防災市民憲章をどう浸透させていくか意見を出し合った
東日本大震災の検証と教訓を基に来年3月11日に制定予定の「釜石市防災市民憲章」を、市民生活の中でどう生かすかを考えるフォーラムが8日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。同憲章制定市民会議(丸木久忠議長)が主催し、市民ら約100人が参加。パネル討論などを通じ、憲章の意義を確認するとともに周知のあり方を議論した。
同憲章は、あらゆる災害から「命を守る」ための市民の誓いを▽備える(訓練で避難の大切さを体で理解する)▽逃げる(避難の繰り返し、素早い率先避難で周りの避難も促す)▽戻らない(一度逃げたら決して戻らない。家族で避難の仕方を確認し、信頼関係を築き行動する)▽語り継ぐ(災害から学んだ生き抜く知恵を語り継ぐ)―の4つの行動で示す。
フォーラムでは同市民会議顧問、岩手大の齋藤徳美名誉教授がモデレーターを務め、3人が意見を交わした。
震災前、釜石東中教諭として防災教育を推進した、岩手大大学院の森本晋也准教授は「教訓をつなぐ大きな力となるのは『教育』。教えて伝えるだけでなく、自ら学ぶことがキーワード」とし、授業や訓練など事あるごとに憲章に触れ、「なぜ、その行動が必要かを考えさせることが重要」と述べた。
市防災会議委員の平野因さんは「定時に流れる愛の鐘のように、日常的に(憲章を)耳にする機会を作ることが肝心ではないか」と提言。介護支援専門員として高齢者と接する立場から「一緒に考え、答えを出すという介護の姿勢を防災でも生かせたら」と望んだ。
釜石出身で桜美林大4年の小松野麻実さんは、3年時に防災士の資格を取得。「世代を超えた市民ワークショップや既存のプログラム(震災学習ツアー、語り部)に憲章を盛り込み、教訓を伝えていければ。(単に目にするだけでなく)人から教わることが大事」と実感を込めた。
教訓継承へ思いを発信する洞口留伊さん
最後は、釜石高2年の洞口留伊さん(鵜住居小、釜石東中卒)が「失われた命を無駄にせず次につなげていくために、今度は私たちが語り継ぐ番。体験したからこそ伝えられること、備えられることを一人でも多くの人に発信していくべき」と継承への強い思いを発表した。
同憲章は、鵜住居町に整備中の「釜石祈りのパーク」(来年3月完成予定)に設置するモニュメントに刻まれる。
(復興釜石新聞 2018年12月12日発行 第748号より)
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