金びょうぶの前で笑顔を輝かせる新成人
新型コロナウイルス感染拡大で、中止や延期、オンライン開催とさまざまな措置がとられた各地の成人式。釜石市では例年行っている「成人のつどい」を、感染症対策を講じた上で開催する予定だったが、全国の感染状況を踏まえ、参集開催を断念。出席者を限定した式典の模様をウェブ配信する形に変更した。式典会場の市民ホールTETTOには、記念撮影用のフォトスポットが設けられ、出席がかなわなかった新成人らが晴れ着姿で訪れた。
野田市長らがお祝いの言葉を贈った式典
10日午後、ホールAで開かれた式典には、新成人2人と主催者、来賓8人が出席。野田武則市長は震災から10年となる年に新たな門出を迎えた新成人に向け、「震災の教訓を決して忘れてはならない。一人一人が命を大切にし、周りの人たちとの関係の中で自分があるという自覚を持って人生を歩んでほしい」と呼び掛けた。
釜石高、釜石商工高の恩師からのメッセージ、高校時代に参加した釜石コンパスのキャリア教育授業の様子などがビデオ上映された。
新成人代表の留畑梨恩さん(20)=一関高等看護学院2年=が抱負を発表。「コロナの感染拡大で不安になる人も多いと思うが、困った時には手を差し伸べ、優しく笑顔で支えてくれる釜石の仲間がいることを忘れないでほしい。多くの方々に感謝し、成人として生活していくことを誓う」と決意を述べた。
コロナ禍でも前を向いて人生を歩む決意を示した新成人代表の留畑梨恩さん
半屋外仕様のホールBには、金びょうぶとラグビースタジアムの背景を施したフォトスポットが設けられた。振り袖やスーツに身を包んだ新成人らは、久しぶりに会う友人らと再会を喜び合い、笑顔で記念写真に納まった。
ラグビーのまちならではのフォトスポット
訪れた新成人からは「残念だけど仕方がない」「仲のいい友達に会えただけでも良かった」「できれば式典を延期してもらい、みんなで集まりたかった」など、さまざまな受け止めの声が聞かれた。
宮城学院女子大2年の山﨑佳歩さん(20)は「着付けしてもらえるか不安だったが、振り袖を着られて本当にうれしい。将来は栄養士の資格を取って働きたい」、明和学園短期大2年の山﨑沙恵さん(20)は「子どもの気持ちに寄り添える保育士になりたい。手洗い、体調管理などコロナ対策をしっかりし、社会人の一歩を踏み出せたら」と夢を描く。2人は鵜住居小4年時に震災にあい、自宅が全壊。被災から10年を迎える古里に「新しい家も建ってきているが、まだ点々。まちが元のようにはならなくても、住民が気軽にあいさつを交わす人とのつながりを感じられる地域になってほしい」と願った。
日鉄テックスエンジで働く篠原拓馬さん(20)は釜石商工高時代の仲間と再会し、「高校のころを思い出す」と懐かしげ。「お酒はほどほどに。大人になったことを実感しながら行動していきたい」と自覚を高める。津波で被災した只越町の自宅は最近再建を果たし、家族と暮らす。「釜石のために少しでも貢献できるよう仕事をしていきたい」と決意を新たにした。
本年度の釜石市成人のつどいの対象者は319人。記念品(釜石出身アーティスト小林覚さんデザイン・エコバッグ)は郵送された。式典の模様は31日まで視聴できる。