世界遺産の環境まもろう「橋野鉄鉱山」はみんなのもの〜創業160周年を記念しイベント、小野寺准教授(岩手大)が記念講演
橋野高炉跡の遺跡内で清掃活動に励む市民ら
釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」で3日、高炉跡の環境美化活動と講演会を併せたイベント「みんなの橋野鉄鉱山」が開かれた。同鉄鉱山の創業160周年を記念して開催。市民ら約50人が参加し、釜石が誇る歴史的文化遺産の保護と理解に認識を深めた。
橋野高炉跡が国史跡指定を受けた1957(昭32)年6月3日に日程を合わせ、市が主催。橋野町振興協議会、栗橋地区まちづくり会議が共催した。
参加者は、高炉跡内の清掃と遺跡エリアにつながる二又橋のガードレールのペンキ塗り作業に従事。ごみや枯れ枝、シカなど野生動物のふんを回収し、見学環境を整えた。白いガードレールは汚れやさびを落とし、周囲の景観になじむよう茶色の塗装を施した。同所は地元住民や委託業者による定期的な清掃に加え、見学者の良好なマナーもあり、ごみは少なめ。作業は1時間ほどで終えた。
参加者はインフォメーションセンターに移動し、記念講演に招かれた岩手大理工学部の小野寺英輝准教授の話を聞いた。同鉄鉱山の世界遺産登録に関わる国の委員も務めた小野寺准教授は「近代製鉄を縁の下で支えた者たち」と題し、釜石での洋式高炉創業を成し遂げた大島高任を支えた人物を紹介した。
大島高任の支援者にスポットを当てた講演に参加者も興味津々
大島が弟子の養成のため開設した洋学私塾「日新堂」に資金提供した盛岡藩主・南部利剛、大橋高炉建築の藩への請願窓口として尽力し、出資もした山田の御給人・貫洞瀬左衛門、技術者としては、鋳物師で大橋の高炉長を務めた鈴木忠七、大島を補佐し高炉設計から築造、操業まで指導者として活躍した清岡澄などの名前が挙がった。資金供給の流れを作った蛇口伴蔵と中野作右衛門の存在も大きいという。
小野寺准教授は「全国各地で学んだ大島の背後のつながりで、技術者、出資者の援助が遠隔地からもあった。大島の弟・福治のサポートも成功に導いた要因」と説明した。
市世界遺産課の佐々木育男課長は「文化財を守るには特定の人だけではなく、いろいろな方々の参画が必要。形を変えながら、長く世界遺産を守る活動を続けていきたい」と話した。
(復興釜石新聞 2018年6月6日発行 第695号より)
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