満開の八重桜を見上げ、顔をほころばせる子ども
釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」の玄関口を彩る八重桜並木が15日、満開を迎えた。好天に恵まれたこの日は、山里の春を求めて市内外から見物客が訪れ、市街地より一足遅れの花見を楽しんだ。大雨や強風がなければ、花はあと数日は持ちそう。濃桃色の美しい花姿がコロナ禍の人々の心を癒やす。
同所の八重桜は、1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には、橋野町振興協議会による植樹も行われ、若木が順調に育っている。山間部ならではの気候で、市街地より遅れて開花する同地区の桜。今春はヤマザクラやソメイヨシノの開花は例年より早かったものの、5月に開花する八重桜は初旬の激しい寒暖差が影響してか、なかなか花が開けずにいた。10日過ぎからようやく咲き始め、1週間ほどで満開を迎えた。
15日は朝から青空が広がり、午前の気温が24度に達するなど夏を思わせる陽気に。世界遺産を目当てに訪れた観光客のほか、豊かな自然を求めて足を延ばした市内の家族連れなどが、思いがけない桜の出迎えに感激しながら散策を楽しんだ。
橋野鉄鉱山に続く並木道は格好の散策コース
平田の藤井恵子さん、沙綾さん(8)、菊池真奈美さん、唯乃さん(7)親子2組は初めて同所を訪れ、満開の桜の歓迎を受けた。唯乃さんは「今も桜が咲いていると思わなかった。きれい。春の花では桜が一番好き」とにっこり。子ども同士が同級生で、一緒に足を運んだ母親の恵子さん、真奈美さんは「いい時期に来ました。目の保養になる。今日は天気も良くて最高。この後、世界遺産の高炉跡も見てみたい」と、並木が連なる緩やかな坂道に向かった。
葉が多めながら、濃桃色の花は青空と競演!
例年だと花が散るころから葉が出始めるが、今年は満開の花と葉が同居する木が多い。「これも不安定な気候の影響だろうか」と地元住民。橋野鉄鉱山インフォメーションセンターには今年、桜の開花に関しての問い合わせが多く寄せられているという。スタッフは「〝密〟を避けた自然空間で観光やレジャーを楽しもうという人が増えているのかも。コロナ禍を象徴する出来事」と話す。