いのちをつなぐ未来館 1万人達成、予想より早く〜授業の一環、視察も相次ぐ


2019/05/22
復興釜石新聞アーカイブ #防災・安全

1万人目の来館者となった瀬川さん(左から3人目)

1万人目の来館者となった瀬川さん(左から3人目)

 

 釜石市鵜住居町の津波伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の来館者数が16日、1万人を達成した。セレモニーがあり、1万人目の来館者に指定管理者のかまいしDMC(社長・野田武則市長)から花束などの記念品が贈られた。オープンから2カ月足らずでの達成に、「予想以上の早さだ」と関係者。東日本大震災の惨禍と教訓を伝え続ける気持ちを新たにしている。

 

 1万人目となったのは、奥州市水沢の瀬川ハル子さん(73)。数日後に迎える誕生日のお祝いに、長女るみさん(50)と一泊旅行を楽しむ途中で同館に立ち寄った。

 

 瀬川さんは「思いがけないこと」と驚いた様子。鵜住居地区防災センター跡地に整備された追悼施設「釜石祈りのパーク」で、震災の津波で犠牲になった親族の名も確かめ、「忘れられない、忘れてはいけない場所だと感じた。また訪れたい」と言葉をかみしめた。

 

 未来館は、鵜住居駅前周辺に整備された公共施設(愛称=うのすまい・トモス)の一つで、3月23日にオープンした。震災の津波の痕跡が残る壁や津波来襲の時刻を示す壁時計などの遺物、釜石の防災教育と震災当時子どもたちがとった避難行動、生存者の証言など展示物で震災の教訓を伝える。最新技術のシステムで体を動かしながら津波の仕組みを学ぶこともできる。

 

 当初、年間1万6千人の来館者を目標に設定していた。かまいしDMCでは、津波から避難した経験を持つ運営スタッフの話をじかに聞いたり注目度の高さもあり、来館者数が伸びたと分析。県内の中高生が授業の一環で訪れたり、行政や企業の視察も相次ぐ。

 

 セレモニーに出席した野田市長は「祈りのパークと合わせ、この場所の存在、重さを痛感。忘れてはならない場、悲劇を繰り返さないため教訓を伝える施設であり、さらに多くの人に訪れてほしい。展示の内容も充実させたい」と述べた。

 

 同じ日にオープンした観光交流拠点施設「鵜の郷(うのさと)交流館」はすでに来館者1万人を達成。15日までで、2万6226人となっている。

 

(復興釜石新聞 2019年5月18日発行 第791号より)

 

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