小白浜海岸防潮堤を見学、地域住民「安心せず、避難を」〜6年をかけ3月に完成
津波防災機能を向上させ、規模も拡大した水門、防潮堤の威容を体感する住民
東日本大震災の復旧事業として県が施工した「小白浜海岸水門・防潮堤」の完成見学会は9日、地域住民25人が参加して行われた。沿岸広域振興局の担当者が案内し、住民は津波を想定した防災機能の高度化、優れた操作性を確認した。担当者は「津波の備えは向上したが、万一の際は避難する意識を持ってほしい」と訴えた。
堤体構造、設備を一新
同防潮堤は水門や陸閘(りくこう)を備えていたが、震災の津波で壊れ、水門の機能も失った。復旧工事は2013年度から6年をかけ、今年3月に完了した。総事業費は約70億円。
工事では、片岸川河口の水門部分を海側に85メートル移し、震災前には水門の右岸と防潮堤の北側(小白浜集落側)設置点の市道にあった陸閘を市道側の1カ所に集約した。片岸漁港につながる道路は、堤体の南端、片岸グラウンド側に「乗り越え式」で整備した。
防潮堤の総延長520メートル、高さ14・5メートル。開閉する鉄製の水門は高さ4・7メートル、幅7・2メートルが2基。1基の重さは約100トンあり、機械や通信機器を収納する操作室3棟は堤頂から約7メートル立ち上がる。
堤体の構造、形状は旧設備を拡充し、「粘り強い機能を持たせた」(担当者)。
陸閘は幅7・2メートル、高さ4・7メートル、延長99・12メートル。海側に回転式の門扉を設置した。
水門の閉鎖は、消防団員などの安全を確保する「県水門・陸閘自動閉鎖システム」に対応。津波注意報以上のレベルで自動的に起動し、約4分で閉鎖する。解除は遠隔操作、手動でも可能。陸閘の閉鎖も同様で、通行車両、人に拡声器で注意を促し、ランプやLEDの文字盤、遮断機で操作を周知する。
遠隔操作の指示は県庁、沿岸広域振興局のほか、釜石市役所、釜石大槌地区消防本部庁舎でも可能だ。
沿岸振興局土木部の千葉信英副部長は「防潮堤は地権者、地域の協力で完成できた。しかし、津波防災に完璧はない。あくまでも避難が大事」と強調した。
小白浜地区の70代の女性は「説明を受け、立派な設備ができたので安心しました。でも、避難する気持ちは忘れてはいけない」と語った。
市内では21漁港・海岸で河川の水門などの復旧工事が行われ、この3月までに小白浜など11カ所が完成した。
(写真説明)
(復興釜石新聞 2019年6月15日発行 第799号より)
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