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泥出し作業を進めるW杯組織委の有志

ラグビーW杯組織委員会、台風復旧支援〜嶋津事務総長らボランティア、熱狂支えた釜石に感謝

泥出し作業を進めるW杯組織委の有志

泥出し作業を進めるW杯組織委の有志

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会組織委員会の嶋津昭事務総長らが9、10の両日、先月の台風19号で大きな被害を出した釜石市内の被災地で、泥を運び出すなど復旧ボランティア活動に取り組んだ。2日に大会を終えたばかりの組織委から有志23人が参加。釜石鵜住居復興スタジアムやファンゾーンで大会の熱狂を支えた釜石に感謝しようと、作業に汗を流した。

 

 9日は、大規模な土砂災害に見舞われた尾崎白浜地区で活動した。20~70代の有志がW杯スタッフのユニホームで参加。高台にある久保ケフさん(84)方で汗を流した。

 

 久保さん方は台風の大雨で2つの沢から土砂や水が流れ込み床下浸水。家族2人は2階に避難し、現在も台所以外は1階に居場所がない。親類や知人、市の力を借り、床下や庭の整備、物置小屋の撤去を進めたが、居間の泥出しと、浸水を免れた畳の搬入が残っていた。

 

 組織委の有志は畳を玄関に運び入れ、1階居間の床下に堆積した泥を除去した。床板をはがした室内に踏み込み、厚さ15センチほどの泥を掘り出し、袋に詰め、一輪車で搬出。チームワーク良く作業に取り組んだ。

 

 嶋津事務総長も畳を運び、一輪車を押した。「釜石の1試合(ナミビア―カナダ)を中止したことは、やむを得なかった。残念な気持ちも伝えたいとやってきた。呼び掛けに、このメンバーが集まってくれた。市内でカナダチームが奉仕作業したことは、スポーツマンシップによる素晴らしいパフォーマンスだった」と改めて感謝の気持ちを表した。

 

「釜石に感謝の思いを」と嶋津事務総長

「釜石に感謝の思いを」と嶋津事務総長

 

 この日のボランティア活動には、W杯大会アンバサダーを務めた釜石シーウェイブス(SW)RFCの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー(GM)も協力。嶋津事務総長は「桜庭さんは、復興スタジアムの活用についても話してくれた。釜石がトップリーグに上がるのを待っている」と期待した。

 

釜石SWの桜庭GMも駆け付け、力を発揮

釜石SWの桜庭GMも駆け付け、力を発揮

 

 久保さんは「この家を建てて54年。震災、山火事、今度の水害。あと何にもないといいけど、良いことも悪いこともある。でも、みなさんのおかげで暮らしが戻ります。本当にありがたい」と感謝した。

 

(復興釜石新聞 2019年11月13日発行 第841号より)

 

復興釜石新聞

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仮設スタンドの撤去が進む釜石鵜住居復興スタジアム=6日

仮設スタンド撤去進む、幅広い活用模索〜ラグビーワールドカップ会場となった釜石鵜住居復興スタジアム

仮設スタンドの撤去が進む釜石鵜住居復興スタジアム=6日

仮設スタンドの撤去が進む釜石鵜住居復興スタジアム=6日

 

 2日に閉幕したラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の試合会場となった釜石鵜住居復興スタジアムで、仮設スタンド(約1万300席)の解体撤去作業が進んでいる。6日には、工事業者による作業が報道陣に公開された。今月中には全ての仮設施設が撤去され、常設約6千席のスタジアムとなる。

 

 作業は、台風19号の影響で中止となったナミビア―カナダ戦の翌10月14日に始まった。これまでに大型ビジョンや照明、メディア用に設けたプレハブハウスなどを撤去した。

 

 仮設席もすでに半分以上の撤去が終了。メイン、バックの両スタンドに増設した約3900席分の撤去を終え、現在は両サイドのスタンド(約6400席)解体が行われている。

 

 これら仮設施設の設置・撤去費は約9億3200万円。2年前に釜石市尾崎白浜で発生した山林火災の焼損材を活用した木造座席(6392席)を含む仮設席は当分の間市が管理し、活用策を検討する。

 

 約6千席のスタジアムについても市が所有管理しながら今後の活用策を探るとしているが、W杯終了後すでにサッカー教室や映画の上映会などに利用されている。

 

 市W杯推進本部の新沼司推進監は「大会を通じて世界へ復興支援への感謝や震災の教訓を伝えることができた。海と山が調和した素晴らしい環境にあるスタジアムは世界に評価された。今後は幅広い層に活用してほしい」と期待する。

 

 同スタジアムでは9月25日のフィジー―ウルグアイ戦を約1万4千人が観戦し、世界レベルのプレーに熱狂した。16日にはトップチャレンジ(TC)リーグの釜石シーウェイブス(SW)―コカ・コーラ戦が行われる。

 

(復興釜石新聞 2019年11月9日発行 第840号より)

 

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44日間にわたり日本国内を熱狂させたラグビーW杯。ファンゾーン釜石は子どもらの「感謝」の歌声で幕を開け、フィナーレを飾った

感謝の歌声でフィナーレ、ラグビーワールドカップ閉幕〜ファンゾーンに感動広がる、「釜石の挑戦」今後も

44日間にわたり日本国内を熱狂させたラグビーW杯。ファンゾーン釜石は子どもらの「感謝」の歌声で幕を開け、フィナーレを飾った

44日間にわたり日本国内を熱狂させたラグビーW杯。ファンゾーン釜石は子どもらの「感謝」の歌声で幕を開け、フィナーレを飾った

 

 日本で初めて開かれたラグビーワールドカップ(W杯)は2日、南アフリカの3度目の優勝で幕を閉じた。釜石市も舞台となり、国内がラグビーに熱狂した44日間。最終日のこの日、大町の市民ホールTETTOに設けられたファンゾーンには約3千人が入場。パブリックビュー(PV)が行われ、南アとイングランドが繰り広げる「ラグビー世界一」を懸けた激闘に酔いしれた。グランドフィナーレでは市内の小中学生が「ありがとうの手紙」の歌声を高らかに響かせ、復興支援への感謝の思いを改めて世界に向けて発信した。

 

「世界一」を懸けた南アフリカとイングランドの激闘に拍手を送るラグビーファン

「世界一」を懸けた南アフリカとイングランドの激闘に拍手を送るラグビーファン

 

 釜石のファンゾーンにはこの日、2つの大型スクリーンが設けられた。うち一つは、中継するNHKの協力による超精細の8K放送。360度方向に響く迫力の音声とともに、300インチの大画面に白熱の激闘シーンが映し出され、試合会場にいるような雰囲気が楽しめた。

 

NHKの協力で設置された超精細8K放送の大型画面に映し出された決勝戦

NHKの協力で設置された超精細8K放送の大型画面に映し出された決勝戦

 

 秋田市から家族4人で訪れた会社員平川和人さん(46)は「迫力が全然違う」と画面にくぎ付けとなった。花巻からJR釜石線で「SL銀河」の旅を楽しみ、釜石へ。「にわかラグビーファンの一人ですが、会場のこの盛り上がりには驚いた」と目を丸くした。妻の美衣子さん(43)は「家ではテレビの前で、家族4人でラグビーを楽しんでます」。会場で手渡された楕円(だえん)のボールを手にはしゃぎ回る杏樹さん(6)、悠人ちゃん(2)を笑顔で見守った。

 

「SL銀河」に乗り継ぎ秋田市から訪れた平川さん一家もファンゾーンの熱気を満喫

「SL銀河」に乗り継ぎ秋田市から訪れた平川さん一家もファンゾーンの熱気を満喫

 
 八幡平市の会社員高橋俊二さん(63)は、大会前に釜石鵜住居復興スタジアムを見学。9月25日のフィジー対ウルグアイ戦を観戦し、台風の影響で中止となったナミビア対カナダ戦のチケットも持っていた。この日は、仮設スタンドの撤去が進む復興スタジアムの状況をその目で確かめた上でファンゾーンへ。「決勝戦の臨場感が味わえて良かった。ベスト8まで進んだ日本代表の頑張りがあって、この盛り上がりもある。4年後が楽しみ」。早くも次回の大会へ期待を膨らませた。

 

 釜石のファンゾーンは、市内の小中学生でつくる「かまいし絆会議」の「ありがとう」の歌声で幕を開け、フィナーレも飾った。市によるとファンゾーンの入場者は3万9千人に上り、当初の見込み(1万4千人)の3倍に迫る人が世界レベルのプレーに熱狂した。

 

 決勝戦の表彰式まで見届けた多くの市民を前に、野田武則市長は「みなさんと歴史的な瞬間を楽しむことができた。『サンキュー フロム かまいし!』は感動を世界に発信する言葉になった。釜石の挑戦はこれからも続く」と締めくくった。

 

(復興釜石新聞 2019年11月6日発行 第839号より)

 

復興釜石新聞

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釜石シーウェイブスRFC ホームゲーム2連戦応援企画 釜石・大槌ホテル旅館宿泊割引

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釜石シーウェイブRFC トップチャレンジリーグ2019 ホームゲーム2連戦

11月16日(土)、23日(土)、釜石鵜住居復興スタジアムで開催!
リンク


 

《クラブサポーター会員の割引対象追加》 11/12追記
釜石シーウェイブスのクラブサポーターカード(ゴールド・クリスタル・ファミリー)をご精算時に提示頂くことで、企画の宿泊割引が適用されます。
※電話でのご予約が必要となります。ご予約の際にはクラブサポーター会員である旨、お伝えください。

 

11月15~16 日、11月22~23日日宿泊限定
釜石・大槌ホテル旅館宿泊割引

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※残室のある場合のみの適用となります。

対象ホテル<釜石>

釜石ベイシティホテル

ラグビー応援プラン1泊朝食・土産付¥6,500(税込)

釜石市大町1-8-1 TEL:0193-22-6611

 

ホテルルートイン釜石

シングル1泊朝食付 ¥7,200(税込)

釜石市大町2-5-17 TEL:050-5847-7701

 

ホテルマルエ

数限!朝7時チェックインプラン¥5,500(税込)

釜石市大渡町2-1-10 TEL:0193-24-3911

 

旅館なかむら

シングル1泊朝食付 ¥5,800(税込)
シングル1泊素泊り ¥4,000(税込)

釜石市中妻町2-4-15 TEL:0193-23-7527

 

三陸の宿たかきん

1泊素泊り ¥5,500(税込)

釜石市鈴子町6-8 TEL:0193-22-4559

 

ホテルサンルート釜石

シングル1泊朝食付 ¥6,000(税込)

釜石市大町2-3-3 TEL:0193-24-3311

 

ホテルフォルクローロ三陸釜石

シングル1泊朝食付 ¥7,800(税込)

釜石市鈴子町22-4 TEL:0193-38-5536

 

釜石ステーションホテル

シングル1泊朝食き ¥6,000(税込)

釜石市鈴子町4-1 TEL:0193-22-3070

 

ホテルシーガリアマリン

お問い合わせください

釜石市平田3-61-22 TEL:0193-26-5111

 

対象ホテル<大槌>

わの宿 柿栗館

1泊2食付 ¥8,800(税込)

上閉伊郡大槌町大槌 15-95-274 TEL:0193-27-7711

 

小川旅館

シングル1泊朝食付 ¥7,300(税込)

上閉伊郡大槌町小槌 26-131-1 TEL:0193-42-2628

 

企画

(株)かまいしDMC、釜石旅館ホテル組合、(一社)釜石観光物産協会

スクリーンに再現された洞口孝治、石山次郎選手ら新日鉄釜石ラグビー部V7戦士の勇姿

「北の鉄人」V7の軌跡をもう一度、名場面をスクリーンで再現〜NHK盛岡放送局、全7試合を上映

スクリーンに再現された洞口孝治、石山次郎選手ら新日鉄釜石ラグビー部V7戦士の勇姿

スクリーンに再現された洞口孝治、石山次郎選手ら新日鉄釜石ラグビー部V7戦士の勇姿

 

 V7の軌跡をもう一度――釜石市が「ラグビーのまち」として全国に知られるきっかけになった新日鉄釜石ラグビー部の日本選手権7連覇(V7)の試合を上映するイベントが26、27の両日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。上映会は、ラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催を記念し、かつて「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石ラグビー部が日本一7連覇を達成したすべての試合を見てもらおうとNHK盛岡放送局が全国で初めて開催。客席を埋めた市民らは、スクリーンに再現されるV7の名場面に拍手を送った。

 

釜石PITの客席を埋めた市民らは、V7の名場面に拍手を送る

釜石PITの客席を埋めた市民らは、V7の名場面に拍手を送る

 

 当時の試合の模様を生放送したNHKにはほとんど映像が残っていないことから、千田美智仁さん、金野年明さんらV7メンバーが保存していた録画映像を提供、V7の全試合上映が実現した。

 

 26日にV1(1979年)~V3(81年)の3試合のほか、今年9月に埼玉県内で収録した「日本選手権V7の軌跡トークショー」の模様を上映。27日はV4(82年)~V7(85年)の4試合を上映した。

 

 2日間の最後に上映されたのは85年1月に行われた第22回日本選手権決勝、学生王者同志社大との一戦。6万人の大観衆で埋まった旧国立競技場を舞台に、赤いジャージーの松尾雄治選手が舞うように走り、FWの洞口孝治選手が力強くスクラムを押す。司令塔の松尾選手が「8の字」のサインを出し、ナンバー8千田選手がダメ押しトライを決める名場面もスクリーンに再現された。

 

 震災後まで釜石製鉄所で働いた釜石市平田の佐々木勊さん(72)は「会社の中庭での優勝報告会、まちで行われたV7パレードも見に行った」と振り返る。

 

 タクシードライバーとして松尾選手らV7メンバーを乗せたことがあるという同市八雲町の阿部征三郎さん(77)は「当時の選手の活躍は素晴らしかった」と懐かしんだ。

 

(復興釜石新聞 2019年10月30日発行 第837号より)

 

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釜石SWのコーチからパス回しの基本などを教わるフランスの高校生ら=24日、釜石市球技場

日仏高校生 ラグビー交流、釜石市で合同練習〜フランスの生徒ら「復興へ向かう姿に感動」

釜石SWのコーチからパス回しの基本などを教わるフランスの高校生ら=24日、釜石市球技場

釜石SWのコーチからパス回しの基本などを教わるフランスの高校生ら=24日、釜石市球技場

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)に合わせて来日したフランスの高校生6人が24日、釜石市甲子町の市球技場で地元の高校生とラグビーの合同練習で交流した。フランス南西部のオクシタニー州トゥルーズに拠点を置く日仏文化センターが企画。合同練習を前に震災の被災地を見学した高校生らは「釜石の人たちが震災から復興へと向かう姿に感動した」と口をそろえた。

 

合同練習で汗を流した釜石高、釜石商工高のラグビー部員らと記念撮影

合同練習で汗を流した釜石高、釜石商工高のラグビー部員らと記念撮影

 

 合同練習にはフランスの高校生男女6人と釜石高、釜石商工高のラグビー部員約20人が参加。釜石シーウェイブス(SW)RFCのスコット・ピアースヘッドコーチ、キース・デイビスコーチから指導を受けた。パス回しの技術やラックの動きなどを熱心に教わり、真剣な表情でプレーに取り組んだ。

 

 この日は合同練習を前に、W杯の試合会場となった釜石鵜住居復興スタジアムを見学。震災伝承施設「鵜住居トモス」にも足を運んだ。練習後は鵜住居町の旅館・宝来館で食事会が開かれ、昨年8月の復興スタジアムオープン記念セレモニーで「キックオフ宣言」をした洞口留伊さん(釜石高3年)らと交流を深めた。

 

 17年に日本で開かれたワールドユース交流大会で優勝したチームに所属するバチスト・ロメさん(17)は「コーチの指導は細かく、非常にテクニカルで、新しいことも学べた」と喜ぶ。

 

 フランスのクラブユース大会で優勝を狙うイリアナ・リショームさん(16)は「コーチの指導は基本を思い出させてくれ、ユーモアもあった」。文武両道で、将来は歯科医を目指すという。

 

 フランスの高校生らによる交流事業は今月20日から26日まで。日仏文化センター総務部長のクロード吉田さん(58)と交流を重ねてきた日仏交流サポート事務所(石巻市)の大島公司さん(34)が支援。釜石訪問は、新日鉄釜石ラグビー部のV7メンバーらでつくるスクラム釜石(石山次郎代表)がサポート。同NPO理事の泉秀仁さん(55)が石巻市から同行し、案内役を務めた。

 

 パリで生まれ、高校まで東京で暮らしたクロードさんは、テレビ関係のコーディネートをしたあと、10年前に日仏文化センターを立ち上げた。「ラグビーが盛んなオクシタニー州では日本の存在感が少ない。次回のW杯はフランスで開かれる。日本とフランスをつなげるにはラグビーが一番。今後もフランスと日本の交流の橋渡しに努めたい」と意欲を語った。

 

(復興釜石新聞 2019年10月30日発行 第837号より)

 

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釜石ファンゾーンでも感謝のコール〜奮闘日本 W杯破れる、準々決勝 南アフリカに力及ばず

釜石ファンゾーンでも感謝のコール〜奮闘日本 W杯破れる、準々決勝 南アフリカに力及ばず

日本代表の健闘に感謝のコールを送るファンら

日本代表の健闘に感謝のコールを送るファンら

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)準々決勝が始まった19日、台風19号の影響で一時閉鎖されていた釜石市大町のファンゾーンが再開された。日本―南アフリカ戦が行われた20日、市民ホールTETTOに設けられたファンゾーンは日本代表のユニホームや鉢巻きを着けた大勢のファンで埋まり、パブリックビューで中継される日本代表の奮闘に熱狂。強豪南アに力及ばず3―26で敗れはしたものの、「よくやった」「勇気をありがとー」などと感謝の声が広がった。

 

パブリックビューで中継された熱戦に興奮

パブリックビューで中継された熱戦に興奮

 

ファンゾーンには、台風の影響で釜石での試合が中止となったナミビア、カナダ両チームへのメッセージを書き込める寄せ書きボードも設置。子どもたちも感謝の思いをつづった

ファンゾーンには、台風の影響で釜石での試合が中止となったナミビア、カナダ両チームへのメッセージを書き込める寄せ書きボードも設置。子どもたちも感謝の思いをつづった

 

■日本奮闘も及ばず
 前半は1トライに抑え、3―5と食い下がった。しかし、後半は完全に力負け。南アの圧力に耐え切れず、3PG、2トライを許し差を広げられたままノーサイドとなった。「行けー!」「アーッ」などと絶叫しながら声援を送り続けたファンゾーンのファンも、最後は大きな拍手で日本代表の奮闘をねぎらった。
 
■今後も釜石の力に 
 「ニッポン、さいこー!」。一際大きな声で応援し続けた東京都北区職員の志村匡仁さん(35)は涙目で感謝した。震災後に釜石に派遣され、2年間、ラグビーの振興などを担当。2年前に北区へ戻り、現在は区役所の新庁舎建設計画に携わる。
 9月25日のフィジー―ウルグアイ戦は釜石で観戦。日本―南ア戦のチケットも手に入れたが、「台風被害の中でがんばっている仲間と一緒に応援したい」と釜石に駆け付けた。釜石まつりのみこしかつぎにも参加。「今後も釜石復興の力になりたい」と思いを新たにした。
 
■涙で、ふるえた
 「W杯を通し、いろんな人がこうして釜石を応援してくれる。こんなにありがたいことはありません」。東京の小平市から駆け付けた藤井眞喜子さん(55)は仲間とともに感激をかみしめた。
 東前町の実家が震災で被災し、両親はいま上中島町の復興住宅で暮らす。夫はかつて新日鉄釜石ラグビー部のバックスとして活躍した邦之さん(55)。「仕事で来られない夫の分も」と声を張り上げた。
 9月のフィジー―ウルグアイ戦も観戦し、満員となったスタジアムに興奮。「大会を実現させた釜石の人たちのめげない心、やさしい気持ちに涙が出、ふるえた」という。
 
■ファン大入り
 ファンゾーンにはこの日、5006人が来場。9月25日(5323人)に次ぐ記録となった。

 

(復興釜石新聞 2019年10月23日発行 第835号より)

 

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ウィリアムスさん(右)の指導を受ける釜石中生

元ウェールズ代表 シェーン・ウィリアムスさん、釜石中で交流〜台風被災の釜石サポート、ラグビーのまちに思い寄せる

野田市長を訪ねたウィリアムスさん(中央)

野田市長を訪ねたウィリアムスさん(中央)

 

 開催中のラグビーワールドカップ(W杯)で躍進する英国ウェールズ。かつて代表として活躍し、その後、日本でもプレーした経験のあるシェーン・ウィリアムスさん(42)がW杯PRなどのために来日し、釜石市にも足を延ばした。15日に釜石市役所を訪ね、野田武則市長を表敬。釜石中(川崎一弘校長、生徒304人)では特設ラグビー部の生徒約35人と交流し、スポーツを通した子どもたちの成長や釜石ラグビーの盛り上がりに期待を寄せた。

 

 ウィリアムスさんは2000年に代表デビュー。W杯には03年、07年、11年の3大会出場し通算10トライ。08年には世界最優秀選手に選ばれた。トライ数60は世界歴代3位。12~14年は日本の三菱重工相模原でプレーした。

 

 今回、W杯に合わせて来日したウィリアムスさんは、東日本大震災後の釜石で、ウェールズから届けられたコンテナ収用型救命艇を活用し、水難救助の人材育成事業などが展開されていることを知り、事業を支える同国の団体「アトランティック・パシフィック」を通じて釜石を訪問。市役所を訪れる前に、事業を進める鵜住居町の一般社団法人「根浜MIND(マインド)」(岩崎昭子理事長)などの案内で、根浜海岸での救助体験の様子を見学した。

 

 市役所では野田市長らと懇談。ウィリアムスさんは日本でプレーした際、釜石シーウェイブス(SW)RFCと対戦しており、知人も多い。震災、訪問直前の台風での被害に心を痛め、「サポートしたいとの思いを実現できる機会。スポーツ交流をしたい」と熱望。初めて訪れた釜石の印象について、「プリティー、ラブリー。海、山があり、自然がきれい」と話した。

 

 野田市長はW杯釜石開催の2試合目を中止した苦しい胸の内を明かし、「ラグビーのまちであることへの思いは変わらない。W杯もみんなで応援しながら盛り上げていきたい。ラグビーの楽しさを感じ、釜石から日本を代表する選手が出てほしい。世界との交流の拠点として前に進めるよう、協力を」と期待した。

 

 この後、釜石中を訪れたウィリアムスさんは、特設ラグビー部の練習に参加。パス、タックルなど基本の動き、技術について助言した。

 

ウィリアムスさん(右)の指導を受ける釜石中生

ウィリアムスさん(右)の指導を受ける釜石中生

 

 佐々木翔大君(3年)は「声掛けなどコミュニケーションの大切さを実感。基本をしっかりやることも大事だと分かった。教わったことを忘れない」と感謝した。

 

 同部は、来月開催される県中総体ラグビーフットボール競技大会に出場する。主将の篠原颯汰君(同)は「まず1勝」と控えめ。自身は高校から本格的にラグビーに取り組む考えで、「W杯で活躍している選手のようになりたい」と夢を膨らませた。

 

 子どもたちとの触れ合いを楽しんだウィリアムスさんは「いくつかの助言を少しでも覚え、理解し、成長してもらえたらうれしい」と、温かな視線を残した。

 

 ウィリアムスさんは同日夜、同法人らの歓迎会に出席。16日に釜石を発った。

 

(復興釜石新聞 2019年10月19日発行 第834号より)

 

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サモアを撃破。日本の3連勝が決まると、ファンゾーンを埋めた市民が拍手、バンザイで盛り上がる=5日

ワールドカップ日本、3連勝に沸く〜ファンゾーン釜石「最高!」の興奮

サモアを撃破。日本の3連勝が決まると、ファンゾーンを埋めた市民が拍手、バンザイで盛り上がる=5日

サモアを撃破。日本の3連勝が決まると、ファンゾーンを埋めた市民が拍手、バンザイで盛り上がる=5日

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強入りを目指す日本は5日、愛知県豊田市で行われた第3戦でサモアに38―19で勝利。1次リーグで3連勝を飾り、決勝トーナメント進出に大きく前進した。この日、釜石市大町の市民ホールTETTOに設けられたファンゾーンには2500人余りが詰めかけ、パブリックビューの大型スクリーンに映し出される日本代表の快進撃に酔いしれた。

 

 試合は日本が優勢に進めたものの、後半半ば過ぎまでサモアが1トライ差で追いすがる、じりじりとした展開。終了間際にWTB松島幸太朗がボーナス点獲得を決めるトライを奪うと、ファンゾーンに詰めかけた観客は抱き合って喜び合い、盛り上がりは最高潮に達した。

 

 「もう、最高です!」。W杯開幕後、毎日のように大只越町の自宅からファンゾーンに足を運んでいる及川かおるさん(56)は、周りの人とハイタッチを交わしながら叫んだ。新日鉄釜石ラグビー部が日本一7連覇を達成した当時は「ラグビーって、何?」という程度の高校生だったが、「W杯釜石開催が決まって、目覚めました」。

 

 及川さんは、復興スタジアムが建設された釜石東中の卒業生。実家は箱崎町桑ノ浜にあり、震災の津波で両親を失った。「震災後どうしても行く気になれなかった」という母校の跡地に、先月25日のフィジー対ウルグアイを観戦するため初めて足を踏み入れた。「ここに学校があったんだ…」。満員に膨らんだスタジアムの盛り上がりに感激し、気持ちも吹っ切れたという。

 

 「今はもう、気持ちが前向きになっている。一日一日に感謝です」と及川さん。W杯閉幕までファンゾーンに足を運び続け、最高の雰囲気を存分に味わうつもりだ。

 

 及川さんに誘われ、花巻市から駆け付けたという従兄弟の多田圭治さん(53)も「ラグビーでこんなに盛り上がる、釜石の雰囲気が素晴らしい」と興奮を隠せない。高校時代(黒沢尻工)はラグビー部のFWとして、釜石シーウェイブス(SW)RFCの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー(当時は秋田工)と対戦したこともある。「釜石はW杯を開催する運命にあったんだと思う。市民には賛否両論があったと聞くが、結果的には良かったと思えるのではないか」と成功にエールを送る。

 

 ファンゾーンを運営する市ラグビーワールドカップ推進本部によると、これまでの入場者は2万5千人余りに上る。大会前に見込んでいた最終的な入場者(1万4千人)を、すでに9月28日の時点で突破。日本の快進撃に合わせるように、見込みを大幅に上回る驚異的なペースで入場者数が伸びている。

(写真説明)

 

(復興釜石新聞 2019年10月9日発行 第831号より)

 

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ラグビーワールドカップが釜石にやってきた〜「今日の1日が未来につながる」招致活動関係者 感動の本番

ラグビーワールドカップが釜石にやってきた〜「今日の1日が未来につながる」招致活動関係者 感動の本番

「釜石の夢」が実現したW杯フィジー対ウルグアイ戦

「釜石の夢」が実現したW杯フィジー対ウルグアイ戦

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)が釜石にやってきた。東日本大震災の津波で大きく姿を変えた鵜住居の地に建設された復興スタジアムは、国内外から訪れた約1万4千人の観客で埋まった。絶好の青空が広がる晴れ舞台。対戦するフィジー、ウルグアイを応援する大歓声が沸き上がり、満員のスタンドに応援のウエーブが何度も広がった。感動的なこのシーンを夢見て招致活動に取り組んできた関係者は感激に浸る間もなく、「さあ次の試合だ」と準備に取りかかった。

 

桜庭吉彦さん

 

スタジアムから帰る観戦客と感謝のハイタッチを交わす桜庭吉彦さん(中央)

スタジアムから帰る観戦客と感謝のハイタッチを交わす桜庭吉彦さん(中央)

 

 「イエーイ!」「ありがとー」「サンキュー」――。W杯アンバサダーとして活動する釜石シーウェイブス(SW)RFCゼネラルマネジャーの桜庭吉彦さん(53)は、釜石開催を縁の下で支える会場ボランティアらとともに、スタジアムから出てきた観戦客と感謝のハイタッチを重ねた。

 

 国内外から訪れた1万4025人がスタジアムを埋めた。「こうやって、みんなが笑顔で帰ってくれる。そのことが本当にうれしい」。桜庭さんは涙をこらえながら、この日を迎えた感慨をかみしめた。

 

 新日鉄釜石ラグビー部が日本一7連覇を達成した翌年に入社し、クラブチームへの移行など苦難の時代の主力として活躍した。釜石SWのヘッドコーチも務めるなど、「釜石ラグビー」のDNAを引き継いできた。1986年からラグビー日本代表に選ばれ、キャップ43を獲得。W杯にも3大会に出場した。

 

 この日はあえてスタジアムの外で、会場案内や、おもてなしなどのボランティアに徹した。「きょうの一日が未来につながる。いや、つなげていかねばならない」「手を携え、こんな思いを経験することがW杯のレガシー(遺産)につながっていく」と確信。13日のナミビア対カナダ戦も会場ボランティアとして汗をかくつもりだ。

 

豪快なトライシーンに沸く観戦客

豪快なトライシーンに沸く観戦客

 

大友信彦さん

 

「本当に夢のよう」とスポーツライターの大友信彦さん

「本当に夢のよう」とスポーツライターの大友信彦さん

 

 「本当に夢のよう」。スポーツライターの大友信彦さん(57)はスタジアムの前で、多くの知人とW杯開催実現の握手を交わした。

 

 気仙沼市出身で、スポーツ紙や雑誌などにラグビー記事を多数寄稿する国内有数のラグビーウオッチャー。「釜石ラグビー」の歩みを丹念に刻み続け、震災後は釜石のV7メンバーらと立ち上げた「スクラム釜石」(石山次郎代表)の一員として活動。W杯招致活動を広報面で支えてきた。

 

 2015年には、実現不可能といわれたW杯釜石開催を可能にしたラガーマンや市民の取り組みをまとめた「釜石の夢」(講談社文庫)を出版。福島県から釜石まで自転車で走破する「スクラムライド」にも加わり、被災地が復興へと進む姿を国内外に発信し続けてきた。

 

 「多くの観戦客が訪れたこの光景とスタジアムのとけ込み具合はイメージできていなかった。盛り上がりは想像以上」と大友さん。「W杯に向けた取り組みを通して、子どもたちが大きく成長したことがうれしい。世界中から多くの人がやってくるワクワク感には特別な思いがある」と喜びを膨らませた。

 

片桐浩一さん

 

 「両国の選手がピッチに出てきた瞬間が一番感動した。涙が出そうになりましたよ」。大町で美容店を営む片桐浩一さん(49)はスタジアムに広がる光景をしみじみと見回した。

 

 震災の津波で妻理香子さん(享年31)を失って8年半。スタジアムは、理香子さんが勤務先の幼稚園で命を落とした鵜住居に建設された。W杯招致にも初めは反対だったという。

 

 両国の国歌斉唱のときは複雑な思いも重なり、立ち上がることができなかった。「でも、もう後ろ向きになることはないかもしれない」。天国にいる妻に向かって、そうつぶやいた。

 

(復興釜石新聞 2019年10月2日発行 第829号より)

 

復興釜石新聞

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スタンドは約1万4千人の観客で埋まる

青空に「釜石の夢」かなう、ラグビーワールドカップ第1戦〜世界レベルの白熱戦 ウルグアイ、フィジー破る

激闘を繰り広げるフィジーとウルグアイ=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

激闘を繰り広げるフィジーとウルグアイ=25日、釜石鵜住居復興スタジアム

 

 「釜石の夢」が実現した――。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の釜石第1戦は25日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われ、フィジーとウルグアイが世界レベルの熱戦を展開した。逆転、また逆転の白熱した激闘を繰り広げ、最後はウルグアイが格上のフィジーを破る番狂わせを演じた。新設のスタジアムを埋めた1万4025人の観客は、歴史に残る一戦のドラマチックなストーリーに興奮。さわやかな青空に、大きな歓声が響き渡った。

 

 世界ランキング19位のウルグアイが30―27(前半24―12)の僅差で同10位のフィジーを撃破する波乱の展開。優位とみられていたフィジーは「フィジアンマジック」と称される奔放なパスプレーが思うようにつながらず苦杯をのんだ。

 

 8トライを取り合う白熱の接戦が繰り広げられた。前半7分にフィジーが先制したが、ウルグアイがすかさず逆転。さらに2トライを加え、12点差で折り返す。後半はフィジーが3トライを挙げて猛追したが、ウルグアイが2PGを決め、辛うじて逃げ切った。

 

後半はフィジーが3トライを挙げ、猛烈に追撃

後半はフィジーが3トライを挙げ、猛烈に追撃

 

 スタジアムが建設されたのは、東日本大震災の津波で全壊した釜石東中、鵜住居小があった場所。震災で世界中から寄せられた物心両面の支援へ感謝の思いを発信する舞台として校舎の跡地が選ばれた。

 

 スタジアムが新設されたのは、試合が行われる国内12会場でただ一つ。「ラグビーW杯を釜石で」。かつて日本一7連覇の偉業を達成した新日鉄釜石ラグビー部のOBら多くの関係者が思い描く夢が重なり、震災から復興へと向かうシンボリックな場所で花を開かせた。

 

子どもたちの声援を背に繰り広げられた世界レベルの熱戦

子どもたちの声援を背に繰り広げられた世界レベルの熱戦

 

 試合開始前のセレモニーでは、市内の小中学生の代表が白地に「Thank you for your support ……」と記した感謝の旗を携えて入場。招待された小中学生約2200人がスタンドで立ち上がり、この日のために練習した「ありがとうの手紙」の合唱をスタジアムに響かせた。

 

 上空に航空自衛隊の曲技飛行チーム「ブルーインパルス」の6機が飛来し、W杯釜石初戦に花を添えた。

 

復興スタジアムの上空を飛行する航空自衛隊の「ブルーインパルス」

復興スタジアムの上空を飛行する航空自衛隊の「ブルーインパルス」

 

激闘に「勇気もらった」、スタジアムに弾む「ありがとう」の歌声

 

スタンドは約1万4千人の観客で埋まる

スタンドは約1万4千人の観客で埋まる

 

 福島県相馬市の荒耕陽さん(72)は「同じ被災地でW杯をやると聞き、釜石を応援したくて来た。試合は接戦で最高に面白かった」と大満足。妻美知子さん(70)は「世界中からこれだけの人が集まってくれて感謝。みんなで両チームを応援するラグビーならではの精神が素晴らしい」と興奮冷めやらぬ様子で会場を後にした。

 

 花巻市の中村憲さん(52)は10年ほど前、仕事の関係で家族と共に5年間フィジーに暮らした。一家5人で観戦。「フィジーが負けて残念だけど、見応えのある試合で楽しめた」と子どもらと感動を共有。長男耕太朗君(12)は両チームの激しい攻防に「ドキドキした。倒されてもすぐ起き上がり、次のプレーに入るのがすごい」と勇気をもらった様子。長女綾乃さん(14)は「選手は迫力があったし、応援の人に(フィジーにいたころの)知人に似た人がいて、当時のことが思い出された」と懐かしんだ。

 

「ありがとう」の歌声を響かせた小中学生

「ありがとう」の歌声を響かせた小中学生

 

 全校児童で大声援を送った地元鵜住居小の柏﨑優さん(6年)は「復興スタジアムで世界大会が見られてうれしい。タグラグビーにも生かしたい」と貴重な経験を心に刻んだ。現在、自宅再建を待ちながら仮設住宅で暮らす。W杯を機に「鵜住居がもっと復興して、いい町になってほしい」と願いを込めた。

 

 鵜住居地区復興まちづくり協議会の佐々木憲一郎会長は、インフラ整備など地域の早期復興への効果を見通し、W杯開催を後押ししてきた一人。試合前、市内の小・中学生が高らかに歌声を響かせる姿に「胸がいっぱいになった」。

 

感謝の旗を携え入場する小中学生の代表

感謝の旗を携え入場する小中学生の代表

 

 会場入りの前には、震災犠牲者の芳名が刻まれる「祈りのパーク」で手を合わせた。「亡くなった人たちも『これで良かった』と一緒に楽しんでくれていた気がする。最高の天気は天国からのプレゼント」と青空を仰ぐ佐々木会長。「鵜住居の真の復興はこれからが勝負。広域連携によるスタジアム活用など、次の10年、20年後を見据えた取り組みが不可欠」と声に力がこもった。

 

(復興釜石新聞 2019年9月28日発行 第828号より)

 

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日本代表のユニホームを着たファンも大喜び(

ラグビーワールドカップ2019 待望の開幕〜日本の初戦快勝に興奮

ファンゾーンオープン、世界に届け「ありがとう」の歌声

 

「ありがとうの手紙」の合唱を披露する市内の小中学生

「ありがとうの手紙」の合唱を披露する市内の小中学生

 

 釜石市民が待ちに待ったラグビーワールドカップ(W杯)が20日、開幕した。大町の市民ホールTETTOには、試合の中継映像を大型スクリーンで楽しめるなど、多彩なイベントでW杯を盛り上げる「ファンゾーン」がオープン。市内の小中学生が東日本大震災の復興支援へ感謝の思いを込めた合唱を披露し、開幕を飾った。ファンゾーンは11月2日まで30日間にわたって開設する。入場は無料。

 

W杯開幕を乾杯で祝う釜石SWの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー

W杯開幕を乾杯で祝う釜石SWの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー

 

 ファンゾーンのオープニングセレモニーには市民ら約200人が集まった。市内14小中学校の代表78人が「ありがとうの手紙」を合唱。9カ国語で「ありがとう」と感謝のメッセージを散りばめた歌声をさわやかに披露し、「サンキュー フロム カマイシ」と英語で締めくくった。

 

 市内全小中学校でつくる「かまいし絆会議」の取り組みの一つ。児童生徒が書いた復興支援への感謝の手紙から詞を構成し、合唱曲に仕上げた。4月から各校で練習を進め、この日初めて、各校の代表がそろって本番に臨んだ。

 

 この取り組みのリーダーを務める釜石中3年の小沢大地君は「元気に楽しそうに歌っている姿から復興が進んでいることを感じてもらえれば」と願った。

 

 この合唱は、きょう25日に釜石鵜住居復興スタジアムで行われるフィジー対ウルグアイ戦のキックオフ前にも披露される。

 

 セレモニーでは、東京の開幕式に出席した野田武則市長に代わって山崎秀樹副市長があいさつ。「多くの市民に足を運んでいただき、W杯を存分に楽しみ、国内外から釜石を訪れる多くの人々と交流を深めてほしい」と呼び掛けた。

 

 ファンゾーンでは全48試合を中継映像などで無料観戦できるほか、さまざまなゲストによるトークショーも行われる。情報発信、飲食ブースのほか、ラグビー体験コーナーなども設けられる。

 

大型スクリーンに映し出された松島幸太朗選手のトライシーンに大興奮

大型スクリーンに映し出された松島幸太朗選手のトライシーンに大興奮

 

パブリックビューイング 大盛り上がり

 

ファンゾーンで観戦する市民も日本の開幕戦快勝にバンザイ

ファンゾーンで観戦する市民も日本の開幕戦快勝にバンザイ

 

 釜石など全国12会場で44日間にわたって繰り広げられるラグビーW杯の熱戦がスタートした。東京都の味の素スタジアムで行われた開幕戦で、初の8強入りを狙う日本(世界ランキング10位)はロシア(同20位)を30―10で撃破し、白星発進。大型スクリーンで観戦できる釜石のファンゾーンには市民や熱烈なラグビーファンら921人が詰めかけ、ビールを片手に大声援。日本の快勝に酔いしれ、「釜石でも、この興奮を」と期待を膨らませた。

 

市民ホールのオープンスペースでビールを飲みながら観戦

市民ホールのオープンスペースでビールを飲みながら観戦

 

 日本の勝利が決まると、浜町に住む三浦正文さん(69)はスクリーンに向かって思わずバンザイ。「待ちに待ったW杯も、ようやく本番だよ」と感慨をかみしめた。

 

 東京で長く広告デザイナーとして働き、51歳の時に釜石に帰郷。以来、釜石シーウェイブス(SW)RFCの熱烈なサポーターとして広告ポスターなどの制作を手伝い、スタンドで応援の大漁旗を振り続けている。「一人でテレビ観戦しても、つまらない。こうして、みんなが集まってこそW杯を楽しめる。これから1カ月間、1試合でも多くパブリックビューに足を運びたい」。5度目の挑戦でようやくフィージー対ウルグアイ戦のチケットを手に入れ、きょうはスタンドから声援を送る。

 

 甲子町の会社員新田稔さん(48)は妻佳世子さん(45)、次男壮真君(甲子小4年)、三男壮偉君(中妻こどもの家保育園)と家族そろって日本代表のユニホームを着用し、声援を送った。高校時代にラグビー部で活動した稔さんは「日本も勝ったし、パブリックビュー最高!」と興奮を爆発させた。

 

日本代表のユニホームを着たファンも大喜び(

日本代表のユニホームを着たファンも大喜び

 

 釜石SWからは中野裕太選手(29)ら20人がスクリーンで観戦した。「こうして釜石でW杯を迎えたことに不思議な巡り合わせを感じる」と中野選手。神戸製鋼から移籍して4年目。今季は主将に起用された。「この盛り上がり。遠征で外に出ると、釜石は特別なまちだということを実感させられる」。W杯の興奮を目の当たりにしながら、「プレーヤーとして、釜石で行けるところまでいきたい」と決意を新たにした。

 

(復興釜石新聞 2019年9月25日発行 第827号より)

 

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