オンライン報告会を終え、充実した表情を見せる隊員ら
東日本大震災からの復興に向け、釜石市のまちづくりや農林漁業の振興、住民福祉など幅広い分野で官民協働による課題解決を担う釜石リージョナルコーディネーター(復興支援員、通称・釜援隊)。今年度末で活動を終える。隊員らでつくる協議会は〝散開〟を前に、2月26日、大町の市民ホールで活動報告会を開催。発足から8年の歩みを振り返り、活動成果を総括した。
多くの自治体が総務省の財政支援を受けて地域おこし協力隊員を迎える中、釜石市は13年、同省の復興支援員制度を活用して独自に釜援隊を導入した。商社や国際機関、マスコミなどで勤務経験のある29人を受け入れ、現在11人が活動。市と住民や企業、NPOなどとの調整役としてまちづくりを支えてきた。
報告会はオンラインで開催。「釜援隊がまちや市民に提供した価値」をテーマにしたパネルトークで、遠藤眞世さん(33)=東京出身=は平田地区に整備された県営復興住宅の自治会運営の伴走支援など住民自治・共助のコミュニティーづくりを伝えた。被災の有無で交流を遠慮する住民たちをつなぐ祭りの実施など成果を上げた一方、年数とともに人の動きも変化し、コミュニティー活動を維持する難しさを実感。「コミュニティーづくりは自分たちでやる」というイメージを持った地域の担い手が必要だと指摘した。
協働先として当時、活動を進めた市の千葉裕美子子ども課長は「住民と行政の懸け橋となり、新たなコミュニティーの輪を広げてもらった」と成果を強調した。
東部地区事業者の連携支援に取り組んだ花坂康志さん(32)は、古里を盛り上げようとUターン。地区の方向性に関し行った事業者へのヒアリングで、異なる主張を整理し、話し合いの場に持ち込む難しさ、社会人としての未熟さを実感。人との関わりでさまざまな学びがあり、「成長を後押ししてもらった。今後、形が変わっても関わっていきたい」と力を込めた。
同地区事業者協議会の新里耕司会長は「地元の視点に外の情報を入れ、新しいチャレンジを創造するチャンスをもたらした」と手応えを感じた。
各隊員の活動報告は4グループに分かれ、一人15分の持ち時間で実施。現隊員の中で最も長く活動する常陸奈緒子さん(36)は「復興まちづくりにおける高校生の地域参画」をテーマに取り組みを紹介した。
高校生による津波防災授業、中高生向けキャリア教育企画、放課後の居場所づくりなどをサポート。地元の後輩たちを応援する活動にやりがいを見いだし、「震災から10年。これからは平時のまちづくりがポイントになる。若い世代を育み、地域とつながり続ける体制、環境づくりを続けたい」と前を向いた。
隊長の二宮雄岳さん(54)によると、現隊員のほとんどが釜石に残ることを決めている。自身も「できることがある」と決断。震災の復旧復興から地方創生期への変化に対応した活動の展開から得た価値を生かした協働の仕組みづくり、産業振興に注力する構えだ。
協働先の市、企業、元隊員らが各場で視聴。2時間半の配信で、延べ約80人が成果を共有した。