元釜石小校長の加藤さん、鵜住居・いのちをつなぐ未来館名誉館長に〜釜石の防災教育を広く発信、「聴く力を磨いて」と訴える
いのちをつなぐ未来館の名誉館長に就任した加藤孔子さん(右)
東日本大震災当時、釜石市立釜石小の校長だった加藤孔子(こうこ)さん(62)=盛岡市在住=が、鵜住居町の津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の名誉館長に就任した。現在、岩手大教員養成支援センター特命教授を務めており、同館では不定期に活動。展示やガイド内容の充実など助言を行う。18日には修学旅行で同館を訪れた小学生を特別ガイド。日頃から防災意識を高めておくために大切なこととして「聞く力を磨いてほしい」と訴えた。
加藤さんは岩大教育学部卒業後、平田小で教員生活をスタート。2008年4月に校長として初めて着任したのが釜石小だった。12年3月まで勤務し、滝沢東小、見前小校長を歴任、18年3月に退職。19年4月から同特命教授を務めている。
釜石小での勤務時、授業で「津波てんでんこ」の言い伝えをくり返し教えた加藤さん。通学路にある危険箇所、避難場所を知るため児童自らが歩いて探る防災安全マップづくり、災害時に児童が自らの判断で命を守ることを目標として下校時避難訓練に取り組んだ。
震災発生時、全校児童184人の多くがすでに下校。学校の管理下になかったものの、一番近い避難場所や高台に避難するなど自分たちで判断、行動し、全員が各自で命を守った。
学校で学んだことを思い出して行動しただけ―。子どもたちの言葉から、加藤さんは「友達や先生の話を普段から聞くことで命を救うことができる」と感じた。
この日、一戸町立一戸南小(飯岡竜太郎校長、児童94人)の6年生14人らに対し、釜石小の事例を説明した加藤さん。「学校での話をよく聞いて、覚えていたから命が助かった。普段から話を聞くことが自分やたくさんの人を守ることにつながる」と呼び掛けた。
同館で加藤さんの主な役割は防災学習や展示・企画展の助言、支援。これまで同館では鵜住居の子どもたちの避難行動を中心に伝えてきたが、今後は釜石小の事例も発信し、釜石の防災教育の成果と教訓を明らかにする取り組みに力を入れる考えだ。
「防災教育というと避難訓練だけがピックアップされがちだが、普段から、当たり前に教育されていることが大切」と加藤さん。伝承活動に加え、地震のメカニズムなど専門的な要素を取り入れた体験プログラム、ワークショップの実施などを視野に入れている。
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