月9日まで5回にわたって行われる。

 

 釜石鉱山総務課の千葉慎吾さんらが案内。トロッコに乗り込み、標高550㍍の坑口から入った。最初は「仙人秘水」の採水地。大峰山(標高1147メートル)の地下600メートルに位置する。秘水は当初、坑道内にある工場で製造していたが、2009年からは送水管を使い、地上で製品化している。坑道の総延長は1千㌔に及ぶという。

 

 鉱石採掘場では、搬送で使う専用の重機が紹介された。鉱石を効率よく搬出するため鉱石を投下したタテ坑もあった。基底部まで高さ200メートルあり、現在は高さ約50㍍まで水が満ちているという。

 

 最後に訪れたのは花こう岩でできた「グラニットホール」。操業当時は坑内事務所兼休憩所に充てられた場所で、鉱石の採掘を止めた後は、さまざまな音楽アーティストの録音も行われた。夫の小笠原善樹さん(62)、孫の鈴木響太朗君(甲子小3年)とともに参加した千賀子さん(61)が「釜石小唄」をホールいっぱいに響かせ、参加者の盛んな拍手を受けた。

 

 釜石市平田の漁業佐々木静男さん(72)は、この日が誕生日。横浜市から帰省した娘の八木千里さん(38)、長男の奈碧人(なおと)君(六ツ川西小6年)、二男の碧乃莉(みのり)君(同3年)、長女彩衣音(あいね)ちゃん(4)とともに「鉱山(やま)」を満喫した。碧乃莉君は「鉱石も23個集めた。勉強になった」と喜んだ。

 

 青森県三沢市の男女14人は観光バスで訪れた。「温故知新の会」と名付けた旅行仲間は60~96歳。会長の北林登美江さん(77)は「今回は片道4時間の日帰り。坑道見学は面白かった」と、プレゼントの「仙人秘水」を抱えて帰路に就いた。

 

(復興釜石新聞 2018年8月4日発行 第712号より)

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世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

世界遺産登録3周年記念事業「橋野鉄鉱山って?!」

 

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業
特別企画展 橋野鉄鉱山って?!―登録関連資料・発掘資料展示会―

 

今年は、国内では19番目、県内では「平泉の文化遺産」に続いて2番目の世界遺産である橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産に登録されて3年になります。

 

橋野鉄鉱山インフォメーションセンターでは、8月31日(金)まで世界遺産登録3周年を記念して、特別企画展を開催します。(入場無料)

 

展示内容

橋野鉄鉱山の世界遺産登録までの経緯や発掘調査資料などを展示します。

開催期間

8月8日(水)~31日(金)

場所

橋野鉄鉱山インフォメーションセンター 展示室(釜石市橋野町2-6)

開館時間

9時30分~16時30分

問い合わせ

釜石市世界遺産課 ☎ 0193-22-8846

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 世界遺産課
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-8846 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/kanko/detail/1221043_2430.html
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雨を吹き飛ばす元気なダンスを見せた「いがったんたら」

夏祭り 釜石駅前に活気〜ラグビーW杯・三陸鉄道リアス線開通見据え、業者結束

雨を吹き飛ばす元気なダンスを見せた「いがったんたら」

雨を吹き飛ばす元気なダンスを見せた「いがったんたら」

 

 震災で被災したJR山田線の復旧と三陸鉄道への移管による三鉄全線開通、ラグビーワールドカップ(W杯)開催を来年に控え、釜石市鈴子町の釜石駅周辺事業者らが、駅前のにぎわい創出へ乗り出した。イベント会場として親しまれた駅前大型テント「シープラザ遊」が解体され、集客に危機感を覚える事業者らは7月28日、初の試みとなる「釜石駅前夏祭り」を開催。出店やステージイベントなど多彩な企画で、市内外の来訪客を迎えた。

 

 釜石駅前祭り実行委(宮川徹委員長=和の膳みや川)が主催。市内外の企業や団体、個人が多数協賛した。駅前広場、サン・フィッシュ釜石前に20業者がブースを連ね、飲食メニューや農水産物、自社商品などを販売。流しそうめん、餅つき、サクランボ種飛ばし選手権も行われた。同広場の特設ステージでは、釜石、大槌、盛岡からの出演者が各種ダンスや音楽ライブなどを繰り広げた。

 

 定内町の佐藤壯多君(小佐野小3年)は双子の孝多君(同)と初めて流しそうめんを体験し、「たくさん取れて楽しかった。お腹いっぱい」と満足げな表情。母幸子さん(46)は解体が進むシープラザ遊の姿に寂しさも感じながら、「テントのイベントにも足を運んでいたので(解体は)少し残念。こうして子どもたちが喜ぶ催しをやってもらえるのはうれしい。来年はW杯もある。これを機に釜石が発展してくれれば」と期待を込めた。

 

流れてくるそうめんを上手にキャッチ!夏休みの思い出に

流れてくるそうめんを上手にキャッチ!夏休みの思い出に

 

 夕方からはサン・フィッシュ2階のテラスに一夜限りのビアガーデンをオープン。朝から降り続いた雨も上がり、蒸し暑さが増す中、職場や友人のグループ、家族連れなどが続々と訪れ、酒や軽食で交流を深めた。連絡通路でつながれたシープラザ釜石も会場とし、バンド演奏、虎舞、吹奏楽、ベリーダンスなどのパフォーマンスで楽しいひとときを提供した。

 

 震災以降、釜石・大槌地区で復興支援のボランティア活動を続ける東京建設従業員組合の有志ら8人は、大槌で子どもたち対象の木工教室を開いた後、ビアガーデンに立ち寄った。木賀聖司執行委員長(60)は「大槌の人口流出が心配。若い世代が戻ってくれれば」と願い、震災から7年が経過した被災地に思いを寄せた。

 

 同祭りに合わせ、マイヤ釜石店、シープラザ釜石でも関連企画を実施。駅周辺の関係者一丸となって、地区の盛り上げへ新たな一歩を踏み出した。

 

 宮川徹委員長(46)は「駅前という立地は他にはない強み。民間の力を結集して、来てくれたお客さまをもてなすことができたら。今後も機会を捉え、さまざまな駅前祭りを開催していきたい」と継続へ意欲を見せた。

 

(復興釜石新聞 2018年8月1日発行 第711号より)

 

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「SL銀河」に目を輝かせる〜JR釜石駅で一般公開

岩手の希望の星に、「SL銀河」に目を輝かせる〜JR釜石駅で一般公開

気分は鉄道マン!レールスターの乗車体験

気分は鉄道マン!レールスターの乗車体験

 

 JR釜石線(花巻―釜石間、90・2キロ)で運行5年目を迎える蒸気機関車「SL銀河」が15日、釜石駅構内で一般公開された。機関車を間近で見学でき、楽しい企画が毎回好評のイベント。今回は、クイズ大会や作業車両の走行体験が人気を集め、約450人がSLや鉄道の魅力を存分に味わった。

 

 機関車の前では恒例の記念撮影が行われ、乗務員などの制服や制帽を身に着けた来場者がとびきりの笑顔でフレームに収まった。小・中学生が抽選で、運転台での記念撮影ができるサービスも。石炭を燃やす匂い、汽笛や噴き出す蒸気などさまざまな感覚に訴えるSLの姿に来場者は目を輝かせた。

 

機関車をバックに写真を撮ってもらう家族連れ

機関車をバックに写真を撮ってもらう家族連れ

 

 新メニューとして用意されたのは、線路の点検時に作業員が山中などへの移動に使う「レールスター」の乗車体験。昔は自転車のように人力でこぐタイプだったというが、今は4駆のエンジン車両。約100メートル区間を2往復し、普段は味わえない高さの視点とスピードを体感した。

 

 東京都墨田区の中学1年生、鈴木花恋さん(12)は同車両の意外な速さに驚きながら、「レール点検など陰で頑張っている人たちのおかげで、私たちが安心して乗れているんだと思った」と作業員の苦労を想像。前日、両親とSL銀河に乗って釜石入りし、同イベントも楽しんだ。鉄道マニアの父克史さん(47)は「煙を吐く力強さとか、蒸気機関車って、まさに生きている感じ。SL銀河は沿線の人が手を振ってくれるなど地元の応援、もてなしの心が伝わり、こちらも温かい気持ちになる」と、妻雅美さんと声を弾ませた。

 

 最も盛り上がったのは「SL王」の座をかけたクイズ大会。問題は現役の検修員が知恵を絞って作成した○×式で、幅広い年代が挑んだ。予選で正解数の多い人が決勝に進出。SL銀河の全長、石炭を入れる火室の最高温度、花巻―釜石駅間のトンネルの数など、車両や路線に関する難問が出題され、参加者の頭を悩ませた。

 

 優勝したのは盛岡市の会社員、関場正浩さん(35)。趣味で毎週SL銀河を追っかけ、写真撮影などを楽しんでいるというが、「全然分からない問題もあり、予選では1問間違えた」と苦戦した様子。「問題にもあったが、JR東日本でも4つしかないSLが岩手にあるのは県民としては誇り。震災復興の力にと始まった運行だが、今でも全国からいろいろな方が乗りに来てくれる。できれば長く運行し、岩手の希望の星になってくれれば」と願った。

 

「クイズSL王はオレだ!」正解に思わずガッツボーズ

「クイズSL王はオレだ!」正解に思わずガッツボーズ

 

 4月21日から今年度の運行が始まったSL銀河は、一般公開前日の7月14日までで上下合わせて27本運行。約3500人が乗車し、平均乗車率は75%。今のところ、9月末まで土・日・祝日を中心とした運行が予定されている。

 

 JR東日本盛岡支社の中原俊直販売促進課長は「震災から年数を重ねる中で、遠野―釜石間の利用が落ちている傾向がある。沿岸まで乗ってもらえるような鉄道の魅力づくりに地元の皆さんと一緒に取り組みたい」と運行5年目の課題を見据えた。

 

(復興釜石新聞 2018年7月18日発行 第707号より)

 

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「魚のまち」釜石を発信〜魚河岸にぎわい施設着工、レストラン、広場を整備

「魚のまち」釜石を発信〜魚河岸にぎわい施設着工、レストラン、広場を整備

魚河岸にぎわい創出施設の完成イメージ図

魚河岸にぎわい創出施設の完成イメージ図

 

 釜石市が進める魚河岸にぎわい創出施設建設工事の地鎮祭が6月29日、釜石港に面する魚河岸地区の現地で行われた。海に関する展示スペースやレストラン、広場などを整備し、来年2月末の完成、4月の本格オープンを予定。昨年5月に復旧した新魚市場と隣接しており、連動して「魚のまち釜石」を発信する拠点としての活用が期待され、関係者は工事の安全と地域のさらなる発展を祈った。

 

 敷地面積3432平方メートルの市有地に鉄骨造り2階建て、延べ床面積1273平方メートルの施設を建てる。地元の海産物などを使った飲食店(4店舗)、銀行(1店舗)が入居し、海に関する展示スペースを設ける予定。花火や曳(ひ)き船まつりを観覧できる展望デッキ、朝市や季節の味覚まつりなどで活用を見込む広場も整備する。

 

施設の建設予定地

施設の建設予定地

 

 建設費は約5億円で、復興交付金や過疎債を活用する。

 

 地鎮祭は設計・施工者の日鉄住金テックスエンジ・山下設計企業連合が主催し、関係者約40人が出席した。くわ入れなどの神事を行った後、発注者の野田武則市長が「にぎわいの拠点として活用できれば、まちは大きく発展する。釜石の海のすばらしさを発信していきたい」とあいさつ。復活に向けて協議が進められている観光船の発着所をつくりたいとの考えも示した。

 

くわ入れする野田市長

くわ入れする野田市長

 

(復興釜石新聞 2018年7月4日発行 第703号より)

 

復興釜石新聞

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浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

釜石の魅力 アートで発信〜デザイン界をけん引する浅葉克己さん・佐藤可士和さん、「夢」を描く高校生にアドバイス

浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

浅葉克己さん(前列中央左)と佐藤可士和さん(同右)を囲んで記念撮影する市民ら

 

 日本のデザイン界をけん引するアートディレクターの浅葉克己さん(78)、クリエイティブディレクターの佐藤可士和さん(53)による「ふるさとポスター教室」が23日、釜石市大町の情報交流センター・釜石PITで開かれた。2人は地元高校生らが描いた釜石の魅力を発信するポスターを講評したほか、それぞれが手がける仕事などについて語り、多くの人々に影響力を与える創作の魅力を伝えた。

 

 同教室は、一般社団法人チームスマイル(東京都渋谷区)が行う東日本大震災復興支援活動「“わたしの夢”応援プロジェクト」の一環で企画。釜石市内の高校や一般から事前に公募した作品を浅葉さんと佐藤さんが講評する貴重な機会が設けられた。

 

 ポスター作品はB3版、「釜石の魅力を市外に訴求する」「“釜石”の文字を使い、自由なキャッチコピーを考案して盛り込む」などの条件で募集。釜石高から15点、釜石商工高から10点、一般から3点の作品が寄せられ、2人が全28点について出品者を前に講評やアドバイスを行った。

 

 銀賞、金賞として各14点を選出。金賞作品は、一般客も入れた会場内で公開講評が行われた。出品者が作成意図を説明。各作品には虎舞、釜石大観音、SL銀河、サケやアユ、ハマユリなど、釜石を代表するさまざまなモチーフが描かれ、独創的なロゴデザインとともに個々の感性が光った。2人は作者の視点や構図、デザイン性、色使いなどについてコメント。金賞作品の中からグランプリなど3点を選んだ。

 

 「グランプリ」に輝いたのは、釜石高2年の髙木悠さんの作品。海や山の自然、大漁旗がはためく船、ラグビー、食など数多くの釜石の自慢を、波をイメージした「かまいし」のロゴと合わせ、バランス良い構図で仕上げた。浅葉さんは「すごく丁寧で絵がうまい」と絶賛。佐藤さんは見応えのある完成度の高さを示し、「アイデアがあっても表現し切れなければ思いは伝わらない。やり切ると自分の考えもまとまり、人前できちんとコンセプトを説明できるようになる。これはどんな仕事でも大事なこと」と話した。

 

 髙木さんは「夢のお2人から評価され、自信がついた。とてもうれしい。自分自身も釜石の魅力を再発見できた。将来はグラフィックデザイナーになりたい」と希望を膨らませた。

 

「グランプリ」を受賞した髙木悠さん(釜石高2年)の作品

「グランプリ」を受賞した髙木悠さん(釜石高2年)の作品

 

 「浅葉克己賞」を受賞した釜石商工高2年の藤井隆稀君は、全応募者の中で唯一、モノクロ作品を出品。大観音をバックにそびえ立つガントリークレーン、世界遺産の橋野鉄鉱山・高炉跡などを黒の濃淡で描いた。「まだ実感がない」と受賞の驚きにとまどう藤井君。「得意分野で勝負しようと思い、鉛筆画にした。講評で指導されたように、今後は苦手な“色”にも挑戦し、作品の幅を広げたい」と意欲を見せた。

 

「浅葉克己賞」を受賞した藤井隆稀君

「浅葉克己賞」を受賞した藤井隆稀君(釜石商工高2年)の作品

 

 「佐藤可士和賞」は曳(ひ)き船まつりの虎舞を題材にした釜石商工高3年の會田紫月さんが受賞。虎頭が海上から見上げる構図の迫力や独自の視点で捉えた顔のフォルム、全体の色構成などデザイン的に上手にまとめられている点が評価された。

 

「佐藤可士和賞」を受賞した會田紫月さん(釜石商工高3年)の作品

「佐藤可士和賞」を受賞した會田紫月さん(釜石商工高3年)の作品

 

 浅葉さんは有名企業の広告作品を数多く手がけ、紫綬褒章なども受章。津波で大きな被害を受けた鵜住居町根浜海岸に建立された「津波記憶石」のデザインも行った。佐藤さんは衣料ブランドやコンビニ、美術館などのロゴデザインに加え、幼稚園や地方の特産品のトータルデザインも行い、国内外に活躍の場を広げる。この日は2人のトークショーもあり、約80人が楽しんだ。

 

 各界の著名人が東北被災地の子どもたちや若者の夢を応援する同プロジェクトは今回で15回目。釜石では2016年の布袋寅泰さん、川淵三郎さん、17年の倍賞千恵子さん、熊本マリさんに続き5回目のイベント開催となった。

 

(復興釜石新聞 2018年6月27日発行 第701号より)

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「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業in鉄歴 橋野鉄鉱山を知ろう!

 

「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録3周年記念事業 in 鉄歴

 

特別企画展 近代製鉄発祥の地 橋野鉄鉱山を知ろう!

 

平成30年7月8日は、国内では19番目、県内では平泉の文化遺産に続いて2番目の世界遺産である橋野鉄鉱山を含む「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」が世界遺産一覧表に登録された日です。今回、世界遺産登録3周年を記念して、特別企画展を開催します。

 

展示内容

橋野鉄鉱山の世界遺産登録までの経緯や発掘調査資料などを展示

期間

平成30年7月4日(水)~16日(月・祝)

場所

釜石市立 鉄の歴史館 2階 会議室

問い合わせ

鉄の歴史館 ☎0193-24-2211

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 世界遺産課
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-22-8846 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/tanoshimu/kanko/detail/1219695_2430.html
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釜石港に試験寄港した「ナッチャンWorld」

高速フェリー釜石寄港〜ラグビーW杯活用も検討、観光振興に可能性

釜石港に試験寄港した「ナッチャンWorld」

釜石港に試験寄港した「ナッチャンWorld」

 

 2つの船を並べたような胴体構造が特徴の双胴型高速フェリー「ナッチャンWorld(ワールド)」(全長112メートル、1万549トン)が12日、釜石港に初寄港した。観光船としてイベントなどに活用されており、来年のラグビーワールドカップ(W杯)の盛り上げやさまざまな企画での活用を視野に試験寄港したもので、W杯の準備に関わる市担当部署の職員、港湾関係団体や報道関係者らに船内を公開した。

 

 同船は旅客定員500人の大型フェリー。4階建てで、1、2階は車両甲板、3、4階が客室となっている。アルミ軽合金製の船体で、オーストラリアの造船所で建造。ウォータージェット推進機4機を備え、航海速力は30ノット(約55キロ)以上という。

 

 かつては青森港と函館港を結ぶ定期便として就航したが、現在はイベントクルーズ船などとして活用。また防衛省との間で、自衛隊の訓練や大規模災害などの有事の際に隊員や物資の輸送に利用する契約を結んでおり、災害時派遣船としても活躍する。

 

 内覧会は海運会社リベラ(本社・広島県呉市)、東洋マリーンサービス(本社・東京都千代田区)、釜石港湾振興協議会が企画。4回に分けて行われ、計約170人が見学した。

 

 客室は仕切りが少なく、折り畳んであるマット(1枚当たり縦60センチ、横45センチ、3枚連結構造)を使って横になって休むことができる。大型トラック50台、乗用車110台を収容できる車両甲板なども見て回った。市商業観光課の佐々木利光課長補佐は「観光面での活用に可能性を秘めている。休憩、イベント、輸送での利用など検討してみたい」と前向きな姿勢を見せた。

 

船内を見て回り、ラグビーW杯開催時のイベントでの活用に期待感を高める関係者

船内を見て回り、ラグビーW杯開催時のイベントでの活用に期待感を高める関係者

 

 同協議会では港を活用したW杯の機運醸成や後方支援について検討を進めており、同船の試験寄港を歓迎。今回は入港や接岸が可能かを確認するためだったが、双胴型、子どもや動物のイラストが描かれた船体など存在感のある船が停泊している港の風景に、関係者は「大会の盛り上げに一役買う」と期待を高める。

 

 同船の活用については今後、関係者を交えて具体的に検討し、年度内に方向性を決めたい考え。市産業振興部の引屋敷英人次長(市国際港湾振興課長兼務)は「ファンゾーンの設置だけでなく、いろんな楽しみがある大会になれば。港や寄港する船を活用した大会準備、企画立案の一助にしてほしい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年6月16日発行 第698号より)

 

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橋野高炉跡の遺跡内で清掃活動に励む市民ら

世界遺産の環境まもろう「橋野鉄鉱山」はみんなのもの〜創業160周年を記念しイベント、小野寺准教授(岩手大)が記念講演

橋野高炉跡の遺跡内で清掃活動に励む市民ら

橋野高炉跡の遺跡内で清掃活動に励む市民ら

 

 釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」で3日、高炉跡の環境美化活動と講演会を併せたイベント「みんなの橋野鉄鉱山」が開かれた。同鉄鉱山の創業160周年を記念して開催。市民ら約50人が参加し、釜石が誇る歴史的文化遺産の保護と理解に認識を深めた。

 

 橋野高炉跡が国史跡指定を受けた1957(昭32)年6月3日に日程を合わせ、市が主催。橋野町振興協議会、栗橋地区まちづくり会議が共催した。

 

 参加者は、高炉跡内の清掃と遺跡エリアにつながる二又橋のガードレールのペンキ塗り作業に従事。ごみや枯れ枝、シカなど野生動物のふんを回収し、見学環境を整えた。白いガードレールは汚れやさびを落とし、周囲の景観になじむよう茶色の塗装を施した。同所は地元住民や委託業者による定期的な清掃に加え、見学者の良好なマナーもあり、ごみは少なめ。作業は1時間ほどで終えた。

 

 参加者はインフォメーションセンターに移動し、記念講演に招かれた岩手大理工学部の小野寺英輝准教授の話を聞いた。同鉄鉱山の世界遺産登録に関わる国の委員も務めた小野寺准教授は「近代製鉄を縁の下で支えた者たち」と題し、釜石での洋式高炉創業を成し遂げた大島高任を支えた人物を紹介した。

 

大島高任の支援者にスポットを当てた講演に参加者も興味津々

大島高任の支援者にスポットを当てた講演に参加者も興味津々

 

 大島が弟子の養成のため開設した洋学私塾「日新堂」に資金提供した盛岡藩主・南部利剛、大橋高炉建築の藩への請願窓口として尽力し、出資もした山田の御給人・貫洞瀬左衛門、技術者としては、鋳物師で大橋の高炉長を務めた鈴木忠七、大島を補佐し高炉設計から築造、操業まで指導者として活躍した清岡澄などの名前が挙がった。資金供給の流れを作った蛇口伴蔵と中野作右衛門の存在も大きいという。

 

 小野寺准教授は「全国各地で学んだ大島の背後のつながりで、技術者、出資者の援助が遠隔地からもあった。大島の弟・福治のサポートも成功に導いた要因」と説明した。

 

 市世界遺産課の佐々木育男課長は「文化財を守るには特定の人だけではなく、いろいろな方々の参画が必要。形を変えながら、長く世界遺産を守る活動を続けていきたい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年6月6日発行 第695号より)

 

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