組合員が久保組合長宅前に建立した津波記憶碑を除幕。未来の安全を願った
釜石市平田の平田海浜地共有組合(久保知久組合長、会員91人)は「東日本大震災津波到達地点記憶碑」を地区内に建立し、9月20日に除幕式を行った。記憶碑のほか2カ所に「津波到達地点」の石柱を建て、地域住民に津波避難の大切さを末永く伝える。
同組合は戦前、平田湾などで採取する海藻類、雑魚などの干場(かんば=磯など海浜地)の管理団体として発足した。現在は干場の需要がほとんどないが、組合は共有地の管理や運営を続けている。
津波記憶碑の建立は昨年夏に発議。役員会などで内容を検討、協議し、今年6月の総会で決定した。監事の佐藤増雄さん(73)、会計の髙澤貞樹さん(72)によると、「震災の津波について、住民が日々の生活で目にする場所に到達地点を明示し、津波への警戒を忘れず、後世に伝えるのが目的」という。
「復興まちづくり、住宅再建が進み、これからも町並みが変化する。震災の記憶はあいまいになる恐れがある。特に将来を担う子どもたちには、しっかりした心の備えを持ってほしい」と久保会長(71)。「私たち組合の立場で地域防災に貢献できることは、慰霊碑ではなく、津波の記憶碑の建立だろう―と意見がまとまった」と経緯を話す。
三鉄平田駅近くの市道沿いの石柱(左)、津波到達点の石柱は平田小前にも(右)
記憶碑の用地は久保組合長の自宅敷地、石柱2基の用地は組合員が所有地を提供した。石柱が建てられたのは平田小の正門前20メートル付近と三陸鉄道平田駅の市道ガード付近で、いずれも津波の到達点。記憶碑の標高は11・3メートルとした(9メートルという説もある)。
記憶碑には発災日と建立期日を和洋で表記。組合、役員名を添え、「これより高台に逃げろ」とメッセージを刻んだ。碑は台座を含め高さ約1・5メートル。石柱も市道、通学路に面し、通行を邪魔することなく、周囲の景観も損なわず、さりげなく通行者の目に触れる位置にある。
(復興釜石新聞 2019年10月2日発行 第829号より)
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