第3期「大震災かまいしの伝承者」に15人認定/市震災誌編さん委 進捗状況確認


2022/12/08
釜石新聞NewS #防災・安全

基礎研修を修了し、「大震災かまいしの伝承者」になった15人と講師陣ら

基礎研修を修了し、「大震災かまいしの伝承者」になった15人と講師陣ら

 
 東日本大震災の体験や教訓を後世に語り継ぐため、釜石市が養成する「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会が3日、上中島町の中妻公民館で開かれた。3期目となる本年度は市内外から応募した15人が、研修を経て伝承者に認定された。今後、家族ら身近な人のほか、非体験者などに震災の事実を伝え、防災意識の向上や確実な避難につなげる一翼を担う。
 
 同制度は2019年にスタート。第1、2期合わせ69人が伝承者に認定されている。今期は小学3年生から75歳までの意欲ある人たちが研修に臨んだ。岩手大の教授陣が講師となり、地震のメカニズムと津波被害の特質、同震災の被害概要、同市が震災後に定めた防災市民憲章について解説。1期の認定者瀬戸元さん(釜石観光ガイド会員)が、自身の伝承活動で伝えている内容などを紹介した。
 
3グループで将来に伝えたい教訓、取り組みを話し合ったワークショップ

3グループで将来に伝えたい教訓、取り組みを話し合ったワークショップ

 
 「将来に伝えたい教訓」をテーマにグループワークも行われた。参加者が実体験や震災伝承への思いを語り合い、今後必要と思われる取り組みや課題を出し合った。共通していたのは「命を守る行動をとってほしい」ということ。避難意識を高めるには訓練や防災教育の充実、日ごろからの地域のつながりが重要との声が上がった。効果的な教訓の伝え方も話題に。市内で行われている「新春韋駄天競走」、鵜住居小の「津波てんでんこマラソン」など行事に絡めた伝承、災害シミュレーションゲームのような防災を身近にする方法を例に、今後増えていく非体験者への伝承の在り方も考えた。
 
震災時の自分の体験などを話す研修参加者

震災時の自分の体験などを話す研修参加者

 
経験者の思いを共有し、何を伝えるべきか考えた

経験者の思いを共有し、何を伝えるべきか考えた

 
各グループで活発な意見交換が行われた

各グループで活発な意見交換が行われた

 
 岩手大地域防災研究センターの越野修三客員教授は「伝承は語るだけでなく、いろいろな手段がある。伝承者が協力し合い、何ができるか、どうしたら伝えていけるかを考え実践していってほしい」と期待した。
 
 最年少伝承者となった佐々木智桜さん(鵜住居小3年)は2014年3月11日生まれ。3年前の同じ日、祖母と伯母が津波の犠牲になった。「二度と死亡者を出してほしくない―」。震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」で働く母智恵さん(40)にお願いして研修に臨んだ。「困っている人の避難の準備をお手伝いして、1秒でも早く津波から逃げられるようにしたい。今日聞いたことは海の近くにいる人に伝えたい」と智桜さん。
 
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母智恵さんと参加者の話に聞き入る佐々木智桜さん(左)

 
 大槌町地域おこし協力隊の北浦知幸さん(35、京都出身)は震災伝承の仕事を担当中。13年から2年間、応援職員として釜石市に派遣された経歴を持つ。「震災経験者が伝えたい思いをきちんと理解し、次につなぐことが大切。震災直後と今では伝えたい内容も同じではないと思う。年数がたって出てきた課題など、12年の流れを踏まえて伝えられたら」。教訓を生かしてもらうためには「伝承のゴールはない」と、末永い活動に意欲を示した。
 
 基礎研修を修了した15人には伝承者証と名札が交付された。来年度、伝承手法などを学べるステップアップ研修(任意)も行われる予定。
 

釜石市震災誌 2022年度内の素案完成へ全力 第2回編さん委で作業の進捗状況確認

 
第2回釜石市震災誌編さん委員会=5日、市役所

第2回釜石市震災誌編さん委員会=5日、市役所

 
 東日本大震災の記憶を後世に伝える釜石市震災誌(仮称)の作成に取り組む同市は5日、2回目の編さん委員会(委員長=齋藤徳美岩手大名誉教授、委員15人)を市役所で開いた。当初予定より作業が遅れていることが説明され、今後の進め方などについて委員の意見を聞いた。市は本年度内の素案の完成を目指す。
 
 同震災誌は庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基に作る。9つの項目を柱に58のテーマで構成。発災から復興に向けた取り組み、避難行動の検証、防災の課題など、多様な視点で未来に生かされる内容を目指す。各項目冒頭の特集ページに事実やデータの記載だけでは分からない教訓や証言、トピックスを盛り込み、ストーリーが見える誌面にする。日本海溝北部での地震による津波対応についても記載する。
 
 委員からは、先人の教訓や防災教育先進地としての取り組み、復興過程の課題など次世代に求められる内容を盛り込む必要性が指摘された。齋藤委員長は「本年度内にたたき台を出してもらい、来年度早々には意見交換に着手したい。委員会でしっかり議論を重ね、中身のあるものにしたい」と話した。

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