タグ別アーカイブ: 防災・安全

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

災害時の備えに 釜石に工場立地のSMC、可搬式蓄電池などを釜石市に寄贈

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

災害時に使用可能な蓄電池などを贈ったSMC釜石工場の関係者(右)ら

 

 空気圧機器メーカーSMC(東京都千代田区、高田芳樹社長)は2日、災害の備えとして、釜石市にポータブル太陽光パネルと蓄電池などをセットで贈った。市は市役所本庁舎や、市役所が使えなくなった場合に代替施設として使用する予定の小佐野コミュニティ会館などに配備する。

 

 同社は1991年に市の誘致企業として工場の操業を開始。現在、第5工場を建設中で、三陸沿岸地域の産業と雇用を支える企業となっている。2009年には市と「災害時における応急対策用資機材の調達、応急対策要員確保の要請に関する協定」を締結。▽災害発生時に同社が備蓄している食品や防災資機材の提供▽全国から寄せられる救援物資の受け入れ、仕分けを担う要員の確保-などで災害対策を後押しする。今回の寄贈は社会貢献活動の一環。

 

 同社釜石事業所釜石工場の浦島勝樹工場長ら4人が市役所を訪問。野田武則市長に蓄電池などを手渡した浦島工場長は「東日本大震災の時、真っ暗闇の中で一昼夜過ごした経験があった。今後そういうことがないよう、明かりのあるところで過ごしてもらいたいと考えた。災害時の使用が前提だが、普段から地域のイベントなどで活用してもらえれば」と思いを伝えた。

 

寄贈した蓄電池などを前に、野田市長(左)と懇談する浦島工場長(中)ら

寄贈した蓄電池などを前に、野田市長(左)と懇談する浦島工場長(中)ら

 

 贈られたのは、持ち運びができる小型の蓄電池「ポータブル電源」と折り畳み式のソーラーパネルが各5台、延長ケーブルは5本。蓄電池はソーラーパネルを使うと約13時間でフル充電でき、たまった電力でスマートフォンなら約35回分の充電が可能だという。

 

 震災の経験から電気の大切さを痛感する野田市長。今年1月に南太平洋・トンガ沖の海底火山噴火で発生した津波では釜石市にも津波警報が発令されたが、「冬の夜」だったこともあり、避難した人が少なかった―と振り返り、「積極的な避難行動に結び付くよう環境を整える必要がある。十分な資機材を備蓄できていない中、寄贈はありがたい。寒さや暗さにためらうことなく安心して避難できる体制、必要な時に使える体制を構築したい」と感謝した。

防災広報ステッカーを貼った車両を見送り=3月1日、釜石市只越町・釜石郵便局

春の山火事防止へ 郵便・宅配業者と連携 釜石郵便局で出発式

防災広報ステッカーを貼った車両を見送り=3月1日、釜石市只越町・釜石郵便局

防災広報ステッカーを貼った車両を見送り=3月1日、釜石市只越町・釜石郵便局

 

 3月1日からスタートした山火事防止運動(5月末まで)に合わせ、県沿岸広域振興局(森達也局長)と郵便・宅配事業者が連携する啓発活動の出発式が釜石市只越町の釜石郵便局(川村博幸局長)で行われた。「山火事注意」のステッカーを掲示した配達車両が関係者に見送られて出発。地域を走りながら住民らに山火事予防、火の取り扱いに関する注意を促す。

 

 森局長は「(配達車など貨物輸送車両は)住民の目に触れ、山火事防止の啓発に効果がある」と期待。日本郵便岩手県東部地区連絡会の菊池浩康地区統括局長(遠野市・綾織郵便局長)は「しっかりと取り組む。今後も地域の安全安心、住民生活のサポートを追求したい」と力を込めた。

 

 県と郵便局、宅配事業者がそれぞれ結ぶ包括連携協定に基づく取り組み。昨年は釜石地区(2市町)で実施したが、2年目の今年は沿岸振興局管内全域(9市町村)に広げる。郵便局(釜石、大船渡、陸前高田、宮古、岩泉郵便局)94台、ヤマト運輸(釜石、大船渡、陸前高田、宮古、久慈営業所)83台、佐川急便(釜石、大船渡、三陸営業所)44台の計221台(昨年46台)を投入。ステッカー(縦10センチ、横30センチ)はシール式で、赤地に白い文字が書かれている。

 

「山火事注意」ステッカー渡し、佐川急便に協力依頼

 

ステッカーを手にする佐川急便の関係者と森局長(右)=2月24日、釜石市新町・釜石地区合同庁舎

ステッカーを手にする佐川急便の関係者と森局長(右)=2月24日、釜石市新町・釜石地区合同庁舎

 

 佐川急便には運動開始前の2月24日、ステッカーが託された。新町の釜石地区合同庁舎を訪れ、森局長からステッカーを受け取った同社北東北支店(盛岡市)の田口淳子副支店長は「視線を感じる取り組みで、従業員の意識、サービス向上につながる。山火事ゼロとなるよう協力したい」と意気込みを伝えた。

 

山火事 原因の多くは「人為的」 見える注意啓発が一番の手段

 

ステッカーやチラシで山火事防止を呼び掛ける沿岸広域振興局職員

ステッカーやチラシで山火事防止を呼び掛ける沿岸広域振興局職員

 

 県内では昨年26件の山火事が発生し、約7割が3~5月に集中。雪解けが終わり、空気の乾燥や強風の時季に加え、下草が生える時期でもあり、わずかな火元から大規模な林野火災になる恐れがある。例年、山火事の原因は野焼きやたき火、たばこの不始末などによる「人為的」なものが約7割を占めることから、屋外での火の取り扱いは細心の注意が必要だ。

 

 沿岸振興局農林部によると、管内の山火事発生件数は2017年が11件(焼失面積416・88ヘクタール)で、同年5月には釜石市の尾崎半島で山林約413ヘクタールを焼失した。18年は7件(同46・45ヘクタール)、19年が10件(同3・47ヘクタール)、20年5件(同1・81ヘクタール)。同種事業者が山火事防止の啓発活動に協力するという全国で初めての取り組みを展開した昨年は4件、1・65ヘクタールで、ここ数年では件数、面積とも最小だった。

 

 1人ひとりの山火事防止意識の向上が求められ、同部担当者らは「注意啓発が一番の手段」と強調する。同種事業者らによる「目に留まる」取り組みは注意喚起の呼び掛けになり、協力車両と従業員は防火監視という役割も期待される。

震災復興への貢献で釜石市から感謝状を受けた市内団体の代表ら(前列)

震災復興支援に感謝 釜石市が市内79非営利団体に感謝状贈呈

震災復興への貢献で釜石市から感謝状を受けた市内団体の代表ら(前列)

震災復興への貢献で釜石市から感謝状を受けた市内団体の代表ら(前列)

 

 釜石市は18日、「東日本大震災復興支援感謝のつどい」を市内のホテルで開き、復興推進に貢献した地域の非営利団体に感謝状を贈った。これまでの復興の歩みを振り返り、今後の支援の在り方を考える意見交換も行われ、会場の模様はユーチューブチャンネルで生配信された。収録映像は3月31日まで配信される。

 

 新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、出席者を約20人に制限して開催。感謝状を贈呈する市内79団体のうち5団体の代表が出席し、野田武則市長から感謝状を受け取った。震災直後からボランティアの受け入れや支援活動のコーディネート、被災住民の心のケアなどに取り組んできた各団体。野田市長は「行政だけでは手が届かない部分に尽力してくれたおかげで、ここまで復興が成し遂げられた」と労をねぎらい、市民を代表して感謝の気持ちを伝えた。

 

釜石市社会福祉協議会など5団体に感謝状を贈呈(写真右は社協の丸木久忠会長)

釜石市社会福祉協議会など5団体に感謝状を贈呈(写真右は社協の丸木久忠会長)

 

復興10年の歩みを振り返り、今後の支援の在り方を考えた意見交換会

復興10年の歩みを振り返り、今後の支援の在り方を考えた意見交換会

 

 映像で同市の復興の歩みを振り返った後、5団体の代表と市の幹部職員らが意見交換。支援活動の内容やこの10年で感じたことを共有し、今後の支援について意見を交わした。

 

 釜石市社会福祉協議会によると、同社協が震災直後から開設したボランティアセンターを通じて活動した人は延べ約9万2千人(2020年度末まで)。菊池亮地域福祉課長は、同市におけるボランティア精神の根付きに確かな手応えを実感。丸木久忠会長は震災復興支援を機に、愛知県東海市や東京都荒川区の社協と災害時相互支援協定を結んだことを挙げ、平時の交流促進にも期待を寄せた。

 

 アットマークリアスNPOサポートセンターは、国際NGOなど外部の支援者と地元支援団体をつなぐ役割を担ったほか、市民の協力を得て仮設住宅の見守り活動を行った。川原康信事務局長は「外部支援の受け入れでは、地域の事情を知る地元組織が中間的役割を担うことでトラブル回避につながる」と話した。

 

震災後の支援活動で感じたことを話す市内団体の代表ら

震災後の支援活動で感じたことを話す市内団体の代表ら

 

野田武則市長と市幹部職員らが各団体の話に耳を傾けた

野田武則市長と市幹部職員らが各団体の話に耳を傾けた

 

 釜石支援センター望は仮設、復興住宅でのサロン活動やイベント開催で、住民のコミュニティー形成を後押ししてきた。ここ数年の課題として挙げたのは「支援者の高齢化」。活動を支えるボランティアは今後、減少が見込まれ、担い手不足が懸念される。海老原祐治センター長は「今までのボランティア活動は被災地が作った1つのレガシー(遺産)。これからも続けていけるしくみを市と協力して考えていければ」と願った。

 

 カリタス釜石はカトリック釜石教会(大只越町)を拠点に、ボランティアの受け入れやお茶っこサロンの開設などを行った。道又譲理事は「ボランティアで釜石に来た人たちからまた行きたいとの声をいただく。コロナが収まったら、復興した釜石に来てほしい」とし、まちの魅力発信など新たな形の活動を模索する。

 

 NPOおはこざき市民会議は、箱崎半島部8漁村集落の復興を目的に設立。ハード、ソフト両面の課題解決に取り組んできた。漁業体験、海産物を生かした特産品開発、郷土料理講習会などを継続し、水産業の振興、地域活性化につなげる。佐藤啓太理事長は「漁業体験が海の仕事への関心を高め、将来の担い手育成にもつながっていけば」と期待する。

 

震災から10年が経過し、今後の支援活動はどうあるべきかについても意見を交わした

震災から10年が経過し、今後の支援活動はどうあるべきかについても意見を交わした

 

 各団体が釜石の支援活動の特長としたのが「行政と民間の連携」。市社協は「市のさまざまな部署と情報交換を密にすることで支援ニーズを把握できた」、支援センター望は「行政と社協、各団体の協働が“釜石モデル”として注目されている」とし、これらの経験を未来に生かすことを望んだ。

 

 「コロナ禍で外出機会が減り、心身が衰えてしまう人が多い」との指摘も。今後は被災地域以外にも目を向け、住民の健康づくり、コミュニティー再構築などに取り組んでいく必要があるとの認識も示された。

竹灯籠の明かりで浮かび上がる根浜の避難階段。上り口には市指定避難場所への距離を示す看板も

震災の教訓 竹灯籠をともした避難階段で共有 3・11に向け根浜で点灯開始

竹灯籠の明かりで浮かび上がる根浜の避難階段。上り口には市指定避難場所への距離を示す看板も

竹灯籠の明かりで浮かび上がる根浜の避難階段。上り口には市指定避難場所への距離を示す看板も

 

 東日本大震災命日まで1カ月となった12日、釜石市鵜住居町根浜地区に追悼と防災への願いが込められた竹灯籠が設置された。灯籠の明かりが照らすのは根浜シーサイドキャンプ場と高台の市道箱崎半島線をつなぐ避難階段。市民らが手作りした50個の灯籠が“命を守る道”を教える。命日の3月11日まで、毎週土日祝日と11日当日、午後5時から同7時まで点灯する。

 

 12日は午後5時に点灯式を実施。灯籠を製作した親子らが見守る中、地元町内会「根浜親交会」の前川昭七会長が発電機のスイッチを押した。LED電球でともす灯籠が111段の階段を夕闇に浮かび上がらせると、集まった人たちがさっそく高台避難を体験。海抜20メートルの市道に続く階段を上った。

 

灯籠点灯後、避難階段を上り下りしてみる来場者

灯籠点灯後、避難階段を上り下りしてみる来場者

 

 竹灯籠の設置は、キャンプ場など一帯の観光施設を管理するかまいしDMC(河東英宜社長)が発案。震災犠牲者を追悼し、昨春完成した同階段を周知する目的で初めて取り組んだ。1月に市民らを対象とした製作体験会を実施。長さ約1メートルの青竹に電動ドリルで穴を開けて模様を施し、明かりが漏れるよう細工した。発電には、地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料を用い、環境に配慮する。

 

体験会参加者らが手作りした竹灯籠。温かな光が階段を包む

体験会参加者らが手作りした竹灯籠。温かな光が階段を包む

 

辺りが暗くなると一層美しい光景が広がり、子どもたちは目を輝かせた

辺りが暗くなると一層美しい光景が広がり、子どもたちは目を輝かせた

 

 友人と足を運んだ藤原朱莉(あかり)さん(鵜住居小2年)は「手作りとは思えないほど、すごくきれい」と感激。「身近な所に避難できる場所があると安心。地震や津波の時は自分たちで早く行動できるように頑張りたい」と心構えを強くする。

 

 市内を代表する海水浴場・根浜海岸を有する同地区は、震災の津波で壊滅的な被害を受け、住民は新たに造成された高台の団地に移転。集落跡地にはキャンプ場や多目的広場が整備され、年間を通してレジャー客やスポーツ合宿の利用者などが訪れる。夏場には同海岸でトライアスロンやオープンウォータースイミングの大会も開かれるため、有事の際は高台避難が必須。キャンプ場から直接駆け上がれる階段が設置されたことで避難経路が増え、より安全で迅速な避難が可能となった。

 

キャンプ場(画面上部の明かりが点在する場所)から最短距離で高台避難が可能

キャンプ場(画面上部の明かりが点在する場所)から最短距離で高台避難が可能

 

竹灯籠には震災犠牲者への思い、未来の命を守りたいとの願いが込められる 

竹灯籠には震災犠牲者への思い、未来の命を守りたいとの願いが込められる 

 

 未曽有の大災害から間もなく11年―。同親交会の佐々木雄治事務局長(66)は震災の風化が進んでいく現実を憂慮。「津波はいつどこで遭遇するか分からない。警報、注意報が出たら、とにかく高い所に避難するという基本を再度確認してほしい」と願う。避難意識啓発にもつなげる今回の取り組み。「この階段をキャンプ場利用者だけではなく、広く多くの人に知ってもらいたい。日ごろから複数の避難ルートを確認しておくことも大事」と呼び掛ける。

津波時の避難経路を確認しながら急坂を上る家族

競わずとも津波避難行動を確認 コロナ禍の「韋駄天競走」形を変えて実施

津波時の避難経路を確認しながら急坂を上る家族

津波時の避難経路を確認しながら急坂を上る家族

 

 津波発生時の迅速な高台避難を啓発する釜石市の「新春韋駄天(いだてん)競走」。東日本大震災の教訓をつなぐ節分行事として、2014年から開催されてきたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大を考慮し、例年のレース形式を取りやめ、任意参加による避難訓練として実施した。震災から間もなく11年―。記憶の風化が進み、災害への危機意識の低下が懸念される中、参加者は防災への心構えをあらためて胸に刻んだ。

 

 同行事は大只越町の日蓮宗仙寿院(芝﨑惠應住職)が主催。只越町の津波浸水区域から高台の同寺まで286メートル、高低差約26メートルのコースを駆け上がる。年代などで分けた6部門で開催し、各部の1位には「福男」「福女」「福少年」「福親子」の称号が与えられる。

 

仙寿院境内までの道のりは走っても歩いてもOK。各自のペースで駆け上がる

仙寿院境内までの道のりは走っても歩いてもOK。各自のペースで駆け上がる

 

 9回目の今年も6日の開催に向け準備を進めてきたが、新型コロナ感染拡大に伴う県独自の緊急事態宣言が出され、運営スタッフの確保も難しくなったことから、例年の形式を断念。コースをたどって津波避難場所の同寺まで上がってきた人たちに記念品を手渡す形をとった。米(3合)、同寺のお守りストラップなどに加え、避難啓発のメッセージを記した参加証も贈った。

 

主催者から参加証と記念品を贈呈。文書で津波避難の意識啓発を呼び掛けた

主催者から参加証と記念品を贈呈。文書で津波避難の意識啓発を呼び掛けた

 

願いを書き入れた人形を坂の絵に貼り付ける親子

願いを書き入れた人形を坂の絵に貼り付ける親子

 

 人形(ひとがた)に「コロナ退散」など各自の願いを書き込み、ボードに貼ってもらう試みも。毎年実施してきた海に向かっての黙とうも呼び掛けた。趣旨に賛同し、境内に足を運んだのは46人(うち30人が当初の競走エントリー者)。親子での参加が目立ち、震災後に生まれた子どもたちに教訓を伝えようとする姿勢が見られた。

 

 大只越町の菅原丙午さん(46)は長男一慧君(4)誕生後、親子参加を続ける。「まだ分からないだろうが、今のうちから(避難を)経験させたい」。自宅は津波被害を免れたが、高台から見る住居が減ったまちの光景に複雑な思いをのぞかせる。「コロナに気を取られ、震災のことも忘れがちになっているが、こういう機会を捉え、子どもに繰り返し教えていければ」と願う。

 

 陸前高田市の金野円香さん(34)は職場が釜石という縁で、長女凛愛(るな)さん(11)、長男優真君(10)を連れて初めて参加。凛愛さんは高台避難の大変さを実感し、「1人だとちょっと怖いけど、いざという時は今日の体験を思い出して避難したい」。災害時の避難場所は家族で確認し、家の中の普段から目につく所に掲示。円香さんは「とにかく高い所に逃げることを覚えていてほしい。『防災グッズも準備しないとね』と話しているところ」と家族間で意識の共有を図る。

 

親子3世代で参加する姿も。震災の教訓を確実につなぐ

親子3世代で参加する姿も。震災の教訓を確実につなぐ

 

昨年生まれたばかりの赤ちゃんもお母さんに抱かれ避難体験!この日は1位のたすきをかけての記念撮影も楽しんだ

昨年生まれたばかりの赤ちゃんもお母さんに抱かれ避難体験!この日は1位のたすきをかけての記念撮影も楽しんだ

 

 行事を発案し、運営母体として活動する「釜石応援団ARAMAGI Heart(あらまぎハート)」の下村達志さん(46)は「本来の目的は、競走ではなく避難意識を促すこと。コロナ禍でもできることを考えた。目的は少なからず果たせたと思う」。来年以降の通常開催実現を祈りつつ、「この1年の間にも災害があるかもしれない。その時にはしっかりと避難できるよう意識だけは持ち続けてほしい」と呼び掛ける。

竹灯籠作り体験=1月30日・根浜レストハウス

3・11追悼、防災の思い新たに 市民手作りの竹灯籠を根浜の避難階段へ

竹灯籠作り体験=1月30日・根浜レストハウス

竹灯籠作り体験=1月30日・根浜レストハウス

 

 東日本大震災から間もなく11年―。震災の津波で大きな被害を受けた釜石市鵜住居町根浜地区で、犠牲者の追悼と防災への願いを込めた竹灯籠を避難階段に設置する準備が進む。根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」を管理するかまいしDMC(河東英宜社長)が企画。1月29、30の両日、敷地内のレストハウスで市民向け製作体験会が開かれた。完成した竹灯籠は2月12日に点灯式を行い、震災命日の3月11日までの間、毎週土・日曜、祝日と11日当日、午後5時から同7時までともされる。

 

竹灯籠をともす避難階段(111段)。両側の手すり沿いに設置する

竹灯籠をともす避難階段(111段)。両側の手すり沿いに設置する

 

 竹灯籠は、同施設キャンプ場と高台の市道箱崎半島線をつなぐ避難階段に計46本ともす予定。箱崎町仮宿の住民から寄付された直径10センチ弱の青竹約10本を切り分けて製作。体験会には家族連れなど、2日間で約50人が参加した。取り組んだのは、明かりが漏れるよう竹に穴を開ける作業。模様が描かれた型紙を竹に貼り、電動ドリルの刃を替えながら大きさの違う穴を開けた。持ち帰り用に丈の短い灯籠も作った。

 

スタッフから電動ドリルの扱い方を学ぶ親子

スタッフから電動ドリルの扱い方を学ぶ親子

 

どんな模様になるのかな?お母さんの作業に興味津々の女の子

どんな模様になるのかな?お母さんの作業に興味津々の女の子

 

 平田の福士大成君(8)は家族5人で参加。「ドリルで穴を開ける時の手に伝わる振動がすごく面白い」と夢中。「3・11」や自分の名前も上手に刻んだ。生まれる前に起こった大震災。学校の防災授業や祖母らの話を聞いて、その悲しみや教訓を心にとどめてきた。「自分の命は自分で守り、できれば他の人の命も守りたい」と大成君。母親の優さん(38)は「3・11が近づくと子どもの方から震災のことを聞いてくる。小さいころから復興の様子を少しずつ見ていた。意識してくれているのかな」。大成君が自ら刻んだ「3・11」の文字を感慨深げに見つめた。

 

「3・11」への思いを込め、熱心に作業する福士大成君(中央)

 「3・11」への思いを込め、熱心に作業する福士大成君(中央)

 

家族で参加した福士さん一家。出来上がった灯籠を手に記念の一枚!

家族で参加した福士さん一家。出来上がった灯籠を手に記念の一枚!

 

 観光施設は、被災住民が高台移転した後の集落跡地に整備。キャンプ場のほか天然芝の広場や大型駐車場を備え、2019年8月にオープンした。これまで地震や津波発生時の避難経路は、車両通行が可能な生活道路と近くの神社境内から市道に上がる2ルートだったが、昨春、キャンプ場から直接駆け上がれる避難階段が整備された。

 

 かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さん(根浜・箱白地域マネジャー)は「キャンプ場が満区画になると、100人近くがここにいることになる。迅速に避難できる階段を皆さんに知ってもらえたら。3・11に向け、変わらない追悼の思いを共有しながら、防災への意識を高める機会にしたい」と話す。

 

避難階段に設置する竹灯籠。点灯式は2月12日(土)午後5時~

避難階段に設置する竹灯籠。点灯式は2月12日(土)午後5時~

 

 竹灯籠の明かりはLED豆電球を使用。電力は地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料で発電。二酸化炭素を排出しない環境にやさしい燃料で、脱炭素社会実現への願いも発信する。

防火帽をかぶって気分は消防士。消防車両の見学も楽しんだ

釜石消防署、園児に防災教室 命を守る動作をカードゲームで楽しく

災害が起こった時に身を守る動作をカードゲームで学ぶ子どもたち

災害が起こった時に身を守る動作をカードゲームで学ぶ子どもたち

 

 釜石市天神町のかまいしこども園(藤原けいと園長、園児80人)で19日、釜石消防署による防災教室が開かれた。年長児約20人が参加。カードゲームなどを通じて災害が起きた際の適切な行動などを学んだ。

 

 同署予防係の6人が講師を務めた。教室は「火の用心」をテーマにしたDVD鑑賞からスタート。園児は火事の原因や火災予防で大切なこと(▽ストーブの近くには燃えやすいものを置かない▽たこ足配線はダメ―など)をおさらいし、「火遊びはしません」と約束した。

 

津波の時は高い所まで走ろう。カードに示された動作をまねる園児

津波の時は高い所まで走ろう。カードに示された動作をまねる園児

 

 続いて、″災害が起きた時″と″命を守るためにとるべき行動″が裏表にイラストで描かれた防災カードゲームに挑戦した。例えば、建物が揺れている様子を描いたカードを手に署員が「地震が起きた時はどうする?」と聞くと、子どもたちは「頭を守る」と答えた。「そうだね」と署員がめくったカードには、しゃがんで頭を守るポーズをとる「ダック(あひる)」が描かれていて、園児はイラストをまねて手足を動かした。

 

 火事の時は煙を吸わないようハンカチを口にあてた「タヌキ」のイラストをまねて低い体勢で逃げる、津波では「チーター」になってできるだけ高い所まで走るのがポイント。子どもたちはカードに示された動物たちになり切り、楽しみながら命を守る行動を身に付けた。梶原琴音ちゃん(6)は「逃げる時に気をつけることが分かった。いろんな人に教えたい」と胸を張った。

 

防火帽をかぶって気分は消防士。消防車両の見学も楽しんだ

防火帽をかぶって気分は消防士。消防車両の見学も楽しんだ

 

 同署では、保育園、こども園で同様の啓発活動を定期的に実施。山崎信次予防係長は「幼少期から火災予防や防災、減災について学ぶことは、安心な暮らしにつながる」と強調する。今月中旬、南太平洋・トンガ沖噴火によって津波警報が出された際、同園の園児が家族に避難を呼びかけたと聞き、手ごたえを実感。「大人になったら、ぜひ消防団員に」と期待した。

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

消防職員が業務への提言を発表 県発表会に舘下佑哉さん(釜石署)を選出

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

意見発表した尾形祐貴さん、舘下佑哉さん、長野凌太さん、紺野聖人さん(左から)

 

 第45回県消防職員意見発表会(2月14日、盛岡市)に向けた釜石大槌地区行政事務組合消防本部(大丸広美消防長)の代表者選考会は12日、釜石市鈴子町の消防庁舎で開かれた。釜石、大槌両消防署から消防士4人が登壇し、それぞれの視点で業務の課題や改善策を発表。審査の結果、SNSによる情報発信で人命を守る策を提言した釜石消防署の舘下佑哉さん(25)が代表に選ばれた。

 

 同発表会は若手消防職員が業務の諸課題解決へ意識を高め、一層の研さん、業務改善につなげる取り組み。県内12消防本部の代表が出場する県発表会に向け、釜石大槌地区消防本部では代表選考のための発表会を幹部職員らの前で行った。

 

 発表者は登壇順に、釜石署の長野凌太さん(25)、大槌署の紺野聖人さん(29)、大槌署の尾形祐貴さん(32)、舘下さんの4人。1人5分の制限時間で、自らの経験を基に消防や救命、津波避難などに関する考えを述べた。

 

職員らは業務の課題、改善策を自らの言葉で発表

職員らは業務の課題、改善策を自らの言葉で発表

 

 長野さんは、新規入団の減少、団員の高齢化が顕著な消防団の課題を取り上げた。火災や災害現場で消防職員と共に大きな役割を担う消防団員確保のための方策として、学生時からの学びの機会を提案。「学校の防災授業で消防団の活動内容や地域にとっての必要性などを教えることで、社会人になった時に入団しやすくなる」と、認知向上への取り組みを提言した。

 

 紺野さんは、傷病者発生時に現場に居合わせた人(バイスタンダー)が救急隊到着までの間に行う処置(心肺蘇生法など)に着目。早期の救命処置を的確に行える人を増やすため、義務教育期の成長段階に合わせた学習プログラムを示した。小学校低学年は119番通報、同高学年は応急手当の実技、中学生は小学校期の学びの復習と災害時に役立つ搬送法などの習得。応急手当講習の義務化が実現すれば「より質の高い多くのバイスタンダーを生むことができる」と強調した。

 

幹部職員や先輩職員らも耳を傾けた意見発表会

幹部職員や先輩職員らも耳を傾けた意見発表会

 

 尾形さんは、東日本大震災の経験から津波避難時のさまざまな場面を想定した問題点を指摘。よりイメージをつかみやすい避難の動画を市のホームページに掲載することを考えた。避難場所までの経路を撮影し、いつでも見られるようにすることで、訓練に参加できない人や外出が困難な人の避難を助ける狙い。動画による情報発信で、「地域住民同士、家族で話すきっかけもでき、防災意識がさらに高まる」とした。

 

 舘下さんは、活字離れやSNSの普及が進む社会情勢の変化に注目。ポスターやパンフレットなどの紙媒体による広報活動だけでは情報発信効果が不十分と考え、火災予防や救急医療の呼び掛けにSNSを活用することを提案。「災害などへの注意喚起、消防団員募集、各種講習の案内に加え、消防署の訓練の様子を発信することで興味を持ってもらえる。住民の理解が深まれば、現場活動でのトラブルも回避できるのではないか」と訴えた。

 

釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表で県発表会に出場する舘下さん

釜石大槌地区行政事務組合消防本部の代表で県発表会に出場する舘下さん

 

 市教委の髙橋勝教育長ら4人の審査員が、▽論旨の明確性、説得力▽業務に対する問題意識、発展性▽発表態度、表現力―の3項目で採点。審査の結果、県発表会への出場が決まった舘下さんは「他の人の発表も聞いて(自分たちの業務には)いろいろな問題点がまだまだあると実感し、とても勉強になった。県大会までに発表の仕方をさらに工夫し、等身大で臨みたい」と話した。

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

防火・災害対応へ士気高揚 「釜石市消防出初式」規模縮小し2年ぶり開催

昨年は中止、2年ぶりに開催された市消防出初式

昨年は中止、2年ぶりに開催された市消防出初式

 

 釜石市消防出初式(市、市消防団主催)は8日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染拡大防止を考慮し、まとい振りなどの街頭パレードを取りやめ、規模を縮小した式典のみを実施。市消防団(団員563人)などから約100人が参加し、新年のスタートにあたり消防防災活動へ意欲を高めた。

 

 東日本大震災の犠牲者らに黙とう後、統監の野田武則市長が式辞。世界各地で温暖化による気候変動が要因の自然災害が多発している現状に触れ、「災害はまさかと思われる規模で発生するようになった。危機管理体制のさらなる充実が求められる。複雑、多様化する災害に備え、一層の尽力を」と呼び掛けた。

 

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

2022年の消防防災活動へ士気を高める団員ら

 

 長年の消防防災に対する功績、職務精励などで団員66人を表彰。無火災956日(2019年6月8日~21年11月30日)を達成した栗橋地域を管轄する第7分団(団員91人)に「無火災竿頭綬」(県消防協会遠野釜石地区支部表彰)が授与された。小澤万寿男分団長(67)は「団員による火災予防運動が功を奏し、住民は防火意識が高い。地域は高齢化が進み、独居世帯も増えている。今後も地域一丸となって啓発活動に努めていきたい」と決意を新たにした。

 

「無火災竿頭綬」を受けた消防団第7分団の幹部

「無火災竿頭綬」を受けた消防団第7分団の幹部

 

10~40年勤続、職務精励で団員66人を表彰

10~40年勤続、職務精励で団員66人を表彰

 

 昨年の市内の火災発生は5件(建物4、その他1)。前年のほぼ3分の1に減少した。火災による死者はおらず、負傷者は1人だった。

 

 式典での表彰団員は次の通り。(かっこ内数字は分団・部、「本」は本部)

 

【釜石市長表彰】
▽永年勤続功労章(30年勤続)
川端裕一(1・1、部長)川向文吾(3・3、班長)加藤孝雄(5・2、同)小向初見(5・6、部長)狐鼻薫(6・5、班長)和田一之(7・本、部長)八幡利則(7・3、同)

 

【県消防協会遠野釜石地区支部表彰】
▽勤続章
*40年勤続
野田幸正(4・本、分団長)佐々木正雪(4・2、部長)小笠原賀伸(6・5、班長)
*25年勤続
佐々木清明(1・本、部長)井上健(2・1、同)小山久雄(4・1)岩﨑英紀(6・5)佐々木隆行(6・6、班長)佐々木光政(6・6)小笠原義雄(7・本、部長)八幡勝明(7・2、班長)三浦勝弘(8・本、副分団長)佐々木和則(8・3)佐々木仁(8・3)鈴木利治(8・5、部長)
*15年勤続
藤原士朗(1・3)竹内俊作(2・1、班長)熊谷仁(3・3)藤井悌壮(4・1)川﨑浩二(6・1)小笠原剛真(6・2)土手広和(6・3)植田賢利(6・3)小笠原尊史(6・5)八幡恵史(7・2)小笠原嘉春(7・3、班長)伊藤貞治(8・本、同)岩城覚(8・2)佐々木健(8・3)内川裕也(8・5、班長)留畑丈治(8・5、同)中嶋康裕(8・5、同)東卓也(8・6、同)青山克徳(8・6、同)久保準一(8・6)
*10年勤続
菅原徹(2・1)泉憲一(3・1)久保弘貴(3・3)佐々木一馬(3・3)三縄聡(3・4)副士光雄(5・1、班長)

 

▽精練章
照井雄騎(1・2)佐々木一哉(1・4)阿部信太郎(1・4)浜田志紀(1・4)小山純平(3・2)高橋光輝(5・3、班長)東谷剛(5・5)小笠原祐樹(6・2)平間佑(6・2)川崎友則(6・5)佐々木滉司(6・5)佐々木北斗(6・6)栗澤正太(7・1)佐々木靖(7・2、班長)中村修(7・2)和田良作(7・3)黍原豊(7・3)東英樹(8・6)

手帳の点検を受ける交通指導隊員

安全な地域づくりをともに 釜石市交通指導隊と防犯隊、初点検 初めて合同実施

初めて合同で実施された交通指導隊と防犯隊の初点検

初めて合同で実施された交通指導隊と防犯隊の初点検

 

 釜石市交通指導隊(佐藤鉄太郎隊長、隊員28人)と市防犯協会防犯隊(三浦栄太郎隊長、同38人)の2022年初点検は7日、大町の市民ホールTETTOで行われた。指導隊は「交通事故の被害」、防犯隊は「犯罪の被害」から住民を守ると任務は少し異なるが、ともに安心安全な地域づくりのため活動していることから、初めて合同で実施。合わせて約20人の隊員が参加し、任務遂行へ気を引き締めた。

 

 野田武則市長、釜石警察署の前川剛署長らが整列した隊員の手帳と警笛を点検した。野田市長が「市民の約4割を占める高齢者の事故防止が最大の課題となる。特殊詐欺、子どもへの声掛け事案が発生しており、抑止も重要な課題の一つ。交通安全、地域安全の意識高揚に努めていく。隊員の活動は多岐にわたり、欠かすことができない。気持ちを引き締め、任務を再確認して活動に尽力してほしい」と訓示した。

 

手帳の点検を受ける交通指導隊員

手帳の点検を受ける交通指導隊員

 

防犯隊員も野田市長らの点検を受けた

防犯隊員も野田市長らの点検を受けた

 

 前川署長は管内の治安情勢を報告した。窃盗などの刑法犯認知件数は昨年11月末現在で65件、前年同期比で18件減。交通事故の発生状況について、昨年1年間は事故死者がなく、人身事故は35件あったが、前年と比べると4件減った。「皆さんの活動のたまもの。引き続き、署を挙げて治安維持に全力で取り組み、各種対策を推進していく。秩序ある交通社会の実現と安全安心なまちづくりのため力添えを」と激励した。

 

 終了後、指導隊は大町周辺で車両に対する街頭指導を行い、防犯隊はショッピングセンターの買い物客らに、地域安全に関するチラシなどを配布する啓発活動を展開した。

 

ショッピングセンターで買い物客らに啓発グッズを手渡す防犯隊員

ショッピングセンターで買い物客らに啓発グッズを手渡す防犯隊員

 

 交通指導隊員の任務は街頭や交通安全教室での指導、各種行事での交通の確保など。佐藤隊長(80)によると、昨年は新型コロナウイルス禍でイベントの中止が多く、活動を控えざるを得なかった。学校での交通安全教室は再開されていて、子どもたちの交通マナーが向上していると実感。「安心安全なまちをつくるため、気持ちが通じ合うような活動を続けたい」と意欲を見せた。

 

 防犯隊は民間のボランティア団体で、市民の自発性、高い志によって活動が維持されている。防犯パトロール、青少年の非行防止、特殊詐欺防止啓発活動、高齢者の安全対策などが任務。市防犯協会の岩渕善吉会長(80)は「市民が安心安全に暮らせるよう、地域に密着して活動。青色回転灯による見せる防犯パトロールでアピールしていく」と力を込めた。

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

災害時に段ボール製品を供給 釜石と王子コンテナー青森工場が協定

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

協定書を手にする野田市長(左)と福島工場長(左から2人目)ら。災害時に段ボールベッドなどの提供を受ける

 

 釜石市は22日、段ボール製品製造・販売を手掛ける王子コンテナー青森工場(青森県三沢市、福島明工場長)と災害時の物資供給に関する協定を結んだ。住民の避難が必要な場合に、同工場が製造する段ボールベッドなどを提供。万一に備え、不足した際に供給できる体制を整える。

 

 協定は、市の要請に基づき、同工場が速やかに製品を用意して避難所などに届け、市が費用負担する内容。物資の種類は段ボール製のベッドや紙製簡易トイレ、プライバシーを確保するためのパーテーションなど。また同社グループ企業から、ティッシュペーパーやトイレットペーパー、生理用品などの生活必需物資製品が優先的に提供される。

 

 釜石市役所で締結式を行い、野田武則市長と福島工場長が協定書に署名し取り交わした。福島工場長は「軽くて強度のある段ボールの特性を生かした製品を提案し、地域の皆さんのお役に立ちたい」と強調。パーテーションは床に敷いて利用することもでき、段ボールベッドと合わせ、避難時に体育館など冷たい床で寝るのを避けることで低体温症の防止にもつながるなどと紹介した。

 

パーテーションなどに活用できる段ボールシート

パーテーションなどに活用できる段ボールシート

 

 野田市長は「被災した人、避難した人の安心につながる。いざという時は頼りにしたい」と感謝。日本海溝・千島海溝沿いで発生する2つの巨大地震の被害想定が公表されたばかりで、事前の災害対応に気を引き締め直した。

 

 同工場は、同様の協定を三沢市や六戸町と結んでいる。釜石市は3例目で、岩手県内では初。市内に営業所があることから、社会貢献活動の一環として市に申し出た。
 

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

迅速な災害対応に期待 釜石市消防団にチェーンソー配備 団員が扱い方学ぶ

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

釜石市消防団チェーンソー研修会=11月21日

 

 釜石市消防団(川﨑喜久治団長)は11月21日、災害現場などでの使用を想定したチェーンソーの研修会を開いた。全8分団から団員約80人が参加。釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長)の職員5人に指導を受け、機材の組み立て方から樹木の切断の仕方まで必要な知識を身に付けた。

 

 市消防団は地域防災力強化のための救助活動用資機材として、2019年度にチェーンソー37台を購入。8分団全37部に1台ずつ装備する計画で、団員研修会を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期を余儀なくされてきた。ワクチン接種が進み、感染者数も減少傾向にあることで、研修会実施が可能となった。

 

釜石地方森林組合の職員から講習を受ける団員ら

釜石地方森林組合の職員から講習を受ける団員ら

 

チェーンソーの組み立て方を教える森林組合職員

チェーンソーの組み立て方を教える森林組合職員

 

 片岸町の同森林組合事務所を会場に約2時間の座学と実技講習を実施。機材の取り扱いの基本、安全対策を重点に研修を行った。実技講習では組み立て、燃料注入、エンジン始動、目立てなどの方法を学んだ後、ゴーグルや保護衣を装着して樹木の切断を体験。台風や地震、津波などで生じる複数の木が折り重なった現場を再現し、安全に処理するためのポイントを教わった。

 

倒木や地震・津波がれきを想定した実技訓練

倒木や地震・津波がれきを想定した実技訓練

 

安全への注意を払いながら樹木の切断に挑戦した

安全への注意を払いながら樹木の切断に挑戦した

 

 第1分団4部の浜田志紀さん(33)は初めてのチェーンソーの扱いに「難しそうだが、現場で必要な時に(誰でも)使えたほうがいいので、団員と知識を共有し扱えるようになりたい」と話した。

 

 消防団員対象のチェーンソー講習は森林組合職員にとっても初めての経験。指導にあたった同組合事業課の坂本和幸課長補佐(54)は「災害現場では倒れた木が複雑に重なるため、支点や重心を見極めながら切断箇所を判断しないと作業者に危険が及ぶ。機材の安全な取り扱いと共に、現場の状況を見る目も必要」とアドバイスした。

 

現場での2次災害を防ぐため、作業時には的確な判断が求められることを教わった

現場での2次災害を防ぐため、作業時には的確な判断が求められることを教わった

 

 これまで倒木、流木などの処理は市や消防署が対応し、地元林業者に協力してもらうケースも多かった。今回の消防団へのチェーンソー配備で、いち早い災害対応につながるものと期待される。川﨑団長は「(近年の異常気象で)台風や豪雨、強風による倒木の増加も懸念される。まずは現場に駆け付け、救急車の通行や市民の生活道路確保のための除去作業が急務となるので、地域を知る多くの団員が扱えるようになれば」と願う。