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暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

「危機対応学」めぐり意見交わす、東大社会科学研究所〜意識調査を市民生活向上に

暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

 

 「危機対応学」をテーマにした公開シンポジウムが26日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。2005年から釜石を舞台に「希望学」の研究に取り組んできた東京大学社会科学研究所が、16年度から新たにスタートした全所的プロジェクトの一環。東大と神戸大を中心とする全国の研究者グループが、東日本大震災で被災した釜石市民を対象に11年度から実施した暮らしと復興についての意識調査の結果を報告。被災者や市民の生活向上へ、どのように役立てるか意見を交わした。シンポジウムには市民ら約90人が参加し、耳を傾けた。

 

 調査は被災者の生活再建に向け、被災の実態、住まいや生活の状況と今後の見通し、考え方を明らかにするため11年から5回にわたって実施。仮設住宅、みなし仮設住宅、復興公営住宅で暮らす延べ5500人から回答を得た。

 

 シンポジウムでは、調査グループの共同代表を務めた東大の佐藤岩夫教授と神戸大の平山洋介教授がそれぞれ、調査で浮き彫りとなった問題点などについて報告した。

 

 佐藤教授は、昨年行った5回目の調査について「復興が進む中で、将来に向けた希望や明るい見通しは傾向が大きく分かれるが、『復興』の言葉が用いられるのは意外に少ない。震災の記憶がうまく継承されていないのではないか」と説明。その背景には、思うように進まないことへのいらだちがあることを指摘し、「見通しの不透明さが生む不安や不満がある。被災経験には複数の時間が流れている。この流れを量的ではなく、質的に捉える見方も必要ではないか」と示唆した。

 

 阪神大震災を経験した平山教授は、今回は住まいの再生を重点に調査。被災者の間に孤立化や高齢化への不安が広がっていることを指摘し、「被災者の生活再建に揺らぎが見える中で、過去、現在、未来をつなぎ合わせる住まいの改善が求められる。被災者の実態を踏まえた制度改善を」と訴えた。「住宅再建の補助は、1回きりをせめて2回に」と持続的制度の必要性も指摘した。

 

 参加した市民の中からは「津波災害からの復興の歴史と見比べると、今回の震災では他人の力を求め過ぎている気がする。地域全体で〝自力力〟を持たなければならないのでは」という声もあった。

 

 佐藤教授は「どうにもならない場面もいろいろある。個人の努力も要るが、手助けする社会の仕組みづくりは必要だ」、平山教授は「ともかく現場に足を運ぶことが支援になる。多くの人に現状を見てもらうことが被災者の力になる」と強調した。

 

(復興釜石新聞 2017年8月30日発行 第617号より)

 

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平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

 

釜石市に初めて少年消防クラブが結成されたことから、釜石市消防団より平成29年度釜石市消防演習への参加を招待され、18名の釜石市少年消防クラブ員が分列行進に参加することとなりました。

 

分列行進に参加した子供たちは緊張することなく、子供らしい元気いっぱいの行進をすることが出来ました。

 

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

 

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

 

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

 

平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加 平成29年度釜石市消防演習への釜石市少年消防クラブ員の参加

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 釜石大槌地区行政事務組合 釜石消防署
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坂本さん(左端)が寄贈した装いで横断幕を掲げる「釜石B・F・C」の児童と関係者

少年消防クラブに装備品〜「子どもは宝」寄贈の坂本さん

 坂本さん(左端)が寄贈した装いで横断幕を掲げる「釜石B・F・C」の児童と関係者

坂本さん(左端)が寄贈した装いで横断幕を掲げる「釜石B・F・C」の児童と関係者

 

 4月に発足した釜石市少年消防クラブ(会長=番田健児釜石消防署長、6校)に17日、市消防団本部分団長・本部長の坂本晃さん(63)=大只越町=から装備品が贈られた。市役所で行われた贈呈式には野田武則市長ら防災関係者が立ち会い、4小学校の児童代表にクラブ旗などを贈呈。児童らは防災意識を高めることを誓った。

 

 贈呈式には釜石小ぼうさい安全少年団の金野怜佳さん、双葉小防災クラブの佐々木駿君、甲子小少年少女防災クラブの千代川陽琉さん、鵜住居小ぼうさい少年団の大丸碧仁君の各リーダーのほか、クラブ代表者の各校長も出席した。

 

 坂本さんは児童にクラブ旗、横断幕、はんてんと帽子20組を贈った。横断幕は横3メートル、縦80センチ。同クラブの英語表記と呼称は「釜石・ボーイズ&ガールズ・ファイア・クラブ」とし、全国統一の頭文字はB・F・Cとなる。

 

 野田市長は「さまざまな災害に敏感になり、自分なりに考えてほしい。活動を学校や地域に示し、市民全体の防災意識が高まるよう期待する」と激励した。釜石大槌地区行政事務組合消防本部の菊地秀明消防長、市消防団の山崎長栄団長も期待を寄せるとともに、番田会長は「自分や地域を災害から守る意識を高めてほしい」とエールを送った。

 

 大丸君は「(火災になるような)危険な行動をしないよう積極的に呼び掛ける」、金野さんは「震災で分かったことを大事にして防災に取り組む」、佐々木君は「震災の教訓を生かす」、千代川さんは「震災の体験を風化させない」と、それぞれ決意を表明した。

 

 装備品を贈った坂本さんは消防団員歴44年余。東部中心街の防災を担う第1分団第3部部長、同分団長を経て2年前から現職。経営する坂本電気は市の消防団協力事業所の表示証を受け、社員4人が団員として活動する。

 

 坂本さんは「多くの火災や災害に向き合ったが、震災には心が折れそうになった。子どもは地域の宝。自分にも3人の孫がいる。子どもたち自身が災害から身を守り、釜石を守る心が育ってほしい」と期待した。

 

 これら寄贈品は事務局の釜石消防署が管理し、同クラブの活動に提供する。 

 

(復興釜石新聞 2017年5月20日発行 第589号より)

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釜石市少年消防クラブ結成

釜石市少年消防クラブ結成

釜石市に少年消防クラブが平成29年4月1日に結成されました。

 

釜石市少年消防クラブに加入したのは、釜石小学校、双葉小学校、小佐野小学校、甲子小学校、鵜住居小学校、釜石中学校の6校で、1,415人(全児童・生徒)がクラブ員として認定されました。

 

このクラブは、活動を通じて正しい防災知識を身につけ災害文化を後世に伝える役目を担う者を育成することを目的としています。そのために、加入した学校と消防署が協力して児童・生徒に防災教育をしていく予定です。

 

釜石小学校結団式
釜石小学校結団式

 

双葉小学校結団式
双葉小学校結団式

 

小佐野小学校結団式
小佐野小学校結団式

 

甲子小学校結団式
甲子小学校結団式

 

釜石市少年消防クラブ結成式 釜石市少年消防クラブ結成式

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「釜石消防署小佐野出張所」の看板を降納する野田市長、佐藤消防長

小佐野出張所(釜石消防署)閉所、西部地区の防災拠点に幕〜解体し消防屯所に

「釜石消防署小佐野出張所」の看板を降納する野田市長、佐藤消防長

「釜石消防署小佐野出張所」の看板を降納する野田市長、佐藤消防長

 

 釜石消防署小佐野出張所の閉所式は3月30日、釜石市小佐野町の同出張所で行われた。釜石大槌地区行政事務組合議会など行政、住民、消防職員、消防団関係者ら60人が出席。53年5カ月に及ぶ西部地区の防災拠点活動に幕を下ろした。制度的には鵜住居出張所も同時に閉所し、4月1日から釜石消防署と大槌消防署の2署体制に移行した。

 

 同事務組合管理者の野田武則市長は「出張所の業務は地域住民、消防団、釜石警察署に支えられた。今後も装備と職員教育の充実を図り、住民の安全へ万全を期す」と式辞。佐藤正敏消防長が経過報告、「住民の安全安心に努める」と決意を述べた。

 

 小佐野出張所の防災活動に協力した小佐野町内会(佐々木喜一会長、400世帯)と、施設内に屯所を併設する消防団第4分団第1部(柏舘克美部長)に市長感謝状が贈られた。同事務組合議会の古川愛明議長が「消防職員の奮闘、研さん、努力に期待する」と激励。小佐野出張所の看板を野田市長と佐藤消防長が外し、式を終えた。

 

 小佐野出張所の前身、釜石消防署小佐野分遣所は1963年、JR釜石線小佐野駅に近い場所にあった釜石製鉄所・自主消防施設を改修して設置。職員は7人だった。73年に出張所と改称、79年に現在地に移転、新築した。5階建ての訓練塔も併設、人口が増加しつつあった西部地区の防災拠点となった。

 

 東日本大震災では小佐野出張所以外の釜石消防署、同鵜住居出張所、大槌消防署がいずれも全壊したが、2014年に釜石消防庁舎、16年に大槌同庁舎が完成した。通信指令システムの整備を背景に、機能的な人員配置と資機材の運用を図る消防力整備計画に基づき、2出張所の廃止を決めた。

 

 同施設は17年度中に解体し、消防団4分団1部の屯所を建設する予定。その間、小佐野町仮設団地用地に仮の屯所を置く。

 

 小佐野町内会の佐々木会長(75)は「(防災機関が)そばにあったほうが安心だが、一本化することを了承した。今後も、より良い(防災)活動へ協力したい」とする。

 

 OB職員の大町、奥村忠雄さん(73)は「分遣所当時、国道283号の五の橋から西は未舗装で、鉱石を運ぶ社線(鉄道)があった。この庁舎も知っている。訓練塔の塗装は自前、山火事防止の看板も署員で作った。懐かしい。2署体制でも防災、救急の活動に問題ないだろう」と語った。

 

(復興釜石新聞 2017年4月5日発行 第577号より)

 

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津波避難階段を懸命に上がり、避難する鵜住居小児童。命を守る行動を体験しながら確認した

震災忘れない、命を守る行動確認〜鵜住居小で避難訓練、地域住民も参加 避難階段上る

津波避難階段を懸命に上がり、避難する鵜住居小児童。命を守る行動を体験しながら確認した

津波避難階段を懸命に上がり、避難する鵜住居小児童。命を守る行動を体験しながら確認した

 

 釜石市鵜住居町の鵜住居小(村上清校長、児童150人)で9日、下校時の地震・津波を想定した避難訓練が行われた。同校児童の登校方法は徒歩とスクールバスがあり、スクールバスを使用した下校時の訓練は震災後初めて。児童のほか、スクールガードとして登下校時の安全確保に協力する地域住民、保護者らも参加し、いつかまた起こりうる津波に備え、自分の命を守るための適切な行動を確認した。

 

下校時の津波を想定

 

 震災の津波で校舎が壊れ、津波浸水区域外に建設された仮設校舎で授業を続けている同校では地震、火災訓練などを独自に行っている。昨年は市の津波避難訓練にも参加した。震災後、地域の津波避難場所が増えていることから、避難場所や避難の仕方を確認するとともに、帰宅途中に大きな地震や津波が発生した場合を想定した訓練を企画した。

 

 同校では栗林、片岸、箱崎、甲子、平田方面などに向かうバス7台を運行し、約120人が利用している。訓練では、帰宅後それぞれの状況に応じて安全を確保した上で、近くにある高台に避難する12のルートを設定。児童館を利用する児童にも近くにある高台を確認してもらうため、2つの避難経路を設けた。

 

 このうち日向・外山地区に向かう2台のバスには38人の児童が乗車した。日向橋停留所で15人ほどがバスを降りて帰宅途中、地震が発生。警報を受け、高さ19メートルの三陸沿岸道路釜石山田道路につながる「津波避難階段」に向かった。

 

 長内集会所に近い、鵜住居第2高架橋南側たもとに整備された避難階段は、上りきると鵜住居トンネル電気室前の広場に出る。通常、敷地の扉は外から開かず、緊急時には扉に取り付けた薄いアクリル板を壊し進入できる仕組みになっている。今回は三陸国道事務所の協力で、児童が実際にアクリル板を壊す体験もし、階段を上って経路や感覚も確かめた。

 

扉に付いたアクリル板を外し、避難階段に進入する児童ら

扉に付いたアクリル板を外し、避難階段に進入する児童ら

 

 訓練終了後の反省会で、「逃げ方の流れが分かった」と話したのは澤田龍斗君(6年)。震災時は幼稚園の年長児だったが、この階段が設置される前の山の斜面を上って津波を逃れた記憶がかすかに残っているという。

 

 一方で震災の記憶がない、知らない子もいる。後藤明衣さん(2年)は「ドキドキした。避難場所を知ったから、地震が来たら走って逃げる」と命を守る行動を学んだ。

 

 村上校長は「いろんな災害の時に守らなければいけないのは自分の命。みんなが自分を守る力を付けることは家族の命を守ることにもつながる。しっかり力を付けよう」と児童に呼び掛け。今回の訓練では地区ごとに1カ所の避難場所を確認するものになったが、地域にはほかにも避難場所があることから本年度中に各家庭で確認してもらうことにしている。

 

 及川美香子副校長は震災を風化させず語り継いでいくための体験として、避難訓練を継続する重要性を強調。スクールバスでの登下校時、実際に地震、津波が発生した時は運転手の判断が重要になってくることから、「今回は来年度以降の土台づくり。違った訓練方法も検討したい」と話していた。

 

(復興釜石新聞 2017年2月11日発行 第562号より)

 

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5班の担当者が張り詰めた表情で業務を進めた

ラグビーW杯想定、テロ対策図上訓練〜国、県、釜石市 連携を確認、初動対応や避難指示

5班の担当者が張り詰めた表情で業務を進めた

5班の担当者が張り詰めた表情で業務を進めた

 

 2年後の2019年にラグビーワールドカップ(W杯)が開かれる釜石市で18日、「会場でテロが発生した」との想定で図上対応訓練が行われた。国、県、市が連携した訓練は、盛岡市内丸の県庁と釜石市役所を結ぶ形で行われ、釜石からは野田武則市長、市職員、関係機関の連絡員ら90人が参加。凶悪事案に対する初動対応、被害拡大防止へ最善の道筋、連携のあり方を探った。市は今後、災害発生の想定を含め、W杯対応の事前訓練を重ねる。

 

豪雨、津波被害などにも応用

 

 県が主体となった同訓練は、国民保護法に基づく「国民保護共同訓練」の一つとして行われた。国は官邸連絡室など、県は情報連絡室を設置し約150人を投入、市も危機連絡調整会議を設けた。釜石を事態発生地域としたテロ対応訓練は初めてだった。

 

 ラグビーW杯の試合会場となる釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)で国際テロ組織による化学剤爆弾の爆発があり、多数の観客などが死傷。関連イベントが開かれる釜石市民ホール(仮称)でも爆弾が発見された―との想定。

 

 重大事件の一報を受けて市は緊急事態連絡室本部(本部長・市長)を設置。職員は大会議室(議場)に集まり、情報、通信・広報、統括、対策、総務の5班を組織、活動を開始した。県、自衛隊、警察、消防などの連絡員も派遣された。

 

 ▽負傷者の搬送と医療措置▽現場周辺住民の避難対応▽逃亡するテロ犯人の捕捉▽有害物質の除染―など各機関の動きや応援体制の要請を確認。訓練は3時間半に及んだ。

 

 県の危機管理アドバイザー越野修三さん(岩手大客員教授)は「初めての訓練にしては良くできた。個々の担当者は役割を理解して動いていた」と釜石市での訓練を評価。課題としては、▽全体像のタイムラインを作成していないため、(刻々と変化する事態に)先行した業務ができなかった▽テロだけでなく、豪雨、津波災害にも対応できる体制にグレードアップを▽見積もり、確認の質を高め、どんなことにも対応できるようにする―などを挙げた。

 

評価者の越野さん(左から2人目)が各部門の動きを注視

評価者の越野さん(左から2人目)が各部門の動きを注視

 

 市の佐々木亨危機管理監は「災害と今回の事態では、(国や県の)指示系統が違う。出された対処方針を実行できるようにしないと…。いろいろ課題はあったが、その解決に向けて、さらに検討したい」と語った。

 

 野田市長は「担当職員は初めての経験にも基礎的な理解は得たようだ。(訓練での)混乱の中、東日本大震災の教訓を思った。犠牲者を出さないよう、訓練に参加させていない職員にも危機意識を広める必要がある」と課題を見据えた。

 

(復興釜石新聞 2017年1月21日発行 第556号より)

 

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危機対応について意見を出し合うシンポジウム

釜石の体験、世界に生かそう〜東京大学釜石カレッジ、希望のシンポジウム

危機対応について意見を出し合うシンポジウム

危機対応について意見を出し合うシンポジウム

 

 釜石市と東京大学社会科学研究所(大沢眞理所長)が危機対応研究の覚書を締結したことを受けた東京大学釜石カレッジ「危機対応学シンポジウム」は14日、大町の釜石PITで開かれた。市内で漁業の復活や農業振興、地域コミュニティーづくりなどに取り組む団体や行政の関係者6人が活動内容を紹介。聴講した市民ら約90人も巻き込みながら危機やピンチの捉え方、これからの希望について意見を出し合い、危機対応学という新たな視点への考えを深めた。

 

 同研究所の玄田有史教授が「釜石と希望学のこれから―『危機対応学』始めます」と題して趣旨を説明した。危機は予測したり管理したりできないが、対応することはできると強調した上で、「将来に一切の危機のない世界を想定するのは難しい。今後起こり得る危機に何とか対応できるという見通しや手応えの得られる社会に希望は生まれるはず。危険(リスク)を機会(チャンス)に換える力を持とう」と呼び掛け。東大の危機対応の研究と釜石の人たちが経験してきた危機対応にまつわる話がつながった時に生み出されるものへの期待感を示し、「釜石の数々の危機対応の経験を全国と世界が必要としている」と意義を語った。

 

 シンポジウムでは6人が▽日ごろの活動を象徴▽活動の中の危機やピンチ▽これからの希望を表現―する3枚の写真を紹介しながら意見を交わした。ネクスト釜石の君ケ洞剛一さんは「個性で貢献」とのタイトルで水産業の展望を紹介。仮設住宅でのイベント開催や高校生のボランティア活動のサポート、農業などの後継者不足解消への取り組みなど報告のほか、海を生かした観光の再生への思いを語る人もいた。

 

 市内で子どもの居場所づくりなどに取り組む一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の柏﨑未来さんはピンチと感じたとき、「ピンチはチャンス、チャンスはチャレンジ、チャレンジはチェンジ」という自身のお気に入り曲のフレーズを何度もつぶやき、「ピンチがあれば次の自分に変われる」と意識することで危機を乗り越えていると紹介。子どもたちの笑顔があふれる1枚を未来への希望として挙げ、「生き生きした釜石になることが夢。震災後、愛着を持って釜石に住もうという子が増えてきているのが誇り。将来の釜石を背負っていく子どもたちに、前向きな背中を見せていきたい」と活動への意欲を話した。

 

(復興釜石新聞 2016年11月19日発行 第539号より)

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覚書を取り交わす野田市長(左)と大沢所長(中)。震災の経験を将来に生かす研究を協働で進める

釜石市と東京大学社会科学研究所、研究センター開設へ〜提言まとめ全国に発信、危機対応へ覚書締結

覚書を取り交わす野田市長(左)と大沢所長(中)。震災の経験を将来に生かす研究を協働で進める

覚書を取り交わす野田市長(左)と大沢所長(中)。震災の経験を将来に生かす研究を協働で進める

 

 釜石市は東京大学社会科学研究所(東京都文京区、大沢眞理所長)と協働で災害などの危機に適切に対応するための方策を研究することにし、14日、危機対応研究センター開設に関する覚書を締結した。同研究所は震災前から釜石でさまざまな調査を続けており、その発展形として震災による津波の記憶継承と危機対応を将来に生かすための調査研究を実施。これを踏まえた提言をまとめて全国に発信する。

 

 締結式は釜石市役所で行われ、市側は野田武則市長、市議会の佐々木義昭議長ら、東京大側は大沢所長らが出席し、覚書を取り交わした。

 

 覚書によると、同日付で同研究所に危機対応研究センターを開設し、市は役所内にセンターの連絡拠点を設置。▽釜石を含めた三陸地域の震災対応に関する調査研究の実施▽調査研究の成果に基づく危機対応に対する提言▽セミナーや講演会の開催―などに協働で取り組む。期間は2020年3月末まで。センター長に同研究所の玄田有史教授、副センター長には中村尚史教授と市総合政策課の佐々木勝課長が就く予定となっている。

 

 同研究所は震災前の2006年から釜石で希望と社会の関係を考える「希望学」を研究。震災後の2012年からはまちづくりや産業の復興を支える人材づくりのため、教授らが講師となって市民向けの連続講座などを開いてきた。

 

 今回のセンター開設で、社会に発生するさまざまな危機のメカニズムと対応策を社会科学の観点から考察する「危機対応学」の研究が釜石で新たにスタート。大沢所長は「大学や研究機関がつくったものを単に渡すのでなく、地域に住む人と一緒に知識や知恵を生み出す『共創』を進めていきたい」と述べ、玄田教授は「危機が迫った時や予想外の事態が起こった時の行動など人に着目して調査研究し、問題の解決策を見いだしていければ。危機対応学は希望学の発展形と考え、震災後にいただいた釜石の経験や教訓などを地域の皆さんと掘り下げていきたい」と意欲を語った。

 

 野田市長は「連携を深めながら取り組み、釜石だけでなく三陸の復興につなげたい」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2016年11月19日発行 第539号より)

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休日と重なった避難訓練でも大津波被災地の住民は幅広い年代が参加した

国連「津波の日」に避難訓練、釜石市では2000人余りが参加〜5年前を思い、備え共有

休日と重なった避難訓練でも大津波被災地の住民は幅広い年代が参加した

休日と重なった避難訓練でも大津波被災地の住民は幅広い年代が参加した=5日、釜石小

 

 国連が昨年創設し、初めて迎えた「世界津波の日」に合わせて5日、釜石市で避難訓練や啓発イベントが行われた。訓練は午後1時から行われ、市は釜石大槌地区行政事務組合消防本部へ災害対策本部を設置。初動対応などを訓練し、万一の際の情報収集、関係機関への情報伝達、避難者の支援体制などを確認した。参加者は市職員が配置された22カ所の指定避難所などで約1300人に上り、任意の避難所を合わせると2千人を超したと推定される。

 

 5日は国の「津波防災の日」でもあり、同日の訓練は昨年に続き2回目。「岩手県沖を震源とする地震で、釜石は震度5強を観測。本県沿岸に大津波警報が発表」との想定で訓練が行われた。

 

 東部地区で最大の避難所となる釜石小には、大渡町を中心に77人が避難した。階段を上る87歳の女性は家族に支えられ、途中で休みながら、ようやく到着した。避難所の運営にかかわる地元町内会の荻野哲郎会長ら役員と市職員は避難者を体育館に誘導、名簿作りに着手した。

 

 避難所の運営スタッフは東日本大震災での経験などをもとに、校庭・校舎・体育館の模式図に部屋割りを書き込んだ。心身の健康管理と衛生の維持、必要最小限のプライバシー確保、外国人のスペース、男女の更衣室設置、ペットの居場所などを再確認。震災時、町内会などの避難所運営では、避難者自身の協力、学校教職員の児童対応などもあって大きな混乱はなかった。

 

 避難した住民は、避難の基本認識のほか、消防による救助活動には限界があることなど、釜石消防署の講話に耳を傾けた。搬送体験では、体重約65キロの男性を女性2人、あるいは4人で抱えた。意識のない人の体は重く、50代の女性は「4人でも長い距離を運ぶのは無理。むしろ背負ったほうが楽のよう」と感覚を話した。

 

 視覚障害者の体験も行われた。釜石小4年の小村涼佑君も白杖を持ち、母親と交互に体験。「一人で動くのだったら、本当に怖かっただろう。お母さんには、状況をよく伝えるようにした」と話した。

 

 津波で只越町の自宅を流失した女性(74)は、旧釜石中体育館に避難した。甲子町の仮設住宅で5年余りを過ごし、現在は大渡町に新築した自宅に住む。「学校までの階段はきつかった。いざとなったら、もっと速く上れるのでしょう」。5年前の経験を生かし、小さな非常持ち出し袋には常備薬、水、肌着、水のいらないシャンプーを入れていた。

 

(復興釜石新聞 2016年11月9日発行 第536号より)

 

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「石割桜」の子孫木を記念植樹する野田武則市長ら

震災の教訓 後世につなぐ、グリーンベルトに桜植樹〜避難路 防災と緑地機能を併せ持つ、グリーンベルトに桜植樹

市内外から集まった植樹会の参加者。「未来の釜石を桜の里に」と協力し合って作業に励んだ

市内外から集まった植樹会の参加者。「未来の釜石を桜の里に」と協力し合って作業に励んだ

 

 東日本大震災の津波で被災した釜石港周辺に築造される盛り土避難路「グリーンベルト」のうち、造成が完了した港町エリアに22日、桜の木が植えられた。釜石市と「釜石に桜を植える会」(中川淳会長、17人)が植樹会を開き、市内外から約100人が参加。震災犠牲者の鎮魂とまちの復興を願い全国から寄付された、さまざまな種類の桜の木74本を芝生の斜面などに植えた。防災と緑地機能を併せ持つ避難路が、震災の教訓を後世につなぐ。

 

 野田武則市長は「この場所を津波避難や日常的な散策に活用し、津波の恐ろしさも忘れない場にしてほしい」とあいさつ。代表が、国の天然記念物に指定されている福島県三春町の「三春の滝桜」(ベニシダレザクラ)、岐阜県本巣市の「根尾谷淡墨(うすずみ)桜」(エドヒガンザクラ)、盛岡市の「石割桜」(同)の子孫木を記念植樹した。

 

 セレモニーの後、参加者は手分けして植樹。記念植樹した3種のほか、オオシマザクラやヤエザクラなど合わせて約7種類を植えた。鈴子町の高橋光子さん(69)は「桜の木が四季折々の風情を見せる姿を思い描きながら植えた。子どものように成長を見守っていけたら。毎年、見に訪れる楽しみが増えた」と、新たに市民の憩いの場ができることを喜んだ。

 

「石割桜」の子孫木を記念植樹する野田武則市長ら

「石割桜」の子孫木を記念植樹する野田武則市長ら

 

 グリーンベルトは、港湾労働者や港周辺に居る人が津波発生時に、いち早く高台の避難場所まで安全に避難できるようにする盛り土緑地。港町から浜町まで延長750メートル、最大幅約60メートル、高さ8~12メートルの整備を計画し、沖の湾口防波堤、港の防潮堤と合わせ3重の防御壁で市東部地区への津波の浸入を低減する効果も期待する。2018年10月の事業完了を目指し、今後、工事が進められるエリアにも桜を植樹する予定。

 

 13年に発足した「釜石に桜を植える会」は復興のシンボルとして桜を植え、未来への遺産とすることを目的に活動してきた。全国から多くの苗木や支援金が寄せられ、これまでに市内の津波被災地区や老人福祉施設、公園などに約140本を植えた。市にも桜を含む樹木が多数寄付されており、復興工事の進展に合わせ、両者の連携による植樹が本格的に始まった。この日は、桜の提供に協力した北海道や青森、栃木県など遠隔地の支援者も駆け付け、作業に加わった。

 

 千葉県市原市の光福寺住職、山本隆真さん(59)と同長南町の長久寺住職、月﨑了浄さん(55)は、日蓮宗千葉県西部宗務所による東北被災地の慰霊巡行で釜石を訪れた際、同会の活動を知った。その後、同宗務所が中心となり地元で桜を寄付するための募金活動を展開。茂原市の大型ショッピングセンターも活動に協力し、各地の市民から寄せられた善意は、750本分もの桜購入費用に生かされた。2人は「みんなが笑顔で集えるような場所になれば」と作業に汗を流し、「千葉に戻ったら協力者に報告し、今後の植樹作業への支援なども検討したい」と話した。

 

 同会の芝崎惠應事務局長は支援の広がりに感謝し、「桜を植えた場所が悲しみを減らす安らぎの場所になってくれれば」と願った。

 

 植樹は23日も行われ、大町の薬師公園斜面と宅地造成が進む鵜住居町根浜地区の山側高台にも桜が植えられた。市は先ごろ、植樹場所や本数などを検討する委員会「桜プロジェクト」も立ち上げており、植える会と協働で植樹を進めていくことにしている。

 

(復興釜石新聞 2016年10月26日発行 第532号より)

 

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