救命艇の乗船体験を楽しむ子どもたち=6日
釜石市にも夏がやって来た。16日に海開きした鵜住居町の根浜海岸海水浴場では家族連れらが思い思いにマリンレジャーを楽しんでいる。身近にあって、暑い日に「涼」を感じられる海だが、気を付けなければいけないのが水難事故。唐丹町の唐丹中(八木稔和校長、生徒20人)は6日に同海岸で救助体験学習を行い、いざという時に身を守るすべを確認した。海水浴場の開設は8月14日まで(午前10時~午後4時)。事前の備えをしつつ、水遊びを思い切り楽しんでたくさんの思い出をつくろう。
中学生、身近な海で起こりうる危険への対処法学ぶ
転落者に見立てた人形をすくい上げる唐丹中の生徒=6日
唐丹中の水難救助体験学習は6日、同海岸で行われ、全生徒が参加。講師は地元の一般社団法人「根浜MIND(マインド)」のメンバーが務めた。同法人では、東日本大震災の復興支援で根浜地区を訪れた英国の団体から2016年に贈られた救命艇を使い、夏場を中心に子どもを対象にした海の安全教室や同海岸海水浴場の開設期間中の監視活動などを行っている。
岩崎理事長(右)の話に耳を傾ける生徒たち=6日
同法人の岩崎昭子理事長(66)から救命艇が贈られた経緯などの説明を受けた後、生徒たちは救命艇に順番に乗船。転落者に見立てた人形を発見したら、▽目を離さず指差し▽ゆっくり近づいてすくい上げる―という救助の流れを体験した。
岩澤優真君(3年)は「船が揺れる中、溺れている人を見逃さないよう、目を離さないようにしなければいけないのが難しい」と実感。英国では民間による水難救助活動(ボランティア)が活発に行われていることを知り、「将来、携われたらいいな」と夢を膨らませた。
救助用のロープを投げる練習も=6日
もしもの時を想定した浮き身の方法を体験する「浮いて待て」では、生徒数人が服を着た状態で海に入り、全身の力を抜いて手足を広げてあおむけに浮く背浮きに挑戦。岸壁にいる他の生徒たちは、助けを待つ友達に救助用のロープを投げて救い出した。
救助される役となった高橋愛里さん(3年)は「今回はライフジャケットを着用していたから楽に浮くことができた。何もないときは焦ってしまうと思うが、体験することで、いざという時に思い出せる」と知識を深めた。
救助体験を通じ交流した唐丹中の生徒と根浜マインドのメンバーら=6日
釜石版復興教育「いのちの教育」の一環。同校では保健体育の中で、AED(自動体外式除細動器)や応急手当、水の事故対応について学んでいる。今回は救命艇に体験乗船することで海の怖さや楽しさ、水難救助の大切さを知ってもらうのが目的。最後に海岸のごみ拾いを行い、廃棄プラスチックによる海洋汚染の実態を確認する機会にもした。
海開き前に砂浜でごみ拾いし環境保全に協力=6日
砂浜再生 2年目の海開き
根浜海岸の海水浴場は16日に海開き。悪天候のため、シーズン中の安全を祈願する神事は中止、海遊びイベントは延期。岩崎理事長は「ワクワクする根浜を楽しんでもらえるよう、地域で盛り上げていきたい」と笑顔を見せる。
東日本大震災の津波で失われた砂浜の再生工事を終え全面開放となって2年目の夏。同法人事務局長の佐々木雄治さん(66)は「砂浜あっての根浜海岸。松林も特徴で、長年親しんだ風景が戻ってうれしい。震災後、『海が怖い』という人もいるが、正しい知識と安全マナーを守れば、安心安全で楽しい場所。多くの人に楽しんでもらえたら」と夏場の客足に期待を込めた。