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スタジアムを懸命に走る鵜住居小の児童たち

「てんでんこ」忘れない、復興スタジアムを駆け抜ける〜鵜住居小でマラソン大会、児童らの走る姿が地域の力に

スタジアムを懸命に走る鵜住居小の児童たち

スタジアムを懸命に走る鵜住居小の児童たち

 

 鵜住居小(中軽米利夫校長、児童139人)で長年続けられてきた校内マラソン大会が名称を「復興きねん てんでんこマラソン大会」に変え、9月28日に開かれた。コースも新たにし、会場となったのは震災前に同校があった場所に整備された釜石鵜住居復興スタジアム。全校児童は、自然と調和した開放感がいっぱいのスタジアム敷地内を周回し、青々とした芝が広がるメイングラウンドにゴールするコースを懸命に駆け抜けた。

 

 新校舎での生活をスタートさせた昨年の大会は、学校敷地内のコースで行った。今年、震災復興への希望が満ちあふれる同スタジアムがオープンしたことで進むまちの再生を実感、さらなる地域の発展を願って、大会を新装。新たな名称には、震災時、先輩たちがこの場で実践した「逃げる」という行動を「忘れない」との思いが込められている。

 

 開会式は同校体育館で行い、中軽米校長が「練習の成果を披露する日。走り終わった後、『精いっぱいやり切った』と思えるよう頑張ってほしい」と激励。スタジアムに会場を移し、低学年、中学年、高学年に分かれ、それぞれ約1キロ、約1・5キロ、約2キロのコースに挑戦した。

 

 雲は多いが、時折暖かい日差しが感じられる空模様の下、まず中学年が先頭を切ってスタート。他の学年の児童や応援に駆け付けた保護者らの「頑張れ」「前へ」「もう少しだよ」などの声援を受けながらゴールを目指した。

 

 この後、約30分おきに低学年、高学年の順でスタート。全員が完走し、各学年の男女3位までを表彰した。今回初めて木製のメダルを用意。昨年5月に発生した尾崎半島の林野火災で焼けた木が使われた。

 

 3年生の1、2位を競ったのは双子の小澤奏志君、煌志君兄弟。一周200メートルの校庭を1万周走る練習を全校で取り組み、「力がついて本番で生かせた。スタジアムは広くてすごい。芝生に入ってから、すごく気持ちよく走れた」と声をそろえた。

 

 6年生女子の1位は山陰瑠理さん。「鵜小があった場所、『てんでんこ』を忘れないようにと思いながら走った」と振り返った。

 

 「子どもたちが懸命に走る姿は地域の力になる」と見守る中軽米校長。新たなスタートを切った大会が「中学生、保護者、地域住民が参加するような行事になれば」と期待する。

 

(復興釜石新聞 2018年10月3日発行 第728号より)

 

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釜石市新庁舎建設基本設計案を選定、佐藤総合計画東北オフィスに決定〜市民の命をつなぐ防災拠点へ、「みんなのホール」を交流スペースへ

釜石市新庁舎建設基本設計案を選定、佐藤総合計画東北オフィスに決定〜市民の命をつなぐ防災拠点へ、「みんなのホール」を交流スペースへ

釜石市の新庁舎完成イメージ

釜石市の新庁舎完成イメージ

 

 釜石市が天神町の旧釜石小跡地に建設する新市庁舎の基本計画設計業務委託公募の公開プレゼンテーションは26日、大町の情報交流センター釜石PITで行われ、佐藤総合計画東北オフィス(仙台市、早川謙二代表)が最終交渉権者に決定した。同社の提案は、議会・行政棟と会議棟の交点に「みんなのホール」を設け、市民交流スペースとするのが特徴。選定審査では、役所としての機能面、防災拠点としての信頼性などが高く評価された。これを受けて市は、2020年度着工、21年度完成を目指して計画を進める。

 

 同社の提案は、「釜石の絆と命をつなぐ防災庁舎…市庁舎のすべてを災害対応で使いきる」がコンセプト。北側の「東西軸の議会・行政棟」をベースに、南側に向かって市民を迎え入れる「南北軸の会議棟」を配置。その交点に「みんなのホール」「庁議室(災害対策本部)」などを造り、市民の命をつなぐ防災拠点とする。

 

 議会・行政棟は4階建てで、最上階に災害時の一時避難所ともなる議会フロアを配置。市民が一番利用する窓口を1階に置き、2階に事業部門・教育委員会を配置する。壁面の多くはガラス張りとし、市民に開かれた市役所をアピールする。

 

 公開プレゼンテーションでは4者が基本計画設計を提案した。最終的に選定された設計について、業務委託選定委員会の審査委員長を務めた南正昭岩手大教授(新市庁舎建設検討委アドバイザー)は「市民の交流、参加を促すようなコンセプトが高く評価された。交流スペースとするピロティ―は防災対応でも活用できる」とした。

 

業務委託選定委員会の委員長を務めた南正昭岩手大教授(中央)と佐藤総合計画東北オフィスの関係者

業務委託選定委員会の委員長を務めた南正昭岩手大教授(中央)と佐藤総合計画東北オフィスの関係者

 

 佐藤総合計画のプレゼンテーションを担当した飯柴耕一副代表(1級建築士)は「防災拠点として確実に防災力が高まる庁舎を考えた。市民との交流、協働も促すことができる。復興のシンボルとなる新庁舎を一日も早く完成させたい」と思いを込める。

 

 釜石市の新庁舎建設検討委は1986年に設置。同委の報告書をもとに94年には鈴子町に建設用地を取得したが、2010年の市庁舎建設検討懇話会で示された「天神町地区の方がふさわしい」との意見を受けて方針を転換。東日本大震災後の14年に釜石小跡地を適地と決定。16年に新市庁舎建設検討委が設置され、これまで6回にわたる協議が重ねられてきた。

 

(復興釜石新聞 2018年9月29日発行 第727号より)

 

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防災活動と地域貢献で栄誉を受けた市消防団(山崎団長・中)、野田分団長(右)が市長へ報告

防災功労で表彰受ける、さらなる意識高揚を誓う〜釜石市消防団(680人)、野田光利さん(第4分団)

防災活動と地域貢献で栄誉を受けた市消防団(山崎団長・中)、野田分団長(右)が市長へ報告

防災活動と地域貢献で栄誉を受けた市消防団(山崎団長・中)、野田分団長(右)が市長へ報告

 

 防災の日(9月1日)にちなみ防災功労者として内閣総理大臣表彰を受けた釜石市消防団(山崎長栄団長、団員680人)、第60回岩手県民の警察官・消防職団員表彰(産経新聞社主催)を受けた野田光利さん(71)=釜石市消防団第4分団長=は21日、野田武則市長に受賞を報告した。山崎団長と野田さんが市長室を訪ね、防災意識のさらなる高揚を図り、市民の生命と財産を守りたいと熱い思いを伝えた。野田市長は「尾崎半島の大規模林野火災で鎮火に奮闘したほか、多くの災害で活躍している。今後も防災に尽力してほしい」と激励した。

 

 防災功労者表彰式は18日に東京の総理大臣官邸で行われ、山崎団長(71)が出席、受領した。市消防団は昨年5月に発生した尾崎半島林野火災で、延べ776人の団員が長期に及ぶ火災防御活動で鎮火に貢献。消火活動での徹底した安全管理も高く評価された。受賞は東日本大震災の翌年以来2回目。

 

 山崎団長は「総理大臣表彰はありがたい名誉だが、災害現場での活動に対するもので、正直、受賞しない方が(安全で)いい」としながらも、「団員のがんばりが認められた栄誉であり、うれしい」と語った。

 

 一方、岩手県民の警察官・消防職団員表彰は18日に盛岡市で行われた。釜石市の消防団員では野田さん=野田町3丁目=が2人目。1976年に入団し42年間、地域防災に努めてきた。2013年から現職。また長年、町内会活動にかかわり、幼少年の教育と健全育成にも尽力する。入団以前には、盗難事件の解決に協力し、県警本部長表彰を受けた。2年前には消防庁長官表彰を受けている。

 

 野田さんは「今回の栄誉は縁のないものと考えていたので、驚いている。団長、関係者のおかげと、身の引き締まる思いだ。多くの人の絆を大切にして、今後も地域のために努める」と語った。

 

(復興釜石新聞 2018年9月26日発行 第726号より)

 

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地震・津波避難訓練を実施します

地震・津波避難訓練を実施します

9月1日の「防災の日」に、地震・津波避難訓練を実施します。

 

いつかまた必ず来る地震・津波に備え、犠牲者を出さないよう、市民・企業・団体の皆さんの協力と参加をお願いします。

日時

平成30年9月1日(土) 8時~8時40分

想定内容

9月1日(土)8時に釜石市で震度5強の地震を観測。
8時3分に岩手県沿岸に大津波警報を発表。
当市への津波到達予想時刻は8時30分ごろ、巨大な津波が予想されると発表された。

訓練内容

①8時に、防災行政無線で緊急地震速報の警報音を鳴らします
②落下物などから身を守る行動を取ってください
③ 沿岸部の人は、地震の揺れがおさまったら、避難の呼び掛けを待たず、直ちに近くの高台か津波避難場所に避難してください
④ 防災行政無線で数回、大津波警報のサイレンを鳴らし、避難指示を伝達します(英語での呼び掛けも行います)
⑤ いったん、高台や津波避難場所に避難したら、終了の放送があるまで低い所には戻らないでください
⑥ 市内陸部の集会施設を管理している町内会などの人は、避難者が来ることを想定して施設の鍵を開けて受け入れ体制を取ってください

津波災害緊急避難場所

「釜石市防災・暮らしのガイドブック」や市のホームページ、各地区生活応援センターで確認できます。
避難場所一覧はこちら

注意事項

①避難するときは、車を使わないでください
②訓練中は、緊急地震速報の警報音やサイレンが鳴りますが、実際の災害と間違わないでください
③この訓練は実際の災害と違い、エリアメール・緊急速報メールの配信は行いません
④実際の災害が予想される場合など、状況によっては中止する場合があります

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 危機管理監 防災危機管理課
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8441 / メール
元記事:http://www.city.kamaishi.iwate.jp/kurasu/bosai_saigai/oshirase/detail/1212042_2223.html
釜石市

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再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

地域コミュニティの再構築へ、活気ある町内会へ住民一丸〜鵜住居町 新田神の沢、集会所・消防屯所の完成祝う

再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

再建された集会所・消防屯所の併設施設は新神住民活動を後押し

 

 東日本大震災の津波で被災した釜石市鵜住居町、新田神の沢集会所・消防屯所の併設施設が以前と同じ場所に完成し、その祝う会が13日、同集会所で開かれた。地元住民ら50人が出席し、地域コミュニティーセンターの再建を喜び合った。

 

 祝う会を主催した新田神の沢(新神)町内会の藤原吉明会長は「津波で当町内会でも40人以上の犠牲者を出し、集会所がなくなった。地域の集会や郷土芸能の練習には地域住民の施設や自宅を提供してもらった。この新しい施設を中心にコミュニティーをつくり直す。末長く大事に使い、多くの被災住民が戻り、以前のように活気ある町内会にしたい」と意欲を示した。

 

 野田武則市長は「以前と同じ規模というが、広く明るく感じる。鵜住居町では来年、ラグビーワールドカップ(W杯)が開かれる。釜石の新しい歴史をつくるステップに、『鵜住居』を国内外に発信しよう」と祝辞を述べた。

 

 岩崎吉平さん(岩崎商店会長)が旧施設を住民の総力で建設した逸話を紹介し、乾杯の音頭を取った。

 

木の香もすがすがしい念願の拠点施設の完成を祝う住民

木の香もすがすがしい念願の拠点施設の完成を祝う住民

 

 新施設は釜石市が建設。敷地、規模は旧施設と同じだが、冷暖房をエアコンに改善した。355平方メートルの敷地に、駐車場用地149平方メートルを確保。木造2階建てで、延べ床面積300平方メートル。集会所は仕切りがある55畳の会議室のほか、給湯室、トイレを備え、2方向の階段で出入りできる。1階の屯所には車庫、資機材置き場、会議室、休憩室を配置した。事業費は約9590万円。

 

 旧施設は新神町内会が1978年に建設。2階に集会所、1階は消防団第6分団第8部(岩崎有光部長、19人)の屯所だった。震災で建物とともに消防ポンプ車や資機材を失った。仮屯所は2カ所を転々と移動する中、新たな消防ポンプ車が2013年に配備された。

 

 新神町内会は震災前、約155世帯が暮らし、住宅の86%が被災した。現在、会員は約100世帯で、30戸が工事中、または建設を予定している。新たに移転して来る住民もあるという。

 

(復興釜石新聞 2018年5月16日発行 第689号より)

 

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国家的プロジェクト釜石港湾口防の復旧を喜びテープカットする関係者

人命守り、復興の追い風に〜釜石港湾口防波堤完成、関係者120人が式典

国家的プロジェクト釜石港湾口防の復旧を喜びテープカットする関係者

国家的プロジェクト釜石港湾口防の復旧を喜びテープカットする関係者

 

 東日本大震災の津波で損壊し、3月に復旧工事が完了した釜石港湾口防波堤の完成式は4月30日、釜石市大町の釜石市民ホールTETTOで行われた。主催する県、市、国土交通省から関係者約120人が出席。復旧した巨大防波施設が津波から人命を守るとともに、物流拡大など経済振興への波及効果に期待を高めた。同工事の完了で、市内での国直轄復旧事業はすべて終了した。

 

 式典では国交省大臣政務官の高橋克法参議院議員(栃木県)、達増拓也知事、野田武則市長があいさつ。達増知事は「港湾が復興し、道路整備もかつてないスピードで進む釜石は飛躍的発展が期待される。県も三陸復興・創造をさらに進めていく」と意欲を示した。

 

 内閣府大臣兼復興大臣政務官の長坂康正衆議院議員(愛知9区)、本県選出の鈴木俊一大臣(東京オリンピック・パラリンピック競技大会担当)、平野達男参議院議員が祝辞。国交省東北地方整備局釜石港湾事務所の下澤治所長が復旧事業の概要を報告した。

 

 主賓ら11人がテープカット。錦町青年会が虎舞を披露し、湾口防の完成を祝った。

 

 野田市長は「復旧工事を短期間で完了していただき感謝する。湾内の静穏を保つことは漁業や港湾事業の振興につながる。釜石にとっては『命を守る防波堤』そのもの」と完成の喜びを語った。

 

船上から防波堤の威容を視察した来賓、野田市長ら

船上から防波堤の威容を視察した来賓、野田市長ら

 

 釜石港湾口防波堤建設事業は1978年に着手、2008年度に完成した。震災で南堤670メートルのうち370メートル、北堤990メートルのうち870メートルが損壊。復旧事業は12年に開始、6年余りで約660億円を投入した。大型化したハイブリッドケーソンを導入するなど工事の効率化を図り、被災を教訓に、大津波にも倒壊しにくい粘り強い構造に改善した。今年3月末に上部工を終え、完成した。

 

(復興釜石新聞 2018年5月9日発行 第687号より)

 

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番田会長が新規加入の白山小防災少年団に認定証、リーダーに任命書を交付

少年消防クラブ、市内全小学校に〜本年度は4校が加入、白山小で認定証交付式

番田会長が新規加入の白山小防災少年団に認定証、リーダーに任命書を交付

番田会長が新規加入の白山小防災少年団に認定証、リーダーに任命書を交付

 

 昨年4月に発足した釜石市少年消防クラブ(会長・番田健児釜石消防署長)は本年度、小学校4校が新規加入し、市内の9小学校全校で組織化された。4校には認定証、それぞれの新リーダーに任命書が会長名で交付される。

 

 新規の加入団体は栗林小(栗橋こどもぼうさいクラブ)、白山小学校防災少年団、平田小(平田っ子少年消防クラブ)と唐丹小。

 

 白山小(千葉愛子校長、児童32人)の結団式は16日、嬉石町の同校体育館で行われた。番田会長らが立ち会い、千葉校長は「これまで真剣に取り組んできた避難訓練など、自分の命を守るために、どう行動するか考えましょう」と呼び掛けた。

 

 番田会長から児童会の阿部七緒副会長に認定証、小笠原のゑ会長にリーダー任命書が贈られた。奥寺玲華さんが防災学習や危険な場所を調べて防災マップを作ってきたことを報告した上で、「昨年は大きな山火事があった。正しい防災知識を身に付け、災害から自分の命を守るよう努力します」と誓いの言葉を述べた。

 

 番田会長は「きょうから、みなさんは私たち消防職員の仲間です。火事や事故を起こさない、災害が起こっても被害を大きくしないこと。そして、自分の命を守る努力が大事です」と激励した。

 

 千葉校長によると、災害や犯罪被害の予防へ教職員と児童が通学路の安全パトロールを行い、写真を添付するなどして安全マップを作る。また、地域住民と連携し、下校時の災害発生を想定した避難訓練も重ねる。授業がある日の災害対応はPTAと共通認識を構築しているが、課題の一つに「土砂災害が懸念される際の学校の役割や避難対応」を挙げた。

 

 釜石中(安全委員会)を含む市内10校への任命書などの交付は10日に始まり、4月中の完了を見込む。

 

(復興釜石新聞 2018年4月21日発行 第683号より)

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新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

“火消し”に大きな力、最新鋭のポンプ車配備〜釜石市消防団 6分団7部 8分団6部

新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

新しいポンプ、積載車の配備を喜ぶ消防団第6分団第7部(左)、第8分団第6部の団員ら

 

 釜石市は2月28日、釜石市消防団の2部に小型動力ポンプと積載車両の1組を配備、引き渡した。鈴子町の釜石大槌地区行政事務組合消防本部庁舎で引き渡し式が行われ、山崎長栄団長が車検証やキーを各部に贈った。

 

 配備を受けたのは第6分団(佐々幸雄分団長)の第7部(片岸町室浜、佐々栄部長、部員8人)と、第8分団(千葉茂分団長)の第6部(唐丹町荒川、橋本信行部長、18人)。

 

 山崎団長は「旧装備は小型ポンプが37年、車両は27年を経過し更新した。部員全員が最新の装備の操作技術を習得し、訓練を重ねて災害の軽減につなげてほしい」と激励した。

 

 受領した2部は新車両で甲子川の河川敷に向かい、ポンプの能力を確認、操作や点検の要点を学んだ。

 

 車両はディーゼルエンジン搭載の4WD、オートマチック。密閉式の乗車定員は6人で、後部デッキも簡易フードで外気から守られ居住性に優れる。小型ポンプは軽量化され、揚水時間を短縮、揚水能力も向上した。

 

 第8分団第6部の橋本部長は「共に活動した旧車両には愛着がある。荒川地区には間もなく三陸沿岸道(インターチェンジ)が完成し、活動範囲も広がるだろう。高性能の新車両、ポンプを十分に活用したい」と喜んだ。

 

 第6分団の佐々分団長は「(大震災で全域が被災した)室浜地区は復興工事が続き、屯所が整備できない。新しい車両は当面、栗林町の仮屯所で保管、運用する」と厳しい現状を語った。

 

 積載車両と小型ポンプの購入価格は1組約1174万円。

 

(復興釜石新聞 2018年3月3日発行 第669号より)

 

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「てんでんこ」紙芝居で継承〜釜石高生 鵜住居小で講座、「逃げる力」の大切さ説く

紙芝居をスクリーンに映し、震災時の津波避難の経験を伝える佐野里奈さん(右)と永田杏里さん

 

 津波から自分の命を守れる人に――。東日本大震災を経験した釜石高の2年生5人が、当時の自分たちと同じ小学4年生にその教訓を伝えたいと、2月27日、鵜住居小(中軽米利夫校長、児童142人)で防災講座を開いた。手作りの紙芝居とクイズを通じ、4年生34人に自分の身は自分で守る“津波てんでんこ”の教えと防災知識を学んでもらった。

 

 釜高のクラスメートという佐野里奈さん(鵜住居小出身)、永田杏里さん(小佐野小同)、鈴木紅花さん(双葉小同)、岡本さくらさん(大槌北小同)、松田悠河君(甲子小同)が企画。紙芝居は、震災当時、釜石東中の生徒らといち早く高台に避難し津波の難を逃れた佐野さんの経験を基に製作した。

 

 主人公の小学生「ナナちゃん」は学校で大地震に見舞われ、校舎上階に向かうも、中学生が高台の避難場所を目指し走る姿を目撃。中学生の兄に手を引かれ、迫りくる津波から懸命に逃れる。トラックの荷台に乗り移動した避難所で、不安な一夜を過ごし、2日後、家族4人が無事、再会を果たす。佐野さんがナレーションを担当、永田さんが主人公の声を演じた。

 

「てんでんこ」紙芝居で継承

 

 鈴木さんら3人が考えた防災クイズは、○×で回答する10問。地震発生時の行動や日ごろの備え、津波の速さなどを、具体例を交えた問いで児童らに投げかけ、楽しみながら必要な知識を学べる機会とした。

 

 震災時は2、3歳で、詳細な記憶のない児童ら。親しみやすい紙芝居やクイズで、自分の命をつなぐすべを身に付けた。黒澤強優君(10)は当時、鵜住居保育園に在籍。「園で寝ている時、地震が発生した。その後のことはよく覚えていない」と話し、「高校生の話は分かりやすかった。次に津波がきても、このおかげで逃げられる気がする。学んだことを他の人にも伝えたい」と防災意識を持ち続けることを誓った。

 

 同講座の構想は、釜石で復興支援ボランティア活動を継続する聖学院大(埼玉県)が、地元高校生と釜石の今後を考える中で生まれた。昨夏、学生と高校生が企画合宿を行い、小学生への防災活動を発案。佐野さんの母校である鵜小に企画を持ち込み、中軽米校長のアドバイスを受け、出前授業に向けた準備を重ねてきた。

 

 「当時、東中2年だった兄に手を引かれ、無我夢中で逃げたことだけは鮮明に覚えている」と佐野さん(17)。震災の経験を大人より近い目線で伝える意義を感じ、「小学生が私たちの思いをしっかり受け止めてくれた。〝津波てんでんこ〟と防災知識を心に刻み、自分1人でも逃げられる力をつけてほしい」と願った。

 

 紙芝居の絵を描いた永田さん(17)は「ダイレクトすぎる表現にならないよう気を使った。思ったよりも、いい反応をもらえてうれしい」と笑顔。震災から間もなく7年を迎えるにあたり「思い出すのはつらいことだが、後の世代に教訓をつないでいく自覚を新たにしたい」と意を強くした。

 

 この日は釜高生をサポートしてきた聖学院大生3人も顔をそろえた。4年の由木加奈子さん(23)は「高校生が『自分たちだからこそできることがある』と当事者意識を高め、率先して取り組んだことが形になった。今回の経験は古里への愛着を生み、進学で一度まちを離れても、また戻ってくることにつながるのでは」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年3月3日発行 第669号より)

 

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ドローンで空撮した最後のケーソン据え付け作業=釜石港湾事務所提供

釜石港湾口防波堤、世界最大水深の威容取り戻す〜ケーソン据え付け完了、震災前の機能をほぼ回復

最後のケーソンが防波堤に到着、慎重な作業を関係者が見守った

最後のケーソンが防波堤に到着、慎重な作業を関係者が見守った

 

 東日本大震災の津波で損壊した釜石港湾口防波堤(総延長1960メートル)の復旧工事は11月29日、堤の本体となるケーソンの最後の1基が据え付けられ、震災前の機能をほぼ回復した。国土交通省釜石港湾事務所(下澤治所長)はさらにケーソン上部のコンクリート工事を進め、本年度内に復旧事業を完了する。

 

 震災の津波で南堤(670メートル)は18基中8基(370メートル)、北堤(990メートル)は39基のうち29基(870メートル)が土台からずれるなど損壊。開口部(300メートル)の基底部も壊れた。

 

ドローンで空撮した最後のケーソン据え付け作業=釜石港湾事務所提供

ドローンで空撮した最後のケーソン据え付け作業=釜石港湾事務所提供

 

 最後のケーソンは北堤の北側から6基目。幅20メートル、長さ30メートル、高さ15メートルの箱型で、重量は約6320トン。製作した泉ケーソンヤードから約500メートルを専用船で引いてゆっくり運び、函内に注水して海底のマウンドに仮設置した。

 

 ケーソンは2隻のクレーン船で、幅30メートルの間にゆっくりはめ込まれた。堤上の測量機、海中の映像モニター、上空のドローンなどで、うねり、風の影響を確認するなど作業は慎重に進められた。

 

 今後、傾斜やひずみの有無を確認し、バラスト(石)を投入して固定する。

 

 釜石港湾事務所の下澤所長は「地域のためにと一生懸命がんばってきた。港湾機能を保ちながらの工事で、航路を切り替えるのも大変だった。旧防波堤と同じ設計だが、より粘り強い構造にした。完成により釜石港の荷役がスムーズになり、利活用が促進されれば」と願った。

 

 世界最大水深(63メートル)の防波堤としてギネス記録にも登録された釜石湾口防は、1978年から30年をかけ、1500億円余りの巨費を投じて2008年度に完成した。

 

 12年から始まった復旧事業には約650億円を投入。深部工区が多く、集中する復旧事業で資機材が不足するなどの制約の中で、工法を工夫し事業のスピードアップを図った。

 

(復興釜石新聞 2017年12月2日発行 第644号より)

 

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初めて近隣住民に公開された甲子川水門の工事現場

甲子川水門工事“折り返し”〜近隣住民に現場初公開「一日も早く完成を」

初めて近隣住民に公開された甲子川水門の工事現場

初めて近隣住民に公開された甲子川水門の工事現場

 

 東日本大震災で津波に直撃された釜石市の甲子川河口で「甲子川水門」の工事を進める県沿岸広域振興局土木部は17日、近隣の住民などを対象に現場見学会を行った。河口部を仮締めし、2つに仕切って行われる大掛かりな水門工事は、左岸(港町側)のほぼ半分が完成。これから右岸(嬉石町側)の残り半分の工事に移る。目の前で進む工事現場に初めて足を踏み入れた住民らは「水門が一日も早く完成し、安心安全な暮らしを取り戻したい」と期待を膨らませた。

 

 甲子川水門は幅120メートルで、水門本体、防潮堤はいずれもTP(基準海面からの高さ)6・1メートルで設計。鉄筋コンクリート製で、深い所では35㍍にも及ぶ鋼鉄製の基礎杭(くい)445本を打ち込み、支える。水門は津波を受け止めるカーテンウオールとゲートで構成。上部に4つの機械室が置かれ、遠隔操作で動かす。仮締めの仕切りは830メートルにも及び、1413トンbもの鋼矢板を用いる。

 

 本格的な工事は2014年5月から始まり、これまでに左岸側の工事をほぼ終了。これから右岸側の工事に掛かり、20年3月の完成を目指す。総事業費は約46億円を見込む。

 

安心安全な暮らしへ「一日も早い完成を」と望む近隣住民ら

安心安全な暮らしへ「一日も早い完成を」と望む近隣住民ら

 

 甲子川水門工事で、近隣住民に現場が公開されるのは初めて。現場見学会は、工事の“折り返し”に合わせて設定された。左岸で完成した水門本体の底部は近く水没する。鋼矢板で仕切られた工事現場に足を踏み入れた住民らは「想像した以上に大掛かり」と驚きの声を上げた。

 

 平田第6仮設団地で6年間を過ごした森谷勲さん(75)は、8月に嬉石町に戻り復興住宅に入居したばかり。「目の前で進む水門工事はなかなか進まないと感じたが、実際に見ると、ものすごい工事量。安心感はあるが、大きな津波が来ると水門の脇からあふれないか心配」と不安はぬぐえない。

 

 震災の津波で松原町の事務所が全壊、只越町に移転した八幡徹也さん(65)は「すごい構造物だが、早くできることに越したことはない」と早期完成を望んだ。

 

 工事を担当する沿岸振興局土木部復興まちづくり課の及川郷一課長は「ようやくここまで来たが、あと半分残っている。工事の音も懸念されるが、一日も早く住民の方々に安全安心を届けたい」と理解を求めた。

 

(復興釜石新聞 2017年10月21日発行 第632号より)

 

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暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

「危機対応学」めぐり意見交わす、東大社会科学研究所〜意識調査を市民生活向上に

暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

暮らしと復興の意識調査について結果を報告する神戸大の平山教授(右)と東大の佐藤教授(中)

 

 「危機対応学」をテーマにした公開シンポジウムが26日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。2005年から釜石を舞台に「希望学」の研究に取り組んできた東京大学社会科学研究所が、16年度から新たにスタートした全所的プロジェクトの一環。東大と神戸大を中心とする全国の研究者グループが、東日本大震災で被災した釜石市民を対象に11年度から実施した暮らしと復興についての意識調査の結果を報告。被災者や市民の生活向上へ、どのように役立てるか意見を交わした。シンポジウムには市民ら約90人が参加し、耳を傾けた。

 

 調査は被災者の生活再建に向け、被災の実態、住まいや生活の状況と今後の見通し、考え方を明らかにするため11年から5回にわたって実施。仮設住宅、みなし仮設住宅、復興公営住宅で暮らす延べ5500人から回答を得た。

 

 シンポジウムでは、調査グループの共同代表を務めた東大の佐藤岩夫教授と神戸大の平山洋介教授がそれぞれ、調査で浮き彫りとなった問題点などについて報告した。

 

 佐藤教授は、昨年行った5回目の調査について「復興が進む中で、将来に向けた希望や明るい見通しは傾向が大きく分かれるが、『復興』の言葉が用いられるのは意外に少ない。震災の記憶がうまく継承されていないのではないか」と説明。その背景には、思うように進まないことへのいらだちがあることを指摘し、「見通しの不透明さが生む不安や不満がある。被災経験には複数の時間が流れている。この流れを量的ではなく、質的に捉える見方も必要ではないか」と示唆した。

 

 阪神大震災を経験した平山教授は、今回は住まいの再生を重点に調査。被災者の間に孤立化や高齢化への不安が広がっていることを指摘し、「被災者の生活再建に揺らぎが見える中で、過去、現在、未来をつなぎ合わせる住まいの改善が求められる。被災者の実態を踏まえた制度改善を」と訴えた。「住宅再建の補助は、1回きりをせめて2回に」と持続的制度の必要性も指摘した。

 

 参加した市民の中からは「津波災害からの復興の歴史と見比べると、今回の震災では他人の力を求め過ぎている気がする。地域全体で〝自力力〟を持たなければならないのでは」という声もあった。

 

 佐藤教授は「どうにもならない場面もいろいろある。個人の努力も要るが、手助けする社会の仕組みづくりは必要だ」、平山教授は「ともかく現場に足を運ぶことが支援になる。多くの人に現状を見てもらうことが被災者の力になる」と強調した。

 

(復興釜石新聞 2017年8月30日発行 第617号より)

 

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