あの日の悲しみと教訓語り継ぐ〜震災伝承の3人トーク、ファンゾーン特別企画


2019/10/18
復興釜石新聞アーカイブ #防災・安全

震災の記憶や教訓を語る菊池のどかさん(左)ら

震災の記憶や教訓を語る菊池のどかさん(左)ら

 

 釜石市大町の市民ホールTETTOに開設されているラグビーワールドカップ(W杯)のファンゾーンでは6日、東日本大震災の記憶を伝える特別企画として、「あの日の悲しみと教訓を永遠に語り継ぐ」と題したスペシャルトークが行われた。震災伝承に携わる3人が招かれ、8年半の時間の経過で思うことや今後の伝承のあり方などについて意見を交わした。

 

 陸前高田市で津波到達点に桜を植樹する活動を行う認定NPO法人桜ライン311代表の岡本翔馬さん、震災犠牲者の遺体を復元し納棺するボランティアを続けた北上市の笹原留似子さん、釜石東中3年時に小・中学生580人で率先避難を実践し、津波から逃れた釜石市の菊池のどかさん(いのちをつなぐ未来館勤務)が出演。IBC岩手放送の江幡平三郎アナウンサーが話を聞いた。

 

 岡本さんは震災で同級生ら多くの身近な人を失った。防災士の資格を取り全国で講演するが、「時間がたっていることで、伝えやすくなっている部分もある」と実感。今の小学3年生以下は震災の記憶がほとんどない。「今後は(震災を)受け止めやすい環境を作ってあげることも大事」と、桜ラインの意義を示した。

 

 笹原さんは、300人以上の犠牲者とその遺族に向き合ってきた経験を基に、県内外の学校で「命の授業」を行う。子どもたちには「明日は当たり前に来るわけではない。2度と戻らない時間を意識して生きることで明日が輝き、私たちを迎えてくれる」と話している。遺族との交流は今も続く。「悲しみを共有することは、大切な人との思い出を宝物に変えることにもつながる」と話した。

 

 菊池さんは震災前から防災教育を受けてきたが、災害を自分事として捉えられていなかった。震災で死に直面し、人の命に向き合うことを考えるように。大学を卒業した今年4月から鵜住居町の同館で働き始めた。「当時の体験、事実とともに、津波災害の要因や避難方法を正しく伝えていきたい」と菊池さん。「地域の一員として子どもたちを助けられる人間になりたい。全員が知識を得て生き残れるように」と願う。

 

 3・11を「大切な人を想う日」に―と開催された同企画では、「釜石あの日あの時甚句」の披露や特別展示なども行われた。

 

(復興釜石新聞 2019年10月12日発行 第832号より)

 

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