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釜石鵜住居復興スタジアムから届けるエール「ワンチーム!」

輝け!ラグビー日本代表 応援企画「ワンチーム大作戦」 釜石から届けるエール「甲子中ハカ」

釜石鵜住居復興スタジアムから届けるエール「ワンチーム!」

釜石鵜住居復興スタジアムから届けるエール「ワンチーム!」

 

 9月に開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会に出場する日本代表にエールを送るプロジェクト「ONE TEAM(ワンチーム)大作戦」が7日、釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで行われた。甲子中(山蔭深思校長)の3年生(43人)が参加し、「世界で輝けるように頑張って!」などのメッセージを手に必勝を祈願。戦いに挑む人たちを鼓舞する「甲子中ハカ」も披露し、応援機運を高めた。

 

 日本代表オフィシャルスポンサーの三菱地所(東京都)が主催し、ラグビーにゆかりのある場所などでイベントを開いて応援メッセージを集め、動画にして日本代表に届ける企画。ラグビーのまちで、2019年日本大会の開催地でもあり、スタジアムに隣接する「釜石ラグビー神社」を無償譲渡したのが三菱地所といった縁もあり、釜石もエールポイントになった。

  

石ラグビー神社で神事。日本代表の必勝を祈る

釜石ラグビー神社で神事。日本代表の必勝を祈る

   

 この日は、プロジェクトのアンバサダーとして元日本代表で、釜石シーウェイブス(SW)RFCでも活躍した伊藤剛臣さん(52)が駆け付けた。神社で神事を行い、日本代表の勝利を祈願。甲子中の生徒は熱いエールを込めたハカを見せ、伊藤さんに応援メッセージを託した。

  

 阿部海凛(かいり)さんは幼少期からラグビー競技を続けていて、「日本代表は憧れ」と目を輝かす。「ハカは相手チームに敬意を込めるもので、始まりの合図でもある。僕たちのハカを見て『勝つぞ』という気持ちになってもらえたら」と期待。応援メッセージには「bring it on!(ブリング・イット・オン―「かかってこい」の意)」と書き込んだ。「フランス大会が楽しみ。早くトライを見たい。目指せ、ベスト8進出」。気持ちを高ぶらせた。

 

熱いエールを込めた「ハカ」を披露する甲子中の3年生

熱いエールを込めた「ハカ」を披露する甲子中の3年生

 

「頑張れ!」。生徒たちがつづった応援メッセージ

「頑張れ!」。生徒たちがつづった応援メッセージ

 

 「W杯フランス大会の開幕まであと2カ月。わくわくしてきますね」と伊藤さん。中学生とラグビー体験で交流もし、「釜石から日本代表へたくさんのエールをもらった。活躍を願うみんなの気持ちが届くよう一緒に応援して、ラグビーを盛り上げよう。ワンチーム!」と熱かった。

 

「ONE TEAM大作戦」のアンバサダーとして来釜した伊藤剛臣さん(左)、応援団長(右)、甲中生

「ONE TEAM大作戦」のアンバサダーとして来釜した伊藤剛臣さん(左)、応援団長(右)、甲中生

 

 プロジェクトは6月29日に始動。「エールカー」と称したキャラバンカーに乗った応援団長が全国各地を巡っている。北海道と鳥取県を出発し、約1カ月間かけて38都道府県を走行予定。衛星利用測位システム(GPS)を利用し、ルートの軌跡で文字などを描く「GPSアート」にも挑戦中だ。その手法で、列島を巡ったルートを結ぶと、「ONE TEAM」という7文字が浮かび上がるという。ちなみに東北地方に描かれる文字は「A」で、釜石がスタートとなった。

 

 道中で集めるのが、応援の声。うのスタにエールカーが到着すると、地元のファンらが足を運んでメッセージを寄せた。スタジアム見学をしていた久慈中の生徒も「ぜったい優勝」「がんばれ日本」などと言葉を残し、W杯フランス大会へ関心を高めた。

 

エールカーの前に設けられたメッセージを書き込むブース

エールカーの前に設けられたメッセージを書き込むブース

 

久慈市の中学生もメッセージを寄せた。「ファイト!」

久慈市の中学生もメッセージを寄せた。「ファイト!」

 

 三菱地所ラグビーマーケティング室主事の出雲隆佑さん(36)は「ラグビーを起点に人が集まり、19年のような光景をいろんな場所で作っていけたら。日本代表に、あの時の『ワンチーム』をフランスに持って行ってもらえるように」と願う。エールカーの現在地や走行ルートを確認できる特設サイトを用意。「どんどんアクセスを」と関心の裾野が広がることを期待した。

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水泳シーズン到来 釜石市営プール開き 今年は屋外25メートルプールも利用可能に

屋外プール開きで利用者の安全を祈願する関係者=市営プール、8日

屋外プール開きで利用者の安全を祈願する関係者=市営プール、8日

 
 釜石市大平町の市営プールは8日、今夏の屋外プールの利用を開始した。幼児プール周辺の地盤の不具合で、2021年度から利用を休止していた隣接する25メートルプールは、安全性が確認されたことから利用を再開する。幼児プールは引き続き利用不可。屋外2プール(50、25メートル)は9月3日まで開放する予定。
 
 8日は、同プール市指定管理者の協立管理工業(小笠原拓生社長)、釜石水泳協会(山崎達会長)の主催で、利用者の安全を祈る神事が行われた。関係者18人が出席した。尾崎神社(浜町)の佐々木裕基宮司が祝詞を奏上。出席者の代表が玉串をささげ、シーズン中の無事故を祈った。
 
尾崎神社の協力で安全祈願の神事が行われた

尾崎神社の協力で安全祈願の神事が行われた

 
出席者の代表が玉串をささげ、かしわ手を打って祈りをささげた

出席者の代表が玉串をささげ、かしわ手を打って祈りをささげた

 
 市は25メートルプールの利用再開にあたり、幼児プールエリアとの間に仕切り用のフェンスを設置。利用者の立ち入りを制限する。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行した今年は、基本的に利用人数、時間の制限は行わないが、「土日に混雑が予想される場合は利用時間を1時間半でお願いすることもある」と理解を求める。
 
フェンスを設置、幼児プールエリアへの立ち入りを制限して利用を再開する25メートルプール

フェンスを設置、幼児プールエリアへの立ち入りを制限して利用を再開する25メートルプール

 
 指定管理責任者の大久保孝信さんは「水に入る前にきちんとシャワーを浴びるなど衛生面に十分配慮してほしい。事故防止の観点から、水泳指導者がついている時以外は飛び込みは禁止しているので、危険な行為は絶対にしないで」と安全利用を呼び掛ける。
 
 プールは市内小中学校の夏休み期間(7月22日~8月20日)は無休で営業する。期間中は未就学児の利用は無料。学校にプールがない市内の中学生は生徒手帳を提示すれば無料となる。
 
施設の運営、維持管理を担う協立管理工業スタッフ(右下)も今季の利用者回復に期待

施設の運営、維持管理を担う協立管理工業スタッフ(右下)も今季の利用者回復に期待

 
 1970年に開設された同施設は近年、老朽化による度重なる不具合が発生。屋外幼児プール周辺は調査で、地盤の緩みによる陥没の危険性が指摘されたため、一昨年から利用を休止していた。幼児プール再開のめどは立っていない。
 
 同プールの昨年度の利用者数は約2万人(前年度比約7400人減)。新型コロナウイルス感染拡大に伴う休業措置や屋外2プールの利用休止などで、過去3年は2万人台で推移している。

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久しぶりの“声援”を力に8競技で熱戦 釜石大槌地区中総体 コロナ制限なく開催

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

 
 2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会(中総体)は17、18の両日、釜石、大槌、遠野3市町の公共体育施設や学校体育館で行われた。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行後、初の大会。基本的に観戦者の制限は行わず、各会場の感染拡大予防策に準じる形をとった。声出し応援も解禁となり、選手たちは家族や仲間の声援を受けながら、これまでの練習の成果を思う存分発揮した。
 
 本来は9種目の大会だが、サッカーは参加1校のため今回も試合ができず、8種目での開催。ソフトテニスは地区内での会場確保が難しく、遠野運動公園テニスコートを借用して行われた。
 
 卓球は大槌町の城山公園体育館が会場。団体戦男子は4校によるトーナメント戦、女子は2校での決戦となり、シングルス4、ダブルス1で県大会出場の1枠をかけて戦った。個人戦(シングルス)には男女ともに6校から参加があり、トーナメント戦で優勝を競った。2階観客席の座席数の関係で、保護者観戦は選手1人につき2人までとなったが、選手たちは応援に力をもらい全力プレーを見せた。
 
卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

 
 卓球男子団体戦で準優勝となった甲子中の白岩優一朗キャプテン(3年)は「点を取った時とかに拍手をもらうと、やる気がみなぎる。中学最後の大会なので家族も楽しみにしていたと思う」と、過去2年は味わえなかった会場の雰囲気を満喫。「来年は今の2年生に優勝を成し遂げてほしい」と望みを託した。自身は水泳個人(自由形50M、100M)で県大会出場が決まっていて、記録更新へさらなる努力の日々が続く。
 
 バスケットボールは大槌学園体育館で行われた。男子4校はトーナメント戦、女子3校は総当たりのリーグ戦。一昨年の新人戦で県大会初優勝を果たした男子の釜石は選手層が厚く、今大会でも大量得点を重ねて優勝。女子は一昨年の新人戦から連覇を続ける大平が今大会も他校を制し、県大会出場を決めた。
 
バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

 
 大平中女子バスケ部の阿部愛華キャプテン(3年)は「チームは勢いがあり雰囲気もいい。コロナ禍の2年は道具や椅子の消毒に手間を取られるなどプレー以外の負担も大きかった。今年は多くの応援もあって頑張れる」と笑顔。「全員がシュートを入れ、自分たちのプレーをして勝ちたい」と挑んだ結果、望み通り、県大会への切符を手にした。昨年の新人戦県大会はベスト8。「今年はそれ以上を」と意気込んだ。
 
 大会前日の雨の影響で平田公園野球場のグラウンドコンディションが整わず、18日に順延となった軟式野球。少子化による生徒数の減少などで野球は年々、1校単位でチーム編成するのが難しくなっており、2校、3校で合同チームを結成し大会に出場するケースが増えている。今大会は3校ずつ2チームを結成しての対戦(大槌・釜石東・釜石―大平・唐丹・甲子)となった。
 
 試合は3回まで両チーム無得点。4回裏、走者を3塁に進めた「大槌・釜石東・釜石」は先制点のチャンス。「(大会)最後の3年生を絶対にかえす」と、釜石中2年川崎頼仁選手が放った打球はレフト前へ。待望の1点は決勝点となり、最終回で粘りを見せた「大平・唐丹・甲子」を抑え、1-0で県大会出場を決めた。重要な場面でのヒットに川崎選手は「レフト方向は得意なほう。今日はバッチリはまった」と喜びを表した。
 
4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

 
優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

 
 3校25人をキャプテンとして率いた釜石東中3年の小笠原颯真選手は「3校合同って本当に難しいと思うが、練習を重ねるうちにみんな仲良くなってチームとしてまとまることができた」。緊張もあったが、「チャンスでしっかり点を取れた。みんな最後まで諦めず、声を出し合い、メンバー全員で勝ち取った勝利」と胸を張った。チームの県大会目標はベスト8。これまで培ったチームワークでさらなる高みを目指す。
 
県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

 
いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

 
 チームを応援する家族も団結した。1塁側スタンドで太鼓を鳴らしながら熱い声援を送ったのは釜石中など3校の保護者。声を出して応援できる喜びを感じながら、選手たちを精いっぱい鼓舞した。釜石中野球部に兄弟で所属する栗澤琉彗(3年)、虹空(1年)両選手の母美香さん(45)は「どんな形であれ、野球をできることが子どもたちにとっては一番。支えてくれる人たちに感謝して頑張ってほしい」。選手たちの労をねぎらい、県大会での活躍にも期待を寄せた。
 
バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

 
 各競技の地区代表が出場する県中総体は7月15~17日に県内各会場で開催される。
 
2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会成績一覧表

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目指せ!ラグビーアマ代表入り 今秋、仏へ派遣 釜石で選考会 市内外の経験者41人挑戦

釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーアマ代表選考会

釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーアマ代表選考会

  
 9月にフランスで初開催される「ワールドアマチュアラグビーフェスティバル」に、日本代表としてチーム「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」を派遣するラグビー国際交流推進事業実行委員会(小泉嘉明会長)は11日、釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで選手選考会を行った。県内外から経験者41人が参加。体力や技術、コミュニケーション力を確認するミニゲームなどに挑んだ。
  
 同フェスティバルは、同国で開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)に合わせて実施。W杯出場国を中心に20カ国が参加する。会場の一つになっているのが釜石の姉妹都市ディーニュ・レ・バン市で、出場の打診があった。そこで、市や県などで同実行委を組織し、釜石と縁があることなどを条件に選手を公募。全国から47人の応募があった。
 
参加選手たちは実戦形式のミニゲームでアピール

参加選手たちは実戦形式のミニゲームでアピール

  
 この日は、釜石シーウェイブス(SW)の元選手12人を含む19歳から58歳までの経験者が参加。ランニングなどの体力、パスやタックルなどの基本スキル、スクラムやラインアウトなどポジション別スキルを確かめるテストに臨んだ。実戦形式のゲームも行い、連係を確認。「いいよ。ナイス」「ハイ!パス…こっち」などと積極的に声をかけ合いながら、それぞれ強みをアピールした。
 
審査員(写真右下)はさまざまな視点から参加選手の動きを確認した

審査員(写真右下)はさまざまな視点から参加選手の動きを確認した

  
 昨季まで釜石SWでWTB(ウイング)として活躍した同市桜木町の会社員佐々木絃さん(25)は、高校時代の仲間から誘われて応募。「年齢層が広め。それぞれのラグビーがあり、みんなで目指すラグビーの完成度を高められたら、面白いチームになりそう」と、気持ちのいい汗を流した。メンバーに選ばれたら、「海外のアマはインパクトあるプレーが多いイメージ。日本代表としての意地を見せたい」と笑った。
 
「多様な考えを持つ人と作り上げるラグビーは楽しい」と佐々木絃さん(右)

「多様な考えを持つ人と作り上げるラグビーは楽しい」と佐々木絃さん(右)

  
 トップリーグ(当時)に所属したヤマハ発動機ジュビロの選手だった池町信哉さん(34)も挑戦者の一人。東日本大震災直後に釜石SWとの復興祈願試合のために来釜して以来、毎年のようにチームで訪れていた。「ここでプレーするのは特別なこと。そして、記念すべき世界大会の日本代表。選ばれたら、恥じないプレー、釜石ここにありというプレーをしたい」と熱く語った。
  
ラグビー、釜石へ熱い思いを持つ池町信哉さん(右)

ラグビー、釜石へ熱い思いを持つ池町信哉さん(右)

  
 釜石SWの元主将で市スポーツ推進課の佐伯悠主任(38)は、チームスタッフとして選考会をサポート。楽しみながら、本気でプレーする参加者の様子に「初めて会ったのにコミュニケーションをとりながら、しっかりとしたプレーをしていた。大会が楽しみ」と頬を緩めた。限られた時間の中でチームを作り上げる難しさはあるが、「同じ方向を目指し、立ち向かってくれる仲間たち」に期待は上向き。「大会を通じて復興支援への感謝、岩手と釜石のパワーを世界に伝える」と意気込んでいる。
  
選考会を終え、すがすがしい表情の参加者たち

選考会を終え、すがすがしい表情の参加者たち

  
 実行委では今後、書類審査(経験や経歴、釜石への愛、競技への熱意などの評価)と選考会(基礎的な技術力や判断力、適応力、協調性などの評価)を踏まえ、選手27人を選ぶ。コーチやメディカルスタッフらを合わせて選手団は35人となる見通し。メンバー決定後は、うのスタでの合宿なども行って大会に臨む。
 
 

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釜石SW 納会とファン感謝祭で選手、スタッフをねぎらう 今季のMVP選手発表も

釜石SWのファン感謝祭で記念写真に収まる参加者ら=19日夜、市民ホール前広場

釜石SWのファン感謝祭で記念写真に収まる参加者ら=19日夜、市民ホール前広場

 
 釜石シーウェイブス(SW)RFCの今季を締めくくる納会とファン感謝祭は19日、釜石市大町で開かれた。新型コロナウイルス感染症の影響で見合わせていた飲食を伴う感謝イベントを解禁。チーム関係者、スポンサーのほか、一般のファンなども無料で入場できる交流の場が設けられた。来場者はシーズンを終えた選手、スタッフをねぎらい、来季のさらなる活躍を願った。
 
 納会は釜石PITで行われ、選手とスタッフ約60人が参加した。坂下功正総監督は「ディビジョン2(2部)に残れたのは、ここにいるメンバー全員のおかげ。今季は非常に勝てずに苦労した。もう一度気持ちを奮い立たせ、強くなるためにみんなで頑張っていきたい」と話した。
 
 チームのシーズンMVPは、入れ替え戦2試合で2部残留につながるトライを決めたナンバー8サム・ヘンウッド選手(32)。「一番、チームの推進力になった」(坂下総監督)として、入団3年目の活躍をたたえた。
 
納会であいさつする坂下功正総監督(左)シーズンMVPに選ばれたサム・ヘンウッド選手(右)

納会であいさつする坂下功正総監督(左)シーズンMVPに選ばれたサム・ヘンウッド選手(右)

 
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 退団する選手、スタッフには記念品が贈られた。2014年から9年間在籍したCTB菅原祐輝選手(28)は「つらいこともたくさんあったが、素晴らしい仲間に出会えて一緒に共有した時間は私の中で大きな財産」と感謝。16年から7年間プレーし、選手会長も務めたナンバー8中野裕太選手(33)は、残る選手に向けメッセージ。「常に自分にベクトルを向け続けていれば、大変な時も乗り越えられる。自分を評価するのは他人。自分はやれているつもりでも注意されるのは、足りない部分があるから。そういう意識で練習にも取り組んでほしい」と促した。
 
今季で退団する選手、スタッフがチームへの思いを込めあいさつ

今季で退団する選手、スタッフがチームへの思いを込めあいさつ

 
選手会長としてもチームをまとめた中野裕太選手(中央)。残る仲間へ2つのメッセージを送った

選手会長としてもチームをまとめた中野裕太選手(中央)。残る仲間へ2つのメッセージを送った

 
リーグワン2季目を終了した釜石SWの選手、スタッフら

リーグワン2季目を終了した釜石SWの選手、スタッフら

 
 納会後のファン感謝祭は市民ホールTETTOのホール前広場で開かれた。約200人が参加。桜庭吉彦ゼネラルマネジャーが「地元の声援が本当に力になり、選手を奮い立たせてくれた。来年こそ、皆さまと共にうのスタで勝利を味わいたい」とあいさつ。小野航大主将の発声で乾杯した。
 
 乾杯し、シーズン中の労をねぎらい合う参加者ら

乾杯し、シーズン中の労をねぎらい合う参加者ら

 
 来場者は選手、スタッフらと言葉を交わしたり記念撮影をしたりし、久しぶりの対面交流を楽しんだ。会場内にはホーム戦でも出店したキッチンカーが並んだ。選手やスタッフが使用したウェアなどを格安で販売するガレージセールやチームグッズの販売も。選手らもリラックスした表情で談笑し、長いシーズンの疲れを癒やした。
 
選手との記念撮影で楽しい思い出づくり!

選手との記念撮影で楽しい思い出づくり!

 
こちらは家族ぐるみで記念の一枚。交流の輪が広がる感謝祭

こちらは家族ぐるみで記念の一枚。交流の輪が広がる感謝祭

 
選手、スタッフ実使用のトレーニングウェアなどが並んだガレージセール

選手、スタッフ実使用のトレーニングウェアなどが並んだガレージセール

 
 市内の公務員阿部帆歌さん(19)は「2部残留が決まって良かった。SWは応援したくなるいいチーム。来シーズンも頑張ってほしい」と期待。会社員の綿貫雅俊さん(38)は初めての感謝祭に「オープンな雰囲気で交流でき貴重な機会」と笑顔。選手のジャージーも複数ゲットし、「みんなの努力の証し。自分もチームとの一体感を味わえそう。ラグビーだけでなく仕事も頑張っている姿にこちらも力をもらっている」と声を弾ませた。
 
 会場ではチームの公式サイトで行ったファン選出MVPの発表も行われた。投票総数256件。5位から順に名前が呼ばれると会場は大盛り上がり。堂々の1位にはSO中村良真選手(28)が輝いた。正確なゴールキックなどでチームに貢献。投票者からは「キックの精度が大きく上がった」「シーズン終盤の踏ん張りどころでのゲームメークが素晴らしかった」などの声があり、努力する姿勢や人間性もファンを魅了した。中村選手は「非常にうれしい。唯一の心残りはうのスタで勝利できなかったこと。来シーズンは必ず皆さんとともに勝利したい」と意気込んだ。
 
ファン投票のMVPに選ばれ、仲間から祝福される中村良真選手(中央)。金一封を贈られ、笑顔で喜びを語った(左下写真)

ファン投票のMVPに選ばれ、仲間から祝福される中村良真選手(中央)。金一封を贈られ、笑顔で喜びを語った(左下写真)

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女子ラグビー柏木那月選手(釜石出身) 豪州リーグ参戦、経験報告 成長と活躍期す

野田武則市長(左から3人目)に海外リーグでの収穫を報告した柏木那月選手(同4人目)ら

野田武則市長(左から3人目)に海外リーグでの収穫を報告した柏木那月選手(同4人目)ら

  
 釜石市出身の女子ラグビー選手・柏木那月さん(24)=東京山九フェニックス、釜石商工高―日体大=は今春、豪州の海外リーグに初参戦した。期限付きの在籍で、活動期間を終えて里帰り中の18日に市役所を訪問。「短期間だったが、日本では体感できないプレースタイルを肌で感じ、成長できる機会になった」などと、野田武則市長らに報告した。
  
「恥じないプレーでチームに貢献しようと思った」。海外リーグ初参戦への思いを語った

「恥じないプレーでチームに貢献しようと思った」。海外リーグ初参戦への思いを語った

  
 柏木選手は2月中旬から5月上旬までの約3カ月間、豪州でプレー。強豪が集うリーグ「スーパーW」のウェスタンフォースに所属しFW第1列として、全5試合にフル出場した。チームは6チーム中5位だったが、「スクラムの重さ、パワーが違う。体格で不足している分を細かなスキルで補えるよう考えたり、力で負けないよう低い姿勢でのタックルを意識したり、さまざまな学びを得て成長できた」と充実感をにじませた。
  
 言葉は通じずとも「ラグビーは世界共通。海外の文化も教えてもらいながら、楽しく過ごせた」と表情は明るい。こうした貴重な経験が刺激となり、さらなるレベルアップを期す。目指すは、日本代表。「体づくりに専念し、15人制のシーズンが始まるころにはもっと強い自分になりたい」と意気込んだ。
   
「エンジョイラグビー」を続ける柏木選手(左)を見守る父・斉さん

「エンジョイラグビー」を続ける柏木選手(左)を見守る父・斉さん

   
 同行した父斉さん(58)によると、今回の海外行きは豪州チームからのオファーを受けたもので、「ラグビーのまち釜石で育ち、ひたむきに取り組んできたから。そして、いろんな人たちの協力、支えがあってこそ」と手応えを感じていた。フェニックスは2月の全国女子選手権(15人制)で優勝。柏木選手は決勝にフッカーで先発し勝利に貢献し、そうした実力が評価されて機会を得た。自信に満ちたまな娘を優しく見つめ、「エンジョイラグビーを続けて」と願った。
  
 兄2人がラグビーに励んでいたり、斉さんが釜石シーウェイブスRFCジュニアのコーチだったこともあり、小学3年生でラグビーを始めた柏木選手。ジュニア、高校時代を知る同ジュニア校の大畑勇校長(68)も同席し、「木登りして落ちたり、活発な子だった。試合では鼻血を出しながらも続けたりと負けん気も強く、ガッツがある。明るく、みんなに愛されるキャラも魅力」と強調。大槌町出身の平野恵里子選手(アザレア・セブン、釜石高―日体大)に続く「日本代表に」と期待を高めていて、「なっちゃんの活躍でジュニアも盛り上がる」と見守っていた。
   
 野田市長は「まさにこれから。海外での実績を糧に活躍し、ラグビーのまち釜石を発信してほしい」とエールを送った。
    
古里からの応援も力に、さらなる活躍を誓う柏木選手

古里からの応援も力に、さらなる活躍を誓う柏木選手

   
 古里で顔なじみの人たちと触れ合いながら、リフレッシュした柏木選手。ラグビーを頑張る後輩たちに「最後まで諦めないことが大切。つらかったり、けがに悩まされたり、うまくいかない時期があってもトレーニングに励んでいれば、誰かが見ていてくれる」と助言を残す。東日本大震災後は深刻な被災状況を見て、ラグビーをやめることも考えたというが、当時のSW選手が支援物資の配布を手伝うなど地元のために力を尽くす姿を目にし、「自分も頑張って地域に笑顔を届けられたら」と発起。それが今につながっていて、「岩手で女子ラグビーを広げていけるよう、もっと活躍して恩返ししたい。釜石にも女子チームができれば」と思いを巡らせていた。
 
 

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ラグビー釜石SW 2部残留決める 入れ替え戦で昭島に1勝1分け

引き分けに持ち込んだ釜石SWの入れ替え戦第1戦(対昭島)=6日、釜石鵜住居復興スタジアム

引き分けに持ち込んだ釜石SWの入れ替え戦第1戦(対昭島)=6日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部4位の釜石シーウェイブス(SW)RFC は6、13の両日、3部3位のクリタウォーターガッシュ昭島との入れ替え戦に臨み、1勝1分け勝ち点6で2部残留を決めた。6日の釜石鵜住居復興スタジアムでのホーム戦で引き分け。望みをつないでいたが、13日のパロマ瑞穂ラグビー場(名古屋市)での第2戦で勝利を収め、来季も2部で戦うことが決まった。
 
 6日は今季最後のホーム戦。985人の観客が駆け付けた。降雨の中での試合開始となり、ハンドリングエラーなどのミスが目立った釜石は前半、昭島に2トライを許し3-18で折り返した。後半、釜石は序盤に4人を入れ替え、流れを変えようとするも、昭島の強いスクラムなどで押さえ込まれた。19点差で後半残り15分。釜石は26分、FBキャメロン・ベイリーのチーム初トライを機に攻撃の勢いを取り戻した。33分には後半出場のフッカー隈本浩太がトライを決め18-25、7点差に詰め寄った。ロスタイムに入ってからもゴール前で粘り強く攻め続け、最後はナンバー8サム・ヘンウッドが密集の中で押し込んだ。SO落和史のゴールキックで25-25。引き分けに持ち込んだ。
 
後半26分、キャメロン・ベイリーが飛び出し独走。この日チーム初トライを決め、観客が沸いた

後半26分、キャメロン・ベイリーが飛び出し独走。この日チーム初トライを決め、観客が沸いた
 
後半45分、ラストプレーでサム・ヘンウッドがトライ。落和史のゴールで同点に追い付いた

後半45分、ラストプレーでサム・ヘンウッドがトライ。落和史のゴールで同点に追い付いた

 
 課題のスクラム、ラインアウトの修正に取り組み臨んだ1週間後の第2戦。釜石は前半4分にWTB阿部竜二のトライで先制すると、17分にロック、ベンジャミン・ニーニー、19分にSH南篤志がトライを決め、25-7のリードで折り返した。後半は昭島の猛攻で3トライを奪われ追い上げられたが、ナンバー8サム・ヘンウッドのトライ、PG2本で得点を重ね、38-28で勝利をもぎとった。
 
 釜石SWはレギュラーシーズン2勝8敗(1試合は不戦勝、5位)、4、5位順位決定戦1勝(4位)、2、3部入れ替え戦1勝1分けで、リーグワン2季目を終えた。19日に市民ホールTETTOホール前広場でファン感謝祭が予定される。
 
第1戦後、両チームの選手を拍手でねぎらう観客

第1戦後、両チームの選手を拍手でねぎらう観客

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アマチュアラグビー世界大会(フランス)へ、選手求む!「いわて釜石クラブ」派遣

アマ大会への選手派遣に向け発足したラグビー国際交流推進事業実行委=11日、釜石PIT

アマ大会への選手派遣に向け発足したラグビー国際交流推進事業実行委=11日、釜石PIT

  
 2019年9月、釜石市も舞台となったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会。あれから4年、あの熱戦が今年、フランスで繰り広げられる。そして同時期に、釜石の国際姉妹都市ディーニュ・レ・バン市を中心としたプロバンス地方でもう一つの戦い「第1回ワールドアマチュアラグビーフェスティバル」が開催される。市は岩手・釜石チームの派遣に向け、4月11日にラグビー国際交流推進事業実行委員会を発足。17日には日本代表チームとして戦いに挑む選手の公募を始めた。
  
 フェスティバルは9月23~30日に開かれる。同8日に開幕するラグビーW杯の出場国と同じ20チームが出場する。ディーニュ市から出場の打診があり、交流促進やW杯のレガシー(遺産)継承、「ラグビー県いわて」「ラグビーのまち釜石」の発信につながると期待を込め、選手の派遣を決めた。
  
スポーツを通じた国際交流の可能性について認識を共有した実行委=11日、釜石PIT

スポーツを通じた国際交流の可能性について認識を共有した実行委=11日、釜石PIT

  
 実行委は、派遣を機にスポーツを通じた国際交流の活発化とそれを生かしたまちづくりの推進が目的。11日に大町の釜石PITで開かれた設立・第1回総会には、実行委を構成する県や市、ラグビー関係団体などの担当者約20人が参加した。会則や事業計画・収支予算などを審議、原案通り承認した。
  
 参加者から、他チームのレベルや選手の経験値についての質問、情報収集の必要性を強調する意見などがあった。会長に選ばれたラグビーのまち釜石推進協議会の小泉喜明会長(77)は「W杯日本大会後も取り組んできたラグビー振興や頑張りを発信できたら。明るく平和的な場を設けられるのはいいことで、和気あいあいと交流してほしい」と期待を込めた。
  
 総会の様子を見守った野田武則市長は「W杯で発信した釜石ラグビーのレガシーを継承していきたい。派遣する選手は岩手・釜石の代表だが、日本代表でもある。全国に取り組みを発信し、応援してもらいながらラグビーの素晴らしさ、国際交流の大切さを訴えられたら。時間はないが準備を進め、成功させたい」と協力を求めた。
  
「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」への参加を呼びかける釜石市スポーツ推進課の佐伯悠さん=17日、シープラザ釜石

「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」への参加を呼びかける釜石市スポーツ推進課の佐伯悠さん=17日、シープラザ釜石

   
 チーム名は「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」。コーチやトレーナーを含め30人程度を公募する。選手の応募条件は、▽成人男性(高校生を除く)▽ラグビー経験者▽①釜石市民②釜石市出身者③釜石市にゆかりのある人④岩手県内在住者のいずれかを満たすこと―など。渡航費などを含め15万円程度の個人負担が必要となる。市ホームページから応募用紙をダウンロードし、記入して市国際交流課に持参か郵送、またはメール送信で申し込む。締め切りは5月22日。問い合わせは同課(電話0193・27・5713)へ。

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高校ラグビー強豪12チーム W杯聖地釜石・うのスタで交流試合 震災講話で防災も学ぶ  

全国から高校ラグビーの強豪校が集った交流会=2日、釜石鵜住居復興スタジアム

全国から高校ラグビーの強豪校が集った交流会=2日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 全国のラグビー強豪校が参加した東北復興高校ラグビー交流会(同実行委主催)は1日から3日間、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムと根浜シーサイド天然芝広場で開かれた。常翔学園(大阪府)、東福岡(福岡県)、桐蔭学園(神奈川県)など、全国大会で名を知られた12チームが“ラグビーのまち釜石”に集結。約350人が試合や防災学習を通じて交流を深めた。
 
 2019年に開かれたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場の一つとなった同スタジアム。大会レガシーを継承し、ラグビー振興や震災復興の一助にと企画された交流会は当初20年に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で断念。感染症の規制緩和が図られた今年、常翔学園ラグビー部の野上友一ゼネラルマネジャーの各校への声掛けで再び開催機運が高まり、地元釜石のラグビー関係者とともに3年越しの実現にこぎ着けた。
 
桐蔭学園(神奈川県、緑ジャージ)と福島県高校合同チームの試合

桐蔭学園(神奈川県、緑ジャージ)と福島県高校合同チームの試合

 
黒沢尻工業(岩手県、黒赤しまジャージ)―常翔学園(大阪府)=2日、根浜シーサイド

黒沢尻工業(岩手県、黒赤しまジャージ)―常翔学園(大阪府)=2日、根浜シーサイド

 
 1、2の両日はできるだけ多くのチームと試合ができるよう、20分1本の対戦カードが組まれた。最終3日は、2日間の試合で選出されたベスト選手30人によるエキシビジョンマッチが行われた。各校の選手らはコロナ禍で他県チームとの試合機会が減っていただけに、本交流会は新年度のチーム作りに向け、自他の力を知るいい機会になった。
 
 滞在中は、防災学習にも取り組んだ。学校ごとに東日本大震災の犠牲者の芳名が掲げられる「釜石祈りのパーク」や震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を訪問。2日は同スタジアムに全参加者が集まり、未来館スタッフの川崎杏樹さん(26)から話を聞いた。川崎さんは震災前、同スタジアムの場所にあった釜石東中の卒業生で、2年時に震災を経験。隣接していた鵜住居小の児童と大津波から逃れた避難行動について話し、防災への備えの大切さを伝えた。
 
大津波から逃れた川崎杏樹さんの話を聞く参加者

大津波から逃れた川崎杏樹さんの話を聞く参加者

 
スタジアムの場所にあった釜石東中、鵜住居小の校舎は高台造成地に新築され(写真奥)、2017年に仮設校舎から移った

スタジアムの場所にあった釜石東中、鵜住居小の校舎は高台造成地に新築され(写真奥)、2017年に仮設校舎から移った

 
 東福岡高の内田陽太朗さん(3年)は初めて訪れた同スタジアムに「とても素晴らしいグラウンド。W杯選手がプレーした場所で試合ができてうれしい」と笑顔。同校は1月、全国高校ラグビー大会で7回目の優勝に輝いた。3月の全国選抜大会は準優勝。チームは「リベンジに向け燃えている」と、本交流会もレベルアップへの好機とした。内田さんは震災の話を聞き、被災地の悲しみに共感。家庭では災害時の避難場所や方法を家族で話し合い、非常持ち出し袋も準備しているといい、「これを機にさらに防災意識を高めたい」と話した。
 
東北からは仙台育英学園(写真:黄黒ジャージ)、秋田工業、青森山田も参加

東北からは仙台育英学園(写真:黄黒ジャージ)、秋田工業、青森山田も参加

 
対常翔学園戦でトライを決める仙台育英学園

対常翔学園戦でトライを決める仙台育英学園

 
 参加者の中には釜石市出身者の姿も。釜石中から仙台育英学園に進んだ及川勝太さん(3年)は地元での交流機会を喜び、「全国大会トップ4のチームとも対戦できた。体を当ててみて常翔学園とかの強度の高さを実感。この冬の花園に向けて全国で勝てるチームになっていけたら」と刺激を受けた様子。長年抱いてきた花園出場の夢を糧に「地元の人たちに自分のプレーしている姿を見てもらえるよう、もっと頑張らねば」と精進を誓った。
 
釜石市出身、仙台育英学園3年のCTB及川勝太さん(左)。父勝加さん(右)は釜石シーウェイブスジュニアの指導者

釜石市出身、仙台育英学園3年のCTB及川勝太さん(左)。父勝加さん(右)は釜石シーウェイブスジュニアの指導者

 
 実行委員長を務めた釜石市ラグビーフットボール協会の小笠原順一会長(63)は「全国からこれだけの強豪校が来てくれて感動している。今年はラグビーW杯(フランス大会)もあるので、もう一度地元のラグビー熱が高まれば」と期待。交流会の継続開催も見据え、「地元高校の合同チームの参加も実現できれば。これを機に釜石へのラグビー合宿誘致にも取り組んでいきたい」と夢を描いた。

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釜石SW レギュラーシーズン最終戦も勝利ならず 4月22日の順位決定戦は再び江東と

今季2回目の対戦「釜石SW―江東」=19日

今季2回目の対戦「釜石SW―江東」=19日

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブス(SW)RFCは19日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで清水建設江東ブルーシャークスと対戦し、26―35(前半14―22)で敗れた。26日の日野レッドドルフィンズ戦が相手の不祥事で不戦勝となったため、2勝8敗勝ち点9(5位)でレギュラーシーズンを終えた。4月22日の4~5位順位決定戦で再び江東と対戦する。
 
 ホームでの今季勝利をかける釜石、実戦での初勝利を目指す江東。先制したのは釜石だった。前半2分、けがから復帰し3試合目の出場となったCTBヘルダス・ファンデルボルトが今季初トライ(ゴール成功)。チームを勢いづけるも、その後はディフェンスミスなどで江東に3トライを許した。釜石の追加点は33分。敵陣ラインアウトを起点に、ファンデルボルトが力強い突破で22メートルまで運び、すぐさま右に展開。外側に1人余す余裕で最後はフルバック片岡領が決めた(ゴール成功)。
 
前半2分、先制トライを決めるヘルダス・ファンデルボルト(中央)

前半2分、先制トライを決めるヘルダス・ファンデルボルト(中央)

 
前半33分、片岡領(左)が抜け出しSW2本目のトライ。7点差に詰め寄る

前半33分、片岡領(左)が抜け出しSW2本目のトライ。7点差に詰め寄る

 
片岡領のナイストライに喜びの大漁旗がはためく

片岡領のナイストライに喜びの大漁旗がはためく

 
 8点差で追う釜石は後半、継続したアタックは見せるもハンドリングエラーなど大事な場面でのミスが出て、なかなかトライまで持ち込めない。江東のPG、トライでさらに点差を広げられた。25分以降、8選手を入れ替え。33分には敵陣5メートル手前のスクラムから粘り強く攻め続け、フランカー河野良太が相手の隙を突いてトライ。39分には途中出場のフランカー、セタ・コロイタマナのトライ(ゴール成功)で追い上げたが、差は埋められず、26-35で敗れた。
 
後半33分、河野良太(手前)のトライで追加点

後半33分、河野良太(手前)のトライで追加点

 
 試合後の記者会見。「細かいミスとペナルティーで崩してしまった印象。取り急いでしまった」とWTB小野航大主将。ディフェンスがうまくいかなかった要因として「ゲインラインを越えられ、ネガティブなフェーズになってからのタックルが多かった。接点でもっと戦わないといけない」と修正点を見据えた。
 
 レギュラーシーズンを終え、須田康夫ヘッドコーチは「昨季よりトライ数、得点能力は飛躍的に改善したが、ディフェンスはまだ課題が残る。最終的にどこで取り返し、どう取り切るかという部分で、プレー選択の明確な意図が必要」と総括。順位決定戦で勝利して1つ順位を上げ、3部との入れ替え戦に臨めるよう、1カ月間しっかり準備を進めていくことを誓った。

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釜石SW 首位・浦安に19-92 震災被災地での特別な試合 無念の大敗 次こそホーム勝利を

リーグワン2部第8節 釜石SW-浦安=12日

リーグワン2部第8節 釜石SW-浦安=12日

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブス(SW)RFCは12日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで浦安D-Rocksと対戦。19-92(前半0―45)で敗れた。1勝7敗、勝ち点5で最下位。レギュラーシーズン最終戦は19日、同スタジアムで清水建設江東ブルーシャークスと対戦する。
 
 全勝でリーグ首位の浦安に必死で食らいついたが、猛攻を止めることができなかった。釜石は前後半で14トライ(認定を含む)を奪われ、今季最多の92失点。相手選手の個々のスキルの高さ、戦術のうまさに何度もディフェンスを突破され、スタンドからため息がもれた。前半、敵陣ゴール近くまで切り込む場面もあったが、ボールをキープできず、得点には至らなかった。
 
 釜石の反撃は後半5分。敵陣22メートル付近の攻防から今季新加入のフランカー武者大輔、SOジョシュア・スタンダーとつなぎ、フェイントで走り抜き初トライ。27分には、後半出場のSH村上陽平が的確な判断でゴール前まで運び、最後はロック、ベンジャミン・ニーニーが決めた。浦安も攻撃の手を緩めず、点差が開く中、釜石は試合終了間際に意地の1トライをもぎ取った。
 
後半5分、ジョシュア・スタンダーのトライで釜石SW初得点

後半5分、ジョシュア・スタンダーのトライで釜石SW初得点

 
敵陣ゴール前に切り込み、2本目のトライにつなげた村上陽平(中央)

敵陣ゴール前に切り込み、2本目のトライにつなげた村上陽平(中央)

 
試合終了間際、左隅インゴールに飛び込んだキャメロン・ベイリー(右)

試合終了間際、左隅インゴールに飛び込んだキャメロン・ベイリー(右)

 
 「特別な日に特別な場所でプレーする」意義-。東日本大震災から12年となった日の翌日。被災した小中学校跡地にできた希望のスタジアム。「勇気を届けよう」と強い思いを持って臨んだ一戦だったが、結果は大差での敗戦。WTB小野航大主将は「ここで後ろ向きな姿は見せたくないという思いがあったので…。情けない」と目を赤らめた。レギュラー最終戦は1週間後。下を向いてはいられない。「今日のゲームから何を感じ、どう変われるか。この先が重要」と前を見据えた。
 
試合前には選手、観客らが東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた

試合前には選手、観客らが東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた

 
 この日の試合は、スポーツツーリズムを通じて地域経済の活性化に貢献する「一枚岩プロジェクト」と協働。首都圏からの観戦ツアー、スポーツによる地方創生をテーマにしたオンラインシンポジウムなどが行われた。試合前には、釜石市出身のアーティスト小林覚さんがプロジェクトにまつわる言葉を織り込んで制作したアート作品のお披露目もあった。来場者は1208人。
 
小林覚さんの作品お披露目(撮影:西条佳泰 / Grafica Inc.)

小林覚さんの作品お披露目(撮影:西条佳泰 / Grafica Inc.)

 
 釜石高生徒による震災伝承活動も行われた。生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」の17人が活動。施設内に建つ震災の教訓を伝える祈念碑の前では、2年生4人が語り部として自らの経験などを伝えた。
 
 この日が語り部デビューの久保陽嘩さん。保育園での昼寝の最中、大地震に見舞われた。迎えに来た親と避難し、寒い車の中で一夜を明かした。海岸部の自宅では逃げ遅れた祖母が津波にのまれたが、幸い助かることができた。小中学校では地震発生時の行動を学んだ。最近は大人の率先行動が見られないことに違和感を覚えるという。「皆さん、災害の恐ろしさを忘れていませんか?」。こう呼びかけた久保さん。「災害は忘れたころにやってくる。災害は待ってくれない」。自分や大事な人の命を守るために「今できることはたくさんある」と備えの大切さを訴えた。
 
自身の体験を基に災害への備えを呼び掛けた久保陽嘩さん(右)。多くの人が足を止め聞き入った

自身の体験を基に災害への備えを呼び掛けた久保陽嘩さん(右)。多くの人が足を止め聞き入った

 
 「もっと、こうしていれば」「詰めが甘かったのかな」―。震災後、大人たちから聞く言葉に久保さんは「防災はやりすぎがちょうどいいと思う。同じ釜石でも被災の有無で意識の差がある。災害があったことを忘れないでほしい」と願った。
 
震災の教訓を伝える石碑の前で行われた「夢団」による語り部活動

震災の教訓を伝える石碑の前で行われた「夢団」による語り部活動

 
防災食班は自分たちで考えたストック食品のレシピなどを紹介

防災食班は自分たちで考えたストック食品のレシピなどを紹介

 
 夢団は本年度、防災食の研究にも取り組む。会場では、常温保存食品を日常的にストックして災害時にも応用する方法や簡単アレンジレシピを紹介。秋山瑠奈さん(1年)は「災害時には食料が足りなくなる。備えが大事。日常食の活用法なども参考にしてほしい」と願った。

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釜石SW 愛知に38-44で惜敗 1部昇格なくなる 残り2戦でホーム白星狙う

釜石SWホーム3連戦始まる。5日は豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦

釜石SWホーム3連戦始まる。5日は豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦

 
 NTTジャパンラグビーリーグワン2部の釜石シーウェイブス(SW)RFCは5日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで豊田自動織機シャトルズ愛知と対戦。38-44(前半18-31)で敗れ、1部昇格条件の3位以内への可能性がなくなった。後半に一時逆転し、今季初のホーム戦勝利に期待が高まったが、あと一歩及ばず6点差で涙をのんだ。1勝6敗、勝ち点5でリーグ最下位の6位。次節は12日、同スタジアムで首位の浦安D-Rocksと対戦する。
 
 前半早々、釜石は愛知に2トライを許すも12分、敵陣ラインアウトからボールをキープ。中央付近から左に展開し、タッチライン際でキャッチしたWTB小野航大主将がインゴールに持ち込んだ。いい流れをつかんだ釜石は25分にPGを決めた直後、自陣での攻防からフランカー河野良太が抜け出し、ナンバー8サム・ヘンウッドにパス。一気に敵陣5メートルまで運び、最後はロック、ベンジャミン・ニーニーがトライ(ゴール成功)、15-19とした。その後、愛知2トライ、釜石1PGで18-31。13点差で前半を折り返した。
 
タッチラインぎりぎりでボールを受け、インゴールに走り込む小野主将(右)=前半12分

タッチラインぎりぎりでボールを受け、インゴールに走り込む小野主将(右)=前半12分

 
河野のパスを受け独走。敵陣5メートルまで切り込んだヘンウッド(手前右から2人目)

河野のパスを受け独走。敵陣5メートルまで切り込んだヘンウッド(手前右から2人目)

 
前半26分、ニーニーのトライ(左側)。後半4分にも2本目を決め、点差を縮める(右白枠内)

前半26分、ニーニーのトライ(左側)。後半4分にも2本目を決め、点差を縮める(右白枠内)

 
 後半開始直後は釜石が猛攻。4分、左サイドから長短のパスでつなぎ、右ゴール目前でWTB阿部竜二が後方に走り込んだニーニーに託し、後半初得点(ゴール成功)。ニーニーの2本目に会場が沸いた。PGでさらに詰め寄ると13分、敵陣22メートルスクラムからヘンウッドが自ら持ち出しサイドアタック。33-31と逆転した。18分に愛知がトライで再逆転。22分には、後半出場のSO中村良真の左インゴールへのキックを小野主将が押さえ、この日2本目のトライ。38-38の同点に戻した。釜石は残り10分でPGを2本決められ、ホーム初勝利を逃した。
 
スクラムから右サイドアタックで逆転トライを決めたヘンウッド(中央)=後半13分

スクラムから右サイドアタックで逆転トライを決めたヘンウッド(中央)=後半13分

 
 昨年12月以来、約2カ月ぶりのホーム戦はマスク着用の声出し応援が可能に。コロナの制限緩和で、会場には久しぶりの選手を鼓舞する掛け声が響いた。入場観客数は約830人。釜石、大槌両市町の小中学生が無料観戦できるパスポートで入場した佐伯晃君(甲子小4年)は「惜しくも負けて残念。でも試合は面白かったし、SWの選手はかっこ良かった」と憧れのまなざしを向けた。
 
 SWの稲田壮一郎選手と同じ職場の菊池唯さん(41)は「今回はいけるんじゃないかと思っていたが、惜しかったですね。でも僅差の試合は魅力的。稲田選手の出場も見られて良かった」と笑顔。地元で試合観戦できる環境も喜び、「また来ます。SW選手には残り2試合、体に気を付けて頑張ってほしい」とエールを送った。
 
青空の下、観客は久しぶりのホームでの試合を楽しんだ

青空の下、観客は久しぶりのホームでの試合を楽しんだ

 
大漁旗をなびかせ、選手の奮闘をたたえるバックスタンド席の観客

大漁旗をなびかせ、選手の奮闘をたたえるバックスタンド席の観客

 
 1月の愛知との1戦目は14-64の大差で敗れた釜石。上位を争う2チームとの対戦を経て臨んだ今回は、ディフェンスの粘りや外への素早い展開など確実な成長を感じさせた。一方で、試合立ち上がりの失点は引き続きの課題。
 
 須田康夫ヘッドコーチ(HC)は「優勢にゲームを進めることはできていたが、悔やまれるプレーがいくつか。一人一人の規律、プレーの精度が必要」。小野主将も「細かいエラーが勝ち切れなかった要因。短い期間で修正できれば次の2戦、勝つチャンスはある」とみる。トップ3の目標には届かないが、レギュラーシーズン残り2試合もホームで全力を尽くす。「目標の方向性を修正し、自分たちのベストを見せたい」と須田HC。次節の試合は、発生から12年となる東日本大震災命日の翌日。小野主将は「ここで、このチームでプレーする意味を今一度チーム内で共有し、皆さんを勇気づけられるゲームをしたい」と意気込む。