震災から復興しつつある新しいまち並みの中を進む尾崎神社と新日鉄住金釜石山神社のみこし=15日
釜石市の尾崎神社と新日鉄住金釜石製鉄所山神社による伝統の「釜石まつり」は13日から3日間にわたって行われ、震災復興を目指すまちに大きな活力をもたらした。14日の尾崎神社「曳き船まつり」は、今年3月に津波被害から新築復旧した魚河岸の新魚市場前で開催。この場所では7年ぶりとなる祭りが、浜の復興を印象づけた。最終日の15日は両神社のみこしが、完成間近の市民ホールなど新たなまち並みを形成しつつある中心市街地を練り歩いた。
尾崎半島青出浜にある同神社奥宮のご神体をみこしに迎え、海上を渡御する曳き船まつり。今年は5月に発生した半島の山林火災で奥宮近くに火の手が迫り、ご神体を浜町の里宮に避難させていたが、今月1日、奥宮にかえす「還幸祭」を行い、曳き船当日を迎えた。 新魚市場の岸壁から出港した14隻は例年通り、ご神体を迎えに行き、午後0時30分ごろ市場前に入港。みこしを乗せた御召船「第18宝生丸」が、神楽や虎舞の囃子(はやし)を響かせる各船と港内を3周した。岸壁で見守る人たちは、色とりどりの大漁旗を翻して進む海上絵巻を楽しんだ。
大漁旗を掲げた船上で芸能団体が躍動した曳き船まつり=14日
釜石にいる友人に誘われ足を運んだ横浜市の山下さくらさん(60)は「豊漁を願う祭りに感謝。勇壮な姿に自分も力をもらった。前に来た時は震災の爪痕に涙したが、新しい魚市場も完成し本当に良かった」と地元住民の思いを共有した。
尾崎神社船主船頭組合の藤原幸司組合長(53)は、奥宮が延焼を免れたことに「やっぱり神様が守ってくれたのかな。曳き船も滞りなく行われた。漁業者の減少など厳しい側面もあるが、まちの繁栄につながるよう祭りを盛り上げていきたい」と決意を新たにした。
15日の合同渡御には15団体、約1200人が参加。鈴子町のシープラザ遊で合同祭の神事を行った後、行列が繰り出した。両神社のみこしは大渡町から只越町に続く目抜き通りを進み、沿道を埋めた見物客らが、さい銭をあげて手を合わせた。
見物客は通りで披露される芸能に盛んな拍手を送った=15日
尾崎神社のみこしの担ぎ手は、2000年に発足した「輿衆(よしゅう)会」のメンバーに震災後、協力を続ける復興工事関係者らを加えた総勢約80人。同会の熊谷博副会長(63)は「火災時は大変心配したが、ご神体も無事で安心した。幼いころから守られてきた神社のみこしを担げるのは何よりの幸せ」とあらためて喜びをかみしめた。
目抜き通りに設けたお祭り広場では、神楽と虎舞各4団体、鹿踊り1団体が踊りを披露。行列が到着する前には、応援に駆け付けた盛岡さんさ踊り実行委の約30人が、太鼓と踊りのパレードを繰り広げ、被災地を元気づけた。
尾崎町(台村)虎舞のはやし方で、子どもたちは威勢の良さを一層高めた=15日
盛岡さんさ踊りの面々は心地よい太鼓の響きとしなやかな舞で見物客を魅了=15日
同通りと周辺地域は先月の台風18号による豪雨で浸水被害を受けた。通り沿いに住む70代の女性は「災害で落ち込んだ気持ちも、にぎやかな祭り囃子を聞くと明るくなる」と顔をほころばせ、復興住宅や市民ホールの建設で変わりゆく市街地に「少しでも活気を取り戻せれば」と願いを込めた。
(復興釜石新聞 2017年10月18日発行 第631号より)
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