予定より3カ月遅れで運行を始めたSL銀河。釜石駅には「ようこそ」と横断幕も
新型コロナウイルス感染症の影響で運転を見合わせていたJR釜石線を走る蒸気機関車「SL銀河」(花巻―釜石間、90・2キロ)の今季の運行が18日、予定より3カ月遅れて始まった。全国の都市部を中心にコロナの第2波が広がりを見せる中でスタートしたSLの運行。釜石駅のホームで乗客を迎えた関係者は「多くの観光客に来てもらいたいが、コロナの感染拡大も気になる」と複雑な心境をのぞかせた。
午後3時8分、花巻から4時間半をかけて到着したSL銀河。釜石駅のホームでは、釜石観光物産協会の会員や地元鈴子町内会の女性会員有志でつくる「SLレディース」のメンバーらが「今年も運行ありがとう!」と横断幕を掲げて歓迎。ホームでは郷土芸能「虎舞」が勇壮な舞で迎え、列車から降りた乗客らが盛んにカメラのシャッターを切った。
東京都町田市から息子と2人でSLの旅を楽しんだ金田慧さん(68)は「コロナのことはあまり気にしないで来た。石炭の煙の匂い、SLでのんびりと、いいですね」と笑顔で話す。釜石で泊まり、翌日は三陸鉄道経由でバスに乗り換え、仙台に向かうという。
今季のSL銀河は当初、4月18日に運行を始める予定だったが、コロナ感染症の拡大に応じた政府の緊急事態宣言などを踏まえ見合わせていた。6月19日に都道府県をまたぐ移動の自粛が解除されたことを受け、運行を開始することになった。
週末を中心に8月16日まで運行。コロナ感染症対策として車内の換気頻度を上げるほか、プラネタリウムの営業と図書の貸し出しを休止する。JR東日本盛岡支社によると、運行初日の乗車率は定員(176人)の約8割。運行期間中は約7割の乗車率を見込む。
「汽笛は元気のシンボル」関係者も再出発に期待
かまリンの歓迎も受け、SLの前で記念撮影する親子
翌19日には午前10時58分の釜石駅の出発を、観光物産協会と市の職員らが大漁旗を振って見送り。運行再開を待ちわびた一般市民も多数駆け付け、その雄姿をカメラに収めた。
神奈川県川崎市から訪れた宮本信吾さん(43)、一吾君(7)親子はSL銀河初乗車。「鉄道の地図で知ってから、乗るのをずっと楽しみにしていた。すごく大きくてかっこいい」と一吾君。信吾さんは「再開できて良かったですね。岩手に来る機会はあまりないが、こういう観光列車があると足を運ぶチャンスになる」と話した。前日には釜石駅に隣接するホテルフォルクローロ三陸釜石に宿泊。「11月にも来る予定なので、今度はSL銀河ルームに泊まりたい」と期待を膨らませた。
JR釜石駅の吉田正樹駅長は「やっと動き出した。これを機に、お客さまのためにやれることを少しずつでも進めていきたい。SLの気笛は沿線の元気のシンボル。10月の釜石線全通70周年に向け、このまま勢いづけていければ」と思いを込めた。
(復興釜石新聞 2020年7月25日発行 第896号より)
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