期待するまちの将来像を発表する若手社員ら
釜石市内の企業などで働く若手社員を対象とした「私たちがワクワクする働き方セミナー」(ジョブカフェかまいし主催)の最終講座が9日、港町のイオンタウン釜石内にある「しごと・くらしサポートセンター」で開かれた。社会人1~3年目の若者約20人が同年代との対話を通じ未来のまち、自身の姿を考えて発表。普段の働き方や自らの性格を見つめ直す機会にした。
このセミナーは若手社員のキャリア形成支援や主体性の向上、同世代交流、職域を越えたコミュニティーづくりなどを目的に企画された。市内の民間事業所や行政機関など14団体の若手社員・職員ら計22人が参加。「釜石の未来」をテーマに個人やグループワークを行いながら個人の目標設定、望むまちの姿とそのために自分ができることを9月から2回にわたって考えてきた。
「未来の釜石」をテーマに話し合いをする参加者
最終回となる今回は、グループワークでまとめた成果や活動の中で発見したり確信したりした仕事や地域への思いなどを、派遣企業の経営者や人事担当者ら約20人を前に発表した。未来のまちについて、「夢物語」としつつ娯楽・商業施設の整備を語る人がいれば、「きらびやかなものを目指す必要はない」とした上で豊かな自然や地域資源を生かしレジャー、スポーツイベントの充実を提案する声もあった。
話し合いの成果をグループごとに発表した
未来に向けてできることとして共通していたのは、SNS(会員制交流サイト)を使った情報発信。「こういうのが欲しいな―と考え調べてみると、すでに存在していた。情報を知らない人が多く、周知が課題だと感じた。SNS発信は若い世代が得意とする分野。積極的にやっていけば、住みやすいまちになるはず」などと強調した。
最後に、参加者それぞれが「宣言」。与えられた業務をこなすばかりで仕事に対し受け身だったと振り返った女性は「チャレンジをテーマに、できることを考えながら仕事したい」と力を込めた。仕事で注意されることが多く、後ろ向きな気持ちになっていたという若者は「ダメと言われても、やってやる!という気持ちになった」と前向きな姿勢を取り戻した様子。職場と家の往復という生活に視野の狭さを感じていた人は、同じ地域で暮らす多様な人との対話を通して「やっぱり釜石が好きだ」と再認識し、笑顔になった。
言葉を紡ぎながら「釜石が好き」という思いを深めた発表者
未来に向けてできることを書き出してみたり
産業振興釜石事業所(鈴子町)に就職して2年目の平野雅典さん(20)は「目標もやりたいこともなかった。同世代と話し意見を聞いて、ないものを見つけられた」と手応えを実感。趣味の釣りに行ったときは周辺のごみ拾いをして環境美化に協力、職場ではしっかりと仕事を覚え後輩に助言できるようにする―という目標を見いだした。
釜石市地方創生アドバイザーで、女性の就労・キャリア形成支援などに取り組む「Will Lab(ウィル・ラボ)」(東京)代表の小安美和さんの講話も。「やりたいこと(will)」「できること(can)」「なすべきこと(must)」を考える自己理解作業などを紹介し、「自分を知り、対話することが大事。小さいwillでも言葉にすれば道が開ける。長距離の人生を生き抜くため、新しいことを学び続けてほしい」と激励した。
若手社員らの活動を見守り、助言した小安さん(中)
トヨタレンタリース岩手釜石駅前店(鈴子町)の佐々愛佳さん(20)は「まちづくりについて考える過程は、仕事に対するモチベーションUPにつながる」と刺激を受けた。自己理解の手法で、これまでの働き方を見つめ直した様子。「レンタカーを利用するのは市外の方が多い。釜石ラーメンやまちの歴史について聞かれることもある。まちの魅力を発信できるようにしたい」とうなずいた。
セミナーに若手を送り出した企業関係者を交えて意見交換
セミナーで同世代とざっくばらんに語り合い、「気づき」を得た若者たちの表情は明るかった。ジョブカフェかまいしでは今後も、人生そのものとも言える「キャリア」を主体的に考えるきっかけ、業種を超えた緩やかなつながりを促す場づくりを進めていく考えだ。